集団的自衛権の行使容認」カテゴリーアーカイブ

まだまだ集団的自衛権は行使できない


2014年7月2日現在。昨日1日、「日本国憲法は集団的自衛権の行使を容認している」という政府の憲法解釈が閣議決定されました。

この閣議決定により、ただちに日本が集団的自衛権を行使できるわけではありません。20近い法律の改正が必要になります。

集団的自衛権の行使に反対の方々は、これらの法律の改正案の成立阻止に全力をあげることになるでしょう。

ひとつ気になるのは、昨日の日どりです。昨日、7月1日は六曜で仏滅でした。六曜を気にすることができないくらい、日程が窮屈だったのでしょうか。

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集団的自衛権の行使容認に向け、政府はすでに捨て身の作戦にでている


 2014年6月9日現在。今国会の会期末まで、あと2週間弱です。安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を、今国会中に閣議決定する方針です。どうも、本気のようです。一方、連立を組んでいる公明党も本気でこ政治課題の先送りを目指しているようです。落とし所はあるのでしょうか

 実は、公明党が一番望んでいたと思われる落とし所は、すでに葬り去られています。憲法解釈と集団的自衛権に関する態度として、以下の4つのものが考えられます。

  1. 憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使とみられる行動(米艦防護、機雷除去など)をとれるようにする
  2. 憲法解釈を変更せず、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれるようにする
  3. 憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれないようにする
  4. 憲法解釈を変更せず、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれないようにする

 1は、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認を目指す安倍政権の考え方です。2は個別的自衛権で集団的自衛権の行使とみられるような行動をとれるとする考え方で、公明党が主張していたものです。4は集団的自衛権の行使容認に反対する人たちのスタンダードな考え方です。3はありないと思う人がいるかもしれませんが、ありえます。どういう考え方かというと、憲法解釈をもっと厳しくして自衛権を制限するという考え方です。

 この4つの考え方について安倍政権と公明党の選好を表にしてみます。100が最も望むものです。

20140609

 この表でみると安倍政権と公明党の選好の合計が最も高くなるのは2の考え方です。安倍政権としては、憲法解釈の変更という名をすて、集団的自衛権の行使とされる行動をとれるという実をとる選択になります。公明党としても、連立与党として安全保障上の課題に向きあいつつ、党論と違う憲法解釈変更は拒否するという立場がとれるわけです。

 ところが、5月28日の衆議院予算委員会で、横畠内閣法制局長官は、「現在の憲法解釈では、米艦防護や機雷除去はできない」と答弁しました。これにより、理屈の上では2で妥協するということが不可能になったわけです。

 2が選択肢から消えてしまうと、次に自民党と公明党の選好の合計が高いのは1になります。安倍政権は目的を達成し、公明党は連立に残れます。内閣法制局長官の答弁は、落とし所を強引に1にしようという作戦です

 これは、政府にとっては捨て身の作戦です。もう、憲法解釈を変更しない限り、「米艦防護」も「機雷除去」もできなくなってしまったわけです。そして、公明党の選好が連立維持にこだわる1よりも、連立離脱も辞さない4のほうに偏っていた場合、すべてパーになります。


存在感を増す公明党の拒否権には限界がある


 衆院予算委員会は28日、安倍晋三首相と関係閣僚が出席して、集団的自衛権行使容認など安全保障政策を中心に集中審議を行う。首相が自民、公明両党に安保法制の検討を要請してから初の本格論戦で、首相と行使容認に慎重な公明党とのやりとりが焦点。

『時事ドットコム:安倍首相と公明、本格論戦=28日に衆院集中審議-集団的自衛権』

 時事通信の記事です。凄い見出しです。『安倍首相と公明、本格論戦』。まるで公明党が野党であるかのようです。野党の存在感が低下し、自民党内の非主流派の存在感もあまりない状況で、公明党が存在感を増していることがうかがえます。

 公明党の存在感が増していることには理由があります。公明党には拒否権があるからです。

 例えば、集団的自衛権の行使ができるようになるには、憲法解釈を変更する閣議決定が必要だとされています。閣議決定は全会一致でなければなりません。大臣がひとりでも反対したら、閣議決定出来ないということです。与党である公明党から、太田昭宏国土交通大臣がでていますので、太田大臣が反対したら閣議決定はできないことになります。

 また、自民党は参議院で単独で過半数を超える議席を持っていません。公明党の議席なくして、一本の法案も通すことはできないのです。

 ただ、公明党の拒否権も絶対ではありません

 まず、閣議決定は反対した大臣を安倍首相が罷免し、一時的に罷免した大臣を首相が兼務することで全会一致にすることが可能です。

 また、参議院で議席数が足りない問題は、集団的自衛権について首相と考えが近いとみられる参議院の野党議員が賛成すれば解決します。賛成までいかなくても、欠席すれば過半数が少なくなるので、自民党のみの賛成でも法案を可決させることが可能になります。参院自民党の議席は114議席なので、15人も欠席すれば参議院の過半数です。


ねばる公明党が存在感をしめす


2014年5月12日現在。今週にも、安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、集団的自衛権の行使容認を求める提言を出すとみられています。

集団的自衛権の行使容認に慎重な公明党の態度は、なかなか軟化しません。公明党はこの問題に関しては、かなり存在感を示しています。

国会での公明党の力の源は何かというと、ズバリ数です。参議院で自民党は単独で過半数の議席を持っていないため、公明党が寝てしまったら、野党の力を借りない限り何もできなくなります。

公明党のねばりによる影響か、ここ数日は集団的自衛権に直接関係ない、日本の安全保障上のグレーゾーンを解消するための法整備から話をはじめようという発言が、政府と与党から出てきています。安倍内閣の方針を後退させかねないくらいの力が、公明党にはあるようです。

集団的自衛権の行使容認については、野党が目立たず、自民党の慎重派も早々に「限定的な行使容認ならいっか」という感じになったので、余計に公明党のねばりが目立ちます。公明党のねばりによって、自民党の慎重派が息を吹き返し、与党内で熱く議論されるようになるかもしれません。

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集団的自衛権を逆算する


集団的自衛権について、政府が考えているゴールから逆算して、必要なプロセスを洗い出してみます。

ゴール:集団的自衛権を行使するために必要な法案の成立

15.法案の成立
14.法案の審議
13.法案の付託
(特別委員会の設置?)
12.法案の提出
11.法案の閣議決定
10.内閣法制局審査
9.自民党総務会決議
8.自民党政調会決議
7.担当省庁の原案作成
6.集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を閣議決定
4.自民党総務会決議
3.自民党政調会決議
2.自民党政調会、安全保障法制整備推進本部合同審査
1.安保法制懇報告書提出

集団的自衛権を行使する環境が整うまでに、これだけのステップが必要になります。2014年4月4日現在、ステップ1以前の段階です。

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憲法解釈変更の閣議決定までの自民党内の意思決定過程


只、閣議決定案件ということになりますと、79条機関と政調会との合同で審査をいたしまして、その後、政審、総務会と通常の手続きを踏んでまいりますので、私は可及的速やかにということを希望しております。

『高市早苗政調会長記者会見 | 政務調査会長記者会見 | 記者会見 | 自民党の活動 | 自由民主党』

 冒頭は、自民党の高市政調会長の記者会見からの引用です。引用中の「79条機関」は、集団的自衛権について意見を集約するために設置された自民党の『安全保障法制整備推進本部』のことです。

 高市政調会長によれば、集団的自衛権の行使を容認するよう憲法解釈を変更する閣議決定をするまでに、以下のような手続きが必要になります。

  1. 安全保障法制整備推進本部と政務調査会の合同審査
  2. 政務調査会審議会で議決
  3. 総務会で議決

今年中に集団的自衛権に決着をつけたいなら、臨時国会は早めに召集すること


 2014年4月2日現在。集団的自衛権の行使容認に向けた報告書を作成している安保法制懇が、報告書の提出時期を4月から5月にずらすという記事が時事通信から出ています。

 記事のなかに、報告書が出てから憲法解釈変更までの流れが書いてありました。

政府は提言が出されれば、内閣法制局の意見も踏まえ、与党との調整に入り、憲法解釈の変更について閣議決定を目指す。

『時事ドットコム:安保法制懇、5月に報告書=与党配慮で先送り-集団自衛権』

  1. 安保法制懇の報告書提出
  2. 政府と与党で調整
  3. 憲法解釈変更を閣議決定
  4. 安全保障基本法や関連法案の与党内審査
  5. 安全保障基本法や関連法案の閣議決定
  6. 安全保障基本法や関連法案の国会提出
  7. 安全保障基本法や関連法案の成立

 以上のような流れで、集団的自衛権の行使に向けた環境作りがされていくと思われます。もし、今年中に環境を整えたいのなら、秋の臨時国会を早めに召集しないといけません。召集が遅れると会期が短くなり、どうしても強行採決になってしまうからです。


大臣が持つ拒否権


2014年3月31日現在。首相の進める政策に慎重な議員を大臣にすることは、反対を抑えることができる一方、内閣を危機に陥らせる可能性もあります。

首相と大臣の意見が違うと、「閣内不一致」だと野党から攻撃されるので、首相の政策に慎重な大臣は、首相の政策に合わせるか、自らの主張をトーンダウンします。

そもそも、なぜ閣内不一致が問題なのでしょうか。手続き上の理由としては、内閣として意思決定する閣議決定が、全会一致形式であることがあげられます。全会一致ということは、1人でも反対したら決められません。1人1人が拒否権を持っているわけです。

例えば、集団的自衛権の行使を容認するには、「日本国憲法は集団的自衛権の行使を認めていない」という憲法解釈をした1981年の政府答弁を否定する閣議決定を行わなければなりません。ということは、憲法解釈変更の閣議決定をするときに、1人でも反対があったらピンチになります。

閣議決定に反対の大臣が出たとき、首相には2つの選択肢しかありません。閣議決定をあきらめるか、反対する大臣を罷免して自らがその大臣を兼務し、全会一致にすることです。

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ねじれ国会は、いつでも起こりうる


 ねじれ国会が終わったからといって、参議院の存在感が低下したと思ったら大間違いです。ねじれ国会が終わったということは、野党に代わって参議院与党の力が更に高まったということです。

■参議院の賛成がないとめんどくさい

 一部の議案や手続きを除いて、参議院の賛成なしに成立するものはありません。衆議院と参議院が、同一会期中に賛成して議案が成立するのが原則です。つまり、参議院が反対したらなにもできません

 なにもできないというのは言い過ぎかもしれません。少なくとも、与党の政権運営が非常に困難になる実例を、参議院で与野党の議席数が逆転したねじれ国会で見てきました。このねじれ国会は、昨年の参議院選挙で与党が勝利したため、解消されました。

■与野党逆転以外のねじれ国会

 でも、ねじれ状態は野党が多数派でなければ起こらないわけではありません。参議院の与党が、官邸や衆議院と反対の動きをしてもねじれ状態になります

 これも、実例があります。2005年の郵政解散は、参議院で郵政民営化法案が否決されたことで起きています当時の参議院は、与党が多数派だったのにもかかわらず否決されました。まさに、ねじれ状態です。

 集団的自衛権の行使容認をめぐって、参議院自民党の幹部である脇参院幹事長の発言がクローズアップされるのも、参議院自民党の影響力が大きいためです。


自民党総裁直属機関『安全保障法制整備推進本部』設立


2014年3月25日現在。自民党は集団的自衛権の行使容認についての考えを共有するための新組織である、『安全保障法制整備推進本部』を立ち上げました。

自民党の石破幹事長の記者会見を見ると、『安全保障法制整備推進本部』は自民党の政策を決定する機関ではないことが強調されています。石破幹事長のなかでは、新組織は、あくまでも集団的自衛権の行使容認に対する自民党の考え方を共有する機関であるというスタンスのようです。

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