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予算委員会の集中審議が求められる理由


■仮想通貨のような「集中審議」

2019年11月17日現在。

日本の政治の話題は、桜を見る会関連の話と大学入学共通テストの話で賑わっています。今回も、野党の要求は「予算委員会の集中審議の開催」です。

予算委員会の集中審議は、何か問題か起こるたびに野党が要求したり、逆に与党が野党に提案したりと、交渉の材料に使われています。集中審議は、国会内の与野党交渉で使われる仮想通貨みたいなものかもしれません。

■集中審議の価値

なぜ集中審議に価値があるのでしょうか。

集中審議は予算委員会で行われる会議のひとつです。特定のテーマを定めて、テーマに該当する大臣と総理大臣が出席して与野党の質問に答えます。テーマの範囲ならばなんでも総理大臣に質問できるというのがいいところです。うまく質問すれば総理大臣の口から今後の政策を左右する言葉を引き出して、政府の行動に影響を与えることができるからです。余計な影響を受けたくないので、官僚が必死になって質問する議員に質問内容を取材して大臣が答える内容を徹夜で考えたりするわけです。

また、予算委員会の集中審議はテレビ中継もされるので、議員の活動実績として目立ちます。一定以上の議席を持つ党の党首が総理大臣と討論する党首討論と違い、予算委員会に所属していれば、党首でなくても総理大臣に直接質問できるところもよいです。

そして、党首討論とは違い、集中審議での総理大臣とのやりとりは「質疑」です。質疑なので、総理大臣は質問に答えることはできますが、反論するために質問されてないことについて持論を述べることは、よくないとされています。つまり、総理大臣を一方的に質問攻めにできます。

これらのいいところがあるので、何かというと予算委員会の集中審議が求められるのです。


「3分の遅刻で5時間ストップ」という国会しぐさの理由


■決めようとする人と、決めさせない人

国会というところは、全員が同じ目標を持って集まっているのですが、目的がそれぞれ違います。

目的の違いは大きく2つです。それは、決めることと、決めさせないことです。

与党議員は、さっさと物事を決めて政策を実現させようとします。逆に、野党議員は与党議員に決めさせないように抵抗します。

■野党議員は与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事

先月の衆議院予算委員会で、桜田大臣が3分遅刻して野党の反発で5時間審議が止まったという場面がありました。普通の会社などで考えれば、会議で3分間遅刻したので5時間会議を中断したら「何やってるんだ」「仕事しろ」ということになるでしょう。実は、そうなるのは同じように仕事を遂行しようとする人しかいないという前提があるときだけです。映画や小説でも、同じ会社で働く人同士が気に入らない提案を潰すために「3分の遅刻で5時間中断」と同じようなことをする場面がでてくることがあります。国会もまったく同じです。

国会が会社と大きく違うのは、オフィシャルに多数派の行動を邪魔する存在がいることです。野党議員は、与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事なのです。決めさせないという観点から言えば、大臣の3分の遅刻で5時間審議をストップさせるのは当然の権利です。権利というか、むしろ義務であるかもしれません。「大臣が3分遅刻されたので審議を急いで進めましょう」と毎回野党議員が言ってしまったら、野党の仕事は成り立たない場面もあるのです。

このような理屈で、3分の遅刻で5時間審議がストップするような「国会しぐさ」が生まれるのだと思います。

同じ理屈で、与党の強行採決も義務になる場面はあります。与野党どちらの行動にも、たいてい大義があります。どちらを良しとするかは、各々が自分の状況に応じて決めればよいです。