第200回国会(臨時会)」カテゴリーアーカイブ

2019年、秋の臨時国会閉幕


2019年12月15日現在。

秋の臨時国会は先週9日に終了しました。

政府が提出した法案は、17本中16本が成立しました。

法案成立率は94%と高いです。この数字から、野党が「桜を見る会」の問題を国会で追及したことは失敗だったのではないかという意見を見ました。そうかもしれませんが、内閣支持率は臨時国会前と比べて下がっているようです。全く効果がなかったわけではないのでしょう。

また、「法案成立率94%」と言っても分母が17です。この臨時国会での法案提出数は例年より少ないと言われています。「94%」は、解釈が難しい数字です。

閣僚の辞任と、桜を見る会の問題とに足を取られ、本命と思われていた憲法審査会の採決ができなかったという結果は、政府与党にとって満足のいくものではないと思われます。

来年の通常国会で、憲法審査会の審査が進むのかが見どころです。


第200回臨時国会、会期末間近


■政府提出の法案、条約の承認案は、ほぼ参議院で審議中

2019年12月1日現在。

10月4日に召集された臨時国会は、今月9日に閉会します。

今国会で審議されている内閣提出法案は17本で、11本がすでに衆参で審議を終えて成立しています。残り6本のうち、5本は衆議院を通過して参議院で審議中で、1本は衆議院で審議中です。ただ、最後の1本も委員会での審議は終わっています。すぐに、すべての法案が参議院で審議入りするはずです。

あとは、条約の承認を求める議案が2本あります。2本とも参議院で審議中です。

会期末までの一週間は主戦場が参議院になりそうです。


参議院で予算委員会開会要求でる


2019年11月24日現在。

11月22日に、参議院で立憲民主党などの野党が予算委員会開会要求を出しました。この開会要求は参議院規則の定める「委員の三分の一以上」を満たしているので、予算委員長は予算委員会を開かなければなりません。

ただ、この規則は予算委員会の開会しか保証していないので、野党が求める総理大臣出席の集中審議が行われるかどうかは不明です。委員会の議題は与野党の全会一致で決めるのが原則なので、与党の意向を無視して議題を決めることはできないでしょう。与党がこのままではまずいと思ったら、集中審議が行われるかもしれませんが、果たしてどうなるでしょうか。

野党は「今年の通常国会では、予算委員会の開会要求が出たのにも関わらず与党は予算委員会を開かなかった」と主張していますが、6月26日に参議院予算委員会が開かれています。

ただ、それは野党が求めていた集中審議ではありませんでした。それはいいのですが、会期末に必ず実施する後始末的な会議だったのはよくないでしょう。事実上予算委員会の開会要求は無視されたと言わざるをえません。

与党が今度はどう対応するのか注目です。


野党、久々の勝利


■英語民間試験導入延期へ

2019年11月4日現在。

先週11月1日に萩生田文部科学大臣が、2020年度の大学入学共通テストで予定されていた英語の民間試験の導入を見送る発表をしました。

英語民間試験の導入は、懸念の声もあり、今国会(200回国会(臨時会))では、野党から「大学入学共通テストで民間試験を使わない」と大学入試センター法に明記する法律改正案が提出されていました。

■文科相の進退問題との声も

英語民間試験導入の問題については、テレビ番組でこの件について萩生田文科相が出したコメントが「教育格差を容認するもの」として批判されていることと合わせて問題が大きくなりました。野党から大臣の進退問題という声も出てきたからです。

10月25日に菅原経済産業大臣が辞任したのに続いて、10月31日にも河合法務大臣が辞任していたため、10月31日から国会審議は止まっていました。31日に野党は審議復帰の条件として英語民間試験導入の延期や予算委員会の集中審議(総理大臣が出席するテレビ中継ありの審議)の実施を求めていました。

この時点で首相官邸が取れる選択肢は論理的に4つありました。

英語民間試験導入問題の解決策

1は野党の要求に何も答えていないので、無理そうです。4は譲歩しすぎで、政府与党にうまみがないです。そして、2をするほど首相官邸が英語民間試験導入に思い入れがないので、3の文科相は辞任せず、英語民間試験を延期することにしたのだと思います。11月2日付け読売朝刊によれば、首相官邸は英語民間試験導入に関する問題を「事実上放置してきた」とあり、興味がないから文科省にまかせてきたとの見方があるようです。

■国会を止めれば政策を変えられるという実例

結局、この問題は民間試験導入延期と、11月6日と8日に衆議院と参議院で予算委員会の集中審議が行われることで与野党が合意し、国会は正常化に向かっています。

大臣が公職選挙法違反の疑いで2人連続で辞任していることと、文科相の失言により政策変更が実現しました。野党は大臣の失言を批判して国会を止めることで、政策変更を迫れるということです。

こうなると、失言を追及して国会審議を止めるのは、野党にとって最善の行動ということになりそうです。いいか悪いかは別として、そういうルールになっているということです。


予算案がなくても予算委員会は開ける


■臨時国会3週目

2019年10月20日現在。

臨時国会3週目は参議院予算委員会から始まりました。猛威をふるった台風19号通過直後でもあったため、10月15日の予算委員会の冒頭は台風関連の質問から始まりました。

予算委員会と言うと、文字通り国のお金の使いみちを決める予算を決めるための委員会です。ですが、今国会では補正予算案は提出されておらず、決めるべき予算案はありません。では、予算委員会は何を話し合うために開かれたのでしょうか。

■今回の予算委員会の議題は「予算の執行状況について」

今回衆議院と参議院で行われた予算委員会の議題は、「予算の執行状況について」というものでした。予算委員会として、予算がちゃんと執行されているか、新たに予算をつけなければならない案件はあるか、などを政府に確認するための話し合いということですね。

とはいえ、「予算の執行状況の調査」というのは名目に過ぎないでしょう。実際のところは、与野党の議員に、内閣改造後の安倍内閣の閣僚に質問する機会を与える、というのが今回の予算委員会の目的でしょう。

ですから、総理大臣と特定の大臣だけが出席する集中審議ではなく、全閣僚が出席する基本的質疑が行われたのだと思います。

予算委員会での質疑は、予算案がなくともやろうと思えばやれるということがわかります。唯一必要なのは、与野党の合意のみです。


野党はなぜ大島衆議院議長の言葉に反発したか


■衆議院本会議の開始時間が遅れる

2019年10月14日現在。

先週10月7日に、衆議院で安倍総理大臣の所信表明演説に対する各会派の代表質問が始まりました。代表質問は国会冒頭の恒例行事ですが、今国会では衆議院でいきなり与野党が揉めました。そのため、衆議院本会議の開始時間が1時間30分遅れたとのことです。

揉めた原因は、大島衆議院議長が憲法改正に必要な国民投票法改正案について、「臨時国会で与野党で話し合って合意点を見つけてほしい」という発言をしたことに野党が反発したためでした。

■議長の言葉の何が問題か

衆議院議長が「話し合って合意してほしい」というのが、なんでいけないのでしょうか。ごく当たり前のことを言っていて、反発しようがない気がする人もいるでしょう。

野党の言い分はこうです。「中立公正な議長が、特定の法案について、時期を区切って『合意を期待する』などと言うのは越権行為だ」。これだけでは意味がわかりませんね。

「中立公正な議長」はいいでしょう。議長が与野党どちらかに肩入れしていたら困ります。

「特定の法案について」の部分もいいでしょう。議長は中立公正なのですから、すべての法案を平等に扱うべきで、特定の法案に言及しないほうが良さそうです。

「時期を区切って『合意を期待する』などと言う」。この部分が野党にとっての大問題です。特に、「時期を区切って」というところです。

■野党は「切実に」審議を進めたくない

現状、与野党で法案に対して賛成・反対の投票をすると、必ず与党の意見が通ります。与党が賛成なら賛成、与党が反対なら反対となります。選挙の結果、与党の議席のほうが、野党の議席よりも多いからです。

この不利な状態で野党ができることは、あまり多くはありません。できることといえば、国会の場で政府の動きを制限するような答弁を引き出す良い質問をすること、与党と交渉して法案に修正などを加えて自分たちの意見が残るようにすること、そして審議を遅らせて法案を採決しないようにすることです。

審議を国会が終わるまで引き延ばせば、法案は「絶対」に可決しません。採決されないからです。採決されれば必ず与党の投票で可決してしまうという状態に対抗できる、この「絶対」は、野党にとって貴重な武器です。だから、とにかく審議を遅らせようという動きを野党はするのです。

議長の「臨時国会で与野党で話し合って合意点を見つけてほしい」という言葉は、野党にとって、「与党の思惑通りに国会のスケジュールを調整してほしい」という要望に聞こえてしまったのです。


「官房長官が10月4日の臨時国会召集を議院運営委員会理事会に伝えた」を解説する


■9月26日、菅官房長官が臨時国会の召集日を伝達

2019年9月29日現在。

報道によると、9月26日に菅官房長官が衆参両院の議院運営委員会理事会に出席し、10月4日に臨時国会を召集することを伝えたとのことです。これについて少し解説します。

■国会の召集とは

「菅官房長官が国会の召集を伝えた」というのはどういうことかと言うと、「10月4日から国会が始まりますよ」と国会に連絡した、ということです。「国会の召集」とは国会議員を集めて国会の活動を始めることです。

国会が始まるというのはどういうことでしょうか。実は、国会は基本的に期間限定でフル活動する役所だからです。国会は常に活動しているのではなく、あらかじめ決められた期間だけ活動します。

■官房長官が召集を伝えるのは何故か

なぜ国会が始まることを「官房長官」が連絡したのでしょうか。官房長官は『国会』『内閣』『裁判所』の三権分立で言うと、『内閣』側の人です。国会が始まることを国会が決められないのか、と思われるかもしれません。その通り、決められません。

国会の始まり、つまり国会の召集は天皇の国事行為であり、内閣の助言と承認により行われます。召集時期を決められるのは国会ではなく内閣なのです。

ちなみに、官房長官が臨時国会の召集日を伝達した翌日、9月27日付の官報に「令和元年十月四日に、国会の臨時会を東京に召集する詔書」が掲載されています。これは、天皇の名のもとで、10月4日から臨時国会を始めることを宣言したことを示します。

■議院運営委員会理事会とは

官房長官が出席した衆議院や参議院の「議院運営委員会理事会」とは何でしょうか。「議院運営委員会」は、その名の通り国会の運営について話し合う委員会です。主に国会の最高意思決定機関である本会議の議題と議事進行について話し合っています。そして、「理事会」とは委員の中から選ばれた理事が、委員会の議事進行を委員長とともに話し合う会議です。

議院運営委員会理事会は、国会の運営を担う委員会の理事会なので、国会の召集日を伝える会議としてふさわしいと言えるでしょう。