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中選挙区制と小選挙区制


2012年12月11日現在。

「決められない政治」に代表されるような、今日の政治停滞の原因は現行の小選挙区比例代表並立制にあるとして、中選挙区制を復活させようとする意見があります。ここで、小選挙区と中選挙区の性質をまとめてみます。

中選挙区制では1つ選挙区で3~5人が当選するようになっています。1つの選挙区から複数の候補者が当選するということは、同じ政党の候補者同士が争う可能性を生みます。政党が多くの議席を取ろうとするなら、1つの選挙区になるべく多くの候補者を出馬させるからです。

他党だけでなく同じ政党の候補者とも戦わなくてはならなくなることで、自分が確実に当選するためには所属政党からの支援だけでなく、独自に選挙資金を集めたりして選挙戦を戦わなくてはならなくなります。そのため、政治家個人に対する献金を受け取る政治団体が必要になります。当然、お金もかなりかかります。

また、個人だけでは限界があるため、政党内の政治グループからも支援を受ける必要があります。政治グループは、グループのリーダーを党首、そして首相にするため、自らのグループの議員をより多く必要とします。確実に当選したい候補者と、自らの勢力を増やしたい政治グループの思惑が合致しているのです。この政治グループが、いわゆる派閥です。派閥同士の対立が激化し、1つの選挙区で同じ政党なのにも関わらず、違う派閥に属しているがために、ものすごいお金をかけて戦うようにもなりました。派閥の影響力拡大と、お金がかかることが、中選挙区の特徴とされています。

中選挙区の特徴には他に、投票した候補者が落選してしまう死に票が少なく、多様な意見の反映が期待されるので、急激な議席の変化が起こりにくいことが、よく挙げられます。

小選挙区制は、1つの選挙区で1人が当選するため、政党ごとに1人だけ候補者を立てることになります。選挙で戦うのはすべて他党なので、所属党からの支援と自分の政治団体だけで戦えば足りることになります。党が全面的にバックアップするので、あえて派閥に頼る必要がなくなります。小選挙区制に変えたときに、企業献金を個人でなく党でのみ受け取るようにしたり、政党交付金と呼ばれる国費による政党助成制度ができたりしたことで、派閥から政党(幹事長)に候補者支援の主体が移っていったことも、派閥や派閥的な政治グループの影響力の低下を促しました。実際、与党民主党には自民党の派閥ほど統制がとれた政治グループが存在していないと言われています。派閥の影響力の低下と、個人で集めるお金が少なくなることが、小選挙区の特徴とされています。

小選挙区の特徴には他に、死に票が多くなることで、多様な意見が収斂されるため、二大政党化を促進し、急激な議席の変化を促すことが、よく挙げられます。