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【2019通常国会】2019年度予算案の衆議院での採決で、なぜ深夜国会になったか


■2019年度予算案の衆議院本会議での採決は、3月2日の未明に

2019年度予算案は、2019年3月2日の午前0時40分頃に衆議院本会議で採決され可決しました。なぜ、午前0時をまわってしまったのでしょうか。

■もともとの予定

もともとの予定はこうです。

まず、衆議院予算委員会を3月1日の午前9時から開始して、3時間程度審議し、お昼までに採決します。

そして、午後から予算案と同時に採決する必要がある、税制改正法案を総務委員会と財務金融委員会で採決します。

これらの委員会の審議は1時間半くらいかかります。

このあと、本会議で2019年度予算案を採決します。

本会議での予算案の採決までは1時間半程度かかります。この場合は、3月1日の夕方くらいには予算案を採決できます。

■実際の動き—根本厚生労働大臣の不信任決議案提出で、午前中の予算委員会断念

実際はこうです。

まず、予算委員会が3月1日の午前9時から開始できませんでした。理由は、予算委員会の開始直前の午前8時40分に立憲民主党などの野党が根本厚生労働大臣の不信任決議案を提出したためです。

この日の予算委員会は全大臣が出席する締めくくり質疑が行われる予定になっていました。不信任決議案を提出した野党としては、信任に値しない大臣が出席する予算委員会の審議に応じられないということで、予算委員会の理事会を欠席しました。立憲民主党などが欠席するなか開かれた予算委員会の理事会で、午前9時から審議を行うことを断念し、根本大臣の不信任決議案が採決されてから審議を行うことが決まりました。与党が譲歩したわけです。

「それなら午前中に不信任決議案を採決すればいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、そうはいきません。根本大臣の不信任決議案の採決は本会議で行う必要があります。本会議の議事日程は、あらかじめ決めておく必要があるため、急に開くことは難しいです。3月1日は、すでに午後1時から本会議を開くことになっていたため、根本大臣の不信任決議案は午後1時以降にならなければ採決されないことになりました。これで、午前中を予算審議に使うことができなくなりました。もちろん、立憲民主党などの不信任決議案提出は、この予算委員会の開始を午後に遅らせるのが狙いです。

■午後、本会議開会

午後1時に本会議が開会し、根本厚生労働大臣不信任決議案を上程する動議が出され、不信任決議案の審議が始まりました。本会議で審議する案件は議事日程と同じくあらかじめ決められていて、決められた議事日程通りに会議を進めていかなくてはなりません。ですから、議事日程が決まったあとに出された議案を本会議で審議するには、議事日程を追加する動議を出す必要があるのです。

根本厚生労働大臣の不信任決議案ですが、採決が終わったのは午後4時過ぎです。なぜそんなに時間がかかったのかというと、採決に先立って行われた討論で、立憲民主党の小川代議士が持ち時間を大幅にこえて2時間近く演説したためです。不信任決議案の討論を申し出たのは小川代議士を含めて6人で、討論は全体で2時間36分でした。その後採決は記名投票という議員ひとりひとりが演壇まで歩いて投票するスタイルのものであるため、20分ほどかかっています。これが、不信任決議案に3時間かかった理由です。不信任決議案は否決され、本会議は休憩しました。休憩したのは、予算委員会を開くためです。

■午後5時、予算委員会始まる

本会議休憩後、午後5時から衆議院予算委員会が開かれました。予算委員会は総理大臣とすべての大臣が出席する締めくくり質疑、討論、採決が行われ、可決しました。この審議に3時間半程度かかりました。ここまでで、午後8時半です。このあと午後8時40分ごろからから総務委員会と財務金融委員会が開かれ、税制改正法案が審議されました。この2委員会が終わったのが午後10時ごろです。8時半から始業の会社なら深夜残業に突入する時間です。

■午後10時50分、本会議再開

午後10時50分ごろから本会議が再開し、予算案を上程する動議が出されました。やっと本会議で予算案が審議されます。この審議が1時間をこえても終わりませんでした。本会議中に午後12時を迎えてしまうことが明らかになったため、議長は午後11時50分ごろに残りの議事日程を20分後の3月2日午前0時10分から行う延会を宣告しました。

日付が変わって3月2日午前0時10分ごろ予算案の審議が本会議で再開され、午前0時40分ごろ採決・可決されました。

■びっしりの予定

ここまで書いていて実感しましたが、本会議が始まった3月1日の午後1時以降の予定はびっしりで、会議と会議の間は30分程度しか時間がありません。国会議員には体力も必要だということですね。

もともと予算案の本会議での採決までに、会議と会議の間を含めて8時間程度かかる関係上、不信任決議案を採決予定日の当日に提出して2時間の演説をした時点で、6時間分を上乗せすることが確定していました。

■深夜国会になった責任は与野党ともにある

結局、深夜国会は与野党合作です。政府与党は年度内自然成立を断念するか、もっと早く国会を召集して予算審議を始めれば深夜国会を避けられました。立憲民主党はそう主張しているようです。しかし、野党も3月1日採決を受け入れるか、根本厚生労働大臣の不信任決議案を2月28日より前に提出すれば、深夜国会を避けられたのです。根本厚生労働大臣の不信任決議案を3月1日の朝提出すべき合理的な理由は、採決を遅らせる以外に見いだせません。

すべてお互い様ですし、どちらも正しいです。どちらが良いかは、個々人で決めるしかありません。与党も野党も明らかなルール違反はありません。


【2019通常国会】予算審議第八週終了-2019年度予算成立


■2019年度予算成立

2019年4月1日現在。先週、3月27日の参議院本会議で2019年度予算案が可決し、2019年度予算案が成立しました。

■締めくくり質疑から本会議採決までの流れ

3月27日は、まず参議院予算委員会で2019年度予算案の「締めくくり質疑」が行われました。締めくくり質疑は予算審議の最後に行う質疑で、総理大臣をはじめ、すべての閣僚が出席します。普段の質疑では、答弁を要求されている大臣しか委員会に出席しないので、政府にとっては大変な会議です。しかし、予算が成立しなければ新しい事業は何ひとつできないので、背に腹はかえられません。

締めくくり質疑が終わると、つぎに「討論」が行われます。討論と言っても、予算委員同士で議論することはありません。予算委員のうち各会派を代表した議員が予算案について賛成/反対とその理由を順番に述べるだけです。

討論が終局すると、ただちに採決します。委員会での採決は、本決まりではなく、あくまで「委員会審査で可決すべき/否決すべきと決した」ものにすぎません。最終決定は、全議員が一堂に会する本会議の採決で行われます。

2019年度予算案は予算委員会で採決した当日の本会議に「緊急上程」され、本会議の議題にのぼりました。本会議では、委員長による審議経過の報告と「討論」(委員会の討論と同じ形式です)が行われ、採決されました。

参議院では深夜国会になることもなく、日中に採決されました。予算は年度末を前に余裕をもって成立していますので、今回の予算審議は政府与党の思惑通り進んだと言えるでしょう。 Screenshot


【2019通常国会】予算審議第七週終了


■2019年度予算案は3月27日成立か?

2019年3月24日現在。2019年度予算審議は大詰めです。与野党は25日の参議院予算委員会での集中審議に続き、26日の一般質疑、27日の締めくくり質疑の開催に合意しています。報道によると、与党は当初26日の締めくくり質疑を提案したそうですが、野党に配慮し27日に延ばしたとのことです。

予算委員会では、締めくくり質疑が行われた日に、予算案について討論と採決が行われます。また、予算委員会で予算案を採決した場合は、その日のうちに本会議で採決されることが多いです。

■緊急上程

さて、本会議を開く日時と議題(案件)は、事前に全議員に周知し官報に掲載するルールになっています。このとき、まだ委員会で採決されていない案件を本会議の議題にすることはできません。例えば、2019年度予算案は事前に周知される27日の参議院本会議の日程に日程に上がらないことになります。それでは早く本会議で採決して予算案を成立させたい与党は困ってしまいます。

そこで「緊急上程」という技が使われます。本会議の開会後、議員から「議案上程に関する緊急動議」が提出され、本会議中に議題を追加して審議を進めるのです。

動議とは予定された議案以外の案件を議題にすることです。この場合は、「いま本会議で、この議案について審議することを望む」というのが動議です。

本会議中に議題を追加することで、本会議当日に採決された議案を本会議で採決することができます。「緊急上程」という言葉が出てきたら、「その日のうちに委員会の採決と本会議の採決をやるんだな」と思えば間違いないです。

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【2019通常国会】予算審議第六週終了


■参議院の予算審議も残りわずか

2019年3月17日現在。予算審議は第六週目を終えました。すでに参議院では予算案の採決の前提となる中央公聴会を終えています。残るは、衆議院での分科会に相当する委嘱審査と、締めくくり質疑、そして討論・採決です。

来週の予定は、18日の集中審議、19、20日の委嘱審査まで決まっています。自然成立の期限もありますし、25日週での採決・成立は確実な見通しです。

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【2019通常国会】予算審議第五週終了


■3月11日の予算委員会はなし?

2019年3月10日現在。2019年度予算案の参議院での審議が始まって一週間たちました。この間、不正統計に関する特別委員会の樋口委員長が立憲民主党の福山幹事長の質問にうまく答えられず審議が中断したり、横畠内閣法制局長官が野党議員の質問姿勢を皮肉ったとして参議院予算委員長に厳重注意されたりしました。

参議院インターネット審議中継によると、明日11日は予算委員会を開く予定になっていないようです。2月4日から始まった予算審議で、初めて予算委員会がない平日になります。

気づけば、ここまでずっと平日は予算委員会をやっていました。とくに野党と交渉しなくても連日審議できるのが、予算委員会や特別委員会の強みです。他の委員会だと毎日どころか、定例日外に開くだけで大騒動になったりします。

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【2019通常国会】参議院の予算審議、中央公聴会の日程まで決まる


■参議院の予算審議開始

2019年3月5日現在。2019年度予算案の参議院での審議が昨日4日から開始しています。本日は2日目の基本的質疑でした。基本的質疑とは、予算審議の最初に行われる、総理大臣とすべての大臣が出席する審議です。通常の予算審議である一般質疑では、財務大臣と答弁を要求された大臣だけが予算委員会に出席するのですが、基本的質疑では答弁を要求されていない大臣も全員出席する慣例になっています。ですので、基本的質疑は特別な意味があります。

参議院の予算審議の日程は、12日に採決の前提である中央公聴会を実施するところまで与野党合意しています。衆議院では、中央公聴会が実施されたあと、3日で採決されました。参議院でもそうなるとすると、15日に採決となります。そうなると、参議院での採決までの予算委員会実施回数が10回となるので、衆議院の7割くらいの審議時間になってしまうので、もうちょっとやるのではないでしょうか。そうでないと、超与党ペースで審議が進んだことになります。

2017年の予算審議で、参議院で中央公聴会を実施したあと予算委員会で質疑を8日行って自然成立ギリギリで採決した例があるため、12日に中央公聴会を実施することで、すぐ採決するとは言えません。

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【2019通常国会】予算審議第四週終了


■2019年度予算案の審議は参議院へ

2019年3月3日現在。2019年度予算案は衆議院を通過し、明日4日から参議院予算委員会で基本的質疑が行われる予定です。いまのところ、5日の基本的質疑まで与野党合意しているようです。

2月は予算案の年度内成立を確実にするために、すべての平日で予算委員会が開かれました。参議院では、そこまでしなくても大丈夫です。衆議院と同じく15回の予算委員会で採決できるとした場合、すべての平日で審議できれば3月18日に予算案は参議院で可決・成立します。年度末まで2週間弱の余裕があります。

しかし、実際は与野党の駆け引きや閣僚のスケジュールの都合、年度内に成立させないといけない日切れ法案の審議などで予算委員会を開かない平日があると思います。

とはいえ、自然成立する前には参議院で予算案を採決するはずです。なぜなら、予算案が参議院の議決をまたずに自然成立してしまっては、参議院の存在価値が低くなってしまうからです。ですから、参議院の予算審議は、最大限引っ張っても3月29日には終わると思います。

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図解 自然成立の30日の数え方


■2019年度予算案衆議院通過

2019年3月2日現在。2019年度予算案は、本日午前0時40分頃に衆議院本会議で採決され可決しました。これで、憲法の規定により3月31日までに参議院で2019年度予算案を採決できなくても、衆議院での議決の通り予算案が可決成立することが確定しました。

自然成立の根拠となる条文は、以下のようになっています。

第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 ○2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

『日本国憲法』

30日の数え方ですが、添付した3月のカレンダーの画像に記載した「自然成立進行度」を見ていただければ、30日のカウント方法がわかります。予算案は衆議院で可決されたその日のうちに参議院に送付されますので、衆議院で予算案が可決された日に自然成立進行度は1加算され1/30になります。自然成立進行度は1日経過するごとに1ずつ加算されます。自然成立進行度が30/30になった時点で自然成立の要件が満たされ、2019年度予算案が自然成立することになります。

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【2019通常国会】2月28日採決?


■与党、再び2月28日採決を提案

2019年2月27日現在。衆議院の2019年度予算案の審議は、分科会に入りました。昨日26日には採決の前提となる中央公聴会を済ませており、予算案は採決の日を待つばかりとなっています。

昨日あたりから、与党が先週断念したと思われていた明日28日の予算案の採決を再び提案していると報道されています。28日採決だと2月8日の2019年度予算案の実質審議入から14回の予算委員会で採決となり、総理大臣の予算委員会の出席を基本的質疑・締めくくり質疑・集中審議に限定するようになった2000年以降で最速1位タイ記録になります。その他の最速記録は2000年(小渕内閣)と2014年(安倍内閣)です。

昨年の予算審議では、厚生労働省の提出した労働関係のデータに不備があった問題で野党が反発していたところ、ほぼ確実に27日衆議院で採決される観測であったものを二階幹事長が主導して28日に採決を延期するという場面がありました。

今年はどうなるのでしょうか。

ちなみに、最速1位タイである2014年度予算の審議を行った衆議院予算委員会の委員長は二階さんでした。

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【2019通常国会】予算審議第三週終了


■2月中の予算審議予定が出揃う

2019年2月24日現在。現在までの報道によると、今月は4日以降のすべての平日で予算審議が行われることになるようです。25日は集中審議、26日は中央公聴会、27日は分科会、そして28日にまた集中審議となっています。

■採決の引き延ばしのための不信任決議案だが、安易には出せない

あとは、3月1日に予算案の採決が行われるかどうかが焦点になります。3月1日の予算案の衆議院通過を防ぐために、審議を強制的に中断することができる不信任案・解任決議案を立て続けに提出するのではないかという見方もあります。提出する可能性があるものとしては、厚生労働大臣の不信任決議案、予算委員長の解任決議案、内閣不信任決議案などが考えられます。

ただ、不信任決議案や解任決議案は無制限に出せるわけではありません。対象となる相手に対して、ひとつの国会の会期で一度しか出すことができません。例えば、3月1日に根本厚生労働大臣の不信任案を提出して否決された場合、根本大臣が6月26日の今国会の会期末までに交代しなかったら、今国会では二度と根本大臣の不信任決議案を提出することはできないのです。

ですから、野党が根本大臣の不信任決議案の提出を3月1日付近にぶつけてきた場合は、それなりの覚悟をもって不信任決議案を提出したということになります。不信任決議案を連発して3月4日以降に予算案の衆議院通過を遅らせたとしても、3月31日までに参議院で予算案の採決が済めば予算案は年内に成立します。そうなった場合、不信任決議案の提出は完全に無駄になります。

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