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2019年度補正予算審議開始へ


■2019年度補正予算、1月28日衆議院通過の見込み

 2020年1月26日現在。

 先週、1月20日に通常国会が召集されました。

 通常国会は3月まで予算審議に全力を注ぎます。今回は、2019年度補正予算案の審議もあります。補正予算案の審議のあと、2020年度予算案の審議に入ります。

 報道によると、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長は1月28日に補正予算案の採決を衆議院で行うことで合意したそうです。例年、補正予算の審議は衆議院2日、参議院2日なので、与党にとって悪いペースではありません。召集日も昨年より一週間ほど前倒しになっており、野党に集中審議をプレゼントする余裕もあるようです。

20200126予算審議


あなたも知ってる国会の基本中の基本:もっと楽しく政治の話をするための国会のルール1


 「通常国会」「臨時国会」、政治関連のニュースでよく出てくる国会に関する言葉です。当たり前のように出てきますが、たとえば「臨時っていうけど、毎年やってない?」と思ったことはないでしょうか。ここでは、国会の基本中の基本を確認していきましょう。

国会がないと政府は新しい活動ができない

 日本の国家権力は、大きく3つに分類されます。立法、行政、司法です。それぞれ、立法が国会、行政が政府、司法が裁判所に対応します。国会を中心にみると、国会が決めた予算や法律の範囲内で政府が政策を実行し、政府の実行した政策が法律の範囲内かどうかを裁判所がチェックする、という関係になっています。これが、いわゆる三権分立です。

三権分立
三権分立

 分立といってはいますが、国会と政府は融合している部分があります。ご存じのとおり、政府の中枢機関である内閣のトップは内閣総理大臣です。この総理大臣は国会議員のなかから、議員同士による選挙で選出される決まりになっています。そして、内閣の構成員である大臣の過半数は国会議員でなければなりません。また、政府の役所には、副大臣や政務官などという立場で、国会議員が多数入って仕事しています。このように、国会議員は政府機関の幹部にもなるのです。

国会と政府の融合
国会と政府の融合

 国会のおもな仕事は、法律を決めること、予算を決めること、条約の承認を決めること、そして、内閣総理大臣を選出することが挙げられます。これらの仕事は、いずれも政府の活動の根拠になるものです。政府が何か新しいことをしようとしたときに、法律の根拠がなければ権力をふるえません。予算がなければ役所は新しく公務員を雇ったり、民間企業と取引したりすることもできません。総理大臣が決まらなければ、内閣が成立せず、役所を指揮することができません。原則として、国会が決めないと政府は新しい活動を何もできないのです。

内閣の息の根をとめられる「内閣不信任決議」

 国会は衆議院と参議院の二院で構成され、その中心的な構成員である議員は日本国民が選挙で選びます。

 この2つの議院にはいくつかの違いがあります。衆議院議員の任期は4年で、参議院議員の任期は6年となっています。さらに、衆議院には参議院にはない「解散」というものがあります。解散とは、内閣総理大臣がすべての衆議院議員を任期の途中でクビにして、新しい議員を選ぶ選挙を行うことです。解散があることで、衆議院議員が4年の任期をまっとうすることはほとんどありません。

 衆議院には解散があるかわりに、参議院にはない権限をいくつか持っています。まずは、内閣不信任決議権です。政府の中枢である内閣に対して「信任しない」という決議を衆議院がしたとき、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職して政権を失うかのどちらかを選ばなければなりません。たとえ衆議院を解散したとしても、選挙に勝てなければ政権を失うことになります。政府の命運を握っているという意味で、内閣不信任決議権は非常に強い権限です。

 不信任案を可決された総理大臣が選挙に勝ったとしても、選挙前の内閣は総辞職します。この場合、選挙前と同じ国会議員が総理大臣に指名されて、新しい内閣を組織することになります。つまり、衆議院の信任を失った内閣は、何をしても総辞職する運命をくつがえすことができません。このように、衆議院の支持を失えば内閣が倒れる制度を、議院内閣制と呼びます。

衆議院の議決だけで成立させられる場合もある

 次が衆議院の優越です。国会の議決は、衆議院と参議院が一致して議決したときに有効となるのが原則です。ある法案について衆議院が可決し、参議院も可決すると成立します。もし、衆議院と参議院の議決が一致しなかった場合は、法案は成立しません。ただし、法案については衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、衆議院の3分の2以上の賛成で再び可決した場合はその時点で成立します。

 さらに、予算案の議決や条約の承認の議決は、衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、両院協議会という場で話し合います。両院協議会でも衆参で折り合いがつかないときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。内閣総理大臣の指名の議決も、衆参の指名が不一致で両院協議会の話し合いも不調に終わった場合は、衆議院が指名した国会議員が内閣総理大臣になります。このように、衆議院と参議院の議決が異なったときは、条件付きで衆議院の議決が優先されます。

 ここまで説明したのは、衆議院と参議院の議決が出揃ったあとの取り決めです。もし、参議院が議決をしなかった場合はどうなるでしょうか。参議院が議案を議決しないで放っておいた場合もちゃんと想定されています。衆議院で議案を可決後、憲法で決められた日数経過しても参議院が議決をしない場合は、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。これを「自然成立」と呼びます。

 自然成立の日数は、議案によって違います。内閣総理大臣の指名が衆議院の議決から10日、予算案と条約の承認が30日になっています。法案については、衆議院の議決から60日以内に参議院が議決しないときに、衆議院が「参議院は法案を否決したとみなす」という議決をすることができます。これを「みなし否決」と呼びます。衆議院の議決から何日経過したときに、どの議案を自然成立、またはみなし否決できるかをカレンダーで表すと次のようになります。

自然成立とみなし否決の日程感
自然成立とみなし否決の日程感

 国会について考えるときは日付の感覚が非常に重要です。たとえば、自然成立とみなし否決の日数をカレンダーの面積でくらべてみてください。みなし否決の条件を満たすには、自然成立と比較してだいぶ時間がかかることがわかります。

 すぐあとでみていきますが、国会は限られた期間しか活動しません。活動期間はこのカレンダーの1.5倍から2.5倍くらいです。カレンダーでみれば、みなし否決からの衆議院で再可決の技はそうそう使えないことが実感できると思います。

 法案は衆議院と参議院どちらから審議を始めても構いません。ただし、予算案に関しては衆議院の議決が優先される関係上、必ず衆議院から審議を始めます。これを「予算先議権」と呼びます。

 なぜ、予算先議権があるのでしょうか。衆議院の優越に関する規則は、衆議院ですでに議案が議決されていることが前提です。参議院から予算審議を始めた場合、参院で予算をいつまでもいつまでも審議して議決せずに、衆議院で審議できない状況になってしまいます。そのような状態を避けるには、衆議院の予算先議権が必要なのです。

国会は期間限定で活動する

 国会は他の役所のように一年をとおして開いている機関ではありません。一定の期間だけ活動します。国会が開かれている期間のことを「会期」と呼びます。国会は会期中のみ予算案や法案などを議決することができます。逆にいうと、会期中でなければ新しい法案を成立させることはできません。

 国会は憲法の規定により、一年に一回は必ず開くことになっています。国会を開くことを「召集」と呼びます。天皇の名のもとに国会議員を集めるからです。一年に一回必ず召集する国会を「通常国会」と呼びます。通常国会は「常会」「通常会」などとも呼ばれます。

 通常国会は国会法により、1月中に召集することと、会期を150日間とすることが定められています。150日たっても審議が終わらない場合は、国会が議決すれば一回だけ会期を延長することができます。

 さて、通常国会が会期を終えたあとに、新たに予算をつけたり法案を成立させたりしたい場合はどうすればいいでしょうか。来年の通常国会まで待たなければならないのでしょうか。

 通常国会まで待てないときは、臨時に国会を召集することができます。これを「臨時国会」「臨時会」と呼びます。臨時国会の会期は国会の議決で定めます。何日でもいいのですが、60日程度になることが多いです。また、延長は二回までできます。

 また、衆議院議員を投票で選ぶ総選挙を行った直後に、必ず召集する国会もあります。「特別国会」「特別会」と呼びます。なぜ、総選挙後に必ず召集しなければならないかというと、総選挙後に選挙前の内閣が総辞職するからです。すぐに新たな総理大臣を選ぶための国会です。ちなみに、選挙前と同じ国会議員が総理大臣になった場合は、内閣のリビジョン番号がアップします。それまで「○○内閣」だったとしたら、総選挙後は「第二次○○内閣」などと呼ばれるようになります。

 特別国会の会期と延長については臨時国会と同じルールが適用されます。

国会の種類
国会の種類

審議はおもに委員会で行われる

 国会にはおもに2種類の会議があります。全議員が集まる「本会議」と、何十人にかずつ議員が集まる「委員会」です。

 本会議は全議員が集まる、議院の意思を決定する会議です。本会議で議決されたことが、その議院の議決になります。すべての議案は、本会議で議決されてはじめて院議になります。いままで出てきた「国会の議決」というのは、本会議で採決し可決されたものという意味です。

 一方の委員会はテーマや分野ごとに設置されます。テレビ中継が入る「予算委員会」が有名です。国会議員はひとりひとり所属する委員会が割り当てられます。委員数は委員会によって違いますが、20人から40人くらいが定員になっています。

 国会に提出された議案は、内容に応じた委員会に付託され、審議を始めます。委員会で審議が終わったら、本会議で委員会の審議結果を聞いて採決する、という流れになります。委員会でほとんどの審議を行うこの制度を、「委員会中心主義」と呼びます。

 ここまで、国会をいわば外からながめて、国会自体がどういう能力を持っているか、国会自体にどのようなきまりがあるかを説明をしました。次からは、いよいよ国会のなかで何が行われているかについてみていきたいと思います。


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