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2021年の通常国会のスケジュール予想


 ※2021年1月5日現在で情勢が変わっており、新しい記事 で新しく予想しています。

 2020年12月13日現在。

 来年の通常国会の召集日は1月18日月曜日になる見通しです。1月18日が召集日となると、2020年度予算の第三次補正予算案の成立までは以下のようなスケジュールになります。

2021年通常国会予想
2021年通常国会予想

 このカレンダーの前提は以下のとおりです。

  1. 施政方針演説から衆議院の代表質問まで1日あける
  2. 補正予算案は召集前に閣議決定し、召集日に提出済み
  3. 補正予算案の審議は2日ずつで、集中審議などが間になく一気に参議院の審議まで実施する。

 この前提については 予算審議を予想しよう! で解説しています。

 こうみると、来年度予算案の衆議院での審議開始は、最速で2月1日からになりそうです。

 2月末までスケジュールを引いてみるとこうなります。

2021年通常国会予想
2021年通常国会予想

 衆議院通過まで予算委員会を16回開くと仮定し、連日審議した場合に予算案は2月26日衆議院で採決となります。政府・与党の予算案の衆議院通過のタイムリミットは3月2日で、営業日にして2日の余裕があります。ただし、予算委員会を連日開けるかどうかは、総理大臣や財務大臣などのスケジュールに左右されます。たとえば、国際会議などで大臣が出席できない日は開けません。

 野党としてはこの間に世論を盛り上げ、与党に予算審議の回数を延ばさせたり、審議拒否して与党に国会を止めさせたりして衆議院通過の日を3月3日以降にするようにしなければなりません。


臨時国会閉会:第203回国会


 2020年12月6日現在。昨日5日で今年の臨時国会が閉会しました。

 野党から会期延長要求も出ていたようですが、与党は政府が提出した議案がほぼすべて成立したことなどを理由に受け入れませんでした。

 現在の国会の構成では与党が決めたとおりに物事が決まります。結局、野党の要求が通るのは、与党が野党の要求を実行すると決めたときのみです。野党は、与党の考えを変えさせるために世論を盛り上げることしかできません。

 つまり、野党は学術会議の問題やコロナ関連の政府の政策、「桜を見る会」関連の話題などについて、世論の盛り上げに失敗し、与党に会期延長を考えさせるほどのインパクトを与えることはできなかったのです。

 次の国会は、来年1月に召集される通常国会の見込みです。通常国会は来年度予算案の審議を3月までやります。来年度予算案の前に、今年度の第三次補正予算案の審議もある見通しです。来年度予算案が3月末までに成立するかが、通常国会の第一のポイントになります。

 ところで、毎週国会の法案審議に関わるスケジュールを手書きしていて気づいたことがあります。衆議院で何本か委員会審査を省略して可決した法案がありました。いずれも衆議院議員が発議した法案です。これらの法案は、参議院でも委員会審査を省略するのかなと思っていたのですが、すべて委員会で審議したあと本会議で採決していました。

 委員会審査を省略したということは基本的に争いが無い内容の法案のはずです。争いのないものでも、先議の院で委員会審査省略したものは後議の院では委員会審査を実施するような決まりがあるのかもしれません。

 今まで全法案の審議を書き出すようなことはしておらず、気づきませんでした。法案を書こうと思ったのは、今国会の政府提出法案が7本と少なかったためです。次の通常国会は7本程度では済まされないと思います。

 菅政権下の与党の本格的な国会対策が見られるのは来年になりそうです。

第203回臨時国会のスケジュール実績
第203回臨時国会のスケジュール実績

参議院で本格審議開始:第203回国会


 2020年11月29日現在。先週の国会では、参議院において衆議院から送付された法案の審議が進みました。さらに、衆議院と参議院で予算委員会の集中審議が行われました。

 集中審議では連休中に報道された「桜を見る会」関連の話題もとりあげられました。野党にとっては追い風になる話題ですが、野党はこれを活用して国会の審議日程に影響を与えることができるでしょうか。

第203回臨時国会のスケジュール実績
第203回臨時国会のスケジュール実績

政府提出法案が続々と衆議院を通過:第203回国会


 2020年11月23日現在。

 先週の国会では、今国会で政府が提出した7つの法案すべてが衆議院本会議で可決し参議院に送られました。また、今年の通常国会で継続審議となっていた3本の政府法案のうち、種苗法改正案を含む2本も衆議院を通過しています。

 国会は与党の思惑どおりに進んでいるようです。野党としては、せっかくもぎとった今週25日の予算委員会の集中審議で見せ場を作らないと支持者にアピールする場所がなくなってしまいます。

 ただ、25日の集中審議は衆議院と参議院両方でやるようです。総理大臣が出席する審議を両院で一日でやるということは、衆議院も参議院もフルタイムの審議にはなりません。衆議院で4時間、参議院で4時間みたいな配分になるのでしょうか。政府に対して何らかの問題を追及するには物足りない時間のように思えます。私はてっきり衆参で1日ずつやるのかと思っていました。

 野党の状況は厳しいようです。

第203回臨時国会のスケジュール実績
第203回臨時国会のスケジュール実績

学術会議の話題がなかったかのような与党ペース:第203回国会


 2020年11月15日現在。

 先週の国会では、各委員会で法案が審議入りしました。法案の審議状況は、記事の下にカレンダーとして載せています。カレンダーに載っているのは法案審議した委員会だけですが、他にいろいろな委員会が開かれています。

 先の国会で少し話題になった種苗法改正案の審議は、特に揉めることなく進んでいるようです。問題なく可決・成立する審議ペースのようにみえます。

 国会運営は今のところ与党ペースのようです。予算委員会では学術会議のメンバーの任命に関する件が注目を集めていたようですが、先週の動きをみるに野党はその問題で国会を止めることはできなかったのでしょう。野党がいけると思ったなら、学術会議に関する件で政府が新たな対応をするまで国会を止めたはずだからです。

第203回臨時国会のスケジュール実績
第203回臨時国会のスケジュール実績

今週から法案審議が始まる:第203回国会


 2020年11月8日現在。先週の国会では、衆参の予算委員会で総理大臣とすべての閣僚が出席する基本的質疑が行われました。菅総理は、自身が総理大臣となって初めての一問一答形式の質疑にのぞみました。

 今週からは法案審議が始まります。報道によると、11月10日に新型コロナウイルスのワクチン確保に関する内容の「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案」の趣旨説明が衆議院本会議で行われる予定とのことです。この法案は、趣旨説明後に委員会に付託されて実質的が審議が始まることになります。

 また、NHKの記事によると、イギリスとの間で結んだ条約の承認を求める議案の趣旨説明を、11月12日に衆議院本会議で行うことを与党が提案しているとのことです。

 議案の審議は委員会で行うのが基本ですが、重要な内容の議案については本会議で趣旨説明と質疑をしてから委員会で審議を始めます。重要な内容のものは審議する委員会のメンバーだけでなく、すべての議員が聞いたほうがいいからです。

 他の法案としては、前の国会で成立を断念した種苗法改正案があります。この法案については、野党である立憲民主党の党内で賛否について対応が割れているとの報道があり、立憲民主党内での調整がついてから審議が始まることになるかもしれません。

第203回臨時国会のスケジュール実績と予想
第203回臨時国会のスケジュール実績と予想

いよいよ予算委員会:第203回国会


 2020年11月1日現在。

 先週の国会では、衆議院と参議院で菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が行われました。代表質問は、質問する議員がすべての質問を述べきったあと答弁を要求された大臣が答える、お互いに一方通行な形式で行われます。

 明日から行われる予算委員会は一問一答形式で進みます。質問者は、相手の答えを聞いて質問の仕方を変えることができます。一方、答弁する側は、原則として質問されたことに答えなければならず、反論することは望ましくないとされています。つまり、お互いに平等に意見のやりとりをするような「議論」の形式ではありません。戦いの場を選べる質問者が圧倒的に有利です。

 衆議院予算委員会の野党側の代表者である筆頭理事は、国対委員長を務めていた辻元代議士です。辻元代議士は、2017年の衆議院総選挙後の特別国会で、所信表明演説なしで国会を2、3日で閉じそうになったところを、与党と交渉して1ヶ月以上の会期をもぎ取った実力者です。政界の経験も長く、自民党と社会党が連立政権を組んでいたときには、与党社会党の議員として自民党の議員と一緒になって時の政権を支えたこともあります。

 与党からするとなかなか手ごわい相手だと思いますが、与党経験がある人なので交渉はしやすいのではないでしょうか。実際、特別国会の会期を延長した際も、与党はただ譲歩しただけではなく、野党に法案審議に協力するよう要求して、当時の辻元国対委員長に約束を守らせています。

 このような国会の最前線の話が出てくるのが、辻元代議士の著書である『国対委員長』(集英社新書)です。この本には野党国対の勝利の数々が出てきています。もしかしたら、与党を支持する人や、野党を支持しない人は敬遠するかもしれません。

 しかし、見方を変えれば、選挙で過半数の議席を得ることに失敗した野党の勝利はすべて与党国対の譲歩によるものです。野党の戦績を示すことで、与党が何でもかんでも数の力でおしきっているわけではないことも明らかにしているのです。

 「野党議員が書いてるから」とか「野党の主張が書いてあるから」とかいう理由で読まないのはもったいないくらい面白いことがたくさん書いてあります。国会の中で何が行われているか興味がある人は、読んで損はありません。

第203回臨時国会のスケジュール
第203回臨時国会のスケジュール

第203回国会召集


 2020年10月26日現在。

 本日、菅内閣発足後、初の本格的な国会となる臨時国会が召集されました。

 菅総理大臣は、就任後初の所信表明演説を衆参両院で行い、明後日からの代表質問を待ち受けます。

 会期は12月5日(土)までの41日間といわれていますが、平日は28日しかありません。基本的には、28日間で代表質問、予算委員会、その他の委員会の審議をこなす必要があります。

 与党サイドでは菅政権の誕生という大きなイベントがありましたが、野党サイドでは立憲民主党と旧国民民主党が合流し、100議席を超える野党第一党が誕生しました。野党第一党の議席が100議席を超えるのは、政権交代前の自民党以来8年ぶりとのことです。

 野党第一党が議席を増やした一方、国会内では野党第一会派の議席数が少なくなるという事態になっています。合流に参加しなかった新しい国民民主党の議員が、衆参共に立憲民主党との統一会派を解消したからです。

 野党といってもそれぞれ別々の党派であり、主張も理念も違います。圧倒的な野党第一党となった立憲民主党がどのように野党をまとめて政府与党と対決していくのか、とても楽しみです。


法案がない国会は野党に交渉力を与えない


 2020年9月6日現在。

 先月末に辞任を表明した、安倍総理大臣の後任を選ぶ臨時国会の日程が決まったという報道が出ています。次の臨時国会は9月16日から18日までの3日間で、総理大臣を決める首班指名選挙と開会式をやったら閉会の予定だとか。私が予想した、新総理の所信表明演説や代表質問は、いまのところ次の国会ではやらないようです。

 このニュースを目にしたとき、私は「この会期の短さは野党の納得できるものではないのでは」と思いました。なぜなら、野党は今年の通常国会が閉じてから、ずっと臨時国会の早期召集を要求していたからです。たとえば「せっかく開かれた国会で、首班指名選挙だけやって終わりはないだろう」という抗議をするのではないかと思いました。

 そこで、立憲民主党の国会対策委員会が運営しているツイッターアカウント(https://twitter.com/cdp_kokkai)を確認すると、意外や意外、与野党交渉の野党側の代表者である安住国会対策委員長は、政府・与党のこの申し出について理解を示しているようでした。

 なぜ、安住国対委員長は、次の臨時国会で代表質問や予算委員会の集中審議を求めなかったのでしょうか。立憲がツイッターで公開している国対委員長のインタビューの書き起こしによれば「会期が3日間では、新しい政権の陣容や国会の幹部人事が間に合わないから」というのが理由のようです。

 確かにそうなのかもしれません。しかし、それだったら3日間の会期そのものについて「短すぎる」と言わなかったのはなぜなのでしょうか。

 私にはわからないのですが、わかる人にはわかる「3日間の必然性」があるのかもしれません。何かスケジュール上の制約があるとか、制度的に無理があるとか。そういうことでもないと、安住国対委員長の淡々とした感じは出ないと思います。ちなみに、日本共産党の志位委員長は、臨時国会の会期が短いことについてツイッターで批判をしていました。野党側の受け取り方も一様ではないようです。

 日程について反対しない、立憲に特有の事情もありそうです。統一会派を組んでいた立憲と国民民主党の合流の交渉がこの夏に進んでいて、臨時国会召集の直前くらいに合流新党の結党大会が行われる予定になっています。政府・与党の新体制が整わないのと同様に、野党第一党となる新党の体制も完成しないのかもしれません。

 よく考えると、安住国対委員長も新党発足後は国対委員長ではない可能性もあります。すぐに辞めるかもしれないのに、いろいろ積極的に動くわけにもいかない事情もあるのかもしれません。

 また、政府側が提出する法案が決まってないという事情もありそうです。

 国会には行政を監視する機能もありますが、法案や予算案を審議し議決することも主な仕事です。提出する法案がなければ、野党も質疑の場が与えられません。単に国政について政府に質問することは、与野党の申し合わせにより現在も閉会中審査で実施しています。野党にとって、いま臨時国会の会期を長くとる必要性が薄いのかもしれません。

 そもそも、政府提出法案がなければ野党は無力です。なぜなら、与党が野党に譲歩するのは、成立させたい法案を円満な審議で進めるためだからです。与党にとって審議したい法案がなければ、与党は野党に譲歩する動機がありません。その点で、法案がなくても国会を開く意義はありますが、その国会が野党にとって面白いものかどうかは怪しいと思います。

 具体的な法案がない状態で野党が与党に審議に応じさせるには、世論を盛り上げることで、与党に「審議しないと次の選挙がまずい」と思わせる必要があります。しかし、野党はいままで、与党のモチベーションを上げるために、国会の早期召集で世論を盛り上げようとしてきましたが成果がでていません。

 この状態では、野党は議席通りの力しか発揮できないでしょう。そう考えると、閉会中審査で政府の姿勢を追求する場があるいまの状態のほうが、野党にとっても都合がいいのかもしれません。


安倍総理辞任表明後の国会の動き


2020年8月30日現在。

 28日、安倍総理大臣が辞任を表明しました。近いうちに安倍内閣は総辞職し、国会で新たな総理大臣が指名されて、新しい内閣が発足します。

 内閣総理大臣に指名されるのは、国会の首班指名選挙で過半数の票を獲得した国会議員です。首班指名選挙を行う必要上、9月に臨時国会が召集されるのは確実な情勢です。はからずも、野党が要求していた国会の早期召集は実現することになりそうです。

 首班指名選挙で投票される国会議員は、各政党で一本化されます。ひとつの会派から複数の国会議員に票を投じられるようなことは、普通起こりません。普段ならば、議員は自分が所属している政党の党首に一票を投じます。しかし、安倍総理は総理大臣だけでなく自民党総裁も辞任するはずで、自民党としては首班指名選挙の前に安倍総裁に代わる新たな党首を選ばなければなりません。

 そのため、自民党総裁選の後、臨時国会を召集、首班指名選挙、新内閣発足、という流れになると思われます。新内閣発足の後は、国会で新総理による所信表明演説と代表質問も行われるはずです。新総理と野党党首の対決がここから始まります。

 ところで、衆議院議員の任期が残り一年に迫っており、ただちに衆議院を解散するのではないかという観測もあるようです。解散する場合は、新内閣を発足した後に、新しい総理大臣が衆議院を解散することになると思われます。このケースでは、選挙の結果にかかわらず、選挙後に発足したばかりの新内閣が総辞職するという変なことになります。

 新総裁を選んだ後、首班指名選挙を行う前に解散すれば、新内閣がすぐ総辞職することを避けられます。ただし、辞任を表明した総理大臣が衆議院を解散することになってしまいます。辞任する総理大臣が国政に新たな動きを発生させることは避けるべきで、安倍総理が残りの任期で解散することはおそらくないでしょう。