月別アーカイブ: 2019年3月

【2019通常国会】予算審議第七週終了


■2019年度予算案は3月27日成立か?

2019年3月24日現在。2019年度予算審議は大詰めです。与野党は25日の参議院予算委員会での集中審議に続き、26日の一般質疑、27日の締めくくり質疑の開催に合意しています。報道によると、与党は当初26日の締めくくり質疑を提案したそうですが、野党に配慮し27日に延ばしたとのことです。

予算委員会では、締めくくり質疑が行われた日に、予算案について討論と採決が行われます。また、予算委員会で予算案を採決した場合は、その日のうちに本会議で採決されることが多いです。

■緊急上程

さて、本会議を開く日時と議題(案件)は、事前に全議員に周知し官報に掲載するルールになっています。このとき、まだ委員会で採決されていない案件を本会議の議題にすることはできません。例えば、2019年度予算案は事前に周知される27日の参議院本会議の日程に日程に上がらないことになります。それでは早く本会議で採決して予算案を成立させたい与党は困ってしまいます。

そこで「緊急上程」という技が使われます。本会議の開会後、議員から「議案上程に関する緊急動議」が提出され、本会議中に議題を追加して審議を進めるのです。

動議とは予定された議案以外の案件を議題にすることです。この場合は、「いま本会議で、この議案について審議することを望む」というのが動議です。

本会議中に議題を追加することで、本会議当日に採決された議案を本会議で採決することができます。「緊急上程」という言葉が出てきたら、「その日のうちに委員会の採決と本会議の採決をやるんだな」と思えば間違いないです。

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国会職員は神主


■選挙と話し合いにはルールが必要

議会制民主主義は、自然に当然に成り立つものではありません。「選挙をして、選ばれた議員が話し合って決めればいいだけでは?」と思われるかもしれませんが、それだけでは難しいです。選挙も話し合いも、ルールが守らなければ単に「こなしただけ」なってしまい意味がないからです。

たとえば、話し合えばいいとは言っても、話し合うメンバーが偏っていたら意味がありません。本会議の日時を与党議員だけに連絡し、野党議員が出席できないようにしたら、与党議員と野党議員の数に差があろうがなかろうが与党の思い通りになってしまいます。そういうことがないように、あらかじめ本会議が始まる日時をすべての議員に通知する規則があります。

この規則をはじめ、議会制民主主義を成り立たせるために必要なさまざまなルールがあります。これらのルールや手続きは、議会制民主主義をこの世に成り立たせる儀式のようなものです。決まった手続きで物事を行うことで、この世に実体のない何かを現すという意味で、国会で行われていることはお祭りと同じものなのかもしれないと思うときがあります。そして、ルールと手続きに精通した国会職員は神主のようなものかもしれません。


【2019通常国会】予算審議第六週終了


■参議院の予算審議も残りわずか

2019年3月17日現在。予算審議は第六週目を終えました。すでに参議院では予算案の採決の前提となる中央公聴会を終えています。残るは、衆議院での分科会に相当する委嘱審査と、締めくくり質疑、そして討論・採決です。

来週の予定は、18日の集中審議、19、20日の委嘱審査まで決まっています。自然成立の期限もありますし、25日週での採決・成立は確実な見通しです。

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なぜ立憲民主党は衆参両院で最大野党なのに、参議院で国民民主党と野党第一会派争いをしなければならないのか


■立憲民主党、参議院の野党第一会派を奪還

2019年3月12日現在。先週3月7日に参議院の野党第一会派が国民民主党を中心とする会派から立憲民主党を中心とする会派に変わりました。今年の1月に国民民主党を離党して立憲民主党に移る意向を示していた藤田議員を、国民民主党が除籍処分して会派離脱を認めたためです。

野党第一会派になるかどうかというのは極めて重要です。審議のスケジュールなどなどの交渉では、野党第一会派が野党を代表して与党と交渉するからです。

■衆参両院で数えると、大差で立憲民主党が野党第一党だが……

藤田議員の会派離脱が決まったことで、衆議院と参議院の両方で立憲民主党を中心とする会派が野党第一会派になりました。とはいえ、参議院での立憲会派と国民会派の議員数は28対27で1名差です。参議院では野党第一会派と第二会派の差はあまりないのですが、衆議院では68対39と大差をつけています。衆参両院で合わせれば、元から立憲民主党は野党第一党と言えます。

「衆参合わせて元から立憲民主党の議員が野党議員で一番多いのだったら、参議院の議員数とか関係なく立憲民主党が与党と交渉すればいいのではないか」と思われるかもしれません。しかし、そうはいきません。立憲民主党が「衆参通算では野党第一会派だから、参議院の第一会派もよこせ」と言わないのは、衆議院と参議院が独立しているという建前があるためです。

■衆議院と参議院は対等で独立している

衆議院と参議院は、いくつかの規定で衆議院の議決が参議院に優越することはありますが、原則としてそれぞれ独立した存在です。衆議院と参議院の間に上下関係はありません。国会の中に衆議院というセクションと参議院というセクションがあるのではなく、衆議院という国会と参議院という国会があるのです。国会が2つあるということ、これが二院制です。余談ですが、日本の立法・行政・司法のそれぞれのトップである「三権の長」は4人います。行政は内閣総理大臣、司法は最高裁判所長官、そして立法は衆議院議長と参議院議長、この4人です。

二院制の意義のひとつは、それぞれ違う方法で選出された議員が会議を行って物事を決めることです。参議院にとって、衆議院の野党第一会派がどこだろうが知ったこっちゃないのです。参議院のことは参議院で決めるという自律性が大事なので、衆議院の議員数を根拠に、参議院の野党第一会派が当然立憲民主党の会派になるという主張はできません。


【2019通常国会】予算審議第五週終了


■3月11日の予算委員会はなし?

2019年3月10日現在。2019年度予算案の参議院での審議が始まって一週間たちました。この間、不正統計に関する特別委員会の樋口委員長が立憲民主党の福山幹事長の質問にうまく答えられず審議が中断したり、横畠内閣法制局長官が野党議員の質問姿勢を皮肉ったとして参議院予算委員長に厳重注意されたりしました。

参議院インターネット審議中継によると、明日11日は予算委員会を開く予定になっていないようです。2月4日から始まった予算審議で、初めて予算委員会がない平日になります。

気づけば、ここまでずっと平日は予算委員会をやっていました。とくに野党と交渉しなくても連日審議できるのが、予算委員会や特別委員会の強みです。他の委員会だと毎日どころか、定例日外に開くだけで大騒動になったりします。

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「3分の遅刻で5時間ストップ」という国会しぐさの理由


■決めようとする人と、決めさせない人

国会というところは、全員が同じ目標を持って集まっているのですが、目的がそれぞれ違います。

目的の違いは大きく2つです。それは、決めることと、決めさせないことです。

与党議員は、さっさと物事を決めて政策を実現させようとします。逆に、野党議員は与党議員に決めさせないように抵抗します。

■野党議員は与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事

先月の衆議院予算委員会で、桜田大臣が3分遅刻して野党の反発で5時間審議が止まったという場面がありました。普通の会社などで考えれば、会議で3分間遅刻したので5時間会議を中断したら「何やってるんだ」「仕事しろ」ということになるでしょう。実は、そうなるのは同じように仕事を遂行しようとする人しかいないという前提があるときだけです。映画や小説でも、同じ会社で働く人同士が気に入らない提案を潰すために「3分の遅刻で5時間中断」と同じようなことをする場面がでてくることがあります。国会もまったく同じです。

国会が会社と大きく違うのは、オフィシャルに多数派の行動を邪魔する存在がいることです。野党議員は、与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事なのです。決めさせないという観点から言えば、大臣の3分の遅刻で5時間審議をストップさせるのは当然の権利です。権利というか、むしろ義務であるかもしれません。「大臣が3分遅刻されたので審議を急いで進めましょう」と毎回野党議員が言ってしまったら、野党の仕事は成り立たない場面もあるのです。

このような理屈で、3分の遅刻で5時間審議がストップするような「国会しぐさ」が生まれるのだと思います。

同じ理屈で、与党の強行採決も義務になる場面はあります。与野党どちらの行動にも、たいてい大義があります。どちらを良しとするかは、各々が自分の状況に応じて決めればよいです。


【2019通常国会】参議院の予算審議、中央公聴会の日程まで決まる


■参議院の予算審議開始

2019年3月5日現在。2019年度予算案の参議院での審議が昨日4日から開始しています。本日は2日目の基本的質疑でした。基本的質疑とは、予算審議の最初に行われる、総理大臣とすべての大臣が出席する審議です。通常の予算審議である一般質疑では、財務大臣と答弁を要求された大臣だけが予算委員会に出席するのですが、基本的質疑では答弁を要求されていない大臣も全員出席する慣例になっています。ですので、基本的質疑は特別な意味があります。

参議院の予算審議の日程は、12日に採決の前提である中央公聴会を実施するところまで与野党合意しています。衆議院では、中央公聴会が実施されたあと、3日で採決されました。参議院でもそうなるとすると、15日に採決となります。そうなると、参議院での採決までの予算委員会実施回数が10回となるので、衆議院の7割くらいの審議時間になってしまうので、もうちょっとやるのではないでしょうか。そうでないと、超与党ペースで審議が進んだことになります。

2017年の予算審議で、参議院で中央公聴会を実施したあと予算委員会で質疑を8日行って自然成立ギリギリで採決した例があるため、12日に中央公聴会を実施することで、すぐ採決するとは言えません。

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【2019通常国会】予算審議第四週終了


■2019年度予算案の審議は参議院へ

2019年3月3日現在。2019年度予算案は衆議院を通過し、明日4日から参議院予算委員会で基本的質疑が行われる予定です。いまのところ、5日の基本的質疑まで与野党合意しているようです。

2月は予算案の年度内成立を確実にするために、すべての平日で予算委員会が開かれました。参議院では、そこまでしなくても大丈夫です。衆議院と同じく15回の予算委員会で採決できるとした場合、すべての平日で審議できれば3月18日に予算案は参議院で可決・成立します。年度末まで2週間弱の余裕があります。

しかし、実際は与野党の駆け引きや閣僚のスケジュールの都合、年度内に成立させないといけない日切れ法案の審議などで予算委員会を開かない平日があると思います。

とはいえ、自然成立する前には参議院で予算案を採決するはずです。なぜなら、予算案が参議院の議決をまたずに自然成立してしまっては、参議院の存在価値が低くなってしまうからです。ですから、参議院の予算審議は、最大限引っ張っても3月29日には終わると思います。

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図解 自然成立の30日の数え方


■2019年度予算案衆議院通過

2019年3月2日現在。2019年度予算案は、本日午前0時40分頃に衆議院本会議で採決され可決しました。これで、憲法の規定により3月31日までに参議院で2019年度予算案を採決できなくても、衆議院での議決の通り予算案が可決成立することが確定しました。

自然成立の根拠となる条文は、以下のようになっています。

第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 ○2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

『日本国憲法』

30日の数え方ですが、添付した3月のカレンダーの画像に記載した「自然成立進行度」を見ていただければ、30日のカウント方法がわかります。予算案は衆議院で可決されたその日のうちに参議院に送付されますので、衆議院で予算案が可決された日に自然成立進行度は1加算され1/30になります。自然成立進行度は1日経過するごとに1ずつ加算されます。自然成立進行度が30/30になった時点で自然成立の要件が満たされ、2019年度予算案が自然成立することになります。

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