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法案がない国会は野党に交渉力を与えない


 2020年9月6日現在。

 先月末に辞任を表明した、安倍総理大臣の後任を選ぶ臨時国会の日程が決まったという報道が出ています。次の臨時国会は9月16日から18日までの3日間で、総理大臣を決める首班指名選挙と開会式をやったら閉会の予定だとか。私が予想した、新総理の所信表明演説や代表質問は、いまのところ次の国会ではやらないようです。

 このニュースを目にしたとき、私は「この会期の短さは野党の納得できるものではないのでは」と思いました。なぜなら、野党は今年の通常国会が閉じてから、ずっと臨時国会の早期召集を要求していたからです。たとえば「せっかく開かれた国会で、首班指名選挙だけやって終わりはないだろう」という抗議をするのではないかと思いました。

 そこで、立憲民主党の国会対策委員会が運営しているツイッターアカウント(https://twitter.com/cdp_kokkai)を確認すると、意外や意外、与野党交渉の野党側の代表者である安住国会対策委員長は、政府・与党のこの申し出について理解を示しているようでした。

 なぜ、安住国対委員長は、次の臨時国会で代表質問や予算委員会の集中審議を求めなかったのでしょうか。立憲がツイッターで公開している国対委員長のインタビューの書き起こしによれば「会期が3日間では、新しい政権の陣容や国会の幹部人事が間に合わないから」というのが理由のようです。

 確かにそうなのかもしれません。しかし、それだったら3日間の会期そのものについて「短すぎる」と言わなかったのはなぜなのでしょうか。

 私にはわからないのですが、わかる人にはわかる「3日間の必然性」があるのかもしれません。何かスケジュール上の制約があるとか、制度的に無理があるとか。そういうことでもないと、安住国対委員長の淡々とした感じは出ないと思います。ちなみに、日本共産党の志位委員長は、臨時国会の会期が短いことについてツイッターで批判をしていました。野党側の受け取り方も一様ではないようです。

 日程について反対しない、立憲に特有の事情もありそうです。統一会派を組んでいた立憲と国民民主党の合流の交渉がこの夏に進んでいて、臨時国会召集の直前くらいに合流新党の結党大会が行われる予定になっています。政府・与党の新体制が整わないのと同様に、野党第一党となる新党の体制も完成しないのかもしれません。

 よく考えると、安住国対委員長も新党発足後は国対委員長ではない可能性もあります。すぐに辞めるかもしれないのに、いろいろ積極的に動くわけにもいかない事情もあるのかもしれません。

 また、政府側が提出する法案が決まってないという事情もありそうです。

 国会には行政を監視する機能もありますが、法案や予算案を審議し議決することも主な仕事です。提出する法案がなければ、野党も質疑の場が与えられません。単に国政について政府に質問することは、与野党の申し合わせにより現在も閉会中審査で実施しています。野党にとって、いま臨時国会の会期を長くとる必要性が薄いのかもしれません。

 そもそも、政府提出法案がなければ野党は無力です。なぜなら、与党が野党に譲歩するのは、成立させたい法案を円満な審議で進めるためだからです。与党にとって審議したい法案がなければ、与党は野党に譲歩する動機がありません。その点で、法案がなくても国会を開く意義はありますが、その国会が野党にとって面白いものかどうかは怪しいと思います。

 具体的な法案がない状態で野党が与党に審議に応じさせるには、世論を盛り上げることで、与党に「審議しないと次の選挙がまずい」と思わせる必要があります。しかし、野党はいままで、与党のモチベーションを上げるために、国会の早期召集で世論を盛り上げようとしてきましたが成果がでていません。

 この状態では、野党は議席通りの力しか発揮できないでしょう。そう考えると、閉会中審査で政府の姿勢を追求する場があるいまの状態のほうが、野党にとっても都合がいいのかもしれません。