2024年度予算案の衆議院での採決をめぐる攻防を振り返る


2024年3月11日現在。

 今年の衆議院での予算審議は、予算案の採決前に政倫審が割り込んでくる形となりました。自民党の派閥の政治資金パーティーの収支報告漏れに端を発した政治と金の問題により与党が追い込まれ、中央公聴会の後に分科会を実施するという例年行われている順番が逆転して中央公聴会からの分科会になったり、通常国会が休みになる土曜日に採決が行われたりとイレギュラーな事態が発生しました。

 予算審議の最大のポイントは「3/2までに予算案を衆議院本会議で採決できるかどうか」にあります。これをさせるかさせないかが、与党と野党の勝敗の分かれ目です。

 今年は野党側が優勢でした。野党第一党の立憲民主党は予算委員長の解任決議案や財務大臣の不信任案の提出で、予算案の採決を与党が予定していた平日の3/1(金)から3/2(土)以降に先送りさせることに成功します。

 しかし、立憲民主党の勢いはそこまででした。3/1の深夜、立憲民主党は自民党と3/2に採決することで合意してしまいます。

 3/3まで採決を先送りさせることができれば、憲法の規定により予算案が参議院で採決されなくても衆議院の議決だけで予算案を成立させる自然成立の要件を満たすのが4/1になり、3/31の年度末からはみ出してしまいます。

 たった1日だとしても、2024年度の予算が年度はじめの4/1からフルコースで執行できないというのは政府・与党にとって落ち度になります。予算案の成否は岸田内閣の命運を左右しうるのです。もし、3/3以降の衆議院通過になっていれば、予算案の成立を年度内に納めるために、与党はいま以上に野党に譲歩しなければならなくなったでしょう。攻め手が少ない野党にとって、強力な武器を手に入れる絶好のチャンスでした。そのチャンスを捨てて、立憲民主党は3/2の予算案採決に合意したのです。

 はたから見ると、よほどの取り引きがあるのでなければ有り得ない決断だと思います。しかし、現状与党が立憲民主党に以前より気を遣っているようにも見えません。

 今回の衆議院の予算案採決をめぐるあれこれは、ただ時間をかけただけで、法的効果としては3/31までの予算案の自然成立が確定しているという、例年と何も変わらない状態です。小沢一郎衆議院議員が立憲民主党の対応を批判したのも無理もないことだとでしょう。ただ、小沢さんのコメントはマスコミに流れることを意識したものであることは間違いなく、本人がどう思っているかというよりも、与党側に「このまま何もしないようなら不満を持ってる者が動くぞ」というメッセージを送る思惑があるのかもしれません。

 もっとも、メッセージを送ったとしても、来年度予算案に対して野党にできることはほとんどありません。参議院で審議を引き延ばしたとしても、憲法の規定により年度内に予算案は成立します。

 今回の予算案には年始に発生した能登半島地震の復旧・復興のための予備費1兆円が計上されており、予定通り予算が執行される見込みになったのは良いことです。被災地の復興に影響を与えずに自党の支持者に最大限アピールする落とし所として、3/1の徹夜国会と3/2の予算案採決は立憲民主党にとってちょうどよかったのかもしれません。政治資金問題以外にも自民党の地方議員に関わる問題も報道されています。予算案の年度内成立を確実にしたとはいえ、自民党の防戦はまだまだ続きそうです。


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