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強行採決は与党と野党の合作である


2016年11月5日現在。昨日11月4日に、衆議院の環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会でTPP協定の国会承認を求める議案と関連法案の採決が行われ、与党などの賛成多数により可決されました。

民進党と共産党の欠席するなか質疑を進め、かつ終局し、両党欠席のまま討論、採決となりました。民進党や共産党は「強行採決」だとして、この委員会運営に抗議しています。

■強行採決とは野党の同意なく採決すること

「強行採決」とは文字通り採決を強行することです。国会審議は与党と野党が協調して行う慣例になっているため、採決の日程について与野党で意見が合わないなか採決をしてしまうことを強行採決と呼びます。

強行採決の何が問題かというと、採決すると与党の賛成多数により議案が可決されることがわかりきっているからです。与党は野党よりも多数の議席を占めているために与党なので、あらゆる審議を即日採決したら一切議論が行われずに物事が決まってしまいます。

■採決しなければ議決機関ではない

とはいえ、国会は議決機関なので、どこかで採決をしなければなりません。ここで野党があくまでも採決を拒んだ場合、与党は野党の同意を得ずに採決をすることになります。こうして強行採決が行われることになります。

つまり、強行採決になるには野党にも責任があるのです。

しかし、そのことで野党を責めるわけにはいけません。野党には採決すること、政府に質問すること、審議を遅らせること、与党に野党の提案を一部受けいれて貰うこと以外に国政に関与する力を持たないからです。

野党だからしょうがないのです。

■最後の手段「議事不成立」

ちなみに、野党の議員が委員長席を取り囲んでいる映像がありますが、あれは単に抗議するだけでなく、委員長のマイクや原稿を奪うことや、大声を出してマイクを正常に動かないようにすることもしています。

なぜそのようなことをするかというと、委員長や機材にプレッシャーをかけることで、正常な議事手続きを踏めないようにし、「議事不成立」にすることで採決自体を無効にすることを狙っているからです。議事運営は決められた手続きに則って行われなければならないのです。

あまりにもあんまりな手段ですが、野党にできる数少ない抵抗のひとつです。

また、それなりに効果があります。集団的自衛権の行使を可能とする法案の委員会採決において、議場が騒然としたために議事録がとりにくくなりました。野党は、議事録が取りにくくなった状態で行った採決は無効で、もう一度やり直すべきと主張しました。もともと評判の悪い集団的自衛権の行使容認に関する件で、議事妨害により政府与党にネガティブなイメージを与えることに成功した事例だと思います。

ただ、議場を騒然とさせたのは間違いなく野党なので、何をか言わんやです。