2014年6月9日現在。今国会の会期末まで、あと2週間弱です。安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を、今国会中に閣議決定する方針です。どうも、本気のようです。一方、連立を組んでいる公明党も本気でこ政治課題の先送りを目指しているようです。落とし所はあるのでしょうか。
実は、公明党が一番望んでいたと思われる落とし所は、すでに葬り去られています。憲法解釈と集団的自衛権に関する態度として、以下の4つのものが考えられます。
- 憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使とみられる行動(米艦防護、機雷除去など)をとれるようにする
- 憲法解釈を変更せず、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれるようにする
- 憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれないようにする
- 憲法解釈を変更せず、集団的自衛権の行使とみられる行動をとれないようにする
1は、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認を目指す安倍政権の考え方です。2は個別的自衛権で集団的自衛権の行使とみられるような行動をとれるとする考え方で、公明党が主張していたものです。4は集団的自衛権の行使容認に反対する人たちのスタンダードな考え方です。3はありないと思う人がいるかもしれませんが、ありえます。どういう考え方かというと、憲法解釈をもっと厳しくして自衛権を制限するという考え方です。
この4つの考え方について安倍政権と公明党の選好を表にしてみます。100が最も望むものです。
この表でみると安倍政権と公明党の選好の合計が最も高くなるのは2の考え方です。安倍政権としては、憲法解釈の変更という名をすて、集団的自衛権の行使とされる行動をとれるという実をとる選択になります。公明党としても、連立与党として安全保障上の課題に向きあいつつ、党論と違う憲法解釈変更は拒否するという立場がとれるわけです。
ところが、5月28日の衆議院予算委員会で、横畠内閣法制局長官は、「現在の憲法解釈では、米艦防護や機雷除去はできない」と答弁しました。これにより、理屈の上では2で妥協するということが不可能になったわけです。
2が選択肢から消えてしまうと、次に自民党と公明党の選好の合計が高いのは1になります。安倍政権は目的を達成し、公明党は連立に残れます。内閣法制局長官の答弁は、落とし所を強引に1にしようという作戦です。
これは、政府にとっては捨て身の作戦です。もう、憲法解釈を変更しない限り、「米艦防護」も「機雷除去」もできなくなってしまったわけです。そして、公明党の選好が連立維持にこだわる1よりも、連立離脱も辞さない4のほうに偏っていた場合、すべてパーになります。