野党第一会派を巡る争いでくじ引きに


■質問順をくじ引きで決める

2019年1月30日現在。立憲民主党と国民民主党による参議院の野党第一会派を巡る争いは、まだ決着がついていません。参議院で昨日行われた決算質疑では、立憲民主党と国民民主党のどちらが最初に質問するかで揉めて、くじ引きで順番を決めたと報道されています。さらに、明日1月31日の参議院の代表質問の質疑順序も折り合いがつかず、くじ引きで決めたそうです。ちなみに、どちらも国民民主党が最初に質疑することになったそうです。

この争いは、参議院での立憲民主党の会派と国民民主党の会派の所属議員数が27名・27名と同率一位になっていることで起こっています。実際は、国民民主党の藤田参議院議員が離党し立憲民主党に入党する意向を示しているため、立憲民主党28名、国民民主党26名で立憲民主党の会派が参議院の野党第一会派であるように思います。

しかし、国民民主党は藤田さんの会派離脱をみとめていないため、数字の上では未だに国民民主党の会派が27名のままです。会派の離脱は離脱する会派が議長に届け出ないとできない慣習になっているためです。

こういう事情があるので、立憲民主党は「実質的に立憲民主党が参議院第一会派だ」と主張しているようです。しかし、今回質疑順のくじ引きに応じたことで、国民民主党の榛葉参院幹事長は「立憲民主党はくじ引きに応じたのだから、国民民主党の会派と立憲民主党の会派の所属議員数が同数であることを認めたことになる。今後もくじ引きで決めることになる」と強気な主張をしたと読売新聞や日経新聞が本日の朝刊に記事にしています。

■国会での野党同士の対立は、選挙にも影響

参議院の立憲民主党は、この榛葉さんに相当やられているらしいです。榛葉さんは今年の夏の参議院選挙で改選します。榛葉さんの選挙区は2名が当選する2人区です。1月22日付読売新聞朝刊で、立憲民主党は榛葉さんの選挙区に候補者を擁立し「落選に追い込む」と息巻いていると報じられています。国会での野党同士の対立が選挙に影響を与えています。選挙は政治生命につながるため、冗談ではすみません。野党同士の対立とはいえ、ややこしそうです。

ちなみに、参議院の野党第一会派が決まらない問題の渦中の人である藤田さんも今年改選で、選挙区は2人区です。1月22日の読売の記事では、立憲民主党は藤田さんの選挙区でも候補者を立てようとしていると書かれています。この件は、藤田さんを立憲民主党に引き抜く交渉材料になっていたのでしょうか。


第198回国会召集


■政府4演説が行われる。翌々日の30日から代表質問

2019年1月28日。第198回国会が召集されました。本日は、政府4演説と呼ばれる総理大臣の施政方針演説、外務大臣の外交演説、財務大臣の財政演説、経済再生担当大臣の経済演説が行われました。

30日からは、この政府4演説に対する各党の代表質問が行われます。演説した日から1日あけるのは、演説を聴いてから質問を考えるという建前の慣例です。慣例なので、1日あけないこともあります。政府としては早く審議に入ってほしいので、1日あけない方が助かることになります。しかし、1日あけないことで野党に悪印象を与えることになってしまいます。今年は、来年度予算案の審議が非常に窮屈なので、政府としては早く審議に入って欲しいところだったのでしょうが、与党が国会運営を円満にするために演説から代表質問の間を1日あけたのではないかと思います。

■野党が勝ち取った決算質疑

与党が野党に配慮しているのではないかという根拠として、明日29日に参議院本会議で、安倍総理大臣とすべての閣僚が出席する決算質疑が行われるということもあります。

いまの国会運営の慣例上、総理大臣とすべての閣僚が国会に出席するというのはなかなかない貴重なイベントになっています。必ず総理大臣とすべての閣僚が出席するのは、予算委員会の冒頭3日間の基本的質疑と採決直前の締めくくり総括質疑くらいです。総理大臣はもちろん、そのほかの大臣が国会に出席するということは、たとえば答弁の準備をするという点でそれぞれの役所の負担が大きいです。

参議院の与党は、通常国会の円滑な運営のために野党に配慮しているのだと思います。逆に言えば、参議院の野党は決算質疑を勝ち取ったわけです。


藤田参院議員の国民民主党会派離脱騒動


■参議院の野党第一会派争い

2019年1月27日現在。参議院の野党第一会派争いは決着がついていません。

参議院の野党会派は立憲民主党を中心とする会派が27人、国民民主党を中心とする会派が27人と同率一位になっています。しかし、国民民主党の参議院議員である藤田議員が離党し、立憲民主党に入党する意向を示しています。藤田議員の意向どおりに進めば、立憲民主党の会派が28人、国民民主党の会派が26人となり立憲民主党が前回の臨時国会に続いて衆参で野党第一会派として与党と交渉することになります。

国民民主党もぼんやりしているわけにはいきません。先週せっかく自由党と統一会派を組んで参議院の野党第一会派に返り咲いたのに、通常国会召集前に立憲民主党に第一会派の座を奪われてしまっては悲しすぎます。

国民民主党は、藤田議員の離党と会派離脱を認めていないようです。議会用語事典によれば、議員の会派の退会届は、所属していた会派の代表から議長に対して文書で届ける慣習になっているので、国民民主党が藤田議員の退会届を参議院議長に出さない限り、藤田議員の退会は認められません。


統一会派ラッシュ


■立て続けに統一会派結成

2019年1月24日現在。28日の通常国会召集を目前に控え、野党同士のついたり離れたりのニュースが連日出ています。

  • 日本維新の会と希望の党が参議院で統一会派
  • 国民民主党と自由党が衆議院と参議院で統一会派
  • 立憲民主党と社民党が参議院で統一会派

ものすごい勢いです。国会での活動の幅は会派に所属する議員の数で決まり、選挙なしで会派に所属する議員の数を増やすには話し合いで会派を大きくするしかないとはいえ、ここまで動くとはという感じです。

■自由党と社民党、くっついたり離れたり

すごいのは自由党と社民党です。自由党と社民党は参議院で希望の会という統一会派を組んでいました。自由党系4人、社民党2人の少数会派です。しかし、自由党が国民民主党と統一会派を組んでしまったため、自由党と社民党は統一会派を解消しました。

■参議院の野党第一会派をめぐる争い

そこで出てきたのが立憲民主党です。立憲民主党を中心とした会派は、参議院で国民民主党の会派を2名上回っており、参議院の野党第一会派として与党と交渉していました。しかし、今回国民民主党と自由党が統一会派を組むことで、国民民主党の会派が立憲民主党の会派を逆に2名上回り、通常国会の参議院の野党第一会派は国民民主党の会派になる見通しになりました。立憲民主党は野党第一会派を維持するために、参議院で社民党と統一会派を組むことになったのです。

熾烈な数の争いです。今年の夏の参議院選挙で、野党共闘は本当にできるのでしょうか。

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途中式を省かない


■新聞は知っている人向けに書かかれている

世の中のことを知るには新聞を読むことがよいと言われることがあります。確かに、幅広い世の中の動きを知ることができます。ただし、新聞には大きな欠点があります。それは、「知っている人にしかわからないように書いてある」ということです。

新聞は紙媒体が基本です。限られた紙面にいろいろな記事を詰め込むため、記事の長さは制限されます。制限された文字数で読者に伝えるために、記事に書いてあることを理解するための前提となる知識の記載は省かれてしまいます。どういうことかというと、「政治を勉強しよう」と思って政治面を読んでも、何かが起こっているのはわかるが、どうしてそれが記事になっているのか、どういう意味になるのか理解できないということです。

■途中式が省かれている

この状態、何かに似ています。新聞を読んだときの「結果だけ書いてあって肝心なところが書いてない!」という気持ちは、数学の例題を読んだときや問題集の答え合わせをしたときの「最終的な答えはわかったけど、どうしてそうなったのかわからない!この行とこの行の間に何があったんだ?」と悩む気持ちに似ています。いわゆる途中式が省かれているためにそういう気持ちになります。「この省かれている途中式が分かる人は、答えがわかっている人じゃないか」という気持ちにもなります。

途中式がほしいというニーズがあるため、数学の参考書の中には詳しく途中式を書いていることを売りにしているものもあります。政治の入門書や解説本も、新聞記事で省かれている「途中式」を記載したものにしてほしいですね。

このブログも、「途中式」を省かないことを心がけたいです。


川と堤防、人間とルール


■ルールは堤防

政治におけるルールというものは、川の流れを制御する堤防のようなものです。川は堤防の形に従って、決められた方向に流れていきます。

しかし、大雨が降って川の水量が増えると、川は堤防を越えてはん乱します。また、もともとの川の流れに逆らった堤防では、川の流れで堤防が削られていくかもしれません。堤防は絶対ではありません。

川の流れと同じように、ルールは人間の行動にある程度の強制力を持って枠をはめますが、絶対のものではありません。革命や改革が起こってルールが消し飛んだり、人間の行動にあわないルールが形骸化して守られなくなったりするからです。


198回国会(通常国会)、1/28に召集決定


■カレンダーで見る国会

2019年の通常国会が1月28日に召集されることが決まりました。

今年の予算審議の日程が窮屈だという報道が出ています。カレンダーでみてみると、窮屈さがわかります。

以下の画像は、3月31日までに参議院で予算案の採決が行われなくても、憲法の規定で衆議院の議決のみで成立する期限の3/2までに衆議院で予算案が採決される想定で予想したスケジュールです。

このスケジュールだと、衆議院での予算審議は15日行われています。衆議院の予算審議の最速記録は14日なので、かなり早いペースで審議が進んだことになります。しかも、1日も休みなく審議しています。

何かスキャンダルが起こったら、野党の反発で1日くらい予算審議が止まる可能性があります。このスケジュールを実現するには、野党が審議拒否をしても与党のみで審議を続けるくらいのことをしないといけません。

結構厳しいような気がするので、与党は本音では3月2日までの予算案の衆議院通過にこだわらない考えかもしれません。自然成立に頼らなくても、最終的に3月31日までに参議院で予算案を採決できればいいからです。

Screenshot Screenshot


現在の情報の「解像度」を上げる


■目にしている情報は同じなのに、読み取れる情報が違う

将棋や囲碁ができる人は、盤面をみてどういう状態であるか判別することができます。私が同じ盤面もみても何がなんだかわかりません。目にしている情報は同じなのに、 得られる情報の量が違っています。

将棋や囲碁ができる人は私に比べて盤面から読み取れる情報量が多いために起こります。なんというか、みえている盤面の「解像度」が違うのだと思います。

私が国会の仕組みを中心に見ているのは、政治のニュースに対する解像度を上げるためです。解像度を上げることで、目に見える政治の現実が変わってくると思っています。

■ありえない選択肢を切ることで、読み取れる情報を増やす

ただ、いま言っている「解像度を上げる」ことは、文字通りすべての情報を余さず取り込んでいるということだけではありません。逆に、ありえない選択肢をバッサリ切っていくことも行っています。選択肢が無限にある場合は、結果の予想がつかないために今起こっていることの評価ができないからです。

ありえない選択肢を削るときの基準になるのが、時間やルールといった制約です。国会の場合は、時間の制約が非常に強いため、時間の問題から考えていくことで選択肢を絞ることができます。

選択肢を絞ることで、情報から読み取れる情報の精度を上げることができます。しかし、それは消した選択肢について考慮にしないことにつながるので、「思い込み」につながる危険性があります。


野党共闘の候補者調整とは


■候補者調整のねらい

野党共闘でいう候補者調整とは、野党の候補者のうち誰かを立候補させないということです。

90人有権者がいて、与党a野党b野党cにそれぞれ40:25:25の割合で投票するとします。野党bcで話し合って、cが立候補者を出さずに野党bの候補者を野党bcの統一候補とすれば、与党aの候補が40票、野党bcの統一候補が50票になり野党bの候補者が当選することができ、与党の議員を減らすことができます。

数の上ではそういうことになるのですが、野党の候補者が1人減ることで、有権者の選択肢を奪うことにつながります。

また、有権者が普段支持していない党の候補が統一候補になったとき、統一候補に投票して当選しても、会派が違うため有権者が望む政治活動をするとは限らないという問題があります。

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野党再編はダメだけど候補者調整はOK?


■会派所属議員数を増やす方法

国会では会派の所属議員数で政治活動の幅が変わります。会派の所属議員数を変える方法は2つあります。選挙戦を勝利するか、話し合いで会派を大きくするかの2つです。

選挙は毎年ありませんが、話し合いはいつでもできるので、話し合いで会派を大きくするほうが機会が多いかもしれません。

そう考えると、夏の参議院議員選挙にむけた野党共闘という候補者調整はやると言っているのに、話し合いによる会派拡大である野党再編に否定的な立憲民主党の態度はよくわかりません。

候補者調整は、どこかの党が立候補者を降ろすことになるので、話し合いで会派を拡大するよりも重大で繊細な話だと思います。野党再編ができないのに、候補者調整ができるというのは腑に落ちません。

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