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国会召集を前にみんなの党への圧力が高まる―結いの党会派離脱問題


 2014年1月21日現在。今週末24日に通常国会が召集されます。結いの党の会派離脱問題のひとつめの区切りが近づいています。国会冒頭の代表質問に、結いの党から質問者を出せるかどうかがかかっているからです。また、委員会の割り振りや、席ぎめなどもあるので、通常国会召集前にケリをつけておきたいところです。

 時間が切迫してきたからか、傍観していた自民党も、みんなの党に会派離脱問題の早期解決を求めました。(NHK NEWSWEB『会派離脱問題 与党22日までに結論求める』2014.1.20 21:39)自民党の主張に、「法的に認知されている結いの党が、国会で活動できないのは問題だ」というものがありました。「法的に認知されている」というのは、政党交付金の対象になっている党だということでしょう。

 通常国会召集を前に会派離脱を認める方向で、みんなの党に圧力がかかってきています。ですが、ここを乗り切ってしまえば、通常国会は結いの党が会派として存在しない形で始まるわけです。いったん、その状態を変えようとする機運が乏しくなるのではないかと思います。

 ルートは3つあります。みんなの党が折れるか、現状維持か、何らかの妥協案が成立するかです。もし、みんなの党が折れるとしたら、何が決め手になるかに関心があります。


嫌がらせには嫌がらせで返してみるー結いの党の会派離脱


 2014年1月20日現在。結いの党は、自党の比例選出議員の会派離脱をみとめないみんなの党に対し、法的措置も辞さない構えです。結いの党側は、みんなの党の態度を「嫌がらせ」と言っています。もし、法的措置をとっても会派離脱を実現できなかった場合、結いの党がとれる選択肢にはどのようなものがあるでしょうか。

 実現可能かどうかを別にして、ひとつ考えられるのは、みんなの党の会派にいる結いの党の議員が、みんなの会派の決定とことごとく反対の態度をとることです。ひたすら造反するわけです。みずからの政治信条は脇において、どんな議題だろうが、つねにみんなの会派と反対の行動をとる。

 こうしたとき、みんなの党は造反した議員になんらかの処分をくださないと会派としての立場がありません。しかし、造反した議員はすでに離党して別の党にいるわけで、処分のくだしようがありません。みんなの党としては手のうちようがないわけです。つまり、どんどんみんなの党は立場がなくなっていきます。耐え切れなくなったみんなの党が、会派離脱を了承する、という流れになる。

 まぁ、こんなことをしたら、それこそ完全に嫌がらせなので、結いの党もただではすまないと思います。みんなの党も結いの党も結局野党なのですから、与党に反対という点で一致することが多いでしょう。ということは、みんなの党と反対の行動をとるために、あえて与党に賛成する場面もでてくることになります。同じ政治理念のもとに野党勢力を結集するという目標をかかげた、結いの党の議員にはできるはずがありません。

 せっかく思いついた現状打開策ですが、思いつきに過ぎませんでした。ただ、どのような方法をとるにせよ、「会派離脱を認めないとおかしい」という空気が十分に醸成されれば、みんなの党は会派離脱に応じざるを得なくなるでしょう。逆に、「比例選出議員が既存政党に移動するのはどのようなかたちであれおかしい」という空気が醸成されれば、結いの党は会派離脱できないことを前提に国会で活動せざるを得ないでしょう。


みんなの党と結いの党の理屈


 2014年1月19日現在。みんなの党と結いの党が、会派離脱問題でもめています。

 会派というのは国会での活動単位で、各政党とほぼイコールの勢力です。ただ、会派から抜けるには所属会派によって会派離脱届けが出されなければいけないため、結いの党の比例選出議員は未だにみんなの党の会派に所属していることになっています。みんなの党が、比例選出の議員の会派離脱を認めていないためです。

 みんなの党はなぜ比例選出の議員の会派離脱を認めないのでしょうか。比例選出の議員は、基本的には「みんなの党」を支持した有権者の投票によって選ばれたものです。それならば、みんなの党を離党した時点で選出されたそもそもの資格を失うのではないかという懸念があります。その理屈を広げると、「比例選出の議員の議席は、議員個人のものではなく、みんなの党の議席である。したがって、離党するなら議員辞職し、みんなの党に議席を返上すべきだ」というみんなの党の主張になります。

 そうは言っても、例えば所属政党が選挙時の公約に反した行動をしていて、これに納得出来ない議員が離党して新党を結成するようなケースもあるでしょう。この場合は、離党しても有権者に対する裏切りにはならないと思えます。そのためか、公職選挙法(99条の2)でも当選したときに行われた選挙の際に存在していない政党に移る場合なら当選が無効にならないとしています。

 ただ、結いの党の場合は複雑です。基本的な路線として、結いの党は日本維新の会との合流を志向しています。結局、合法的にみんなの党から維新の会に移動するために、いったん新しい党を作ったんじゃないかといわれても仕方がない立場なのです。

 現実として、みんなの党と結いの党は別々の政党として存在しています。政党ごとにもらえる政党交付金も、結いの党は受け取れる見通しです。別々の党で、意見も違うのに会派が同じということが成り立つのかが問題です。


結いの党は裁判所にどうしてほしいのか


 2014年1月18日現在。結いの党が、みんなの党の会派から離脱が認められない現状を、法的措置によって打開しようという主張をし始めています。

 法的措置をとるということは、どこかを訴えることになると思います。そもそもどこを訴えるのでしょうか。

 みんなの党を訴える場合は、どういう主張になるのでしょうか。結いの党は、政党交付金を受け取る資格がある政党として、みんなの党とは別に存在しています。その結いの党の所属議員の会派離脱届けを、みんなの党が国会に出さないのはおかしいという主張になると思われます。会派の離脱は、所属する会派が出すことになっているからです。

 ただ、裁判に訴えるとして、最終的に裁判所にどうしてもらいたいのでしょうか。裁判所に何を強制してもらえば、結いの党は会派離脱という目的を達成できるのでしょうか。みんなの党に、会派離脱届けを出すよう命令してもらう?それとも、所属会派が届けを出さなくても会派から離脱できるように、国会に命令してもらう?

 国会に命令する方はありえません。会派離脱問題と似たような話が以前ありました。ある議員が法案を提出しようとしたところ、国会の事務局が受け取りを拒否しました。その議員の所属会派の承認がなかったためです。慣例により、法案提出には会派の承認が必要だったのです。これを機関承認と言います。その議員は国を相手取り、法案が受理されないのはおかしいという訴えを起こしましたが、裁判所は国会の自律権(自分で自分のことを決める権利)の問題であるとして、判断を避け、訴えは棄却されました。

 裁判所といえども、おいそれと国会の内部のことに口出しはできません。これを念頭においたのが、時事ドットコム『「法的措置」に不快感=みんな代表』で報じられたみんなの党の渡辺代表の言葉です。以下、時事ドットコムからの引用です。

(引用者註:渡辺代表は)結いの党がみんなの会派からの離脱を認められない場合、法的措置を検討すると主張し始めたことについて、「国会の中で自律的に決められる話を、あえて三権分立の憲法秩序の中で、裁判所に持っていってどうするというのはちょっと考えにくい」と述べ、不快感を示した。

 結いの党は、法的措置の検討をどこまで本気でしているのでしょうか。ハッタリなのでしょうか。よくわかりません。だからこそ、結いの党がどのような法的措置をとるのか、非常に興味があるのです。


結いの党の会派離脱問題


 2014年1月17日現在。結いの党が、会派離脱を認めないみんなの党に対し、法的措置を検討するという報道がありました。(時事ドットコム:『会派問題、法的措置も=結い』

 結いの党は、昨年末にみんなの党の元幹事長の江田さんと、みんなの党の離党者を中心に結成されました。結いの党の議員は、すでにみんな党からは抜けています。ただ、みんなの党は国会の活動単位である「会派」から、比例選出の結いの党議員を離脱することを許可していません。会派を離脱するには、離脱しようとする会派の承認が必要なのです。そのため、結いの党は国会で「結いの党」として活動することが難しくなっています。

 当初は、みんなの党が会派離脱を承認するよう、結いの党は他党の協力を得て圧力をかけようとしていましたが、自民党などは「当事者同士で話し合ってほしい」と積極的なかかわり合いを避けていて、うまくいきませんでした。結いの党としては、もうどうにもならなくなったため、司法に活路を求めたようです。

 もし、法的措置をとるのなら、どのような訴えになるのか非常に興味があります。


国会入門とハマコー


 『議会用語事典』や『新・国会事典 第2版』、白井誠『国会法』は、細かいところ、制度上どうなっているか微妙なところを調べるのに便利です。ただ、かなり細かいので、いきなり読むと嫌になってしまう可能性があります。

 国会の実体をつかむのに最初に読むといいのは、清野正哉『国会とは何か』です。国会の1年間の流れがつかめます。もうひとつあげると、浜田幸一『お願いだから、わかって下さい。国会というところ…』がとてもいいです。

 ハマコーと呼ばれて有名だった浜田元衆議院議員の本は、超入門者向けという位置づけになっていますが、あなどれません。本の前半で議院運営委員会の役割や、国会対策委員長の役割を説明していて、与党が政府提出法案の成立させる目処をつける役目を負っていることがわかります。しかも、当時の議院運営委員長と国対委員長のインタビューという形式になっています。さらに、衆議院事務総長のインタビューもとっていて、国会職員の解説まで入っています。

 ハマコーさんがどうも合わないという人でなければ、かなりおすすめです。



国会の細かい動きを調べる本


 少し国会について調べてみると、いろいろな疑問にぶつかります。

 なんで提出された法案がただちに委員会に付託されないのか。本会議趣旨説明要求が付されたからというけれど、どのタイミングで、どのようにして要求を出すのか。また、どのタイミングで本会議で趣旨説明することが議運の議題になるのか、あるいは趣旨説明を省略することが議運の議題になるのか、というようにです。

 日々の政治ニュースを理解するだけでも、中学校の教科書以上の知識が必要になります。教科書は国会の機能の大枠しか説明してないからです。また、大概の政治入門書は、内閣をはじめとする行政の動きや、政策にスポットをあてていて、国会の機能は原則しか説明されていません。

 原則に当てはまらない部分を調べる本として、『議会用語事典』や『新・国会事典 第2版』、白井誠『国会法』は大変参考になります。ただ、これらは細かいところ、制度上どうなっているか微妙なところを調べるのに主に使っています。



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安倍内閣に不安材料はあるか


 2014年1月14日現在。安倍内閣も2年目に入っています。通常国会の召集まであと10日、安倍内閣に不安材料はあるでしょうか。

 消費税増税に代表される経済問題、中韓関係や対米関係のような国際問題などありますが、ことが起こったときに安倍内閣にダメージを与えるほどのものがあるかどうかはよくわかりません。

 どのような問題であれ、安倍内閣が危機に陥る条件があります。それは、安倍内閣の制度的な存在基盤である与党が動揺してしまうことです。

 何か事件が起こって内閣支持率が下がったりしても、与党が気にしなければ安倍内閣は安泰です。衆議院でも参議院でも過半数をもっていますから、完全に国会が止まるような事態は起こりません。野党が審議拒否しても、粛々と国会運営を進めていくだけです。

 しかし、与党が動揺してしまったら一巻の終わりです。逆に言えば、与党が動揺するほどの事件が起こらなければ、安倍内閣は安泰です。


与党がサボると政府は立ち往生する


 2014年1月13日現在。どの内閣にとっても、最大の不安材料があります。それは、与党がそっぽをむくことです。

 内閣は国会の多数派の支持によって存在しています。多数派がすなわち与党になります。与党の協力なくして、内閣は存在しえません。内閣不信任案が提出された時、与党が割れて不信任案が可決されたら、首相は衆議院を解散するか、内閣総辞職するしかありません。解散して選挙に勝利したとしても、内閣はいったん総辞職してから新しい内閣として発足することになります。

 また、与党には与党の役割があります。与党の役割のひとつに、内閣が提出した法案を成立させるというものがあります。法案を成立させるということは、衆議院で委員会に付託し、委員会で審査し、更に本会議で採決、そして参議院でそれを繰り返すということです。この日程をこなすために野党と調整して、より多くの内閣提出法案を成立させるようスケジュールを組むのが与党の仕事です。

 国会での審議スケジュールの形成過程に内閣はほとんど干渉できません。ですから、もし与党が意図的にサボったら、政府は新しいことが何もできないという事態に陥りかねないのです。

 そうならないように、首相は腹心すべてを政府の役職につけるようなことはせず、何人か党の要職(幹事長、総務会長、政調会長など)につけるということが必要になります。例えば、自分を支持する人間をすべて政府に入れた結果、ライバルが党を掌握してしまったらどうなるでしょうか。ライバルが法案の成立を意図的に遅らせることにより政局となり、支持率が低下し、最悪、退陣に追い込まれる可能性があるのです。


ねじれ後も参議院は政府・与党の障壁になる


 2014年1月12日現在。昨年の臨時国会召集後に、衆議院総選挙と参議院選挙での民主党の惨敗にともなう野党の多党化や、参議院での共産党の議席増によって与党の国会運営が困難になるのではないかという予想を立てました。

 その予想は見事に外れました。共産党は、せっかく理事ポストを得た参議院議院運営委員会で国家安全保障局や特定秘密保護法のことばかり発言していて、力を入れているはずの福祉政策に対する言及はわずかでした。自党が提出した法案を審議するための運動を起こした気配も感じられませんでした。目に見えるレベルでは、まったく国会運営に影響を与えていません。

 多党化にいたっては、単に野党の足並みが揃わないだけで、むしろ与党に有利に働いた印象さえうけました。日本維新の会とみんなの党は与党と協議して特定秘密保護法の修正にこぎつける一方、民主党は与党との修正協議で合意にいたらずに議事妨害戦術にシフトするという具合で、野党内の合意がとれなくなっています。

 ただ、ひとつ収穫があったのは、参議院の強さを改めて認識したことです。昨年の参議院選挙で自公で過半数を確保したため、ねじれは解消されました。解消されましたが、野党の構成で民主党が圧倒的な野党第一党として君臨しているためか、参議院での野党の抵抗は衆議院よりは足並みが揃っているように見えました。

 参議院での野党のあまりの抵抗に、与党はかなり強引な国会運営をし、会期の延長まで求めたほどです。まぁ、もともと窮屈な日程だったといえばそうなのですが、与党の思い通りにいかなかったのは確かです。

 与党、というより政府の行動に一定の歯止めをかけるために参議院は必要です。たとえ、ねじれが解消されたとしても、それだけの力を参議院は持っているのです。