2019」カテゴリーアーカイブ

統一会派ラッシュ


■立て続けに統一会派結成

2019年1月24日現在。28日の通常国会召集を目前に控え、野党同士のついたり離れたりのニュースが連日出ています。

  • 日本維新の会と希望の党が参議院で統一会派
  • 国民民主党と自由党が衆議院と参議院で統一会派
  • 立憲民主党と社民党が参議院で統一会派

ものすごい勢いです。国会での活動の幅は会派に所属する議員の数で決まり、選挙なしで会派に所属する議員の数を増やすには話し合いで会派を大きくするしかないとはいえ、ここまで動くとはという感じです。

■自由党と社民党、くっついたり離れたり

すごいのは自由党と社民党です。自由党と社民党は参議院で希望の会という統一会派を組んでいました。自由党系4人、社民党2人の少数会派です。しかし、自由党が国民民主党と統一会派を組んでしまったため、自由党と社民党は統一会派を解消しました。

■参議院の野党第一会派をめぐる争い

そこで出てきたのが立憲民主党です。立憲民主党を中心とした会派は、参議院で国民民主党の会派を2名上回っており、参議院の野党第一会派として与党と交渉していました。しかし、今回国民民主党と自由党が統一会派を組むことで、国民民主党の会派が立憲民主党の会派を逆に2名上回り、通常国会の参議院の野党第一会派は国民民主党の会派になる見通しになりました。立憲民主党は野党第一会派を維持するために、参議院で社民党と統一会派を組むことになったのです。

熾烈な数の争いです。今年の夏の参議院選挙で、野党共闘は本当にできるのでしょうか。

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途中式を省かない


■新聞は知っている人向けに書かかれている

世の中のことを知るには新聞を読むことがよいと言われることがあります。確かに、幅広い世の中の動きを知ることができます。ただし、新聞には大きな欠点があります。それは、「知っている人にしかわからないように書いてある」ということです。

新聞は紙媒体が基本です。限られた紙面にいろいろな記事を詰め込むため、記事の長さは制限されます。制限された文字数で読者に伝えるために、記事に書いてあることを理解するための前提となる知識の記載は省かれてしまいます。どういうことかというと、「政治を勉強しよう」と思って政治面を読んでも、何かが起こっているのはわかるが、どうしてそれが記事になっているのか、どういう意味になるのか理解できないということです。

■途中式が省かれている

この状態、何かに似ています。新聞を読んだときの「結果だけ書いてあって肝心なところが書いてない!」という気持ちは、数学の例題を読んだときや問題集の答え合わせをしたときの「最終的な答えはわかったけど、どうしてそうなったのかわからない!この行とこの行の間に何があったんだ?」と悩む気持ちに似ています。いわゆる途中式が省かれているためにそういう気持ちになります。「この省かれている途中式が分かる人は、答えがわかっている人じゃないか」という気持ちにもなります。

途中式がほしいというニーズがあるため、数学の参考書の中には詳しく途中式を書いていることを売りにしているものもあります。政治の入門書や解説本も、新聞記事で省かれている「途中式」を記載したものにしてほしいですね。

このブログも、「途中式」を省かないことを心がけたいです。


川と堤防、人間とルール


■ルールは堤防

政治におけるルールというものは、川の流れを制御する堤防のようなものです。川は堤防の形に従って、決められた方向に流れていきます。

しかし、大雨が降って川の水量が増えると、川は堤防を越えてはん乱します。また、もともとの川の流れに逆らった堤防では、川の流れで堤防が削られていくかもしれません。堤防は絶対ではありません。

川の流れと同じように、ルールは人間の行動にある程度の強制力を持って枠をはめますが、絶対のものではありません。革命や改革が起こってルールが消し飛んだり、人間の行動にあわないルールが形骸化して守られなくなったりするからです。


198回国会(通常国会)、1/28に召集決定


■カレンダーで見る国会

2019年の通常国会が1月28日に召集されることが決まりました。

今年の予算審議の日程が窮屈だという報道が出ています。カレンダーでみてみると、窮屈さがわかります。

以下の画像は、3月31日までに参議院で予算案の採決が行われなくても、憲法の規定で衆議院の議決のみで成立する期限の3/2までに衆議院で予算案が採決される想定で予想したスケジュールです。

このスケジュールだと、衆議院での予算審議は15日行われています。衆議院の予算審議の最速記録は14日なので、かなり早いペースで審議が進んだことになります。しかも、1日も休みなく審議しています。

何かスキャンダルが起こったら、野党の反発で1日くらい予算審議が止まる可能性があります。このスケジュールを実現するには、野党が審議拒否をしても与党のみで審議を続けるくらいのことをしないといけません。

結構厳しいような気がするので、与党は本音では3月2日までの予算案の衆議院通過にこだわらない考えかもしれません。自然成立に頼らなくても、最終的に3月31日までに参議院で予算案を採決できればいいからです。

Screenshot Screenshot


現在の情報の「解像度」を上げる


■目にしている情報は同じなのに、読み取れる情報が違う

将棋や囲碁ができる人は、盤面をみてどういう状態であるか判別することができます。私が同じ盤面もみても何がなんだかわかりません。目にしている情報は同じなのに、 得られる情報の量が違っています。

将棋や囲碁ができる人は私に比べて盤面から読み取れる情報量が多いために起こります。なんというか、みえている盤面の「解像度」が違うのだと思います。

私が国会の仕組みを中心に見ているのは、政治のニュースに対する解像度を上げるためです。解像度を上げることで、目に見える政治の現実が変わってくると思っています。

■ありえない選択肢を切ることで、読み取れる情報を増やす

ただ、いま言っている「解像度を上げる」ことは、文字通りすべての情報を余さず取り込んでいるということだけではありません。逆に、ありえない選択肢をバッサリ切っていくことも行っています。選択肢が無限にある場合は、結果の予想がつかないために今起こっていることの評価ができないからです。

ありえない選択肢を削るときの基準になるのが、時間やルールといった制約です。国会の場合は、時間の制約が非常に強いため、時間の問題から考えていくことで選択肢を絞ることができます。

選択肢を絞ることで、情報から読み取れる情報の精度を上げることができます。しかし、それは消した選択肢について考慮にしないことにつながるので、「思い込み」につながる危険性があります。


野党共闘の候補者調整とは


■候補者調整のねらい

野党共闘でいう候補者調整とは、野党の候補者のうち誰かを立候補させないということです。

90人有権者がいて、与党a野党b野党cにそれぞれ40:25:25の割合で投票するとします。野党bcで話し合って、cが立候補者を出さずに野党bの候補者を野党bcの統一候補とすれば、与党aの候補が40票、野党bcの統一候補が50票になり野党bの候補者が当選することができ、与党の議員を減らすことができます。

数の上ではそういうことになるのですが、野党の候補者が1人減ることで、有権者の選択肢を奪うことにつながります。

また、有権者が普段支持していない党の候補が統一候補になったとき、統一候補に投票して当選しても、会派が違うため有権者が望む政治活動をするとは限らないという問題があります。

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野党再編はダメだけど候補者調整はOK?


■会派所属議員数を増やす方法

国会では会派の所属議員数で政治活動の幅が変わります。会派の所属議員数を変える方法は2つあります。選挙戦を勝利するか、話し合いで会派を大きくするかの2つです。

選挙は毎年ありませんが、話し合いはいつでもできるので、話し合いで会派を大きくするほうが機会が多いかもしれません。

そう考えると、夏の参議院議員選挙にむけた野党共闘という候補者調整はやると言っているのに、話し合いによる会派拡大である野党再編に否定的な立憲民主党の態度はよくわかりません。

候補者調整は、どこかの党が立候補者を降ろすことになるので、話し合いで会派を拡大するよりも重大で繊細な話だと思います。野党再編ができないのに、候補者調整ができるというのは腑に落ちません。

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参議院の会派に所属しない議員は予算委員になれない


■会派に所属しない無所属議員は不利

竹中治堅監修『議会用語事典』(学陽書房)によると、参議院では会派に所属しない無所属議員は、第一種常任委員会の委員になることしかできないそうです。

参議院では常任委員会に第一種常任委員会と第二種常任委員会という種類があります。 内閣委員会など省庁別になっているものを第一種、予算委員会などその他のものを第二種としています。つまり、無所属議員は国会の花形の委員会である予算委員会の委員になることができないのです。

一年に一回必ず召集される通常国会は、会期の半分近くを予算審議に費やします。予算委員会に関われないということは、通常国会の会期前半でほぼ委員会で審議に関わることができないということです。

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少数会派の不利な点


■会派の所属議員数で委員になれる委員会が変わる

国会では、会派の所属議員数で活動の幅が変わってきます。

例えば、参議院では10人以上の所属議員がいる会派を交渉会派と呼び、所属議員を議院運営委員会の委員にすることができます。

議院運営委員会というのは議院の運営について話し合う委員会です。本会議の議事について話し合うことが多いです。

本会議の議事について話し合うことができるというのは、それなりに重要です。たいていの重要な法案には委員会で審議する前に本会議で説明することを求める「本会議趣旨説明要求」というものが出されています。「本会議趣旨説明要求」が出された法案は、本会議で趣旨説明するか、趣旨説明要求が取り下げられるか、趣旨説明要求を否決しない限り委員会で審議することができません。

この本会議趣旨説明要求について審議するのが議院運営委員会であるため、議院運営委員会の委員になることで法案審議のスタートに関わることができます。

逆に言えば、10人以上の所属議員がいる会派でないと、議院運営委員会に議決に加わることすらできないのです。

参考:竹中治堅監修『議会用語事典』(学陽書房)


会派に所属することと、政党に所属することの違い


■ 「無所属の会」の岡田代表ら9名が立憲民主党の会派に加わる

2019年1月9日の日経新聞朝刊に、衆議院の「無所属の会」の岡田代表ら9名が立憲民主党の会派に加わったという記事が出ていました。一方、同じ「無所属の会」の野田前総理大臣ら数名は立憲民主党の会派への合流を見送りました。

無所属の会は、岡田代表や安住元財務大臣、野田前総理大臣ら民進党のベテラン議員が結成した会派です。政権運営をしていた旧民主党を源流とする民進党は、2017年の衆議院総選挙からなんやかんやあって立憲民主党と国民民主党に分裂しました。分裂の過程で、無所属のまま衆院選を戦ったのが、無所属の会の面々です。

立憲民主党の会派に無所属の会のメンバーのほとんどが参加したということは、立憲民主党が旧民主党の後継政党になる第一歩になるかもしれません。

■会派とは

ちなみに、会派というのは国会で議員が活動するグループです。国会では、会派に所属する議員の数によって、どの委員会に所属できるか、委員会の運営に関与する委員長や理事などの役職につけるかどうかが決まります。会派の議員数は、国会運営に関わるうえで非常に重要なのです。岡田代表らが無所属の会を作ったのも、会派としてある程度まとまった人数がいないと国会運営に関与できないためです。

基本的には、政党と会派はイコールの存在になりますが、複数の政党がひとつの会派を組んだり、政党に所属していない議員が既存の政党と一緒に会派を組むことも可能です。無所属の会も、無所属議員が集まって会派を組んでいました。会派は自由なのです。

■会派に入ることは、政党に入ることではない

今回の場合は、無所属の会の岡田代表らは、特定の政党に所属しないまま、国会では立憲民主党とともに活動することになります。ざっくりいうと、国会では立憲民主党と一緒に活動するけど、選挙では一緒に活動しないということです。

たとえば、岡田代表は、国会では議員数の多い立憲民主党に割り当てられた質問時間を利用したり、立憲民主党に割り当てられた委員会の委員になって政府に質問することができます。会派が同じだからです。

しかし、選挙で岡田代表が苦戦したときに、立憲民主党の比例票で復活当選するようなことはできません。政党が違うからです。