参院対策が必要な理由


 自民・公明両党は、先日の選挙で衆議院の三分の二を超える議席を獲得しました。衆議院で三分の二を超える議席を持っているということは、民主党がいまだ第一党の座を死守している参議院で法案を否決されても、衆議院でそれを再可決し成立にこぎつけられるということです。とはいえ、参議院を無視した国会運営ができるわけではありません。例えば、日本銀行の総裁などは内閣が任命するのですが、任命には衆参両院の同意が必要です。この同意に関しては、法案と違い再可決の規定がないので、参議院が同意せず、話し合いにも応じない場合、どうにもならなくなってしまいます。そして、少なくとも来年の7月までは法案についても再可決は難しいです。そう考える理由は、「スケジュール」と「可処分時間」にあります。

 「スケジュール」というのは、来年7月に控えた参議院選挙のことです。選挙前には国会を閉じなければならないので、来年の通常国会は6月末で終わりになります。今年の通常国会は6月21日までであったところを、9月8日まで延長されましたが、来年はそんな大幅な延長はできません。

 ここで、「可処分時間」が問題となります。実は、衆議院の再可決の制度には二つの制限があります。その制限を乗り越えないと再可決の権利を行使することができません。ひとつは、もちろん参議院で法案が否決されること。もうひとつは、衆議院から参議院に法案が送付されてから60日経過することです。これは憲法59条の2項と4項に定められています。

 これがどういうことかというと、ある法案が参議院の本会議で採決せずに放っておかれた場合、衆議院で可決されてから60日過ぎなければ、衆議院で再可決できないということなのです。下手に否決すると、すぐ衆議院で再可決されて法案が成立してしまうので、本気で自公に抵抗するなら、採決を先送りし続けるのが一番合理的な行動になります。

 この制度上の事実と、来年7月に参院選があることを考えると、ひとつの結論が導かれます。通常国会の延長が6月末頃になる以上、再可決できる法案はそう多くはないということです。

 通常国会では、普通、その年の予算審議が行われます。そして、予算案は法案よりも優先して審議することになっているので、ほとんどの法案が予算が衆議院を通過してから実質的な審議に入ることになります。もし、3月中に予算案が衆議院を通過したとしても、7月までに通常国会を閉会しなければならない場合、法案を審議できるのは、4,5,6の3ヶ月になります。3ヶ月は90日です。衆議院・参議院の法案審議の中心となる、委員会の定例日が週2〜3日であることを考えると、参議院が審議拒否を貫いたら、ひとつの法案に60日かかっていれば、成立させられる法案が少なくなることは明白です。また、再可決を多用することで、与党が自分勝手に国会運営をしている印象になり、世論の反発を生む可能性もあります。

 自公が立法を通じて日本のタスクリストを本格的に再構成できるのは、来年の秋、臨時国会意向になるでしょう。しかし、その前の参議院選挙で自公が勝利しなければ、今よりさらに難しくなります。そして、参議院選挙で勝つためには、通常国会中に実績を出さなければなりません。日銀総裁人事などは、自民党の総裁選の最中にも言及していた、安倍総裁が最も重視している政策のひとつになるので、これを思い通り動かせなければ話になりません。そのためには、現時点での参議院の多数派工作が大変重要になるのです。

 自民党・公明党の勝ち過ぎを心配しているみなさん。みなさんの心配は杞憂です。日本国憲法は、こういうときのために、選挙制度の違う第二院を設置したのです。まずは、憲法を信頼しましょう。


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