無数にある法案のどれから審議を始めるか、というところから駆け引きは始まっています。法案審議のプロセスは委員会への付託、提案理由の説明、質疑、討論、採決、本会議での採決、となっていますが、この「付託」という法案審議の一丁目一番地の段階から与野党が激突することがあります。
本来、国会に提出された法案は議長が所管する委員会にただちに付託することになっているのですが、重要な法案については付託に先立ち本会議で法案の趣旨説明を行うことが求められます。この要求を「本会議趣旨説明要求」と呼びます。
本会議趣旨説明要求が出された法案は次のいずれかの手段で付託されます。(参考:白井誠『国会法』(信山社2013)P.148)
- 議院運営委員会の決定により趣旨説明・質疑を行う
- 趣旨説明を要求する会派が要求を取り下げる
- 議院運営委員会において趣旨説明を聴取しないことを決定する
与野党で交渉し、ある法案は本会議で趣旨説明を行い、ある法案は要求を取り下げるということをして、法案付託までの時間を稼ぎます。
法案は本会議の採決までいかなければ絶対に成立しないため、仮に会期末まで法案の付託が行われないと必ず成立しないことになります。会期末までいかなくても、会期の終盤に付託されては審議が採決までのスケジュールが窮屈になります。
現在の日本の政治制度では、原則として政権与党が過半数を確保していることを前提としているため、採決したら必ず政府案が成立します。これに対抗するには、野党は審議を通じて自分たちの意見を法案に反映させるか、採決を阻止するしかありません。
与党が法案提出前に党内で法案審査を行っている関係上、国会の審議で大幅な法案修正が行われることは難しいことと、野党間で法案の修正方法を統一できないことから、採決を阻止する方法が野党の攻撃方法の中心になるのではないかと思います。
採決阻止の最初の手段が、付託の遅延なのです。
本会議趣旨説明要求については、以下でも書いています。ちなみに、与党も野党提出法案について本会議趣旨説明要求をしています。