日別アーカイブ: 2019年9月22日

知る人ぞ知る議員立法のハードル


2019年9月22日現在。

来月10月4日に臨時国会が召集される予定です。7月の参議院選挙後、また、第四次安倍再改造内閣発足後、初めての本格的な国会が始まります。

■国会議員は法律を作るのが仕事?

参議院選挙が終わり、新しい参議院の構成が決まりました。次に気になるのは、「選ばれた議員がちゃんと仕事をしてくれるんだろうか」ということだと思います。

よく「国会議員は法律を作るのが仕事」と言われます。アメリカでは議員のことを「法律」を「作る人」という意味で、「ロー・メーカー」と呼ばれていて、議員立法が多いのに比べて、日本と来たら……というような批判は定番です。この批判は、日本とアメリカの政治制度の違いを無視した部分があるので的外れな部分もあるのですが、国会議員は法律を作るのが仕事だという意識を持っている人は多いのではないでしょうか。

では、議員立法の数で国会議員の仕事ぶりを判断することが適切でしょうか。実は、あまり適切ではありません。法案提出には厳しい制約があるからです。

■法案提出にはxx人の賛成者が必要

現在の国会の慣習上、国会議員が一人で法案を提出することはできません。衆議院では、法案の提出者の他に、賛成者が20人必要です。更に、法案が新たに予算が必要なものであった場合は賛成者が50人必要です。参議院は議員の数が衆議院と違うので必要な賛成者の数も違います。以下に表でまとめます。

20190922法案提出要件

予算が必要な法案は、各議院の10%近い議員の賛成を集める必要があるわけです。無所属議員や少数会派は自由に法案を出すことができないと言っていいでしょう。例えば、今夏の参議院選挙で話題になった、れいわ新選組や、NHKから国民を守る党は、それぞれ2名と1名しか議員がいないので、他の会派に協力してもらわなければ法案を提出することができません。(NHKから国民を守る党は、渡辺喜美議員と統一会派「みんなの党」を結成しているので、2名と数えることも可能です)

■機関承認のない法案は受理されない

さらに、衆議院では、法案を提出する際に所属会派の「機関承認」が必要です。会派で正式に提出を認められた法案でないと、衆議院事務局は法案を受け付けません。そういう慣行になっています。

つまり、衆議院で予算が必要な法案を提出するには、(1)50人以上の賛成者をあらかじめ集めること、(2)提出者の所属する会派の承認を得ること、の2つを満たさなければなりません。これでは、ある程度議員数が多い会派に所属している議員でも、所属会派の多数派と違う考えの法案を提出することが難しいです。