2012年10月25日現在。衆議院の議院運営委員会理事会は、政府から臨時国会召集について説明を受けました。
議院運営委員会は国会運営全体を仕切っている機関であり、国会のスケジュールはすべてここで公式に決まります。議院運営委員会が政府からの説明を受けることは、臨時国会召集に必要な手続きのひとつなっています。
この議院運営委員会の理事会に、自民党と公明党は出席しませんでした。自公が出席しなかったため、臨時国会冒頭で行われる野田首相の所信表明演説、それに対する質疑の時間配分と順番などの話し合いまではできず、政府からの説明を受けただけで理事会は散会してしまいました。
なぜ、今日決めてしまわなかったのでしょうか。反対する人たちがいないのだから、そのまま決めてしまってもいい気がします。
しかし、そうはいきません。「国会というのは議論する場であり、話し合わないのは理念に反する」という考えからか、国会の委員会の理事会では、ほとんどの案件を全会一致で決める慣行があるからです。
理事会というのは、委員会の開会日の決定や、その日の委員会で話し合う議題、各会派(政党とほぼ同じ構成です)の質問の順番と持ち時間などを決めます。これが全会一致で決まるということは、一人でも反対する理事がいたら委員会を開くことはできないということになります。
これが、全会一致と多数決の最も違う点です。全会一致で決めることにすると、多数派の思うがままにすることができなくなるのです。
とはいえ、いくら話し合っても解決しない場合もあります。このときは、委員長がその職権で委員会の開会を決めることになります。
会議の日程や議題などを決めることを議事整理権と言います。委員長はその権能を持っているので、理事会の決定によらず委員会の日程を決めることができます。 ただ、全会一致の慣行を破って行う、委員長職権による決定は非常に重いです。かつては委員長が辞任することで反発する野党を鎮めることもあったそうです。今でも、委員長の不信任案が出ることがありますね。
このように、理事会では全会一致で決するという慣行があるために、数で劣る野党の審議拒否という戦略が有効になるのです。しかし、理事会の反対によって審議を止めるのも絶対ではなく、最終的には多数党の意向通りに決まってしまいます。 一度、野党の欠席や反対を尊重して理事会を散会し、委員会の開会を延期するのは、野党の意見を尊重するという、儀式のひとつと言えるでしょう。
今回、具体的なスケジュールを決めずに、理事会を散会したのも、さらには、昨日の議事運営委員会の理事会で野党が欠席したため、政府から臨時国会召集の説明を受けることを延期したのも、儀式のひとつなのです。
参考文献:岩井奉信『立法過程』(東京大学出版会)
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