小沢さんの平成最後の仕事


■国民民主党と自由党が合併

2019年4月28日現在。おととい、4月26日に国民民主党と自由党の合併が決まりました。国民民主党が衆参あわせて58名なのに対して、自由党は衆参あわせて7名であるため、衆参あわせて79名の立憲民主党には両党が合併しても及びません。

国民民主党と自由党は、合併前から国会での活動単位である会派を共にしているため、合併後に国会での活動に変化が出るわけではありません。政党として一緒になるということは、国会対策よりも選挙対策の面が大きいのだと思います。

元自由党の小沢元共同代表にとって国民民主党は、平成5年に自民党を離党してから、7つ目か8つ目の政党にあたります。平成の政治に影響力を及ぼした政治家の1人である小沢さんの、平成最後仕事が、国民民主党と自由党の合併なのかもしれません。

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一度も実現したことのない何かを目指す「復古」


■復古という便利な言葉

復古という言葉は便利な言葉です。復古の対象が昔であればあるほど正しい気がしますし、昔々のことならば実際に生きていた人はいないので好き勝手に復古できます。

何かに立ち返るという動きは、「昔はこうだった」ということで、自分たちの理想を実現すべき理由の説明を省略しているに過ぎない場合もあるのではないでしょうか。もしかしたら、一度もこの世にあったことのなかった何かに立ち返る、「復古」もあるかもしれません。

この場合、現状を否定して違う枠組みの社会を作ろうとする点で、復古を目指す人たちは保守ではないと思います。

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予算委員会開会要求が通らない理由


■予算委員会開会要求でる

2019年4月20日時点のお話。

桜田前五輪担当相などの辞任について説明を求めるため、野党は予算委員会を開くことを要求しました。委員長は衆参両議院が定める規則により、委員長は委員の三分の一が要求した場合は委員会開かなければなりません。

■与党の審議拒否

しかし、予算委員長は開会をせず、野党に与党と話し合うことを指示したのみでした。
与党が予算委員会が開かれても出席しない意向を示したため、予算委員長が予算委員会を開いたところで、与党の出席がなければ予算委員会を成立させる最低出席委員数である定足数を満たせないので、予算委員会を開けないからです。

野党は予算委員会の出席を与党が拒否するこの件を、「与党の審議拒否」として批判を強めています。

ただ、野党も無条件で与党の審議拒否を責めることはできません。例えば、「三分の一の委員が開会要求した委員会に欠席することを禁ずる」という規則を付け加えたとします。このとき、与党の委員が常に三分の一の委員をもって委員会の開会を要求した場合、野党は審議拒否を永久にできなくなってしまいます。与党は過半数以上の議席を確保しているから与党になっているので、各委員会で三分の一の委員を出している可能性は高いため、十分あり得る話です。野党が審議拒否をできなくなって何が困るかというと、一方的に押し付けられた議題の審議で与党が審議時間を稼ぎ、「○○時間審議したので審議は尽くされた」として採決に入られてしまい、与党の好き勝手に国会運営ができてしまう点があります。

また、そもそも定足数は少人数の会議で決められたことを全体の決定にしないということに意義があります。たとえ、10人委員がいるとして、委員長を除いて3人しか委員の出席がないときに2人の賛成、あるいは反対だけで物事を決めていいのでしょうか。ある程度の人数が出席しなければ、会議が成立したとみなさないことは、正当な会議を成り立たせるために必要な規則です。

とはいえ、三分の一の委員が委員会の開会を要求したときは委員会を開くという規則は、少数会派の意見を会議で表明させるという趣旨があるはずです。与党が出席しない意向を示すのは、野党に審議拒否の自由がある以上認めざるを得ませんが、委員長が委員会を開く決定を速やかにしないことは問題があると思います。結局与党委員が出席しないため定足数が満たせないとしても、委員長には規則に則って委員会を開く義務があると思うからです。

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なんとも言えない表情が印象的だった映画『バイス』


■チェイニー副大統領を題材にした映画『バイス』

『バイス』という映画を観ました。911のテロ攻撃に対するリアクションとして、軍事力でイラクのサダム・フセイン政権を崩壊させたジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領だったディック・チェイニーを主人公にした話です。

911をイラク戦争につなげたのはチェイニー副大統領だったというのが、この映画のメインの主張です。

のちに妻になるガールフレンドのリンに奮起させられたチェイニーが、下院議員のインターンからワシントンのキャリアを始め、一歩ずつ権力の階段を登っていくのをみるのは、アメリカの政治制度や政治理論が垣間見れてとても面白かったです。

■印象的だった、なんとも言えない表情

チェイニーを演じたのは「ダークナイト・トリロジー」でバッドマンを演じたクリスチャン・ベールです。このベールが浮かべる、口を結んだ怒っているとも悲しんでいるとも無表情とも読める、なんとも言えない表情が印象的でした。昨年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の西郷役の鈴木亮平も、ドラマの中で似たような表情をしていました。

あの表情は、洋の東西を問わず、謀をめぐらす大柄な政治家の得体の知れない雰囲気をあらわすものなのかもしれません。


【2019通常国会】2019年度予算案の衆議院での採決で、なぜ深夜国会になったか


■2019年度予算案の衆議院本会議での採決は、3月2日の未明に

2019年度予算案は、2019年3月2日の午前0時40分頃に衆議院本会議で採決され可決しました。なぜ、午前0時をまわってしまったのでしょうか。

■もともとの予定

もともとの予定はこうです。

まず、衆議院予算委員会を3月1日の午前9時から開始して、3時間程度審議し、お昼までに採決します。

そして、午後から予算案と同時に採決する必要がある、税制改正法案を総務委員会と財務金融委員会で採決します。

これらの委員会の審議は1時間半くらいかかります。

このあと、本会議で2019年度予算案を採決します。

本会議での予算案の採決までは1時間半程度かかります。この場合は、3月1日の夕方くらいには予算案を採決できます。

■実際の動き—根本厚生労働大臣の不信任決議案提出で、午前中の予算委員会断念

実際はこうです。

まず、予算委員会が3月1日の午前9時から開始できませんでした。理由は、予算委員会の開始直前の午前8時40分に立憲民主党などの野党が根本厚生労働大臣の不信任決議案を提出したためです。

この日の予算委員会は全大臣が出席する締めくくり質疑が行われる予定になっていました。不信任決議案を提出した野党としては、信任に値しない大臣が出席する予算委員会の審議に応じられないということで、予算委員会の理事会を欠席しました。立憲民主党などが欠席するなか開かれた予算委員会の理事会で、午前9時から審議を行うことを断念し、根本大臣の不信任決議案が採決されてから審議を行うことが決まりました。与党が譲歩したわけです。

「それなら午前中に不信任決議案を採決すればいいじゃないか」と思うかもしれません。しかし、そうはいきません。根本大臣の不信任決議案の採決は本会議で行う必要があります。本会議の議事日程は、あらかじめ決めておく必要があるため、急に開くことは難しいです。3月1日は、すでに午後1時から本会議を開くことになっていたため、根本大臣の不信任決議案は午後1時以降にならなければ採決されないことになりました。これで、午前中を予算審議に使うことができなくなりました。もちろん、立憲民主党などの不信任決議案提出は、この予算委員会の開始を午後に遅らせるのが狙いです。

■午後、本会議開会

午後1時に本会議が開会し、根本厚生労働大臣不信任決議案を上程する動議が出され、不信任決議案の審議が始まりました。本会議で審議する案件は議事日程と同じくあらかじめ決められていて、決められた議事日程通りに会議を進めていかなくてはなりません。ですから、議事日程が決まったあとに出された議案を本会議で審議するには、議事日程を追加する動議を出す必要があるのです。

根本厚生労働大臣の不信任決議案ですが、採決が終わったのは午後4時過ぎです。なぜそんなに時間がかかったのかというと、採決に先立って行われた討論で、立憲民主党の小川代議士が持ち時間を大幅にこえて2時間近く演説したためです。不信任決議案の討論を申し出たのは小川代議士を含めて6人で、討論は全体で2時間36分でした。その後採決は記名投票という議員ひとりひとりが演壇まで歩いて投票するスタイルのものであるため、20分ほどかかっています。これが、不信任決議案に3時間かかった理由です。不信任決議案は否決され、本会議は休憩しました。休憩したのは、予算委員会を開くためです。

■午後5時、予算委員会始まる

本会議休憩後、午後5時から衆議院予算委員会が開かれました。予算委員会は総理大臣とすべての大臣が出席する締めくくり質疑、討論、採決が行われ、可決しました。この審議に3時間半程度かかりました。ここまでで、午後8時半です。このあと午後8時40分ごろからから総務委員会と財務金融委員会が開かれ、税制改正法案が審議されました。この2委員会が終わったのが午後10時ごろです。8時半から始業の会社なら深夜残業に突入する時間です。

■午後10時50分、本会議再開

午後10時50分ごろから本会議が再開し、予算案を上程する動議が出されました。やっと本会議で予算案が審議されます。この審議が1時間をこえても終わりませんでした。本会議中に午後12時を迎えてしまうことが明らかになったため、議長は午後11時50分ごろに残りの議事日程を20分後の3月2日午前0時10分から行う延会を宣告しました。

日付が変わって3月2日午前0時10分ごろ予算案の審議が本会議で再開され、午前0時40分ごろ採決・可決されました。

■びっしりの予定

ここまで書いていて実感しましたが、本会議が始まった3月1日の午後1時以降の予定はびっしりで、会議と会議の間は30分程度しか時間がありません。国会議員には体力も必要だということですね。

もともと予算案の本会議での採決までに、会議と会議の間を含めて8時間程度かかる関係上、不信任決議案を採決予定日の当日に提出して2時間の演説をした時点で、6時間分を上乗せすることが確定していました。

■深夜国会になった責任は与野党ともにある

結局、深夜国会は与野党合作です。政府与党は年度内自然成立を断念するか、もっと早く国会を召集して予算審議を始めれば深夜国会を避けられました。立憲民主党はそう主張しているようです。しかし、野党も3月1日採決を受け入れるか、根本厚生労働大臣の不信任決議案を2月28日より前に提出すれば、深夜国会を避けられたのです。根本厚生労働大臣の不信任決議案を3月1日の朝提出すべき合理的な理由は、採決を遅らせる以外に見いだせません。

すべてお互い様ですし、どちらも正しいです。どちらが良いかは、個々人で決めるしかありません。与党も野党も明らかなルール違反はありません。


【2019通常国会】予算審議第八週終了-2019年度予算成立


■2019年度予算成立

2019年4月1日現在。先週、3月27日の参議院本会議で2019年度予算案が可決し、2019年度予算案が成立しました。

■締めくくり質疑から本会議採決までの流れ

3月27日は、まず参議院予算委員会で2019年度予算案の「締めくくり質疑」が行われました。締めくくり質疑は予算審議の最後に行う質疑で、総理大臣をはじめ、すべての閣僚が出席します。普段の質疑では、答弁を要求されている大臣しか委員会に出席しないので、政府にとっては大変な会議です。しかし、予算が成立しなければ新しい事業は何ひとつできないので、背に腹はかえられません。

締めくくり質疑が終わると、つぎに「討論」が行われます。討論と言っても、予算委員同士で議論することはありません。予算委員のうち各会派を代表した議員が予算案について賛成/反対とその理由を順番に述べるだけです。

討論が終局すると、ただちに採決します。委員会での採決は、本決まりではなく、あくまで「委員会審査で可決すべき/否決すべきと決した」ものにすぎません。最終決定は、全議員が一堂に会する本会議の採決で行われます。

2019年度予算案は予算委員会で採決した当日の本会議に「緊急上程」され、本会議の議題にのぼりました。本会議では、委員長による審議経過の報告と「討論」(委員会の討論と同じ形式です)が行われ、採決されました。

参議院では深夜国会になることもなく、日中に採決されました。予算は年度末を前に余裕をもって成立していますので、今回の予算審議は政府与党の思惑通り進んだと言えるでしょう。 Screenshot


【2019通常国会】予算審議第七週終了


■2019年度予算案は3月27日成立か?

2019年3月24日現在。2019年度予算審議は大詰めです。与野党は25日の参議院予算委員会での集中審議に続き、26日の一般質疑、27日の締めくくり質疑の開催に合意しています。報道によると、与党は当初26日の締めくくり質疑を提案したそうですが、野党に配慮し27日に延ばしたとのことです。

予算委員会では、締めくくり質疑が行われた日に、予算案について討論と採決が行われます。また、予算委員会で予算案を採決した場合は、その日のうちに本会議で採決されることが多いです。

■緊急上程

さて、本会議を開く日時と議題(案件)は、事前に全議員に周知し官報に掲載するルールになっています。このとき、まだ委員会で採決されていない案件を本会議の議題にすることはできません。例えば、2019年度予算案は事前に周知される27日の参議院本会議の日程に日程に上がらないことになります。それでは早く本会議で採決して予算案を成立させたい与党は困ってしまいます。

そこで「緊急上程」という技が使われます。本会議の開会後、議員から「議案上程に関する緊急動議」が提出され、本会議中に議題を追加して審議を進めるのです。

動議とは予定された議案以外の案件を議題にすることです。この場合は、「いま本会議で、この議案について審議することを望む」というのが動議です。

本会議中に議題を追加することで、本会議当日に採決された議案を本会議で採決することができます。「緊急上程」という言葉が出てきたら、「その日のうちに委員会の採決と本会議の採決をやるんだな」と思えば間違いないです。

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国会職員は神主


■選挙と話し合いにはルールが必要

議会制民主主義は、自然に当然に成り立つものではありません。「選挙をして、選ばれた議員が話し合って決めればいいだけでは?」と思われるかもしれませんが、それだけでは難しいです。選挙も話し合いも、ルールが守らなければ単に「こなしただけ」なってしまい意味がないからです。

たとえば、話し合えばいいとは言っても、話し合うメンバーが偏っていたら意味がありません。本会議の日時を与党議員だけに連絡し、野党議員が出席できないようにしたら、与党議員と野党議員の数に差があろうがなかろうが与党の思い通りになってしまいます。そういうことがないように、あらかじめ本会議が始まる日時をすべての議員に通知する規則があります。

この規則をはじめ、議会制民主主義を成り立たせるために必要なさまざまなルールがあります。これらのルールや手続きは、議会制民主主義をこの世に成り立たせる儀式のようなものです。決まった手続きで物事を行うことで、この世に実体のない何かを現すという意味で、国会で行われていることはお祭りと同じものなのかもしれないと思うときがあります。そして、ルールと手続きに精通した国会職員は神主のようなものかもしれません。


【2019通常国会】予算審議第六週終了


■参議院の予算審議も残りわずか

2019年3月17日現在。予算審議は第六週目を終えました。すでに参議院では予算案の採決の前提となる中央公聴会を終えています。残るは、衆議院での分科会に相当する委嘱審査と、締めくくり質疑、そして討論・採決です。

来週の予定は、18日の集中審議、19、20日の委嘱審査まで決まっています。自然成立の期限もありますし、25日週での採決・成立は確実な見通しです。

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なぜ立憲民主党は衆参両院で最大野党なのに、参議院で国民民主党と野党第一会派争いをしなければならないのか


■立憲民主党、参議院の野党第一会派を奪還

2019年3月12日現在。先週3月7日に参議院の野党第一会派が国民民主党を中心とする会派から立憲民主党を中心とする会派に変わりました。今年の1月に国民民主党を離党して立憲民主党に移る意向を示していた藤田議員を、国民民主党が除籍処分して会派離脱を認めたためです。

野党第一会派になるかどうかというのは極めて重要です。審議のスケジュールなどなどの交渉では、野党第一会派が野党を代表して与党と交渉するからです。

■衆参両院で数えると、大差で立憲民主党が野党第一党だが……

藤田議員の会派離脱が決まったことで、衆議院と参議院の両方で立憲民主党を中心とする会派が野党第一会派になりました。とはいえ、参議院での立憲会派と国民会派の議員数は28対27で1名差です。参議院では野党第一会派と第二会派の差はあまりないのですが、衆議院では68対39と大差をつけています。衆参両院で合わせれば、元から立憲民主党は野党第一党と言えます。

「衆参合わせて元から立憲民主党の議員が野党議員で一番多いのだったら、参議院の議員数とか関係なく立憲民主党が与党と交渉すればいいのではないか」と思われるかもしれません。しかし、そうはいきません。立憲民主党が「衆参通算では野党第一会派だから、参議院の第一会派もよこせ」と言わないのは、衆議院と参議院が独立しているという建前があるためです。

■衆議院と参議院は対等で独立している

衆議院と参議院は、いくつかの規定で衆議院の議決が参議院に優越することはありますが、原則としてそれぞれ独立した存在です。衆議院と参議院の間に上下関係はありません。国会の中に衆議院というセクションと参議院というセクションがあるのではなく、衆議院という国会と参議院という国会があるのです。国会が2つあるということ、これが二院制です。余談ですが、日本の立法・行政・司法のそれぞれのトップである「三権の長」は4人います。行政は内閣総理大臣、司法は最高裁判所長官、そして立法は衆議院議長と参議院議長、この4人です。

二院制の意義のひとつは、それぞれ違う方法で選出された議員が会議を行って物事を決めることです。参議院にとって、衆議院の野党第一会派がどこだろうが知ったこっちゃないのです。参議院のことは参議院で決めるという自律性が大事なので、衆議院の議員数を根拠に、参議院の野党第一会派が当然立憲民主党の会派になるという主張はできません。