都知事に対する不信任決議案提出のリスク


2016年6月14日現在。東京都議会が大変なことになっています。
舛添都知事のスキャンダルは、都議会の主要な会派すべてが都知事の不信任決議案を提出する段階まできました。

■地方自治でも不信任決議案は諸刃の刃

この不信任決議案は、ただちに辞任しそうにない都知事の態度に業を煮やした与野党が出したものです。不信任決議には法的拘束力があります。可決した時には、都知事は10日後には失職することになるのです。

ただし、10日以内に都議会を解散した場合は失職しません。都議会選挙後に招集された都議会で、再び不信任決議案が可決しない限り、自らの意思に反して都知事の座を降りることはありません。

もし解散となれば、都議会議員にとって面倒なことになるでしょう。仕事はクビになる、選挙のためにポスターを作ったりしてお金がかかると散々です。

また、国会の野党にとっても面倒なことになります。せっかく7月の参議院議員選挙にむけて野党共闘で頑張っているのに、都議会選挙が行われるとなれば、東京での野党共闘は難しくなります。

前回の都議会選挙で旧民主党は共産党に議席数を抜かれるほどの敗北を喫しています。そのため、民進党にとって共産党を抜いて都議会の野党第一党に返り咲くというのは譲れない目標のはずです。

野党共闘の要である民進党と共産党が都議会選挙を巡って争う事態になるのが明らかならば、参議院議員選挙での野党共闘に影響を与えるでしょう。

不信任決議案を出すということは、以上の解散されることによるリスクを背負わなければならないのです。

不信任決議案が可決された時、都知事が解散すると心に決めたら、制度的に解散を止める手段はありません。解散するもしないも、都知事の心ひとつです。

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国会の会期について


 2016年6月5日現在。6月1日に今年の通常国会である第190回国会が150日の会期を終え、終了しました。

■会期の歴史

 通常国会(常会)の会期は国会法に定めがあります。

第十条 常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

 戦前は憲法に定めがありました。

第42条 帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ

 「三箇月」というと、およそ90日です。今日と比べてかなり短いですね。

■今も昔も会期は足りなかった

 150日ある現在でも、法案審議のための会期が足りずに延長されることがよくあります。戦前も、政府や議員は会期の短さに頭を悩ませていました。

 しかも、戦前は会期の延長が極めて難しかったと言われています。現在は国会の議決により会期を延長できるのですが、戦前は延長に天皇の勅命が必要でした。天皇の勅命でわざわざ延長したのに、政府が成立をねらっていた法案が成立しなかったとなると天皇の権威に傷がつくと考えられたため、会期の延長に及び腰になったのです。

 また、戦前の会期は憲法に定めがあったため、会期を伸ばすには憲法改正が必要でした。戦前も憲法はやたらに変えるものではないという意識があったらしく、会期の問題を根本的に解決させることは難しかったようです。

 戦前に比べると、今日のほうが会期について柔軟な対応が可能になっています。


解散を望まないのなら、不信任決議案提出は危険な挑発行為だ


民進、共産、社民、生活の4野党党首は19日、国会内で会談し、安倍内閣に対する不信任決議案の共同提出を検討していくことで一致した。
不信任案共同提出へ調整=消費増税に反対-4野党党首:時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/article?k=2016051900295&g=pol @jijicomより

2016年5月21日現在。野党が安倍内閣に対する不信任決議案の共同提出を検討しているという報道がでています。

■内閣不信任決議案とは

内閣不信任決議案の文面は、以下のようなものになります。

本院は○○内閣を信任せず。
右決議する。
理由
………

憲法69条により、不信任決議案が可決した場合、内閣は10日以内に衆議院を解散しない限り総辞職しなければなりません。

■事実上の解散要求だが可決されることは少ない

過去に内閣不信任決議案が可決されたときは、時の内閣はすべて衆議院の解散で応じています。そのため、事実上の解散要求です。

ただ、通常、内閣は衆議院で多数を占めている与党の支持を受けているため、野党提出の不信任決議案が可決されるということは極めて稀です。

解散総選挙に消極的に見える民進党も、安心して不信任決議案を出せるのかもしれません。国会の会期末に野党の結束を確かめるためにとりあえず出しているといるという慣習もあるのかもしれません。

■首相に解散の大義名分を与えてしまう可能性がある

一方、「安倍首相は衆議院の解散を狙っているでは?」という報道は絶えません。

不信任決議案提出は事実上の解散要求ですので、「不信任決議案を提出されたことを重く受け止め、衆議院を解散し国民に信を問うことにした」と言って解散の大義名分にすることは可能です。野党が不信任と言っているのだから、先回りして解散されても文句は言えません。

また、マニアックな話なのですが、「憲法上、首相は自由に衆議院を解散することはできず、内閣不信任決議案が可決されたときのみ解散できる」とする説が地味に盛り上がっています。最近人気のある憲法学者の間で唱えられています。

その説に立つ場合も、不信任決議案の提出は首相にとって渡りに船です。不信任決議案の採決に際して、与党議員を本会議に出席させず、不信任決議案に賛成する野党議員の方が多くなるように仕向けて無理矢理不信任決議案を可決させることが可能です。不信任決議案が可決してしまえば、首相は憲法69条により堂々と衆議院を解散することができます。

国会会期末の風物詩とも言われる内閣不信任決議案の提出ですが、解散を望まないのなら、今回はよく検討したほうが良いでしょう。だからこそ、報道でも、不信任決議案提出を「決めた」ではなく「検討することを決めた」なのでしょう。

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解散を求めない野党による退陣要求は無責任


2016年5月19日現在。昨日18日、国会で党首討論が行われました。

岡田氏は機先を制して増税延期を主張。延期なら首相は公約に違反し、辞任に値するとの論法で攻め立てた。
消費増税めぐり神経戦=岡田氏「延期なら首相辞任を」-党首討論:時事ドットコム http://www.jiji.com/jc/article?k=2016051800908&g=eco

民進党の岡田代表の「首相は公約違反をしたから辞任せよ」という言葉から見えてくるものがあります。それは、民進党は現時点で政権交代を諦めているということです。

■内閣総辞職では政権交代にならない

総理大臣が辞任すると、国会は新たな総理大臣を指名することになります。ただし、国会の構成は変わらないため、辞任した総理大臣を支えていた与党の国会議員が総理大臣に指名されることになります。

与党が過半数の議席を占めている現在の国会の構成だと、安倍内閣が総辞職したとしても民進党の岡田代表が総理大臣に指名されるには自民・公明の議員に協力してもらわなければなりません。

したがって、自民・公明から民進党への政権交代はまず起きません。

では、国会の構成を変える方法は何かというと、選挙しかありません。参議院議員選挙の時期は憲法の規定もあって固定されていますから、能動的に国会の構成を変える手段は衆議院の解散・総選挙となります。

だからこそ、民主党政権で自民党は解散を求め続け、政権交代前の民主党も自民党政権に解散を求め続けていたのです。

■政権交代を求めない退陣要求は無責任

解散なき退陣要求は、端的に言ってしまえば「いまの首相は気に入らないからやめろ。与党はもっとマシな首相を出してこい」という、与党におんぶに抱っこな態度です。選挙を勝ち抜いて、政権交代を実現し、自分たちで政府を動かすという責任感に欠けています。

ただ、そんなことは岡田さんも承知しているでしょう。それでも、解散を求めないということは、解散されると非常に困る状況なのではないかと思います。多分、党内の調査で選挙に勝てないという結果がでてるか、準備が全くできていないのでしょう。

まぁ、解散できるのはあくまで首相なので、解散要求したからといって野党に都合のいいタイミングで解散してくれるとは限りませんけどね。野党はつらいです。

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臨時国会召集要求は、政府・与党にとって国会改革のチャンス


■野党が臨時国会召集を要求

2015年10月24日現在。3日前の10月21日に、民主、維新、共産、社民、生活の野党5党などが、臨時国会の召集要求書を提出しました。この措置は、憲法53条に基づくものです。

第五十三条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

『日本国憲法』

10月22日付の読売新聞朝刊の記事などによると、政府は臨時国会を召集しないそうです。

政府・与党は安倍首相の外交日程が立て込んでいることなどを理由に召集を見送る方針で、11月10、11の両日を軸に衆参両院で予算委員会などの閉会中審査を開催する構えだ。

(2015年10月22日 読売新聞朝刊)

本当にそれでいいのでしょうか。

■国会は野党にとって貴重な活躍の場

野党が臨時国会の召集を要求するのは、政府を追求する場が生まれるからです。政府に加わっている与党と違い、野党は国会が開かれなければ無力です。このまま臨時国会が召集されないと、次の国会は来年1月に開かれる通常国会まで待たないといけません。

具体的な活躍の場は、本会議や委員会です。ここでの質問や討論によって活躍することができます。話題になればテレビに繰り返し放映され、注目をあつめることができます。

特に、来年の夏は3年に1度の参議院議員選挙が行われます。選挙に向けて、注目を、そして支持を得られる機会が増えることはいいことです。

そして、質問を通じて、政府・与党の進める政策の問題点をあぶり出し、政策遂行に修正を加えることができれば、有権者にとっても利益になります。

■与党が臨時国会を召集する「うまみ」

与党にも臨時国会が開かれることによる「うまみ」があります。それは、今年の通常国会で成立にいたらなかった法案を成立させるチャンスが生まれることです。

法案が成立しなければ、政府が望む政策を実現することができません。与党にとって臨時国会は、残業のようなものです。

■もうひとつの「うまみ」

私は、今回の臨時国会召集要求については、与党にもうひとつのうまみがあると思っています。

与党は、安倍首相の外交日程が立て込んでいることを臨時国会召集拒否の理由にしていますが、立て込んでいるのだったら首相は国会に出なければいいのです。

首相や大臣が国会に出なければ国会審議が進まないのは、野党が首相や大臣不在の国会審議を認めないからです。これが、日本の国会が審議時間を巡る闘争が中心になる、ひとつの要因になっています。

しかし、今回は外交日程が決まっているなかで、あえて野党が臨時国会の召集を要求したわけです。自分で召集を要求しておいて、首相が国会に来ないから、大臣が来ないから、審議には応じませんと言われても困ります。何のために国会を召集したの?という話です。

政府・与党は、この機会に、閣僚の国会拘束時間のさらなる削減を目指すこともできるのではないでしょうか。


与党の想定通りなら、審議拒否で安保関連法案の成立阻止は不可能


■平和安全特別委員会は大盛り上がり

 2015年5月30日現在。昨年の集団的自衛権の行使を可能とした閣議決定を受けて作成された安全保障に関する法案を審議する、「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」の審議はかなり盛り上がっているようです。

 野次る首相や、むしろ首相以外の閣僚に答弁を求める野党など、例によらない面白い内容になっています。

■審議拒否で野党が狙うのは審議時間の減少

 そんななか、昨日29日は委員会に席を持つ全野党(民主・維新・共産)の審議拒否により、その日の委員会の審議は続行不能となり、散会しました。

 今日において、国会審議の充実度合いは審議時間の多寡ではかられます。たとえば、法案の採決を拒む野党に対し、与党は「XX時間審議したので、十分審議したと言える。ここまで審議しても野党が採決を拒むのなら、強行採決もやむを得ない。」と、与党単独で採決することがあります。

 審議時間は、法案を与党多数で成立させるための「ポイント」のようなものです。

 ある会派が審議拒否をして、その日の委員会の審議が行われなかった場合、審議時間という「ポイント」は貯まりませんので、法案の採決=可決は遠のきます。しかも、法案は衆議院と参議院、両院で可決しなければ成立しないので、片方の院で時間がかかった場合、もう片方の院でもかかった時間の7割程度の時間がかかります。

■会期が大事、ただし延長はできる

 さらに、国会には会期というものがあります。会期中に、両院で可決しないと法案は成立しません。平和安全特別委員会にかけられた法案が成立するには、一会期中に衆議院と参議院で審議し、両院で法案を可決させる必要があります。

 つまり、審議拒否をすればするほど、野党は与党に法案成立を断念させることができます。

 ただ、会期は審議時間が足りない場合、延長することができます。

■通常国会は一回しか延長できない

 現在開会されている第189回国会は憲法により一年に一回開くことを義務付けられている通常国会です。通常国会の会期は150日で、一回まで延長が可能です。

 ですから、今国会で平和安全特別委員会にかけられている法案を成立させるならば、この一回の会期延長の幅をいかに定めるかが重要になってきます。

 もし、延長した日程に法案審議がおさまらなければ、法案は成立しません。よくて継続審査(審議)で、悪いと廃案です。

 とにかく法案成立を阻止する野党としては以下のような国会戦略が考えられます。

 延長幅を小幅に設定させ、延長国会で世論を巻き込んで捨て身の議事妨害を繰り広げ、時間切れで法案不成立に持ち込むのです。

 まともに採決したら、どう考えても与党が勝つのだから、野党がその意を通すには、このようなまともでない手を使わないわけにはいきません。

■直近の通常国会では79日間の延長が行われた

 ちなみに、2015年5月15日 の日本経済新聞朝刊によると、通常国会の過去最大の延長幅は第96回国会(1981〜1982年)の94日間だそうです。最近では、第180回国会の79日間の延長があったそうです。

 第180回国会は2012年ですので、民主党政権・野田内閣のときですね。消費税増税を含む、税と社会保障の一体改革関連法案の成立のため、80日近い延長をしました。

■与党の想定通りなら、審議拒否で法案成立阻止は不可能

 平和安全特別委員会にかけられている法案は、消費税増税と違って、成立したことにより即国民生活に影響を与えるようなものではありません。ですが、与党は社会保障の維持と同じくらいの重要度があるものだと考えているようです。

 そのため、与党に「民主党だって消費税増税のために80日ほど延長したじゃないか!」と言われた場合、80日程度の延長幅を不当な要求とすることは難しいと思います。

 しかも、現在与党が想定している延長幅は2015年6月25日から同年8月上旬までであり、2012年6月22日から同年9月8日まで延長した第180回国会とくらべて、おとなしい延長幅と言えます。

 野党が審議拒否によって法案成立を断念させるのは、非常に厳しいと言えます。

■審議拒否以外にも野党の存在感を示す方法がある

 とはいえ、円満な採決を演出するために与党と取引して審議と採決に応じることで、自分たちとその支持者が許容できる内容に法案を修正させるという選択肢も野党にはあります。

 ですから、野党は抜け駆けして与党と交渉する野党勢力が現れないよう十分注意する必要があります。

 そして与党は、野党の切り崩しに全力をあげる必要があるでしょう。


代表質問は2月16日から:予算の年度内成立、さらに苦しく


■2月12日、来年度予算案提出

 2015年2月14日現在。2月12日に2015年度予算案が衆議院に提出されました。来年度予算案の提出に伴い、同日、総理大臣による施政方針演説など政府四演説が行われました。

■野党の勝利、慣例通り一日おいての代表質問

 演説に対する代表質問は2月16日から行われることで、与野党が合意しました。衆議院で2月16日、17日。参議院で2月17日、18日に行われます。

 来年度予算案の年度内成立を目指す与党としては、演説の翌日、2月13日から代表質問を行いたかったところです。しかし、野党は「大臣の演説に対する質疑は、演説の翌々日以後に行う」という慣例があることから、2月13日から代表質問を行うことを認めませんでした。

 所信表明演説のあった日の翌日に代表質問が行われることもあるので、必ずしもこの慣例を守っているというわけでもないのですが、今回は慣例通りとなったようです。

■予算成立は4月8日以降か?

 代表質問が2月16日になったことで、昨年並の審議日数となった場合の予算審議は以下のようになります。

 余裕は1日しかありません。しかも、予算審議を止める要因である日切れ法案は考慮していません。日切れ法案で5日とられ、暫定予算で2日とられるとすると、来年度予算案の成立は、4月8日以降になるでしょう。ちなみに、3月10日に予算案が衆議院を通過した場合は、4月8日で憲法60条が定める予算案の自然成立となります。

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2015年度予算案の年度内成立が厳しい理由


■通常国会召集

 2015年2月1日現在。先週1月26日に第189回国会が召集されました。召集とは、天皇が国会議員に対し、期日に衆議院・参議院に集まるよう命ずるものです。これにより、国会議員が国会に集まって、国会の会期が始まります。

 今国会は憲法52条に定められた、年に1回召集される「常会」、いわゆる通常国会です。会期は6月24日までの150日間です。会期は国会法第10条に定められています。

第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

衆議院『日本国憲法』

第十条  常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

衆議院『国会法』

■予算審議予想

 通常国会前半の最大のテーマは、予算審議です。すでに、2014年度補正予算案は衆議院で可決されています。審議時間が昨年並みで、休みなくぶっ通しで審議したとすると、今国会の予算審議は以下のようになります。「衆補正」「参補正」は衆議院や参議院での補正予算案の審議を、「本予算」は、2015年度予算案の審議を指します。

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■年度内の予算成立は厳しい

 昨年と同様の審議時間を確保すると、2014年度内に2015年度予算案を成立させるには2日しか余裕がありません。

 実際は、3月中に年度内に成立させることが必要な「日切れ法案」の審議が入るので、さらに余裕がありません。

 ハッキリ言って、年度内に2015年度予算案を成立させるのは至難の業です。本気で年度内に成立させるつもりなのだとすると、審議時間を減らすか、1日の審議時間を目いっぱいとって審議時間を確保するかしかありません。


大義なき解散にも、大義はあります!


■衆議院解散

 2014年11月30日現在。先週の11月21日に衆議院は解散され、日本から衆議院議員は消滅しました。

 衆議院の解散とは、実質的には内閣総理大臣が、任期によらず衆議院議員をひとり残らず免職させることです。そして、解散は選挙によって改めて衆議院議員を選出することを伴います。

■大義なき解散?

 今回の解散と、前回の解散の違いのひとつに、解散の大義が取り沙汰されている点があります。

 今回の解散は大義なき解散だというのです。

■大義がない3つの理由

 大義がないとされている理由はだいたい3つです。

  1. 安倍総理が解散の理由として掲げた消費税増税延期に反対している政党がひとつもないこと。つまり、争点がない解散であること。

  2. ほぼ全ての野党が選挙の準備不足なため、与党が過半数を失わないことが明らかであること。つまり、党利党略による解散であること。

  3. すでに与党で十分な議席を保持しており、任期も2年近く残っていること。つまり、解散する必要がないのにあえてした解散であること。

■争点なき解散

 まず、1について。確かに消費税増税延期については各党異論がないようです。では、他に問うことはないのでしょうか?集団的自衛権は?特定秘密保護法は?原発は?経済政策は?安倍政権の政策や政権運営に異論はないのでしょうか?

 もしそう思う有権者が大勢だとしたら、野党は猛省すべきです。野党の主張は、全く有権者に響かなかったことになります。

 野党というものが存在している時点で、争点がないわけはないのです。なかったら、日本の議会制民主主義はおしまいです。

■党利党略の解散

 次に2について。確かに野党は準備不足なようです。特に、前回の解散総選挙で下野した民主党は候補者を200人揃えるのがやっとという報道があるほどです。200人では全員当選しても過半数はとれません。

 しかし、与党が野党の望む時に解散するなんてことはなかなかありません。前回の解散がとても少ない例のひとつです。

 また、前回の解散にしても、当時勢いのあった日本維新の会など、自公や民主とは別の第三極政党の準備がととのわない時期を選んだということを、野田前総理がインタビューで明言している(山口二郎・中北浩爾編『民主党政権とは何だったのか――キーパーソンたちの証言』岩波書店:P.261)ので、党利党略で解散するのは今回にかぎったことではありません。

■必要のない解散

 最後に3について。確かに、安倍政権はともかく、自公政権は政党の枠組みが現状のままなら、あと2年は安泰です。自公の議員の身分も安泰です。もちろん、野党の議員の身分もそうです。選挙をしたら、自公の現職候補が落選して議席が減ってしまうかもしれないことは否定できません。

 つまり、これは選挙という負担に不満を持つ与党議員や与党支持者の声でしょう。また野党議員や野党支持者の声でもありましょう。これは切実なものです。

■解散権の本質は落選の恐怖

 この3が、これこそが解散権の本質です。この切実な声、「選挙はごめんだ」という声が解散権に力を与えます。落選の恐怖があるから、解散権はちらつかせるだけで実際に行使しなくても威力を発揮することがあるとされています。

 実際、解散が囁かれた段階で、消費税増税を決めた三党合意の主導者である民主党は、あっさりと増税延期賛成という態度を鮮明にしました。今回の解散は選挙をまたずして効果を上げたと言えます。

■有権者に大義あり

 いろいろ書きましたが、解散に大義があると感じるかどうかは、情緒的なものでしょう。大義があろうがなかろうが、解散は選挙とセットです。選挙の主役は誰あろう有権者です。有権者に主権を行使する機会が到来する時点で、すでに解散には大義があります。

 有権者に大義ありです。

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久々の首相主導の解散か?


 2014年11月11日現在。解散風がふいてます。先月末からチラホラ衆議院の解散が記事になっていましたが、今週になって怒涛のように報道されています。

 来週、11月19日にも解散するとの見方があります。大安ですし、ちょうどいいのかも知れません。

 さて、もし解散するとして、この解散にはどのような意義があるでしょうか。

 前々回の麻生内閣、前回の野田内閣、ともに衆議院が解散されています。解散後の選挙では、前々回は自民党から民主党へ、また、前回は民主党から自民党へ政権交代が起こっています。政権交代が起こるだけあって、解散直前の政権、政権与党の人気はひどいもので、野党に押し切られる形での解散でした。

 しかし、今回の解散は違います。野党が解散を望むどころか、以下のような言葉が報じられています。

 野党には早期解散の警戒感が広がる。民主党の海江田万里代表は「受けて立つ」と強調するが、代表経験者の1人は10日「正直なところ解散してほしくない」とこぼした。維新の党幹部は「足が震える思いだ」と漏らす。
(日本経済新聞『早期解散論が浮上』11月11日付朝刊)

 今回は安倍首相主導の能動的な解散である、ということが言えます。このような解散は、 3回前、2005年に行われた小泉内閣による郵政解散以来です。

 解散権というのは首相の権力のひとつです。首相となったからには、一度は解散をしてみたいと思うのではないでしょうか。首相になって解散権を行使できないというのは、非常に寂しいものです。かつて安倍首相も解散することなく首相の座を降りました。

 もし解散するとしたら、安倍首相は第一次安倍内閣での忘れ物のひとつを取りに行ったということになります。