2012年10月10日現在。自民党の石破幹事長が、「衆議院の総選挙の投開票は12月9日になるだろう」と述べるなど、年内解散という「空気」の醸成に努めています。
しかし、総選挙の前提となる衆議院の解散は首相の専権事項です。衆議院議員の任期満了を除き、首相が解散しようと思わなければ選挙はありません。
解散しない場合、内閣には二つの選択肢があります。ひとつは、現在の内閣で政権運営をしていくということです。そして、もうひとつは内閣総辞職です。
内閣不信任決議案の可決を目前にして内閣総辞職した内閣があります。羽田内閣です。羽田内閣は、当時の自民党と共産党を除いた会派(国会のグループ。政党とほぼ同じ構成です)の支持により成立しました。
ところが、社会党が連立与党内の内紛により連立離脱したため、衆議院で過半数をもたない内閣になってしまいました。(ちなみに、社会党は社民党と一部の民主党議員の出身母体だった政党です)
このような情勢において、最大野党の自民党は内閣不信任決議案を提出し、さらに、社会党も独自に内閣不信任決議案を提出します。羽田内閣は不信任案決議案の採決をまたず総辞職し、在任期間64日という短命内閣に終わりました。
このとき羽田首相が解散を選ばず総辞職をしたのには2つの理由がありました。ひとつは、当時、選挙制度が中選挙区制から現在のような小選挙区比例代表並立制に変わった直後だったため、肝心の選挙区割が決まっておらず、小選挙区での選挙ができなかったというものです。
もうひとつは、当時の政治情勢は非常に流動的だったので、総辞職後も小沢一郎さんを中心とする羽田内閣を最後まで支持した勢力が次の首班指名選挙も勝ち取れるという読みがあったためです。
自民党の若手だった石破さん(現幹事長)が自民党を離党したり、首相を務めた海部さんが羽田内閣崩壊後の首班指名選挙に小沢側から出馬するため、突如自民党を離党したりと、とにかく不安定でした。そのような状況だったので、総辞職後も小沢さんたちが勝つ可能性があったのです。
この例をみると、議院の信任を失って内閣総辞職するのは、与党が次も政権を取る見込みがあるときだと言えるかもしれません。
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