2012年8月9日現在、みんなの党などの野党6党が衆議院に提出した内閣不信任決議案は否決されました。民主党から一部賛成者と欠席者を出したほか、公明党は欠席、自民党は数名の議員が賛成したのを除いて欠席しました。「早期解散の確約がなければ、衆議院に不信任案を、参議院に首相の問責決議案を提出する」としていた自民党が党として欠席したということは、昨日の野田首相の言葉「近いうちに信を問う」を解散の「確約」とみなしたと考えてよいでしょう。ただ、消費税増税を含む法案の、参議院での採決がまだなので、断言はできません。自民党で不信任案に賛成した中川秀直代議士や小泉進次郎代議士が党内で大演説をし、党論を法案反対にもっていくかもしれません。
さて、「近いうちに信を問う」とした野田首相ですが、これが「早期解散の確約」となるにはいくつかの前提が必要です。
- 野田さんは約束を必ず守る
- 野田さんと谷垣さんの「近いうち」は一致している
- 野田さんは代表選前に民主党代表を辞める気はない
- 野田さんは代表選に出馬し、再選を目指す
- 野田さんは増税を含む法案以外にもやりたいことがある
- 野田さんは5のやりたいことを、民主党議員に協力させるだけの力がある
- 野田さんは解散を反対されても、強行できる
- 野田さんは、早期に解散することで仲間の民主党議員がどれだけ落選しても構わないと思っている
1は大前提です。野田さんが約束を守らない人だったら話になりません。
2はいま注目を集めている「近いうち」はいつか?ということです。野田さんの近いのスパンが、宇宙レベルの1億年とかだったら話になりません。
3,4,5,6は野田さんが「近いうち」がくる前に首相の座から降りる(追われる)ことがないかということです。すでに民主党の輿石幹事長は「首相や谷垣総裁が交代したら、この約束はなかったことになる」という趣旨のことを言っていますので、野田さんが首相をやめたら話になりません。解散できませんしね。
7,8は野田さんに解散の実行力があるかということです。約束を守る気があり、首相を続ける気力も十分であっても、いざ解散というときになり、解散を決める閣議をまとめられなかったというのでは、話になりません。野田さんは、周りの空気や個人的な感情に左右されずに解散を断行できるでしょうか。制度上は、首相が自由に行使できる衆議院の解散権も、その人の感性や、周囲の人間との関係、その場の雰囲気などによって拘束されます。制度上できることと、その人がやれることというのは、乖離がある可能性があるのです。
この前提をみるだけでも、早期解散、ましてや今国会中の解散などはかなり難しそうですね。
何度も書いていますが、自民党にとって最も厳しいのは、自民党が左右できる参議院での法案成立の可否というカードを、制度上、衆議院の解散前にしか切れないことです。いわば、常に相手が後出しをするジャンケンを強いられているようなもので、自分の切ったカードの恩恵だけを相手が受けるリスクが常にあります。そして、すべての法案の成立に反対したところで、首相に解散を強制できる制度はどこにもありません。強制力がある形で、自民党が首相に早期解散させるのは不可能です。首相の善意と、与党をまとめる政治力にかけるしかありません。
ところで、制度的に保証された見返りがなんにもないのに、法案成立に応じたようにみえる谷垣さんですが、谷垣さんは約束を守る人なのでしょうか。そして、谷垣さんの「近いうち」は一体いつなのでしょうか。