「議決機関」のトップは議長です。
普段の話し合いから考えると、議長は採決に加わらないうえ、自分の意見も言えず、あまり権限がないように思えるかもしれません。実は、議長は絶大な権力を持っています。
議長は議事進行を担当します。議事進行というのは、以下のようなものです。
1.会議の日程や開始時間、終了時間を決める。採決する。
2.議題が複数ある場合、どの順番で議題を取り上げるか決める。
3.発言者を決める。
1の権限では、そもそも会議を始めないことや、始めた直後に採決することもできます。例えば、提案に十分な反対意見がでないうちに会議を打ち切り、反対されにくくすることができます。
2の権限では、都合の良い議題を真っ先に扱って、確実に可決されるようにしたり、逆に都合の悪い議題を後回しにして扱う時間を少なくし、「十分な議論を尽くせなかった」ので今回は見送るような空気にして否決されるようにしたりできます。また、そもそも都合の悪い議題を扱わないこともできます。
3の権限では、自分の都合の良い意見を雄弁に述べる人と、都合の悪い意見を自信無さげに話す人を中心に指名して、それぞれの意見の印象を操作することができます。
このように、議事進行によって話し合いの方向性をいかようにもコントロールすることができるのです。特に、1と2の権限はすべての人にとって有限な資源である時間をコントロールできる点で重要です。
国政においても国会のスケジュールは重要で、通常国会の会期末の会期延長はよく問題になります。一般的に、延長すると政府与党が有利になります。話し合う時間が増えれば、そのままでは時間切れになってしまう法案をいくつか可決させることができるからです。逆に、野党にとっては延長されると自分たちが反対する法案が可決する可能性が出てきてしまうので、延長に反対するのです。