2018」カテゴリーアーカイブ

国会戦術、「空回し」


■「空回し」とは

22日の衆議院法務委員会で行われた、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議に野党が出席しませんでした。そのため与党は、野党に割り当てられた質問時間分委員会室でなにもしないで待機して、審議時間を消化しました。「空回し」と呼ばれる国会戦術です。

審議を尽くしたかどうかを判断する基準が審議時間になっているため、野党が来ないからといって野党分の質問時間をバッサリ切ってしまうことができないため行われているようです。

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話し合いにはルールが必要


■ルールがないと話し合いにならない

話し合いにはルールが必要です。ただ単に話し合った場合、いろいろな問題が起こります。

  • 声が大きい人がずっと発言していて、他の人が発言できない。
  • 自分の提案した議案が、いつになったら議題にのぼるかわからない。
  • 5人で話し合う約束だったのに、2人だけで突然会議が開かれて、大事なことを決められてしまった。

このようなことが簡単に行われてしまうと、話し合っているとは言えません。

路上でルールなしで殴り合ったら犯罪ですが、リングの上でルールのもとで同じことを行なったらスポーツになります。

話し合いも、ルールがあってはじめてみんなが考える「話し合い」になります。ルールのない、生の話し合いは、路上の殴り合いとかわりません。

国会に様々なルールや慣習があるのは、話し合いを成立させるためです。

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入管難民法案、実質審議入り


■5日遅れでようやく実質審議入り

本日11月21日、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案が衆議院法務員会で質疑に入りました。いわゆる実質審議入りです。 もともとの与党の想定だと、先週の16日には実質審議入りしている予定だったので、実に5日遅れです。

この入管難民法案は完全に与野党対決型の法案になっています。昨日に引き続き、今日も法務委員会の運営について与野党で合意を得られず、法務委員長が職権で明日22日に質疑を続行することを決めています。

昨日も法務委員長は22日に参考人質疑を行うことを職権で決めています。今日も質疑の続行を職権で決めているということは、参考人質疑と行政に対する質疑は別扱いのようです。昨日は質疑がまだ始まっていなかったので、「始まっていない質疑の続行をどうして決められるのか」という建前でもあるのでしょうか。


法務委員長解任決議案、否決


■法務委員長解任決議案否決後、法務委員会の開催を委員長の職権で決定

本日11月20日の衆議院本会議で法務委員長の解任決議案が議題とされ、与党などの反対多数で否決されました。

報道によると、本会議が散会したあと、法務委員会の理事懇談会が開かれました。今週の法務委員会の日程と議題について与野党の話し合いが行われましたが、折り合いがつきませんでした。

結局、法務委員長が職権で明日21日と22日に、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議を行うことを決めました。

22日は木曜日で、もともと法務委員会を開く定例日ではないため、野党は反発しているとのことです。しかし、今国会では二度と法務委員長の解任決議案は出せないため、委員長に対しては抗議するしかできません。

■入管難民法案の提案理由説明と質疑は、21日にいっぺんに行われる

昨日、本日の経過について2つ予想しましたが2つとも外れました。

ひとつは、入管難民法案の提案理由説明を本日中にやっておくのではないかという予想です。提案理由説明を行った日は質疑を行わない慣例なので、21日に入管難民法案の実質審議入りするために本日中に提案理由説明をするかなと思っていました。

報道によると21日に提案理由説明と質疑をまとめてやる予定のようです。与党としては、委員長の不信任決議案を否決した直後に法務委員会を開くほど強引な運営はしないということなのかもしれません。

■本会議散会す

もうひとつは、法務大臣の不信任決議案提出を警戒して本会議を散会しないのではないかという予想です。法務大臣の不信任決議案が提出されると法務委員会の審議は不審決議案が採決されるまで止まります。不信任決議案の採決は本会議で行う必要がありますが、本会議は散会を宣告するとその日のうちにもう一度開くことはできないため、提出された不信任決議案を速やかに否決するために本会議を散会せず休憩にしておくのではないかと思いました。

しかし、動画を確認すると本会議は散会していました。野党としては、法務大臣の不信任決議案は今国会で1回しか出せないので、まだ温存しておくつもりなのかもしれません。


入管難民法案の議事妨害、解任決議案の次の一手は?


■法務委員長解任決議案採決後の予定

与党は、明日11月20日の衆議院本会議で法務委員長の解任決議案を否決し、21日の法務委員会で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の実質審議入りを目指しているとの報道が出ています。

衆議院インターネット審議中継によると、20日の本会議は通常通り13時開始です。また、法務委員会が予定に入っていません。これは、本当に法務委員会がないのか、委員長の解任決議案の採決が終わるまで法務委員会を開く予定を公に出していけないという配慮かどちらかでしょう。

今週3日以上の審議を目指す場合は、20日13時からの本会議で速やかに解任決議案を否決し、法務委員会を開いて入管難民法案の提案理由説明を終えておいて、21日に質疑に入るというスケジュールが考えられます。提案理由説明を行った日は質疑をしないのが慣例だからです。

■野党の次の一手

法務委員長の解任決議案提出により、入管難民法案の審議は与党の当初の想定より遅れています。ですが、解任決議案が出されることはもうありません。

国会は一事不再議という原則があり、会期中に結論が出た議案について再度審議・採決することはないからです。法務委員長の解任決議案は、法務委員長が変わりでもしない限り二度と提出できません。

では、もう野党に審議を制度的に止める方法はないかというと、そうではありません。 例えば、法務大臣の不信任決議案の提出です。法務大臣の不信任決議案を提出した場合も、法務委員長の解任決議案が提出された場合と同じく本会議での採決が終わるまで法務委員会の審議は行えなくなります。

仮に、法務委員長の解任決議案の採決を終えて本会議が散会したあとに法務大臣の不信任決議案が提出された場合、20日に法務委員会を開くことはできなくなります。議長が本会議の散会を宣告したあとは、その日のうちに再び本会議を開くことはできないためです。この場合、次の本会議の定例日は木曜日ですので、定例日通りに本会議を開いた場合、今週ほとんど審議させないことが可能になります。

与党としてはそれではまずいので、明日の本会議は解任決議案の採決後、いつでも再開できるように休憩で一日を終えると思います。


「審議拒否」や「強行採決」を中立的にみる


りんごが木から落ちるのをみて「けしからん」という人はいません。物には引力があり、りんごの引力と地球の引力が互いに引っ張り合ってりんごが地面にぶつかるという現実があるからです。

野党が「審議拒否」をするのをみて、あるいは与党が「強行採決」するのをみて「けしからん」という人がいます。私は、これも「りんごが木から落ちる」のと同じものだと思います。

野党は政府・与党の政策をスムーズに実行させたくないという目的があり、与党は政府の政策をスムーズに実行させるという目的があります。それぞれの目的を達成するために合理的に考えて採用する手段のひとつが「審議拒否」であり「強行採決」なのです。そういう現実があります。

ですから、「審議拒否」や「強行採決」それ自体に善悪はありません。評価するならば、手段が目的を達成するために役に立ったかで評価するべきだと思います。

ただ、政治の場合、扱われているのが政策であり、人それぞれの立場によって評価が異なるものなので、客観的にみるのは難しいのも事実です。支持していない法案の審議拒否をしていれば「よくやった」と思い、支持している法案が強行採決されたら「当然だ」と思うのが人情です。


与党、法務委員長解任決議案否決後、連日審議の構え


昨日11月16日の衆議院法務委員会は、法務委員長の解任決議案が提出されたため、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議に入れませんでした。

このため与党は、法務委員長の解任決議案を20日火曜日の衆議院本会議で否決したうえ、連日法務委員会を開いて審議を進める構えであるという報道が出ています。

「連日審議は大袈裟だな」と、一瞬思ったのですが、来週は23日金曜日が祝日です。20日から法務委員会を開会できるとしても3日しか審議できません。

来週火、水、木と連日審議して審議時間を積まないと、11月中に参議院で審議を開始できない情勢ということです。

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法務委員長解任決議案で入管難民法案の実質審議入りが阻止される


本日11月16日、衆議院法務委員会で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の提案理由説明と質疑が行われる予定でしたが、審議に至りませんでした。

立憲民主党が法務委員長の解任決議案を提出したため、法務委員会の審議が続行不可能になり、入管難民法案の実質審議入り前に法務委員会が散開しました。

本日の法務委員会は、14日の続きとなる裁判官らの給与法改正案の審議から始まりました。野党側の質疑ののち討論に入り、採決され賛成多数で可決すべきものと決しました。

衆議院インターネット審議中継の動画によると、給与法改正案の採決のあと、法務委員長が一般質疑に入ろうとしたところで、「そこまで!」「合意してない!」という声が入り、ざわついた感じになります。どうも、与野党が法務委員会の議事進行で合意していたのは給与法改正案の採決までで、それ以降については調整がついていなかったようです。

それでも、自民党と日本維新の会の質疑を終え、12時30分ごろ休憩に入りました。

与野党の調整が難航したためか、再開したのは4時間後の16時39分。法務委員長が冒頭で「立憲民主党、国民民主党、無所属の会、日本共産党の委員が出席していないため、理事に出席を要請させる」と宣言し、速記を止めます。ここからが長く、20分以上待ちます。その間、委員長も法務大臣も席を外さずひたすら待ちます。

そして20分ほど待ったところで、速記を再開した委員長が「自分に対する解任決議案が提出された。今日は散会する」と宣言し、16日の法務委員会は散開しました。

今日の場合、午後の審議に立憲民主党などが委員会に出席しなくても、与党と一部の野党で審議を強行することは不可能ではありませんでした。

しかし、立憲民主党が委員長の解任決議案を出したため、状況は一変します。

委員長が解任決議案を出された場合、その委員会の審議は解任決議案の採決がされるまで行うことができないからです。そして、解任決議案の採決は本会議で行います。次の衆議院本会議の定例日は11月20日火曜日になりますので、普段のように13時に開会となると、11月20日の夕方ごろにならないと法務委員会は開けないことになります。

入管難民法案の今国会での成立はさらに厳しくなりました。


「理事懇談会」と「職権で決めた」とは


本日11月15日の衆議院法務委員会理事懇談会で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案について、明日16日に提案理由説明をし、質疑に入ることを法務委員長の職権で決めたとの報道が出ています。例えば、以下の時事通信の記事です。

衆院法務委員会は15日の理事懇談会で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案について、16日に提案理由説明と与党側の質疑を行い、実質審議入りすることを葉梨康弘委員長(自民)の職権で決めた。立憲民主党の辻元清美国対委員長は、自民党の森山裕国対委員長に電話で抗議した。

『入管法案、16日審議入り=衆院法務委、職権で決定:時事ドットコム』

これで、明日の法務委員会が何らかの事情により開かれないということがない限り、入管難民法案が実質審議入りすることになります。ぎりぎりで、与党が当初に予定していたと見られるスケジュールに追いついてきました。

この報道に出てきた言葉として、「理事懇談会」と「職権」というものがあります。

まず「理事懇談会」とは何でしょうか。

委員会の理事会とは、委員長と委員の中から選ばれた理事が委員会の会議の運営について決めるところです。決める項目としては、扱う議案、質疑する順番、質疑する人、質疑の持ち時間などです。

理事会は、委員会が始まる直前に開かれることが多いのですが、どの議案を扱うかや質疑する人などは委員会の準備のため前もって決めておく必要があります。そこで行われるのが理事懇談会です。

今回の場合、この理事懇談会で16日の法務委員会の運営について話し合われました。理事懇談会で、与党が16日に入管難民法案の提案理由説明聴取と質疑に入ることを野党に提案し、野党がこれを拒否して折り合わず、委員長が職権で16日の法務委員会で入管難民法案の提案理由説明聴取と質疑を行うことを決めたということになります。

この「職権で決めた」というのはどういう意味でしょうか。

委員会の運営は与野党が合意して行うことが原則となっているため、「職権で決めた」というと野党の合意なく委員会の運営が決められたということになります。あえて言えば、「強行開会」です。立憲民主党の辻元国対委員長が自民党の森山国対委員長に抗議しているのはそのためです。

ちなみに、委員会の運営を決めるのは国会法や議院規則上は委員長の権限であるため、委員長が独断で決めることに問題はありません。文字通り委員長の「職権」で決められることなのです。


入管難民法案の16日実質審議入りの目は残った


11月14日に開かれた衆議院法務委員会で、裁判官らの給与法改正案の趣旨説明と与党側の質疑が行われました。16日に野党側の質疑が行われ、採決される見通しです。

これで、16日に外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の趣旨説明に入れる可能性が出てきました。16日に「実質審議入り」と言われる質疑に入れるかどうかがひとつの見所です。