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首相に今夏の大臣ポストを握られている各派


 2014年3月18日現在。夏には内閣改造が予定されています。自民党の派閥は現在の大臣ポストだけでなく将来の大臣ポストも人質に取られています。集団的自衛権の行使容認を巡る議論で、自民党内の各派はどれだけ存在感を示せるのでしょうか。

■自民党の各派は内閣改造で将来の大臣ポストも握られている

 岸田派の幹部が大臣になっているため、集団的自衛権の行使容認を巡る議論で岸田派として存在感を示しにくなっているという話があります。ただ、これは岸田派だけの問題ではありません。

 今夏には内閣改造が予定されていて、各派の入閣を待望している議員も言動が慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。大臣になりたかったら、安倍首相の意に沿わないことはしないということです。

 ただ、早い段階で批判的なことを言って自分を高く売り、口封じということでよりよいポストを手に入れようという人も出てくるかもしれません。ですから、内閣改造だけで党内を統制できるかというとそうでもないかもしれません。


大臣は人質


 2014年3月17日現在。安倍首相が進める集団的自衛権の行使容認に批判的な自民党の派閥も、人質を取られていて自由に発言することが難しくなっています

■幹部を官邸に人質にとられている岸田派

 時事通信で面白い記事が出ていました。集団的自衛権の行使容認に慎重な議員が多いとされている自民党の岸田派ですが、会長の岸田外務大臣をはじめ、派閥幹部が大臣になっているため、安倍首相の意向に反する言動ができないというものです。

岸田派からは岸田氏や座長の林芳正農林水産相ら4人が入閣しており、表立って首相に異論を唱えにくいのが実情。首相の靖国神社参拝や、集団的自衛権の行使容認には慎重な考えだとされる岸田氏も、首相の方針から外れる言動は控えている。

『時事ドットコム:ハト派の存在感薄く=閣内に幹部、身動き取れず-自民岸田派』

 大臣同士で意見が違うと、「閣内不一致」と野党に攻撃の口実を与えてしまうので、仕方がない話です。


政策よりも日程が大事な理由


政策の評価は難しい

 2014年2月24日現在。国会の日程を予想することで、政策に対する賛否から離れた政治力のようなものを評価できるのではないかと思っています。

 政策を政治の評価の中心にしてしまうと、自分にとっていい政策をやっていればいい政治で、そうでなければ悪い政治という評価になりがちではないでしょうか。

目的はひとつ

 結局のところ、すべての政治の最終目標は人々を豊かにすること(のはず)なので、政策の違いは各々の政党や政治家の政治的なタスクリストの優先順位の違いでしかありません。あんまり政策にこだわって、期待できる政治家がいないと失望するのはどうかと思います。

実行力も大事

 問うべきは政策のみではありません。実行力です。政策があっても、実行できないのなら意味がありません。

 では、実行力をどうはかればいいのでしょうか。そこで、国会の日程を追うことに意味がでてきます。

実行力=国会のコントロール力

 政治における実行というのはいくつかありますが、新しいことを実行するには、国会の議決が必要です。つまり、国会をコントロールできるのならば、新しい政策の実行力が高いといえます。

 国会のコントロールの巧拙を、国会の日程を追うことで評価できるのではないかと思うのです。

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政策協議に関与する党が増えたとき、国会審議は充実するか


 2014年1月31日現在。安倍首相とみんなの党の渡辺代表の政策協議が実現すると、政策に関与する勢力がひとつ増えることになります。広く話し合うことはいいことですが、問題がないわけではありません。

 従来は、政府・自民党・公明党で決めていました。みんなの党との政策協議が実現すると、政策に関与できる勢力は、政府・自民党・公明党・みんなの党と4者になります。ここで、この4者を政策に関与できるプレーヤーと呼ぶことにします。

 すべてのプレーヤーが、ある政策について賛成か反対のどちらかの態度しかとらないとき、論理的にどれだけのケースが想定できるでしょうか。2×2×2×2=16通りのケースが想定できます。表にすると以下のようになります。

政府 自民党 公明党 みんなの党
賛成 賛成 賛成 賛成
反対 賛成 賛成 賛成
賛成 反対 賛成 賛成
反対 反対 賛成 賛成
賛成 賛成 反対 賛成
反対 賛成 反対 賛成
賛成 反対 反対 賛成
反対 反対 反対 反対
賛成 賛成 賛成 反対
反対 賛成 賛成 反対
賛成 反対 賛成 反対
反対 反対 賛成 反対
賛成 賛成 反対 反対
反対 賛成 反対 反対
賛成 反対 反対 反対
反対 反対 反対 反対

 もし、みんなの党がプレーヤーに加わらなければ、ケースはこの半分になります。みんなの党が加わるだけで、一気に8ケースも加わるのです。

 これだけの可能性があるものを、すべて賛成かすべて反対にまでまとめることの労力を考えると、プレーヤー間でいったん決めたことはなかなか変えられません。となると、「全員で決めたことだから」と、国会で法案を審議する段階でなかなか譲歩できず、結果的に原案で押し通す場面が出てくるかもしれません。

 もちろん、柔軟かつ迅速に合意をまとめることができ、より国会審議が充実する可能性もありますが、国会審議が硬直化する方向にいく可能性もなくはないのです。


政府と野党の政策協議はハードルが高い


 2014年1月30日現在。安倍首相がみんなの党の渡辺代表に政策協議を提案したことで、与党がゆれています。

 政府とみんなの党が政策協議するタイミングは3つあります。1つは与党が法案の内容を議論する前。2つめは、与党が法案の内容を議論している間。そして3つめは、与党が法案を内容を議論し終わった後です。

 3つめのタイミングは、与党が結論を出したものを政府と野党で変えてしまうことになるので難しいです。

 2つめのタイミングは、与党が議論している間に政府と野党で協議することになり、議論が2重になります。矛盾する結論が出た時に、話をまとめるのに一手間かかります。

 かといって、1つめのタイミングでは政府と野党が合意した内容を、与党が汲む形で結論を出さなければ野党が納得しません。そして、与党が政府と野党の合意したものをすんなり受け入れるかどうかわかりません。

 どのタイミングで政策協議しようと、与党が協議に加わらなければ話がまとまりません。政府と野党の直接の協議というのはかなりハードルが高いといえます。

 ちなみに、与党である自民党と公明党は、「政府・与党間で政策を詰めた後に野党との合意形成を目指す従来方針で臨む(時事ドットコム『政策協議は政府・与党間優先=自公幹部が確認』2014/01/29-12:06)」という方針で今のところ一致しています。従来方針というのは、与党と野党で合意形成をめざすということです。

 果たして、どのような形で政府と野党の政策協議が行われるのでしょうか。


どのタイミングで政策協議するのか


 2014年1月29日現在。安倍首相がみんなの党と政策協議することを表明したことに対する反応が出始めました。与党とみんなの党が協議するのではなく、首相とみんなの党が協議する方針だと報じた、昨日の日経朝刊の記事は正しかったようです。

 自民党の石破幹事長は、記者会見で「みんなの党との政策協議について、今のところ党に指示がきていない。どういう形で政策協議をするのか決まっていない」という内容の発言をしています。

 安倍首相、つまり政府とみんなの党が政策協議した場合どのような形になるでしょうか。

 まず、政府とみんなの党がどのタイミングで協議するかが問題になります。法案が国会に提出されるまでの間に、与党は法案について官庁の法案担当者を呼んだりして議論しています。自民党の場合、政務調査会を経て総務会で了承された法案が閣議決定され、国会に提出することができるようになります。ですから、政府とみんなの党が政策協議するタイミングは、3つあります。1つは与党が法案の内容を議論する前。2つめは、与党が法案の内容を議論している間。そして3つめは、与党が法案を内容を議論し終わった後です。

 このうち、3のタイミングはまずないでしょう。なぜなら、与党が了承した法案を、政府がその内容を変えて閣議決定し、国会に提出することになるからです。与党の立場はなくなります。国会運営に直接携わるのは与党なので、与党がやる気をなくすと法案の成立が危ぶまれます。


首相とみんなの党が直接政策協議


 2014年1月28日現在。安倍首相がみんなの党との政策協議をすることを表明した件が、今朝も報道されています。

 てっきりみんなの党と与党が政策協議するのだと思っていましたが、本日付の日本経済新聞朝刊に、みんなの党は「首相と直接、政策協議」をするという記事が出ていました。これは、結構重大なことかもしれません。

 政権与党所属の議員には、2種類の人がいます。○○大臣や副大臣、○○政務官などになって政府の立場で働く人と、幹事長や国会対策委員長など国会の立場で働く人です。政府としては提出した法案がそのまますみやかに成立してほしい。一方、実際に審議する国会としてはスムーズに法案を成立させるためには野党と妥協したり、一部の法案を諦めたりする必要があったりして、同じ与党の議員なのに対立関係になったりします。この間も、「政府の説明が足りないから不必要に国会で揉めたのではないか」と自民党から政府に対して「もっと説明してほしい」という要望が出されています。また、国会関係の党役員を政府の役職についた人が兼ねていることもないため、政府が国会運営をコントロールするのは難しいとされています。

 このような状況下で、首相はみんなの党と直接政策協議をすると言っているわけです。日経の報道が正しければ、このことは政府が国会運営を直接コントロールするための第一歩となるかもしれません。

 ただ、どうやって政府と協議するのでしょうか。国会の委員会の与党理事や国対にちゃんと根回しできるのでしょうか。政策協議するとしたら、政府とみんなの党が合意した内容が、自民党の意思決定プロセスに乗ると思われますが、与党が納得するのでしょうか。などなど、いろいろクリアしなければならない問題があります。

 これは注目です。


結いの党、衆議院で会派結成―結いの党の会派離脱問題


 2014年1月24日現在。結いの党とみんなの党が、比例選出議員の会派離脱を巡って争っている件は、衆議院で一定の決着をみました。みんなの党は、要求していた結いの党の比例選出議員の聴取が受け入れられたため、衆議院の比例選出議員7名の会派離脱届を衆議院事務局に提出しました。しかし、参議院でみんなの党から結いの党に移った比例選出議員6名について、みんなの党は会派離脱を認めていません。

 みんなの党と結いの党は比例選出議員の聴取の形式で争っていましたが、どうなったのでしょうか。結いの党は「①逢沢一郎・衆院議運委員長ら中立的な第三者が立ち会う②対象となる比例選出の衆院議員7人に一括聴取する③聴取内容は会派離脱の意思確認に限る(読売新聞2014.1.23朝刊)」という3条件を満たさなければ聴取には応じられないとしていました。一方、みんなの党は②について「個別に聴取したい」と結いの党と条件が折り合いませんでした。NHK NEWSWEBの2014年1月23日17時11分の配信記事によれば、結いの党が②の条件について折れて、個別聴取に応じました(『みんな 個別聴取条件に離脱を容認』)。

 衆議院と参議院の取り扱いが違うのはなぜでしょうか。みんなの党の声明によると(『比例選出議員離党者の衆議院会派離脱容認について』)、「衆議院議院運営委員会理事会では「各会派においては、議員本人から異動の希望がある場合は、本人の意思を尊重する」という申し合わせがあるが、参議院ではそのような申し合わせがない。衆参でルールが違うので対応は違う。」という立場のようです。参議院で会派離脱に関する申し合わせがないのは当然です。みんなの党は、参議院議院運営委員会の理事ポスト得ているからです。


結いの党が担おうとしている役割


 2014年1月23日現在。結いの党がみんなの党の会派から離脱できない問題で、動きがありました。みんなの党側が、「みんなの党から結いの党に移った比例選出議員が、みんなの党の聴取に応じたら、会派離脱の手続きをすすめる」という考えを示したのです。

 当初はみんなの党による聴取に応じない姿勢を見せていた結いの党も、「①逢沢一郎・衆院議運委員長ら中立的な第三者が立ち会う②対象となる比例選出の衆院議員7人に一括聴取する③聴取内容は会派離脱の意思確認に限る(読売新聞2014.1.23朝刊)」の3条件が揃えば聴取に応じるという考えを示しました。

 みんなの党は、比例選出議員ひとりひとりから聴取したいとしており、結いの党が示した条件について折り合いがついていない状態です。

 結いの党が一括聴取と、聴取内容を会派離脱の意思確認に限定することを求めているのは、みんなの党の聴取で対象議員が説得されることを恐れているのでしょうか。

 条件を満たせば比例選出議員でも会派離脱できるようになると、政界再編が進むかもしれません。比例選出議員は、自身が当選した際の選挙時にあった政党、既成政党に直接移動はできません。ですが、結いの党にいったん移って、その後既成政党と結いの党が合流すれば合法的に既成政党に移動できます。マネーロンダリングならぬ議員ロンダリングです。

 結いの党の「政界再編の触媒になる」という主張は、結いの党をこのような議員ロンダリングを担う拠点とするという意味もあるのだと思います。誰かが新党を作らなければ、比例選出議員の政党間移動が不可能だからです。

 政治経済学の理論によれば、選挙後に各党が連立交渉するよりは、選挙前に二大政党にまとまっていたほうが、有権者の意思が反映されやすいそうです。連立交渉に有権者が参加するのは難しいですが、選挙前に連立交渉ならぬ新党結成をしていれば、新党結成するなかで出てきた政策や公約を有権者が選挙で評価できるからです。