第200回臨時国会、会期末間近


■政府提出の法案、条約の承認案は、ほぼ参議院で審議中

2019年12月1日現在。

10月4日に召集された臨時国会は、今月9日に閉会します。

今国会で審議されている内閣提出法案は17本で、11本がすでに衆参で審議を終えて成立しています。残り6本のうち、5本は衆議院を通過して参議院で審議中で、1本は衆議院で審議中です。ただ、最後の1本も委員会での審議は終わっています。すぐに、すべての法案が参議院で審議入りするはずです。

あとは、条約の承認を求める議案が2本あります。2本とも参議院で審議中です。

会期末までの一週間は主戦場が参議院になりそうです。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール4


議案の提出

 ここまでは学校で習ったことのある部分だったので馴染みがある部分もあったと思います。ここからは、学校であまり詳しくやらない部分に入ります。国会の審議のルールです。

 国会で審議されるのは主に法案、予算、条約の承認についてです。このうち、予算と条約は内閣のみが提出します。予算編成をする権限と条約を締結する権限は内閣にあるからです。

 法案については、内閣と国会議員が提出できます。内閣の法案は、各省庁が政策を遂行するために作成したものです。法案を作成しているのは官僚ですが、作成過程で与党議員と事前に話し合いながら作成することもあります。自民党が政権与党であるときは、自民党内の政務調査会という機関で官僚と議論して法案が作成されています。官僚が作成した法案は、内閣法制局の審査のあと、閣議決定されて国会に提出されます。成立する法案のほとんどが内閣提出法案です。

 国会議員は「法律を作るのが仕事」といわれることもあり、当然法案を提出できます。しかし、国会議員は自由に法案を提出できるわけではありません。衆議院では、法案の提出者の他に、賛成者が20人必要です。さらに、法案が新たに予算が必要なものであった場合は賛成者が50人必要です。参議院は議員の数が衆議院と違うので必要な賛成者の数も違います。予算が必要ない法案は賛成者が10人必要で、予算が必要な法案は賛成者が20人必要です。

20190922法案提出要件

 衆議院では、議員の数が21人以上の会派であれば、会派主導で法案を提出することができますが、議員数が20人以下であれば法案を提出することはできません。会派に所属しない議員など、絶対法案を提出することができません。

 衆議院ではこの他に、法案提出には提出者が所属する会派の「機関承認」が必要です。所属会派の許しがなければ法案を提出できないのです。国会議員が多数いる会派所属の議員でも、会派の主流派と違う独自の発想の法案を提出しようとしたら、所属会派の他の議員を説得しないと法案を提出できません。国会議員が法案を提出するのは非常に高いハードルがあります。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール3


衆議院の優越

 次が衆議院の優越です。国会の議決は、衆議院と参議院が一致して議決したときに有効となるのが原則です。ある法案について、衆議院が可決、参議院も可決すれば法案が成立して法律になるという具合です。もし、衆議院と参議院の議決が一致しなかった場合は、法案は成立しません。ただし、法案については衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、衆議院の3分の2以上の賛成で再び可決した場合はその時点で法律になります。

 さらに、予算案の議決や条約の承認の議決は、衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、両院協議会という話し合いの場でも衆参で折り合いがつかないときは衆議院の議決そのまま国会の議決になります。内閣総理大臣の指名の議決も、衆参の指名が不一致で両院協議会の話し合いも不調に終わった場合は衆議院が指名した国会議員が内閣総理大臣になります。このように、衆議院と参議院の議決が異なったときは、条件付きで衆議院の議決が優先されます。

 では、参議院が議決をしなかった場合はどうなるでしょうか。いま述べた衆議院の優越は、衆議院と参議院の議決が違ったあとの決まりであるため、参議院が議案を議決しないで放っておいた場合は適用できないように思えます。そのようなケースもちゃんと想定されていて、衆議院で議案を可決後、憲法で決められた日数経過しても参議院が議決をしない場合は、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。これを「自然成立」と呼びます。自然成立の日数は、議案によって違い、内閣総理大臣の指名が衆議院の議決から10日、予算案と条約の承認が衆議院の議決から30日になっています。法案については、衆議院の議決から60日以内に参議院が議決しないときに、衆議院が「参議院は法案を否決したとみなす」という議決をすることができます。これを「みなし否決」と呼びます。カレンダーで表すと次のようになります。

衆議院の優越

 実は、国会について考えるときは日付の感覚が非常に重要なので、この日数は必ず覚えておいたほうがよいです。実用例はあとで詳しく書きます。

 ちなみに、法案は衆議院と参議院どちらから審議を始めてもよいのですが、予算案に関しては衆議院の議決が優先される関係上、必ず衆議院から審議を始めることになっています。衆議院の優越は、衆議院ですでに議案が議決されていることが前提になっているため、もし予算先議権がないと、参議院で予算をいつまでもいつまでも審議して議決せずに、衆議院で審議できない状況になってしまいます。そのため、必ず衆議院から予算審議をすることになっているのです。これを「予算先議権」と呼びます。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール2


国会のおさらい

 日本の国家権力は、大きく3つに分類されます。立法、行政、司法です。この3つに対応する機関は、立法が国会、行政が政府、司法が裁判所です。国会を中心にみると、国会が決めた予算や法律の範囲内で内閣が政策を実行し、政府が実行した政策が法律の範囲内かどうかを裁判所がチェックする、という関係になっています。

 国会の主な仕事は、法律を決めること、予算を決めること、条約の承認を決めることです。その他の重大な仕事としては、政府の代表である内閣総理大臣を選挙で決めることが挙げられます。これらの仕事は、いずれも政府の活動の根拠になるものです。政府が何か新しいことをしようとしたときに、法律の根拠がなければ権力をふるえませんし、予算がなければ新しく公務員を雇ったり、役所が民間企業と取引することもできません。原則として、国会が決めないと政府は新しい活動が何もできないということです。

 国会は衆議院と参議院の二院で構成され、そのメンバーである議員は日本国民が選挙で選びます。衆議院議員の任期は四年で、参議院議員の任期は六年と両院で差があります。更に、衆議院には参議院にはない「解散」というものがあります。解散とは、内閣総理大臣がすべての衆議院議員を任期の途中でクビにして、新しく衆議院議員を選ぶ選挙を行うことです。解散があるので、衆議院議員の任期は四年よりも短い場合が多いです。

 衆議院には解散があるかわりに、参議院にはない権限をいくつか持っています。まずは、内閣不信任決議権です。政府の中枢である内閣に対して「信任しない」という決議を衆議院がしたとき、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職して政権を失うかのどちらかを選ばなければなりません。衆議院を解散したとしても、選挙に勝てなければ政権を失うことになるので、内閣不信任決議権は非常に強い権限です。ちなみに、選挙に勝っても形式上以前の内閣は総辞職しますので、内閣総辞職の運命はくつがえせません。衆議院の支持を失えば内閣が倒れるというこの制度を、議院内閣制と呼びます。


参議院で予算委員会開会要求でる


2019年11月24日現在。

11月22日に、参議院で立憲民主党などの野党が予算委員会開会要求を出しました。この開会要求は参議院規則の定める「委員の三分の一以上」を満たしているので、予算委員長は予算委員会を開かなければなりません。

ただ、この規則は予算委員会の開会しか保証していないので、野党が求める総理大臣出席の集中審議が行われるかどうかは不明です。委員会の議題は与野党の全会一致で決めるのが原則なので、与党の意向を無視して議題を決めることはできないでしょう。与党がこのままではまずいと思ったら、集中審議が行われるかもしれませんが、果たしてどうなるでしょうか。

野党は「今年の通常国会では、予算委員会の開会要求が出たのにも関わらず与党は予算委員会を開かなかった」と主張していますが、6月26日に参議院予算委員会が開かれています。

ただ、それは野党が求めていた集中審議ではありませんでした。それはいいのですが、会期末に必ず実施する後始末的な会議だったのはよくないでしょう。事実上予算委員会の開会要求は無視されたと言わざるをえません。

与党が今度はどう対応するのか注目です。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール


政治につきまとう厄介なイメージ

 「政治」には、厄介なイメージがつきまといます。政治の話は、初対面の人との会話で出してはいけない話題のひとつとされています。どういう話題が政治の話になるかというと、沖縄の在日米軍基地の問題とか、憲法改正とか、愛国心、夫婦別姓などなど、なんらかの政策に関する話題です。これらの政策の共通点は、それぞれの人の立場によって、最適な解決策が違う点にあります。そのため、すべての人が100%納得する政策は、おそらくありません。

 「政治」に厄介なイメージがつきまとうのは、すべての人が100%納得する政策がないためです。どの政策も誰かにとってマイナスになる可能性があるため、政策を中心に政治の話をすると、自分の立場をかけた戦いになってしまうのです。戦いになってしまったら、お互いに無傷ではいられません。ここが、政治の話をするときに障害になるポイントです。

 では、政治の話を安心してすることは不可能なのでしょうか。不可能ではありませんが、ひとつ条件があります。その条件とは、政治のルールを把握することです。

 スポーツ観戦をしたあと、友人と感想を話すとき、ルールを無視して自分が応援しているチームが勝ったと言い合うでしょうか。そんなことをしていたら喧嘩になります。大抵の場合、ルールに照らしてどのチームが勝ったかはお互い了解していて、その上でプレー内容がどうだったかについて話すと思います。ルールの範囲内で、このチームは勝ったけどプレー内容が気に入らないとか、そういう好みの違いはあるかもしれません。SNSなどで見る政治の話は、ルールを無視して自分が支持する政策を推している政党や政治家が勝ったと言いはっているのに近いです。

国会のルールを知るメリット

 では、知っておくべき政治のルールとはなんでしょうか。政治には色々な面があるため、政治のルールにも色々あるのですが、私は国会のルールを知ることをおすすめします。

 なぜ国会のルールなのかというと、普段ニュースなどで目にする政治は国会に関するものが多いからです。「予算委員会」、「審議拒否」「強行採決」、「内閣不信任決議案」、政治に興味がある方ならよく目にするフレーズではないでしょうか。これらはすべて国会に関する言葉です。

 また、国会に対して政府というものがありますが、政府の活動のルールは各省庁ごとに違うものもあり、難しいです。それに、政府の活動は政策に結びついてくるので、政策と分離するのが難しいという理由もあります。

 そして、国会は「言論の府」とも呼ばれる、話し合うためにある機関です。国会のルールというのは、話し合いをまともに成立させるために必要なルールでもあります。国会のルールが平気で無視されるようになると、話し合いが形だけのものになってしまいます。

 国会での話し合いが、形だけのものになるのは危険なことです。新しい政策は、必ず国会での話し合いを通じて実現します。国会を適当に済ませていいようになってしまうと、どんな政策も好き放題できてしまうことになります。ルールの破り方によっては、好き放題できてしまうのが多数派ではなく少数派になることもあるかもしれません。

 国会は政策実現の最後の関門です。どんな政策を支持しているにせよ、国会を無視することはできません。福祉政策、外交政策、安全保障政策、財政政策、どの政策を重視していようと、すべて最後は国会に行き着きます。国会は政治の中心であると言っても過言ではありません。

 ですから、政治の話をするときに、まず国会のルールを把握するのがいいと思います。

 この連載で、今までブログに書いた内容をまとめて、国会の審議がどのようなルールで行われているかを説明します。そして、実際のエピソードをもとに、国会のルールがどのように攻撃や防御に使われていったかがわかるようにします。一通り読めば、国会関係の政治ニュースの意味がよりわかるようになります。

 個々の政策の是非に踏み込まず、その政策を可能にする議案が国会で可決される可能性はどの程度かを話し合うことができれば、友人とスポーツや映画の感想を話すように政治の話をできるはずです。


予算委員会の集中審議が求められる理由


■仮想通貨のような「集中審議」

2019年11月17日現在。

日本の政治の話題は、桜を見る会関連の話と大学入学共通テストの話で賑わっています。今回も、野党の要求は「予算委員会の集中審議の開催」です。

予算委員会の集中審議は、何か問題か起こるたびに野党が要求したり、逆に与党が野党に提案したりと、交渉の材料に使われています。集中審議は、国会内の与野党交渉で使われる仮想通貨みたいなものかもしれません。

■集中審議の価値

なぜ集中審議に価値があるのでしょうか。

集中審議は予算委員会で行われる会議のひとつです。特定のテーマを定めて、テーマに該当する大臣と総理大臣が出席して与野党の質問に答えます。テーマの範囲ならばなんでも総理大臣に質問できるというのがいいところです。うまく質問すれば総理大臣の口から今後の政策を左右する言葉を引き出して、政府の行動に影響を与えることができるからです。余計な影響を受けたくないので、官僚が必死になって質問する議員に質問内容を取材して大臣が答える内容を徹夜で考えたりするわけです。

また、予算委員会の集中審議はテレビ中継もされるので、議員の活動実績として目立ちます。一定以上の議席を持つ党の党首が総理大臣と討論する党首討論と違い、予算委員会に所属していれば、党首でなくても総理大臣に直接質問できるところもよいです。

そして、党首討論とは違い、集中審議での総理大臣とのやりとりは「質疑」です。質疑なので、総理大臣は質問に答えることはできますが、反論するために質問されてないことについて持論を述べることは、よくないとされています。つまり、総理大臣を一方的に質問攻めにできます。

これらのいいところがあるので、何かというと予算委員会の集中審議が求められるのです。


野党、久々の勝利


■英語民間試験導入延期へ

2019年11月4日現在。

先週11月1日に萩生田文部科学大臣が、2020年度の大学入学共通テストで予定されていた英語の民間試験の導入を見送る発表をしました。

英語民間試験の導入は、懸念の声もあり、今国会(200回国会(臨時会))では、野党から「大学入学共通テストで民間試験を使わない」と大学入試センター法に明記する法律改正案が提出されていました。

■文科相の進退問題との声も

英語民間試験導入の問題については、テレビ番組でこの件について萩生田文科相が出したコメントが「教育格差を容認するもの」として批判されていることと合わせて問題が大きくなりました。野党から大臣の進退問題という声も出てきたからです。

10月25日に菅原経済産業大臣が辞任したのに続いて、10月31日にも河合法務大臣が辞任していたため、10月31日から国会審議は止まっていました。31日に野党は審議復帰の条件として英語民間試験導入の延期や予算委員会の集中審議(総理大臣が出席するテレビ中継ありの審議)の実施を求めていました。

この時点で首相官邸が取れる選択肢は論理的に4つありました。

英語民間試験導入問題の解決策

1は野党の要求に何も答えていないので、無理そうです。4は譲歩しすぎで、政府与党にうまみがないです。そして、2をするほど首相官邸が英語民間試験導入に思い入れがないので、3の文科相は辞任せず、英語民間試験を延期することにしたのだと思います。11月2日付け読売朝刊によれば、首相官邸は英語民間試験導入に関する問題を「事実上放置してきた」とあり、興味がないから文科省にまかせてきたとの見方があるようです。

■国会を止めれば政策を変えられるという実例

結局、この問題は民間試験導入延期と、11月6日と8日に衆議院と参議院で予算委員会の集中審議が行われることで与野党が合意し、国会は正常化に向かっています。

大臣が公職選挙法違反の疑いで2人連続で辞任していることと、文科相の失言により政策変更が実現しました。野党は大臣の失言を批判して国会を止めることで、政策変更を迫れるということです。

こうなると、失言を追及して国会審議を止めるのは、野党にとって最善の行動ということになりそうです。いいか悪いかは別として、そういうルールになっているということです。


都内で大砲の音を聞く


■即位礼正殿の儀で祝砲が発射される

2019年10月27日現在。 先週10月22日は、即位礼正殿の儀が行われました。

儀式に合わせて礼砲が発射されるということを知ったので、友人と皇居周辺の竹橋あたりまで行きました。都内で発射される大砲の音を生で聞いてみたかったからです。

この日は朝から雨でした。日差しがないせいか肌寒く、地下にある竹橋駅の改札前で、儀式が始まるまで雨風をしのいでいました。儀式が始まる前くらいに雨が弱まり、晴れ間が出てきたので地上に出ました。

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雨が弱まった皇居周辺
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雲の間からみえる太陽

地上で首相官邸のYouTubeチャンネルで行われていた(即位礼正殿の儀の)中継を見ながら礼砲を待っていました。報道によると、総理大臣が天皇の即位を祝して万歳三唱するさいの「て」の発声があったところで礼砲の発射が開始されるとのことでした。ただ、さすがにYouTube経由ではラグがあったようで、中継中の万歳三唱の前に礼砲が発射されました。

大砲の音は、花火よりは鋭いあっさりした音に感じました。また、皇居周辺は高層ビルが立ち並んでいるため、ビルの壁かガラスが大砲の衝撃で揺れるよう音が発射音に遅れて聞こえてきました。ビルの音は横浜の花火とかわりはないように思います。

都内で大砲の音を聞くという目的が達成できて大満足でした。今度は、チャイコフスキーの『1812年』で本物の大砲を使った演奏を聴いてみたいですね。