与党と野党の役割は違う:もっと楽しく政治の話をするための国会のルール2


 国会審議のルールを説明する前に、与党と野党が何を目指して行動しているかを説明します。与党も野党もそれぞれ自分たちの目的を達成するために国会で行動しています。目的は、ゲームの勝利条件のようなものです。国会において与党と野党は役割が違います。役割の違いにより、勝利条件もそれぞれ違います。与党と野党の役割の違いを知ることで、客観的に与党と野党の行動を評価できるようになるはずです。

法案成立を目指す与党、成立阻止を目指す野党

 いきなりですが、国会審議をゲームと思ってみてください。このゲームのプレーヤーは与党と野党の2者です。

 与党というのは、首班指名選挙で、総理大臣になった国会議員に投票した政党です。首班指名選挙で他の政党に勝てるくらいなので、与党の議席は過半数を超えているのが普通です。

 与党の国会議員のなかには、財務大臣や外務大臣など、政府の幹部に就任し、政府の仕事をする人たちがいます。この人たちは、総理大臣ともども三権のうちの「政府」の立場の人間として扱われます。国会議員ではありますが、仕事の中心は国会ではなく役所です。政府に入らなかった与党議員は、国会審議に専念します。政治ニュースでいう「与党」は、この人たちを指します。

 与党の目的は、数多くの政府提出法案を可決、成立させることです。国会は限られた期間しか活動しないので、会期内に確実かつ効率的に法案を処理していく必要があります。

 一方、野党というのは与党でない政党のことです。与党よりも議席が少ないことが普通です。野党議員は政府に入りません。政権に加わらず、議席も少ない野党には、何かの政策を当事者として実現するチャンスがほとんどありません。

 野党の目的は、ひとつでも多くの政府提出法案の成立を阻止することです。なぜ政府と与党の邪魔をするのでしょうか。たいていの野党は、与党に反対する国民に投票してもらって、国会の議席を得ています。国会で与党の邪魔をしなかったら、野党に投票してくれた人たちの期待を裏切ってしまうことになります。もちろん、反対する必要のない法案には野党も賛成します。成立している法案のなかには、野党が賛成しているものもあります。

 与党は法案を成立させたい。逆に野党は法案成立を阻止したい。このような関係になっています。

野党は採決させないように行動する

 ただ、このゲームは野党が圧倒的に不利です。なぜなら、採決するときに過半数を超える賛成があれば、法案を可決させられるからです。与党は過半数の議席を持っているから与党になっています。与党は最初から勝利条件をひとつ満たしている状態です。採決さえすれば必ず法案は成立します。議席が少ない野党に勝ち目はありません。野党はどうしたら与党に対抗できるでしょうか。

 採決したら与党が勝ってしまうのだったら、採決させなければいい。これが、野党の戦い方の基本方針です。採決しなければ法案は可決しないので、もちろん成立もしません。採決の時期を遅らせれば遅らせるほど、法案の成立を先のばしできます。

 もし、国会の会期の最終日まで採決させなかったら、法案はどうなるでしょうか。原則として廃案になります。廃案になった法案を成立させたければ、次の国会が召集されたとき法案の提出からやり直さなければなりません。前の国会でどれだけ審議を重ねていても、次の国会ではゼロから審議がスタートです。法案の提出と国会審議の対応に膨大なエネルギーを注いでいる政府と与党にとって、廃案は大きなダメージになります。前の会期の審議過程が次の会期に反映されないことを、「会期不継続の原則」と呼びます。会期不継続の原則は、最初から劣勢である野党の数少ない武器のひとつです。

 野党にはもうひとつ武器があります。「この日に質疑をやろう」「この日に採決しよう」というように、審議の日程を決める理事会というものが委員会にあります。理事会は、委員長と委員会に所属する主な与野党議員の代表者である「理事」で構成されています。この理事会の決定は、原則として全会一致でなければならない慣例になっています。全会一致ということは、たったひとりでも反対する理事がいたら否決ということです。単なる多数決で決めてはいけないという厳しいハードルがあります。この慣例のおかげで、野党は少ない人数でも採決の先送りを実現できるのです。

与党は採決する環境を整えることが仕事

 さて、今度は与党が困ります。ずっと野党に採決に入るのを反対されては、どんなに頑張って審議しても、どんなに選挙でたくさん仲間の議員を増やしても、永久に法案を成立させることができません。与党に対抗手段はあるのでしょうか。

 与党の対抗手段が、悪名高い「強行採決」です。強行採決というのは、野党が反対しているのにもかかわらず採決を強行することです。これは、審議日程を理事会の全会一致で決めるという慣習に反しています。ただし、法律違反ではありません。法律上、委員会の議事進行は委員長の一存で決めることができるからです。

 法律違反でないとはいえ、強行採決をすることに問題はないのでしょうか。問題がまったくないことはありません。しかし、いくら全会一致で決めるという慣習があるとはいえ、何も決めないならば国会が存在する意味がありません。野党は支持者の代理人として議事進行を妨害していますが、与党も支持者の代理人として法案を成立に導く責任があります。たとえ野党の反対があろうと、どこかで審議を進めなければならないのです。

 ちなみに定義上、野党理事のひとりでも反対したら強行採決になります。極端に短い審議時間で採決を強行した場合でなければ、強行採決を批判することにあまり意味はありません。どれだけ審議を重ねていても、与野党で対立している法案の採決に、野党はたいてい反対するからです。

 強行採決がやむを得ない場合があるとはいえ、安易に乱発すると「強引な国会運営」であると批判され、内閣や政党の支持率に悪影響を及ぼす可能性があります。支持率が悪くなると、次の選挙で苦戦してしまうかもしれません。国会議員として活動するには、選挙を勝ち抜く必要があります。選挙に悪影響がでることは、なるべく避けるべきです。

 与党は批判を避けるために、なるべく野党の協力を得て審議を進めようとします。野党が欠席した状態で審議を行わないように野党に出席をうながしたり、野党が望む質疑をするために総理大臣を出席させたりします。審議を充実させて、野党に採決を容認させる作戦です。

 「充実した審議」といった場合、客観的な指標として使われるのが審議時間です。「審議時間を○○時間とったので、議論を尽くした」という形にします。ただ、審議時間を重視するあまり、変なことも行われています。野党が欠席した審議で、野党の質問時間分みんなが待ち続けるという「空回し」という技があります。これは、野党が審議拒否している間でも審議の実績時間を増やすための手法です。出席しない野党が悪いといえばそれまでですが、議員、大臣、国会職員が全員無為な時間を過ごすというのは、もったいないような気がします。

与党と野党は立場が違うので行動も違う

 国会審議というゲームでは、与党は審議を進めようとし、野党は審議を遅らせようとする。この関係を把握しておいてください。与党も野党も、ゲームのプレーヤーとして最適な行動をしています。審議拒否も採決の先送りも、野党不在の審議や強行採決も、ゲームの勝利条件を満たすための行動にすぎません。プレーヤーとしての立場が変わったら、旧野党は強行採決し、旧与党は審議拒否します。実際に、2009年の自民党から旧民主党への政権交代で国民が目にした光景です。

 審議拒否や強行採決は行為自体に問題はありません。少なくとも法律違反ではありません。審議拒否をしたとか、強行採決をしたとかいうだけで評価を決めるのは気が早いです。それらの行動がゲームの勝利に役立ったかどうかで評価をするべきです。たとえば、審議拒否によって野党は与党からどのような譲歩を引き出せたのか、強行採決をしても問題ない程度の手当てを与党は野党にできているか、という見方が必要だと思います。


2019年度補正予算審議開始へ


■2019年度補正予算、1月28日衆議院通過の見込み

 2020年1月26日現在。

 先週、1月20日に通常国会が召集されました。

 通常国会は3月まで予算審議に全力を注ぎます。今回は、2019年度補正予算案の審議もあります。補正予算案の審議のあと、2020年度予算案の審議に入ります。

 報道によると、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長は1月28日に補正予算案の採決を衆議院で行うことで合意したそうです。例年、補正予算の審議は衆議院2日、参議院2日なので、与党にとって悪いペースではありません。召集日も昨年より一週間ほど前倒しになっており、野党に集中審議をプレゼントする余裕もあるようです。

20200126予算審議


国会のおさらい:もっと楽しく政治の話をするための国会のルール1


国会のおさらい

 「通常国会」「臨時国会」、政治関連のニュースでよく出てくる国会に関する言葉です。当たり前のように出てきますが、たとえば「臨時っていうけど、毎年やってない?」と思ったことはないでしょうか。ここでは、国会の基本中の基本についておさらいします。

国会とは何か

 日本の国家権力は、大きく3つに分類されます。立法、行政、司法です。立法が国会、行政が政府、司法が裁判所にそれぞれ対応します。国会を中心にみると、国会が決めた予算や法律の範囲内で政府が政策を実行し、政府の実行した政策が法律の範囲内かどうかを裁判所がチェックする、という関係になっています。いわゆる三権分立です。

三権分立

 分立といっていますが、国会と政府には密接な関わりがあります。政府の中枢機関である内閣のトップは、内閣総理大臣です。この総理大臣は国会議員のなかから、議員同士による選挙で選出される決まりになっています。そして、内閣の構成員である大臣の過半数は国会議員でなければなりません。また、政府の役所には、副大臣や政務官などという立場で、国会議員が入って仕事しています。国会議員は政府機関の幹部にもなります。

立法と行政の融合

 国会の主な仕事は、法律を決めること、予算を決めること、条約の承認を決めることや、内閣総理大臣を選出することが挙げられます。これらの仕事は、いずれも政府の活動の根拠になるものです。政府が何か新しいことをしようとしたときに、法律の根拠がなければ権力をふるえません。予算がなければ役所は新しく公務員を雇ったり、民間企業と取引したりすることもできません。総理大臣が決まらなければ、内閣が成立せず、役所を指揮することができません。原則として、国会が決めないと政府は新しい活動を何もできないのです。

衆議院と参議院

 国会は衆議院と参議院の二院で構成され、その中心となる議員は日本国民が選挙で選びます。衆議院議員の任期は4年で、参議院議員の任期は6年と両院で差があります。さらに、衆議院には参議院にはない「解散」というものがあります。内閣総理大臣がすべての衆議院議員を任期の途中でクビにして、新しく衆議院議員を選ぶ選挙を行うことを解散と呼びます。解散があるので、衆議院議員が4年の任期をまっとうすることはほとんどありません。

内閣不信任決議権

 衆議院には解散があるかわりに、参議院にはない権限をいくつか持っています。まずは、内閣不信任決議権です。政府の中枢である内閣に対して「信任しない」という決議を衆議院がしたとき、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職して政権を失うかのどちらかを選ばなければなりません。衆議院を解散したとしても、選挙に勝てなければ政権を失うことになるので、内閣不信任決議権は非常に強い権限です。ちなみに、選挙に勝っても形式上以前の内閣は総辞職しますので、不信任となった内閣が総辞職する運命はくつがえせません。衆議院の支持を失えば内閣が倒れるというこの制度を、議院内閣制と呼びます。

衆議院の優越

 次が衆議院の優越です。国会の議決は、衆議院と参議院が一致して議決したときに有効となるのが原則です。ある法案について、衆議院が可決、参議院も可決すれば法案が成立して法律になります。もし、衆議院と参議院の議決が一致しなかった場合は、法案は成立しません。ただし、法案については衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、衆議院の3分の2以上の賛成で再び可決した場合はその時点で法律になります。

 さらに、予算案の議決や条約の承認の議決は、衆議院が可決したあと参議院が否決した場合に、両院協議会という話し合いの場でも衆参で折り合いがつかないときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。内閣総理大臣の指名の議決も、衆参の指名が不一致で両院協議会の話し合いも不調に終わった場合は、衆議院が指名した国会議員が内閣総理大臣になります。このように、衆議院と参議院の議決が異なったときは、条件付きで衆議院の議決が優先されます。

 ここまで説明したのは、衆議院と参議院の議決が出揃ったあとの取り決めです。もし、参議院が議決をしなかった場合はどうなるでしょうか。参議院が議案を議決しないで放っておいた場合もちゃんと想定されています。衆議院で議案を可決後、憲法で決められた日数経過しても参議院が議決をしない場合は、衆議院の議決がそのまま国会の議決になります。これを「自然成立」と呼びます。

 自然成立の日数は、議案によって違います。内閣総理大臣の指名が衆議院の議決から10日、予算案と条約の承認が30日になっています。法案については、衆議院の議決から60日以内に参議院が議決しないときに、衆議院が「参議院は法案を否決したとみなす」という議決をすることができます。これを「みなし否決」と呼びます。衆議院の議決から何日経過したときに、どの議案を自然成立、またはみなし否決できるかをカレンダーで表すと次のようになります。

衆議院の優越

 国会について考えるときは日付の感覚が非常に重要です。自然成立とみなし否決の日数をカレンダーの面積で把握することで、国会の日程の窮屈さが体感できるようになると思います。今後も必要に応じて、カレンダーをつかった説明をしていきます。

 ちなみに、法案は衆議院と参議院どちらから審議を始めても構いません。ただし、予算案に関しては衆議院の議決が優先される関係上、必ず衆議院から審議を始めます。これを「予算先議権」と呼びます。衆議院の優越に関する規則は、衆議院ですでに議案が議決されていることが前提になっています。もし予算先議権がないと、参議院で予算をいつまでもいつまでも審議して議決せずに、衆議院で審議できない状況になってしまうのです。

国会の種類と会期

 国会は、他の役所のように一年をとおして平日に必ず開いている機関ではありません。一定の期間だけ活動します。国会が開かれている期間のことを、「会期」と呼びます。国会は、会期中のみ予算案や法案などを議決することができます。逆にいうと、会期中でなければ、新しい法案を成立させることはできません。

 国会は憲法の規定により、一年に一回は必ず開くことになっています。国会を開くことは、国会議員を集めることなので、「召集」と呼ばれます。一年に一回必ず召集する国会を「通常国会」と呼びます。通常国会は「常会」「通常会」などとも呼ばれます。

 通常国会は国会法により、1月中に召集することと、会期を150日間とすることが定められています。150日たっても審議が終わらない場合は、国会が議決すれば一回だけ会期を延長することができます。

 さて、通常国会が会期を終えたあとに、新たに予算をつけたり法案を成立させたりしたい場合はどうすればいいでしょうか。来年の通常国会まで待たなければならないのでしょうか。

 通常国会まで待てないときは、臨時に国会を召集することができます。これを「臨時国会」「臨時会」と呼びます。臨時国会の会期は国会の議決で定めます。何日でもいいのですが、60日程度になることが多いです。また、延長は二回までできます。

 また、衆議院議員を投票で選ぶ総選挙を行った直後に、必ず召集する国会もあります。「特別国会」「特別会」と呼びます。なぜ、総選挙後に必ず召集しなければならないかというと、総選挙後に選挙前の内閣が総辞職するため、新たに総理大臣を選ばなければならないからです。もちろん、選挙前と同じ国会議員をもう一度総理大臣に選んでも構いません。ちなみに、以前総理大臣であった国会議員が新たに総理大臣になった場合は、内閣のカウントがアップして、「第二次○○内閣」などと呼ばれるようになります。

 特別国会の会期と延長については臨時国会と同じルールが適用されます。

国会の種類

本会議と委員会

 国会には、主に2種類の会議があります。全議員が集まる「本会議」と、何十人にかずつ議員が集まる「委員会」です。

 本会議は全議員が集まる、議院の意思を決定する会議です。本会議で議決されたことが、議院の議決になります。すべての議案は、本会議で議決されてはじめて院議になります。いままで出てきた「国会の議決」というのは、本会議で採決し可決されたものという意味です。

 委員会はテーマや分野ごとに設置されます。予算について話し合う「予算委員会」が有名ですね。国会議員はひとりひとり所属する委員会が割り当てられます。委員数は委員会によって違いますが、20人から40人くらいが定員になっています。

 国会に提出された議案は、内容に応じた委員会に付託され、審議を始めます。委員会で審議が終わったら、本会議で委員会の審議結果を聞いて採決する、という流れになります。委員会でほとんどの審議を行うこの制度を、「委員会中心主義」と呼びます。

 ここまで、国会をいわば外からながめて、国会自体がどういう能力を持っているか、国会自体にどのようなきまりがあるかを説明をしました。次からは、いよいよ国会のなかで何が行われているかについて説明していきたいと思います。


2020年の通常国会は、補正予算の審議からはじまる


2019年12月24日現在。

あと一週間ちょいでお正月です。お正月が終わると、通常国会がはじまります。

今年発生した台風などの自然災害の対策として、政府は経済対策を行うことを決定しています。つまり、2019年度予算の補正予算が編成されます。

補正予算が編成されるということは、国会で補正予算案の審議が必要になるということです。

来年の通常国会は、補正予算案の審議を1週間程度やったあと、総理大臣の施政方針演説など政府四演説を行い、2020年度の本予算の審議に入るという日程になります。

つまり、国会冒頭の日程を補正予算の審議で消費します。補正予算の審議がない年と比較して来年度の本予算の審議は窮屈になります。


2019年、秋の臨時国会閉幕


2019年12月15日現在。

秋の臨時国会は先週9日に終了しました。

政府が提出した法案は、17本中16本が成立しました。

法案成立率は94%と高いです。この数字から、野党が「桜を見る会」の問題を国会で追及したことは失敗だったのではないかという意見を見ました。そうかもしれませんが、内閣支持率は臨時国会前と比べて下がっているようです。全く効果がなかったわけではないのでしょう。

また、「法案成立率94%」と言っても分母が17です。この臨時国会での法案提出数は例年より少ないと言われています。「94%」は、解釈が難しい数字です。

閣僚の辞任と、桜を見る会の問題とに足を取られ、本命と思われていた憲法審査会の採決ができなかったという結果は、政府与党にとって満足のいくものではないと思われます。

来年の通常国会で、憲法審査会の審査が進むのかが見どころです。


第200回臨時国会、会期末間近


■政府提出の法案、条約の承認案は、ほぼ参議院で審議中

2019年12月1日現在。

10月4日に召集された臨時国会は、今月9日に閉会します。

今国会で審議されている内閣提出法案は17本で、11本がすでに衆参で審議を終えて成立しています。残り6本のうち、5本は衆議院を通過して参議院で審議中で、1本は衆議院で審議中です。ただ、最後の1本も委員会での審議は終わっています。すぐに、すべての法案が参議院で審議入りするはずです。

あとは、条約の承認を求める議案が2本あります。2本とも参議院で審議中です。

会期末までの一週間は主戦場が参議院になりそうです。


参議院で予算委員会開会要求でる


2019年11月24日現在。

11月22日に、参議院で立憲民主党などの野党が予算委員会開会要求を出しました。この開会要求は参議院規則の定める「委員の三分の一以上」を満たしているので、予算委員長は予算委員会を開かなければなりません。

ただ、この規則は予算委員会の開会しか保証していないので、野党が求める総理大臣出席の集中審議が行われるかどうかは不明です。委員会の議題は与野党の全会一致で決めるのが原則なので、与党の意向を無視して議題を決めることはできないでしょう。与党がこのままではまずいと思ったら、集中審議が行われるかもしれませんが、果たしてどうなるでしょうか。

野党は「今年の通常国会では、予算委員会の開会要求が出たのにも関わらず与党は予算委員会を開かなかった」と主張していますが、6月26日に参議院予算委員会が開かれています。

ただ、それは野党が求めていた集中審議ではありませんでした。それはいいのですが、会期末に必ず実施する後始末的な会議だったのはよくないでしょう。事実上予算委員会の開会要求は無視されたと言わざるをえません。

与党が今度はどう対応するのか注目です。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール


政治につきまとう厄介なイメージ

 初めて顔を合わせた人と話すとき、あなたはどのような話題を選びますか?

 その日の天気、どこからきたか、自分の仕事について話すことが多いはずです。とくに気をつかわなくても会話がすすむからです。

 もし、相手が政治的な話をしてきたら、あなたはどう思うでしょう。さっき例に挙げた話をするときと違い、少し身構えるかもしれません。あなたは会話中、言葉を選んだり、相手の発言にどう反応するか考えたりするのではないでしょうか。

 政治系の会合の懇親会でもないかぎり、いきなり政治の話をすることはないはずです。ただ、私はそのような場に参加したこともありますが、それでも政治について話すときは探り探りになります。

 なぜ、気軽に政治の話ができないような気がするのでしょうか。

 それは、「政治」には、何か厄介なイメージがつきまとうからです。

 多くの人にとって政治の話は、初対面の人との会話で出してはいけない話題のひとつです。とくに、沖縄の在日米軍基地の是非とか、憲法改正、愛国心、夫婦別姓の是非とか、何らかの政策に関する話を、あなたは避けようとするはずです。

 これらの政策には、「それぞれの立場によって、正しいと確信する答えが異なる」という共通点があります。そして、すべての人が100パーセント納得する政策は、おそらくありません。

 これが、「政治」に厄介なイメージがつきまとう最大の理由です。

 どの政策も誰かにとってマイナスになる可能性があります。これについて議論しようとすると、自分の立場をかけた戦いになってしまうかもしれません。万が一、激しい言い争いにでもなってしまったら、お互いに無傷ではいられません。

 これが、私たちに「ふだんは政治の話はしないほうがいい」と思わせている最大の理由なのです。

 では、どのような場でも、楽しく、安心して政治の話をすることは不可能なのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。ただし、ひとつだけ条件があります。

 それは、

 「政治のルールを把握すること」

 です。

 スポーツ観戦をしたあと、友人と感想を話すとき、ルールを無視して自分が応援しているチームが勝ったと言い合うでしょうか。そんなことをしていたら喧嘩になります。たいてい、ルールに照らし合わせてどのチームが勝ったかはお互い了解していて、その上でプレー内容がどうだったかについて話すはずです。

 このチームは勝ったけどプレー内容が気に入らないとか、負けたけどもいい試合を作ってくれたとか、あくまでルールに則った会話をするでしょう。これに対して、SNSなどで見る政治の話の中には、ルールをまったく無視して、自分が支持する政党が勝ったと言い張る、または、嫌いな政党がルール違反をしたと批判するものもあるように思います。

 これは、野球でたとえると「ホームランを打ったからといって、バッターやランナーがアウトになる心配をせずにホームベースに戻るのはおかしい」と文句を言うことと同じではないでしょうか。

国会のルールを知るメリット

 では、知っておくべき政治のルールとはなんでしょうか。政治にはいろいろな面があるため、見るべきところは数多くありますが、私は国会のルールを知ることをおすすめします。

 なぜ国会のルールなのかというと、ふだんニュースなどで目にする政治は国会に関するものが多いからです。「予算委員会」「審議拒否」「強行採決」「内閣不信任決議案」、どれも政治に興味がある方ならよく目にするフレーズではないでしょうか。これらはすべて国会に関する言葉です。

 国会は「言論の府」とも呼ばれる、話し合うための機関です。国会のルールというのは、話し合いをまともに成立させるために必要なルールでもあります。これが平気で無視されるようになるのは、とても危険な事態に陥ることを意味します。

 新しい政策は、かならず国会の審議を通じて実現します。話し合いの形式すら守られなくなると、多数派はどんな政策も好き放題できてしまうことになります。

 国会は政策実現の最後の関門です。どんな政策を支持しているにせよ、国会を無視することはできません。福祉政策、外交政策、安全保障政策、財政政策、どの政策を重視していようと、すべて最後は国会に行き着きます。国会は政治の中心であるといっても過言ではありません。

イメージと違う国会

 と、ここまで説明したのは、実は立て前です。実際に国会で起こっていることは、いま書いたことからイメージできるものと、ちょっと違います。

 政策は、アイデアがうまれてから実行されるまでの間に、何度か変質します。例えば、役所が発案した政策は、国会に提出する前の与党の審査で変質し、さらに国会の審議で変質して法律として成立する場合があります。役所が当初のアイデアどおりに政策を遂行できるかどうかは、与党の審査や国会の審議で、どれだけその内容が変質するかにかかっています。なぜなら、役所は成立した法律どおりに仕事をしなければならないからです。発案当初は完璧な政策だったとしても、成立した法律が役所にとってイマイチなものであったら、役所はイマイチな法律どおりに政策を遂行しなければならないのです。

 そこで、政策を発案者にとって完璧な原案どおりに実行するために「国会対策」が必要になります。国会の審議が思いどおりになるようにコントロールすることを、国会対策と呼びます。与党は国会対策により、政策の変質を最小限にして法案を成立させるのです。

 2020年1月現在の日本で政権与党となっている自民党と公明党は、役所が政府を通じて国会に提出する法案を、提出前に審査しています。これを「事前審査制」と呼びます。この仕組みでは、原則として与党が同意しないかぎり、政府が国会に法案を提出することはできません。つまり、政府提出法案を成立させるという点で、政府と与党の目的は一致しています。国会で、政府と与党が法案の成否をかけて質疑の応酬をすることはまずありません。

 野党にも国会対策はあります。野党の国会対策は、野党のポリシーに反する法案の成立を阻止することが主な目的です。しかし、野党は与党にくらべて議席が少なく、採決すれば法案は必ず成立します。そのため、野党は法案を採決させないことで、その成立を阻止しようとします。法案の審議入りの時期を遅らせたり、審議拒否などにより審議を引き延ばしたりするのは、採決を回避するためです。つまり、野党にとっての最善の状態は、法案審議をさせないことなのです。野党が反対している法案の審議に応じているというのは、与党に追い込まれている状態です。

 ここで、不思議な現象が起きます。与党は政府との間で話がついていて、国会の審議で法案の中身について議論する必要がなくなり、野党は法案審議に応じないことを最優先に考えていて、法案の中身について議論することが二の次になります。与党も野党も国会で法案の中身について議論するモチベーションがないのです。そもそも現在の国会審議の慣習上、法案審議で国会議員同士が議論の応酬をする機会は、ほとんどありません。議員同士で法案の中身について話さないということは、いわゆる「政策論争」が行われないということです。

 「政策論争が行われない」という国会の現状は、あなたが学校で習ったときにイメージしたものと少し違うはずです。国会審議に関するこの前提を頭にいれずに、政策の内容と与野党の国会対応をごちゃまぜにして議論すると、与党支持者からは野党の行動が不合理に見え、野党支持者からは与党の行動が強引に見えます。そのため、会話が平行線をたどり交わらない可能性が高くなってしまいます。

 ですから、政治の話をするときに、現在の国会審議のルールを把握しておいたほうがいいと思うのです。

 この連載では、いままでブログに書いた内容をまとめて、国会の審議がどのようなルールで行われているかを説明します。そして、実際のエピソードをもとに、国会のルールがどのように攻撃や防御に使われていったかも詳しく解説しようと思います。ひととおり読めば、国会関係の政治ニュースの意味をより理解できるようになるでしょう。

 個々の政策の是非には踏み込まず、その政策を可能にする議案が国会で可決される可能性がどの程度かを話し合うことができれば、友人とスポーツや映画の感想を話すように、楽しく気軽に政治の話をできるはずです。


予算委員会の集中審議が求められる理由


■仮想通貨のような「集中審議」

2019年11月17日現在。

日本の政治の話題は、桜を見る会関連の話と大学入学共通テストの話で賑わっています。今回も、野党の要求は「予算委員会の集中審議の開催」です。

予算委員会の集中審議は、何か問題か起こるたびに野党が要求したり、逆に与党が野党に提案したりと、交渉の材料に使われています。集中審議は、国会内の与野党交渉で使われる仮想通貨みたいなものかもしれません。

■集中審議の価値

なぜ集中審議に価値があるのでしょうか。

集中審議は予算委員会で行われる会議のひとつです。特定のテーマを定めて、テーマに該当する大臣と総理大臣が出席して与野党の質問に答えます。テーマの範囲ならばなんでも総理大臣に質問できるというのがいいところです。うまく質問すれば総理大臣の口から今後の政策を左右する言葉を引き出して、政府の行動に影響を与えることができるからです。余計な影響を受けたくないので、官僚が必死になって質問する議員に質問内容を取材して大臣が答える内容を徹夜で考えたりするわけです。

また、予算委員会の集中審議はテレビ中継もされるので、議員の活動実績として目立ちます。一定以上の議席を持つ党の党首が総理大臣と討論する党首討論と違い、予算委員会に所属していれば、党首でなくても総理大臣に直接質問できるところもよいです。

そして、党首討論とは違い、集中審議での総理大臣とのやりとりは「質疑」です。質疑なので、総理大臣は質問に答えることはできますが、反論するために質問されてないことについて持論を述べることは、よくないとされています。つまり、総理大臣を一方的に質問攻めにできます。

これらのいいところがあるので、何かというと予算委員会の集中審議が求められるのです。