2013年9月9日追記:「議長を経由して」の解釈についてTwitterで教えていただいたので、記事に追加しました。
■通常国会会期末の参議院予算委員会の大臣出席要求は成規の手続でない可能性が高い
参議院の先例によれば、昭和31年3月9日以降、参議院で委員会が議長を経由して大臣の出席要求をしたことはないという事実がわかります。
先の通常国会では、石井予算委員長が文書で大臣の出席要求を求めたそうですが、それが成規の手続によるものかはわかりません。先例によるならば、わざわざ議長を経由していない可能性があります。
また、先例では、成規の手続で議長を経由する前に委員会で大臣の出席要求を議決しています。先の参議院予算委員会では、大臣欠席前の最後の予算委員会だった5月15日から、実際に欠席が起こった6月24日までに大臣の出席要求は議決されていません。成規の手続に委員会の出席要求決議が必要だとすると、今回の安倍内閣に対する大臣の出席要求は、成規の手続となる要件を満たさないことになります。
■「議長を経由して」は本当に「経由」するだけ
ところで、「議長を経由して」という言葉が何度も出ていますが、これもいまいち意味がわかりませんでした。ただ、たまたま読んでいた本にヒントになりそうなことが書いてありました。以下がその本です。
谷福丸元衆議院事務総長の言葉に次のようなものがありました。引用中の「あれ」とか「それ」は細川元首相の証人喚問に関するものです。
ところが、あれは議長の決裁じゃないんだよね、議長を経由して送ればいいことになっている。
(赤坂幸一・中澤俊輔・牧原出編著『議会政治と55年体制 ―衆議院事務総長の回想【谷福丸オーラルヒストリー】』(信山社)P.284)
それで、それは委員長がちゃんと召喚状を議長に提出してくるわけ。あれは、法規上は議長が判断することにはなっていないんだよ。議長を経由して送ることになっているんだ。経由するだけなんだ。
(前掲書 P.298)
この言葉から考えられることは、「議長を経由して」というものは、議長が判断するものではない、ということです。委員会から上がってきたものを議長が承認することで効力が発生するわけではないということです。
ただし、谷前衆議院事務総長は衆議院の立場で話しているため、微妙に手続の異なる参議院でそのまま適用できるかどうかはわかりません。
■「議長を経由して」について(2013年9月9日追記)
Twitterで、@KoichiAkasaka先生から「議長を経由して」の解釈について教えていただきました。ご指摘によれば、「議長を経由して」とは、大臣出席を要求する文書や、証人喚問の召喚状などを外部に出す際に、議院の代表である議長の手を経る必要があるということだそうです。とてもスッキリとして、納得がいく解釈です。
議院と他の機関という視点でみることができなかったので、1人では絶対に辿りつけなかった解釈だと思います。@KoichiAkasaka先生、ありがとうございました。
- 大臣出席と憲法違反
- 大臣に対する出席要求の先例<参議院>・大臣出席と憲法違反1
- 参議院の先例からわかること・大臣出席と憲法違反2
- 憲法違反かどうかわからない・大臣出席と憲法違反3(終)