「国会議員だけ特別扱いはおかしい」はおかしい


2019年8月4日現在。

■2019年度の参議院議員選挙の当選者、初登院

先週、8月1日に第199回臨時国会が召集されました。先月の参議院議員選挙の結果を受け、新しい議長が決まったり、各会派の委員の割当が決まったりしました。今回の国会は、特に審議などをせず、国会の構成を決めて終わりの予定です。

今回の国会召集で、注目を集めたことのひとつが、れいわ新選組の船後議員と木村議員の登院でした。大型車いすが必要な両議員のために、参議院の本会議場が改修されたりしました。

■参議院の介助費用の負担は特別扱い?

船後議員と木村議員は重度訪問介護の利用者でもあります。重度訪問介護のサービスは、仕事中に受けることができません。いまは、国会での議員活動も「仕事中」とみなされているため、両議員も議員活動中はサービスを利用できません。そのため、参議院は、議員活動中の両議員の介助費用を当面負担すると決めました。

この参議院の決定を批判しているのが、日本維新の会の松井代表です。「国会議員だけ特別扱いはおかしい」(2019年8月4日読売新聞朝刊)とのことですが、別にこの決定は特別扱いではありません。

そもそも、重度訪問介護のサービスが仕事中に受けられないという制度の趣旨は、「仕事中の介助費用は、雇用者が負担すべき」というものです(重度訪問介護を利用する人の雇用をためらうインセンティブしか生んでないのではないかと思いますが……)。そういう意味で、参議院議員が働く参議院が介助費用を負担するのは制度の趣旨にかなっていますし、現状、参議院以外が負担できるものでもありません。

これを特別扱いというのは、中小企業の社員が、大企業の社員の福利厚生の良さに対して、「大企業の社員だけ特別扱いはおかしい」というのと同じくらいおかしい理屈です。仮に、法律や厚生労働省の決まりで、「国会議員のみは仕事中の介助費用を負担する」となったらおかしいとは思います。

■参議院と議員の関係は、雇用者と被雇用者の関係と同じとは言えないかもしれないが……

しかし、参議院と参議院議員の関係が、雇用者と被雇用者の関係と同じと言えるかというとちょっと違うかもしれません。松井代表もそこを意識しているのか「参議院議員は個人事業主だ」(毎日新聞2019年7月31日19:11)ということも言っているようです。

ただ、「仕事中の介助費用を雇用者が負担する」という制度の趣旨を、ガチガチに考える必要はありません。参議院議員が個人事業主だとしたら、特定の場所で、複数の個人事業主同士で仕事をする必要がある個人事業主組合のようなものです。その組合の活動を大まかに決めていている機関である参議院議院運営委員会が介助費用の負担を決めているのですから、ある意味企業の取締役会で決定したのと同じとみなせるのではないでしょうか。

また、参議院議員が個人事業主なら、立法事務費や文書通信交通滞在費、JRの無料パス(または航空機の無料利用)、政党助成金などは何なんだということになります。国会議員は国会の会期中は国会の許諾がなければ逮捕もされません。国会議員はもとから特別扱いされているのです。しかし、今回の介助費用の負担については、別に特別扱いではありません。


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