■来年の通常国会会期末に、内閣不信任決議案をとっておいた立憲民主党
今月10日に閉会した臨時国会では、会期末恒例となっている内閣不信任決議案の提出がありませんでした。立憲民主党は内閣不信任決議案の安売りはせず、参議院選挙前となる来年の通常国会の会期末に提出する予定だということです。ですが、会期末に内閣不信任決議案を確実に提出することができるでしょうか。
■国会冒頭の内閣「信任」決議案で、内閣「不」信任決議案を封じ込める技
内閣「信任」決議案というものがあります。「本院は、○○内閣を信任する。」という内容で、内閣「不」信任決議案とは反対の決議です。内閣「信任」決議案が「否」決された場合は、内閣「不」信任決議案が「可」決された場合と同じく、議決から10日以内に衆議院を解散しない限り内閣総辞職しなければなりません。内閣「信任」決議案と内閣「不」信任決議案は、言葉は反対ですが同一の効果を持った決議案と言えます。
もし、国会召集直後に内閣「信任」決議案が提出されたとしたらどうなるでしょう。両院のすべての審議は、内閣「信任」決議案が議決されるまで止まります。これも「不」信任決議案と同じです。そして、内閣「信任」決議案は、通常過半数を超える与党議員の賛成により可決されるでしょう。
そうすると、その会期中に内閣「不」信任決議案を審議することはできなくなります。会期中に同一の案件を再度審議・議決することがないという「一事不再議の原則」により、すでに可決された内閣「信任」決議案と表裏一体の性格を持つ内閣「不」信任決議案の審議を行えなくなるからです。
■絶対に封じ込められるわけではないし、やらないほうがよさそう
とはいえ、「一事不再議の原則」は絶対ではなく、会期中に事情が変わったときに同じような内容の議案を審議することは許されると考えられています。内閣「信任」決議案可決後に大スキャンダルが発覚したなどの場合は内閣「不」信任決議案を提出することはありうるでしょう。スキャンダルなどなくとも、事情変更を主張して会期末に野党が内閣「不」信任決議案を提出することは当然あると思います。
しかし、内閣「不」信任決議案を審議しづらくすることは確かです。もし、本当に通常国会冒頭で内閣「信任」決議案が提出されたらとても面白いです。でも、裏技のようなバグをついたような戦術なので、内閣と与党の支持率に悪い影響が出そうです。