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予算審議にかかる時間


2013年1月3日現在。今月下旬にも日本国憲法下の183回目の国会である常会、いわゆる通常国会が召集される見込みです。通常国会最大のテーマは、予算審議です。

■予算成立は5月?

今年は、総選挙や政権交代によって予算編成が難航していることもあり、平成25年度予算の成立は5月ごろになるとも言われています。3月中に予算を成立させ、4月から執行することが原則なので、もし5月に成立したとすると稀に見る遅さです。

■昨年の予算審議時間

いったい、予算審議にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。昨年、2012年は2ヶ月かかっています国会会議録検索システムを使って昨年の通常国会である、第180回国会の予算委員会の開会日をみたり、予算案の採決が行われた本会議の会議録をみたりして算出しました。

平成24年度予算案は、1月24日(火)に内閣から衆議院に送付され、1月30日(月)に衆参の予算委員会で、審議の前提となる趣旨説明が行われています。

そして、2月9日(木)の衆議院予算委員会で審議が始まりました。趣旨説明から2週間ほど時間があいているのは、平成23年度補正予算の審議を衆参で2月1日(水)から2月8日(水)までの間に6回行っていたからです(衆議院3回、参議院3回)。

衆議院では2月9日(木)から3月8日(木)までに19回予算委員会を開き、3月8日(木)に委員会で可決したのち同日中に本会議でも可決、参議院に予算案を送付しています。本会議での予算委員長の報告によれば、衆議院予算委員会では、政府に対する質疑時間だけでも89時間を費やしたそうです。

参議院では、3月12日(月)から4月5日(木)までに15回予算委員会を開き、4月5日(木)に委員会で否決したのち同日中に本会議でも否決、衆議院に予算案を返付しています。本会議での予算委員長の報告によれば、参議院の予算委員会では100時間近く審議したそうです。

4月5日(木)に予算案が参議院で否決されたことにより、衆参は同日中に両院協議会を開き協議します。協議は物別れに終わり、憲法60条2項(*)により衆議院の議決が国会の議決になりました。つまり、平成24年度予算案が成立したということです。

■今年の見通し

ここまでみた通り、平成24年度予算成立には、2月9日(木)から4月5日(木)までのおよそ2ヶ月間の日数と、34回の衆参予算委員会開会が必要でした。

では、今年の予算審議はどうなるでしょう。

昨年と同じだけの時間をかけるとすると、2ヶ月かかることになります。3月までに処理するには、1月中に予算審議を始めないといけません。

ただ、これは不可能です。なぜなら、冒頭に書いた通り、年末に総選挙と政権交代があった影響で予算編成作業が遅れていて、1月中に平成25年度予算案を国会に提出することが極めて難しいからです。

平成25年度予算成立が5月になるというシナリオで考えると、25年度予算案の審議入りは3月上旬がタイムリミットです。とすると、25年度予算案は2月中に編成作業が完了しなければなりません。

■補正予算もある

さらに、予算案が4月までに成立しない場合、成立するまでの間は暫定予算が組まれます。この暫定予算は政府の裁量が少ないため、安倍内閣が掲げる経済再生を達成するには心もとない内容になってしまいます。

この状況を打破するため、安倍内閣は、10兆円規模の経済対策を盛り込んだ平成24年度補正予算案を編成しています。この補正予算案もできていないのです。

平成24年度補正予算案の編成が終わり、補正予算案の審議、成立が終わってやっと25年度予算案の審議ができることになります。かなりハードなスケジュールです。

このスケジュールをどう乗り切るのか。予算審議だけでなく、予算編成作業の進捗も注目です。

 

*日本国憲法60条2項

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。


新人議員の教育


 昨年の衆議院選挙で誕生した自民党の新人議員は119名にのぼります。この119名の「教育」を巡って、石破幹事長と派閥の間で綱引きが行われています。

■執行部か派閥か

 自民党では、議員の教育や支援は派閥が中心となって行ってきました。新聞によれば、現在も各派閥による新人議員の囲い込みが行われています。しかし、石破幹事長は、自身が昨年9月の自民党総裁選で「脱派閥」を掲げて挑んだこともあり、119名全員を執行部主導で教育する構えです。執行部主導で教育することで、新人議員が派閥に所属しなくてもいいようにしようというねらいです。

■石破派?

 ただ、石破幹事長の「脱派閥」が本物でも、なかなかそのまま受け取れない可能性もあります。

 執行部主導で教育するということは、どういうことでしょうか。自民党執行部のトップは総裁である安倍首相です。とはいえ、安倍首相は内閣総理大臣としての仕事があるため、党の問題は幹事長が中心となって処理することになります。

 つまり、石破幹事長が中心となって教育するということになります。となると、もし新人議員の教育がうまくいった場合、119名を擁する石破派が誕生する可能性があります。

 石破幹事長は総裁選において、第一回投票で一位になりながらも、決選投票で安倍首相に逆転され、総裁の座を逃しています。いわば、安倍首相最大のライバルであり、安倍政権最大の不安要素です。

 その石破幹事長の勢力拡大につながりかねず、派閥の反発を生みかねない新人議員の執行部教育案を、安倍首相はどう受け止めるでしょうか。これにどう対応するかで、安倍首相がどのように与党をコントロールする方針なのかを判断することができそうです。