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国会入門とハマコー


 『議会用語事典』や『新・国会事典 第2版』、白井誠『国会法』は、細かいところ、制度上どうなっているか微妙なところを調べるのに便利です。ただ、かなり細かいので、いきなり読むと嫌になってしまう可能性があります。

 国会の実体をつかむのに最初に読むといいのは、清野正哉『国会とは何か』です。国会の1年間の流れがつかめます。もうひとつあげると、浜田幸一『お願いだから、わかって下さい。国会というところ…』がとてもいいです。

 ハマコーと呼ばれて有名だった浜田元衆議院議員の本は、超入門者向けという位置づけになっていますが、あなどれません。本の前半で議院運営委員会の役割や、国会対策委員長の役割を説明していて、与党が政府提出法案の成立させる目処をつける役目を負っていることがわかります。しかも、当時の議院運営委員長と国対委員長のインタビューという形式になっています。さらに、衆議院事務総長のインタビューもとっていて、国会職員の解説まで入っています。

 ハマコーさんがどうも合わないという人でなければ、かなりおすすめです。



国会の細かい動きを調べる本


 少し国会について調べてみると、いろいろな疑問にぶつかります。

 なんで提出された法案がただちに委員会に付託されないのか。本会議趣旨説明要求が付されたからというけれど、どのタイミングで、どのようにして要求を出すのか。また、どのタイミングで本会議で趣旨説明することが議運の議題になるのか、あるいは趣旨説明を省略することが議運の議題になるのか、というようにです。

 日々の政治ニュースを理解するだけでも、中学校の教科書以上の知識が必要になります。教科書は国会の機能の大枠しか説明してないからです。また、大概の政治入門書は、内閣をはじめとする行政の動きや、政策にスポットをあてていて、国会の機能は原則しか説明されていません。

 原則に当てはまらない部分を調べる本として、『議会用語事典』や『新・国会事典 第2版』、白井誠『国会法』は大変参考になります。ただ、これらは細かいところ、制度上どうなっているか微妙なところを調べるのに主に使っています。



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安倍内閣に不安材料はあるか


 2014年1月14日現在。安倍内閣も2年目に入っています。通常国会の召集まであと10日、安倍内閣に不安材料はあるでしょうか。

 消費税増税に代表される経済問題、中韓関係や対米関係のような国際問題などありますが、ことが起こったときに安倍内閣にダメージを与えるほどのものがあるかどうかはよくわかりません。

 どのような問題であれ、安倍内閣が危機に陥る条件があります。それは、安倍内閣の制度的な存在基盤である与党が動揺してしまうことです。

 何か事件が起こって内閣支持率が下がったりしても、与党が気にしなければ安倍内閣は安泰です。衆議院でも参議院でも過半数をもっていますから、完全に国会が止まるような事態は起こりません。野党が審議拒否しても、粛々と国会運営を進めていくだけです。

 しかし、与党が動揺してしまったら一巻の終わりです。逆に言えば、与党が動揺するほどの事件が起こらなければ、安倍内閣は安泰です。


与党がサボると政府は立ち往生する


 2014年1月13日現在。どの内閣にとっても、最大の不安材料があります。それは、与党がそっぽをむくことです。

 内閣は国会の多数派の支持によって存在しています。多数派がすなわち与党になります。与党の協力なくして、内閣は存在しえません。内閣不信任案が提出された時、与党が割れて不信任案が可決されたら、首相は衆議院を解散するか、内閣総辞職するしかありません。解散して選挙に勝利したとしても、内閣はいったん総辞職してから新しい内閣として発足することになります。

 また、与党には与党の役割があります。与党の役割のひとつに、内閣が提出した法案を成立させるというものがあります。法案を成立させるということは、衆議院で委員会に付託し、委員会で審査し、更に本会議で採決、そして参議院でそれを繰り返すということです。この日程をこなすために野党と調整して、より多くの内閣提出法案を成立させるようスケジュールを組むのが与党の仕事です。

 国会での審議スケジュールの形成過程に内閣はほとんど干渉できません。ですから、もし与党が意図的にサボったら、政府は新しいことが何もできないという事態に陥りかねないのです。

 そうならないように、首相は腹心すべてを政府の役職につけるようなことはせず、何人か党の要職(幹事長、総務会長、政調会長など)につけるということが必要になります。例えば、自分を支持する人間をすべて政府に入れた結果、ライバルが党を掌握してしまったらどうなるでしょうか。ライバルが法案の成立を意図的に遅らせることにより政局となり、支持率が低下し、最悪、退陣に追い込まれる可能性があるのです。


ねじれ後も参議院は政府・与党の障壁になる


 2014年1月12日現在。昨年の臨時国会召集後に、衆議院総選挙と参議院選挙での民主党の惨敗にともなう野党の多党化や、参議院での共産党の議席増によって与党の国会運営が困難になるのではないかという予想を立てました。

 その予想は見事に外れました。共産党は、せっかく理事ポストを得た参議院議院運営委員会で国家安全保障局や特定秘密保護法のことばかり発言していて、力を入れているはずの福祉政策に対する言及はわずかでした。自党が提出した法案を審議するための運動を起こした気配も感じられませんでした。目に見えるレベルでは、まったく国会運営に影響を与えていません。

 多党化にいたっては、単に野党の足並みが揃わないだけで、むしろ与党に有利に働いた印象さえうけました。日本維新の会とみんなの党は与党と協議して特定秘密保護法の修正にこぎつける一方、民主党は与党との修正協議で合意にいたらずに議事妨害戦術にシフトするという具合で、野党内の合意がとれなくなっています。

 ただ、ひとつ収穫があったのは、参議院の強さを改めて認識したことです。昨年の参議院選挙で自公で過半数を確保したため、ねじれは解消されました。解消されましたが、野党の構成で民主党が圧倒的な野党第一党として君臨しているためか、参議院での野党の抵抗は衆議院よりは足並みが揃っているように見えました。

 参議院での野党のあまりの抵抗に、与党はかなり強引な国会運営をし、会期の延長まで求めたほどです。まぁ、もともと窮屈な日程だったといえばそうなのですが、与党の思い通りにいかなかったのは確かです。

 与党、というより政府の行動に一定の歯止めをかけるために参議院は必要です。たとえ、ねじれが解消されたとしても、それだけの力を参議院は持っているのです。


諦めさせれば勝てる


 ルールは大切です。ルールを把握していなければ何もできません。とはいえ、ルール通りに物事が決まるというわけでもありません。ルールに則れば負けないはずの人が負けてしまうことがあります。どういうケースでしょうか。

 ルール違反をされるケースを除けば、負けないはずの人が諦めてしまうケースが考えられます。政治で言えば、クーデターや暗殺される場合がルール違反をされるケースです。負けないはずの人が諦るケースは、首相が解散を諦めるケースなどが挙げられます。

 2012年末の野田首相による解散を思い出せば分かる通り、どんなに与党(当時は民主党)が反対しても、首相が決断したら誰も止められないのが解散です。だからこそ、解散は首相の専権事項なのです。

 それでも、解散を望みながら解散できなかった首相は何人かいます。解散を諦めた理由は様々です。総辞職した方が有利になると側近に説得されたとか、閣僚に反対されたとか、新しい選挙制度に切り替わる前だったとか。どのような理由にせよ、解散が不可能になるようなものではありません。そのようなルールは今のところ存在しません。結局、諦めてしまったわけです。

 ここに、劣勢な陣営が勝つための方法がひとつ見いだせます。それは、優勢な陣営がみずからの主張を通すことを諦めさせれば勝てるということです。そのために優勢な陣営の気勢をそいだり、なだめたり、脅したりすることが有効な手段になります。

 もちろん、優勢な陣営が楽に勝つために、うるさい相手陣営を諦めさせるという場合もあります。


ルールと堤防


 このブログは、政策よりも政治のルールを調べることを重視しています。政治のルールにもいろいろあると思いますが、私は国会のルールを調べています。

 国会は物事を話し合った上で決めるところです。話し合うことと、決めることの両方が必要です。そして、話し合いのルールと決め方のルールがそれぞれ存在します。国会法や議院規則、先例、慣例などです。

 政治現象が川だとするとルールは堤防のようなものです。川は堤防にそって流れます。堤防によって川の流れが決まるように、ルールによって政治の流れがある程度決まるのではないかと考えています。そうだとすれば、ルールを知れば政治の流れを予想できるはずです。


本会議趣旨説明要求という武器


 2014年1月9日現在。自民党・公明党がまとめ国会運営改革案に「議員立法の積極的な審議に努める」というものがあります。政府提出法案の審議で忙しいなか、野党議員が提出した法案はなかなか審議されないので、野党にとってもいい項目です。

 ただ、その実現方法として挙げられている「提出法案の即時付託」というものが気になります。付託というのは、法案審議の前提である法案の委員会付託のことです。付託されなければ法案は審議されません。可決するとか否決するとかいう以前の段階でストップしてしまいます。ですから、「提出法案の即時付託」というのは何でもないことのように思えます。

 しかし、この条項を野党がすんなり受け入れるのは難しいです。現状では、法案が即時付託されることはまれです。政府・与党が提出した法案は野党が、野党が提出した法案は与党が、本会議趣旨説明要求というものを出して、委員会付託をストップしているからです。

 本会議趣旨説明要求が出された法案が、委員会に付託される道は3つあります。以下のリストは、白井誠『国会法』(信山社2013)P.148を参考にしています。

  1. 議院運営委員会の決定により趣旨説明・質疑を行う
  2. 趣旨説明を要求する会派が要求を取り下げる
  3. 議院運営委員会において趣旨説明を聴取しないことを決定する

 この3つの過程のいずれかを経なければ、法案は放っておかれます。

 各党、特に野党は政府提出法案の成立を困難にするため、本会議趣旨説明要求を使って法案成立のスケジュールを複雑化しています。これが与党との交渉材料になるのです。ですから、法案の即時付託が原則になると、野党としては与党に対抗する武器がひとつ減ってしまうことになります。


野党提出法案はなかなか審議されない


 2014年1月8日現在。昨年から国会に関する制度や慣例を見直し、国会運営を改革しようという動きがあります。

 国会運営改革の主な狙いは、首相や大臣が国会に出席しなければならない回数を減らし、その分の時間を使って政府の仕事(各省庁の仕事)をしたり、海外に出かけて各国と交流したりしようというものです。

 与党、というより政府としては、これが実現するとうれしいのですが、野党としてはそうはいきません。首相や大臣の国会出席の頻度が減ると、その分、野党が首相や大臣に直接質疑する頻度も減るからです。

 与党は野党を説得するために、野党も喜ぶような国会運営改革案をいくつか入れています。その中に、提出法案を即時付託して、野党が提出した法案を含めた議員立法を積極的に審議するというものがあります。

 野党が提出した法案は、なかなか審議されることがありません。政府が提出した法案がどうしても優先されてしまうので、審議する時間がなかなかとれないからです。例えば、昨年の臨時国会で共産党が参議院に提出した「労働基準法等の一部を改正する法律案」は一秒も審議されませんでした。審議どころか、審議の前提となる法案の委員会付託すらされていません。

 そんな現状ですから、提出法案を即時付託し、議員立法を積極的に審議するという方針をとることは野党にとって意味があります。ただ、提出法案の即時付託は、野党にとって諸刃の剣になる可能性があるので、野党がすんなり賛成するかどうかわかりません。


結いの党による政界再編は短期的に野党を細分化させる


 2014年1月7日現在。野党再編の目的のひとつは、野党勢力の結集です。この野党勢力の結集という点で考えると、結いの党を結成した江田さんの動きはよくわかりません。

 報道によれば、江田さんは日本維新の会との合流を望んでいるものの、憲法に対する考え方の違いから、維新の会の石原慎太郎共同代表をはじめとする旧・太陽の党の議員とは組みたくないと考えているようです。

 衆議院の議席数で考えてみます。維新の会53議席-旧・太陽の党12議席+結いの党9議席=50議席で、現状より議席は3減少します。これでは野党勢力の結集になりません。

 一応、3月に維新と合流し、8月に民主党の一部と合流というスケジュールを考えているようです。例えば、江田さんや維新の会の松野さんと勉強会をした、民主党の細野さんのグループは、民主党で10人程度の規模だと見られています。細野グループのメンバーのうち、衆議院議員が何人いるかは調べがつきませんでした。仮に細野さんが衆議院議員10人連れて、江田さんに合流すると民主党46に対し、新党50となります。新党は野党第一党にはなるものの、民主党との差は4議席にとどまり、現状と野党の構成は変わりません。いえ、新党ができる過程で旧太陽の党が切り離されるのですから、野党の数は増えます。

 おそらく、江田さんの構想は短期的なものではなく、次の衆議院総選挙後の政治情勢の構築を狙った長期的なものなのでしょう。ただ、江田さんの狙い通りの展開になると、野党のさらなる分裂により、短期的に自公態勢の強化につながることは避けられません。すでに、みんなの党は分裂してますしね。悩ましいところです。

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