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日銀同意人事と恐れる民主党


■日本銀行の正副総裁人事、同意の見込み

 2013年3月6日現在。今朝の日経朝刊に面白い表現がありました。それは、日本銀行の正副総裁が、政府の提案通り同意される見通しになったことを伝える記事です。

 民主党には、1人の副総裁候補について反対することで政府に一矢報いたいという意見があるそうです。その候補者はみんなの党や日本維新の会などの賛成で同意される見込みであるため、民主党には

「民主党が反対しても参院で不同意にはならず、混乱は起きない」という意識がある

と書いてあったのです。

■反対の影響を恐れる民主党

 「混乱は起きない」というのは、民主党が反対したところで、すべての候補者が問題なく同意されて、政府の予定に影響を与えないということです。民主党の意思表明が国政に影響を与えないので、安心して反対できるということなのでしょう。

 野党として、政府案を全面的に承認するようなことは避けたいと思うのは当然です。まして、党の方針と異なる人物の同意ができないというのはもっともな話です。反対するなり、厳しく質問するなりして自らの意思を表明するのが筋かもしれません。

■反対の代償

 とはいえ、あんまり反対するのも難しい状況です。現在の円安株高は、安倍内閣の経済政策を好感して生じたものとの見方があるからです。今回の日銀正副総裁人事についても、市場は好意的に受け止めていると言っていいと思います。

 この見方が正しければ、市場の信任を得ている候補者の資質や、手腕を批判することは難しいです。また、与党が民主党に譲歩して同意人事の日程を決めている以上、与党の横暴というのも言いづらいです。

 下手に人事案を潰して正副総裁のいずれかが空席になってしまうと、円は高騰し株価は暴落するということになりかねません。民主党を中心とする野党共闘が進んでいない現状では、反対の責任を民主党が一身に負うことになるかもしれません。それは、反対の代償としては重すぎます。

 野党として反対したいけれども、おいそれとはできない。そんなジレンマに、民主党は直面しているようです。


予算審議と民主党


■いよいよ予算審議

 2013年3月4日現在。今日から国会は、首相の施政方針演説に対する代表質問が行われます。そして、いよいよ今週末にも2013年度予算案の審議が始まります。参院選を7月にひかえ、会期が短い今国会最大のテーマであり、野党最大の見せ場です。

■民主党にとっての山場

 特に、民主党にとっては野党勢力を予算案反対で結集できるかどうかが問われることになります。

 2012年度補正予算案は、野党勢力が賛成と反対に割れてしまい、自公両党が過半数割れしている参議院でも可決してしまいました。これは、自公の国会日程に対する譲歩や、昨年以来の円安株高傾向による成果もあるでしょう。しかし同時に、民主党が野党共闘の盟主になれないことを露呈したとも言えます。

 もし、2013年度予算案も両院で可決してしまったら、民主党の立つ瀬がないです。なぜなら、政権奪取をねらう野党の国会闘争の成果は政府・与党案の成立阻止、あるいは成立遅延、ぐっと下がって修正によって測られるからです。

 与党が過半数を占めていない参議院で議案を可決させるということは、民主党にとっては大敗北です。


参議院の減らない議席-野党共闘2


 前回、『野党同士のねじれ国会-野党共闘1』では、日本維新の党とみんなの党の衆参の議席数を比較しました。この記事で載せた議席比較表を再掲します。

衆議院 参議院
日本維新の会 54議席 3議席
みんなの党 18議席 12議席

 見たとおり、単純な議席数では維新の方が圧倒的に多いです。しかし、与党が過半数に16議席足らない参議院で、12議席持っているみんなの方がより存在感があります。

■減らない議席

 さらに、参議院には減らない議席があります。それは、非改選議席です。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに議員の半数を選挙で選びなおします。この3年ごとの選挙のときに、選挙の対象にならない議席を非改選議席といいます。

 維新とみんなの、夏の参議院選挙の改選議席と非改選議席を表で示すと次のようになります。

改選議席 非改選議席
日本維新の会 2議席 1議席
みんなの党 2議席 10議席

 維新が3議席のうち、2議席が改選議席になっているのに比べ、みんなは2議席のみです。みんなはどう転んでも10議席確保されています。この数は、公明党の非改選議席である9議席を1議席上回っています。

■予想

 ここで、大雑把に夏の参議院選挙を予想してみます。

 選挙では、基本的に自民党と民主党が議席を奪い合うとします。民主党を除く野党の改選議席は、24議席です。与党にも民主党にも幻滅した層が増えたとして、これに6議席加えます。すると、30議席くらいを民主党を除く野党同士で奪い合うことになります。

 まず、無所属を含む8会派に1議席ずつ配分するとして、残り21議席。この21議席の半分超である11議席を維新がとったとしても、1+11で12議席にしかなりません。非改選議席と合わせて13議席です。維新は、かなり議席を取らないとみんなの党を上回ることができません。

 みんなの党の非改選議席はかなり大きいと思います。ここら辺に、みんなの党代表の渡辺喜美衆議院議員が強気な理由があるのでしょう。


野党同士のねじれ国会-野党共闘1


■維新とみんなの連携

 日本維新の党とみんなの党の連携に関する報道が、ほぼ連日行われています。連携というのは、夏の参議院選挙に向けてのものです。

 維新もみんなも「自公両党による過半数獲得阻止」を目標に掲げています。自公の議席の上積みを防ぐには、反・自公票を結集することが必要です。反・自公票が自公支持票よりも多かったとしても、分散してしまったら勝てません。維新とみんなで反・自公票を奪い合うことがないように、協力しようということなのです。

■もうひとつの「ねじれ」

 しかし、みんなの党代表の渡辺喜美衆議院議員が難色を示しているなどと報じられており、この連携はイマイチうまく行っていないようです。

 2つの党が選挙で協力するということは、選挙区でどちらか一方の候補者しか出馬させないようにする必要があります。そうなると、どちらの党の候補者をより多く出すかでまず揉めそうです。

 また、維新とみんなは、それぞれ衆議院と参議院で相手に対してアドバンテージを持っていて、これがお互いに自らが主導権をとるべきだと考える根拠になっています。

 維新は衆議院で54議席を占めていて、野党第一党である民主党との差はわずか2議席です。維新は「ほぼ」野党第一党であることにものをいわせ、今まで自民党と民主党で話し合っていた衆議院各委員会の運営の協議に、自らも加えるよう要求しています。(日本経済新聞:『維新「委員会運営への参加認めよ」 他の野党は反対』

 みんなは参議院で12議席を占めています。一見少なく見えますが、民主党、自民党、公明党につぐ勢力で、これでも野党第「二」党です。12議席になったのは1月からで、これによって参議院の運営を支配する議院運営委員会にみんなの党から2人送り込めるようになり、議院運営委員会は野党が過半数を占めることになりました。(読売新聞:『参院議運委は野党過半数…米長氏、みんな会派に』

 衆議院と参議院の維新とみんなの議席数を表にするとこうなります。

衆議院 参議院
日本維新の会 54議席 3議席
みんなの党 18議席 12議席

■参議院の方が重要

 数でみると維新の方が多いですが、衆議院は自公が全体の3分の2を超える議席を保有しているため、あんまり意味がありません。数で自公に対抗しようがないからです。

 そう考えると、自公が過半数に届いていない参議院で12議席をもつみんなの方が遥かに大きな力を秘めています。民主党を協力させられない場合、参議院で自公の思惑通りにことを進めるには、みんなの協力が必要不可欠だからです。

 みんなの党が有利な理由がもうひとつあります。それは減らない参議院の議席にあるのですが、それはまた次回。