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なぜ11月16日まで解散しなかったのか?:世論


 2012年11月21日現在。今週は、「なぜ11月16日まで解散しなかったのか」を考えることで、「なぜ11月16日に解散したのか」を炙り出していく試みをしています。

 今日は、11月までは世論が厳しかったので解散しなかった、という可能性を考えます。指標としては、内閣支持率を使ってみます。

 時事通信の世論調査(上から3番目の記事)によると、8月の内閣支持率は19.8%で、野田政権発足後初めて2割を切っていたそうです。なるほど、この段階で解散するのは自殺行為で、解散しなかったのは大変合理的な選択だったと思えます。事実、9月、10月は内閣支持率が2割台に持ち直していて、この点からも8月に解散をするのは良くなかったと言えるでしょう。

 ただ、11月の時事通信の世論調査では、支持率は17.3%まで落ち込んでいます。時事通信は支持率低下の理由として、田中前法務大臣の辞任と、田中文科相の新設大学認可をめぐる報道が原因であると解説していますね。 この調査が行われたのは11月8日から11日で、掲載されたのは党首討論で解散宣言したあとの11月15日です。よって、この調査結果を首相が参考にすることはなかったと思います。とはいえ、解散に適した時期であったかというと、疑問です。

 調査主体と方法が違うので、単純には比較できませんが、朝日新聞の10月21日発表の世論調査では、内閣支持率が18%です。11月に入った時点でも8月なみの低支持率であることは伺えたのではないでしょうか。

 こう考えると、単純に世論を基準にして解散しなかったわけではなさそうです。

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なぜ11月16日まで解散しなかったのか?:周囲の不同意


 2012年11月20日現在。昨日は、「重要法案が未成立のままでは解散できない」という責任感が、野田首相に解散をさせなかった可能性を考えました。そして、もしそうだとしたら、責任感があったせいで重要法案成立が11月まで遅れたことになり、ちぐはぐな対応であったと評価せざるをえないことを指摘しました。

 この評価はちょっと厳しいかもしれません。解散権は首相にありますが、首相が自由に解散できるとは限らないからです。例えば、ワンマンと呼ばれた吉田茂でさえ、解散しようと望んでできなかったことがあります(詳しくは、「そもそも解散できるのか」)。世論が厳しかったり、周囲の人間が強硬に反対したら首相といえども解散できないのです。

 今日は、「首相には解散する意思があったが、周囲の同意を得られなかったため解散できなかった」可能性を考えたいと思います。

 「近いうちに解散する」という約束をした8月時点で、周囲の同意があったかなかったかと言えば、なかったでしょう。それは、いつの間にか解散の条件となっていた重要法案である、特例公債法案と衆議院の選挙制度改革法案を8月末時点で急に衆議院で強行採決し、与党自ら国会を積極的に空転させたことから伺えます。

 強行採決とは、委員会開会に必要な理事会で理事が揃わなかったり、審査のスケジュールに反対の理事がいる状態でスケジュールを決めることや、スケジュール上は採決する予定じゃなかったのに審査中に動議が出されて採決したりすることを指します。

 政府としての対応を決める最高責任者は首相ですが、国会戦略を決める最高責任者は幹事長です。

 民主党の場合、野田首相が民主党代表に選出されてから、輿石東参議院議員が幹事長を務めています。輿石幹事長は年内の解散に消極的だったと報道されており、8月末の強行採決も輿石幹事長の意向に沿ったものでしょう。

 首相と二人三脚で歩むべき与党幹事長が解散に反対では、なかなか解散はできません。まして、幹事長は選挙対策の責任者でもあります。解散後の選挙戦を戦うためには、幹事長の協力が不可欠です。

 ただ、輿石さんが解散に反対なのは、8月も11月も変わりないように見えます。新聞報道によると、解散のあと、民主党最大の支持団体である連合に首相と輿石さんが挨拶に行った時、輿石さんは無言だったそうです。

 最終的に野田首相が解散を断行したことから考えると、民主党の仲間に解散を止められたから解散できなかったというわけではなさそうです。

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なぜ11月16日まで解散しなかったのか?:責任感


 2012年11月19日現在。なぜ、野田首相は11月16日に衆議院を解散したのでしょうか。逆に考えると、なぜ11月16日になるまで解散「しなかった」のでしょうか。例えば、消費税増税を含む税と社会保障の一体改革法案が成立した8月に解散していれば、「嘘つき」呼ばわりされることもなかったはずです。

 解散権が首相にある以上、11月までに衆議院が解散されなかったという事実は、2つの可能性を示しています。それは、「解散するつもりがなかった」もしくは「解散することができなかった」という可能性です。

 今日は、「予算執行に必要な特例公債法案や衆議院選挙の一票の格差を是正するための法案が成立しないうちは解散するわけにはいかないという、『責任感』」で今まで解散しなかった可能性を考えてみます。このような理由で解散しなかったとしたら、客観的には「解散するつもりがなかった」とかわりませんが、野田首相の主観的には「解散することができなかった」というカテゴリーに分類できるでしょう。思い込みは、十分解散という手段を制約する要因になります。

 この理由、一応筋は通っているような気はします。特例公債法案が成立せず、予算執行が滞るようなことはあってはいけない。一票の格差是正法案が成立せず、違憲状態を放置してはいけない。どちらも正論です。しかし、特例公債法案も一票の格差是正法案も、結局成立したのは11月16日、解散の日です。

 特例公債法案の成立が遅れたために、地方自治体のなかには金融機関から借り入れを行わなければならないという事態に陥ったところもあります。また、一票の格差是正法案は、成立したことはしましたが、区割りが選挙に間に合わないため、来月の総選挙は最高裁から違憲状態にあると指摘された制度のまま行います。

 両方ともに、11月まで粘って成立させた意味がありません。これだったら、8月の時点で解散を明言してこれらの法案を成立させてしまえばよかったのです。おそらく、自民党や公明党は今回のようになりふり構わず協力し、国会審議を超スピードで終えたでしょう。

 ですから、責任感で今まで解散しなかったという可能性はなさそうです。もし本当にこのような責任感で今までやっていたのだとしたら、ちょっと残念な人だということになると思います。粘ったあげく状況を悪くしているわけですから。


衆議院解散


 2012年11月16日現在。日本国憲法第7条により、衆議院は解散されました。首相を含め、全ての衆議院議員が失業したわけです。日本中探しても衆議院議員はどこにも存在しません。

 では、いつまた衆議院議員が存在できるのでしょうか?それは、我々有権者の投票によってのみ、存在しうるのです。それが参政権です。

 参政権は普段は一部封印されています。例えば、本日6日に成立した特例公債法案の採決に参加できた国民は、参議院議員と今日失職した衆議院議員だけです。我々有権者は、全ての国政上の問題について議決権を持っているわけではありません。

 しかし、今日、衆議院は解散されました。我々の参政権に対する封印はあと少しで解除されます。

 この権利を行使して、衆議院議員を選出し、新たな衆議院を構成します。そうして選出された衆議院議員は、ただちに召集された特別国会で立法府の長である議長と行政府の長である内閣総理大臣を生み出します。

 このように、日本を担う人間を一気に決めていきます。その最初の一手が我々有権者の投票なのです。そう考えるとワクワしてきませんか。

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迅速な対応と十分な検討


 2012年11月14日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り16日です。本日14日は国家基本政策委員会の両院合同審査会、いわゆる党首討論が行われる予定です。また、衆議院財務金融委員会では、予算執行に必要な特例公債法案の採決が行われる予定になっています。

 今のところ、特例公債法案の審議は、民主党、自民党、公明党の合意通りに進んでいます。今日の日程を消化すれば、明日15日の衆議院本会議で特例公債法案を採決できます。与党が議席の過半数を占めている衆議院で採決までいってしまえば、可決は確実です。

 多数決であるならば、議会の多数派と政権与党が一致しているなかでの審議というものは、本来、採決までいけば安泰なのです。見方を変えると、結果が見えているものを延々と話し合って時間を浪費しているようにも思えます。

 しかし、議会は言論の府であり、話し合わないのであれば国会はいりません。話し合いまではできなくても、質疑を通して政府与党をチェックしていかなくては、政府が好き放題やってしまったときに歯止めが効かなくなってしまいます。

 そのため、すぐに採決してしまうのではなく、段階を踏んで、時間をかけて審議するようになっているのです。採決は多数決なのに、審議のスケジュールを決める理事会では全会一致、つまり一人でも反対したら決められないことを原則にしているのも、なるべく多数派が譲歩して審議に時間をかけるようにする知恵ではないでしょうか。

 ただ、その仕組みの影響をもろに受けて、4月に成立した予算を執行するために必要な特例公債法案は、11月になっても成立していません。今週に入ってから、今審議されている特例公債法案を修正し、2015年度までの特例公債発行を認めるようにする流れになっています。そうすれば、本予算が成立しているのにいつまでたっても国債が発行できないという事態がなくなるからです。

 民主党、自民党、公明党によるこの修正に、その他の政党は反対する意向を示しています。反対の根拠は、無制限な特例公債の発行によって、借金の返済で財政が圧迫される恐れがあるということと、国会審議の機会を減らすということです。国会審議が減るということは、国会の力が低下することと同じなので、この懸念は最もなことです。

 迅速な対応と、十分な検討。このふたつをうまく組み合わせていくのも、政治の役割のひとつだと思います。

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劇的な変化


 2012年11月13日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り17日です。衆議院では、予算委員会の2日目に入りました。

 さて、先週11月9日金曜日の読売新聞朝刊一面で、「首相はTPPを争点にして、今年中に衆議院を解散するらしい」という記事が出て以来、急激に年内解散という空気が醸成されてきました。これが「解散風」というものなのでしょうか。

 TPPというのは「環太平洋パートナーシップ協定」の略称で、幾つかの国の間で結ぶ貿易協定です。これが良いとか悪いとか、はたまたどうでもいいとか、いろいろ言われています。経済産業という観点。多国間協調という観点。食糧自給率という観点。関税自主権という観点。などなど、いろいろな観点で語られていて、立場によって見方がだいぶ違うようです。

 ただ、国会の動きを見るだけなら、TPPについてはひとつのことだけを覚えておけば足ります。それは、国内の農業問題に取り組んでいる政治家の中に、TPPに熱心に反対している人がいるということです。

 報道によれば、野田首相はTPPを争点に年内に解散する意向を示しています。これに伴い、民主党のTPP反対派議員や、そもそも早期解散に慎重な議員による動きが活発になってきました。本日13日の民主党幹事会で解散反対論を党の総意として首相に伝えることになったという報道もあります。

 野田首相の意向に、いわば反応して与党議員が動きだしています。私は、非常に面白いことになってきたと思っています。なぜなら、消費税増税をはじめとする税と社会保障制度の一体改革法案を成立させたあと、野田首相は目標を見失い、燃え尽き症候群になっているとまで言われていたからです。

 当時の報道からは、首相の言葉に引きつけられるのは早期解散の言質を取ろうとする野党だけで、与党議員に対する影響力がなくなっているようにさえみえました。つまり、首相は求心力を失っているのではないかと思っていたのです。

 しかし、いまや首相の真意をめぐって、民主党議員は何らかの行動を起こさざるを得なくなっています。

 求心力とは、大辞林によると「人々の心を引きつける能力」のことです。首相に賛同するか反対するかはともかくとして、首相の言葉や態度に反応せざるを得ない人が与党内から続々と出ていることを見れば、首相の求心力が上昇していると言っていいのではないでしょうか。

 ほんの三週間前までは、臨時国会を召集するかどうかで揉めるくらいグダグダな政治状況で、野田首相は党首会談で一切解散に対する明言を避けて公明党の山口代表を怒らせるくらいでした。そのときから考えると、すごい変わりようです。 首相の言葉が重いのか、それともマスコミがまだまだ力を持っているのか。どちらにせよ、ちょっとしたことで、劇的に状況が変わったことがとても面白く、どうなるのかワクワクします。

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国対委員長とは


 2012年11月9日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り21日です。予算執行に必要な特例公債法案は、来週15日に衆議院本会議で可決される見込みになったと報じられています。新聞などのメディアは何をもってそう判断しているのでしょうか。

 それは、昨日11月8日に民主党、自民党、公明党の国会対策委員長が以下の日程について合意したからです。

  • 11月12,13日:衆議院予算委員会
  • 11月14日:党首討論と財務金融委員会で特例公債法案採決
  • 11月15日:衆議院本会議で同法案採決

 国会対策委員長、通称国対委員長は政党内の役職であって国会の公的な役職ではありませんが、その力は国会運営全般を取り仕切る議院運営委員会委員長をしのぎます。議院運営委員会を含む各委員会の委員長と理事は、国対委員長の指示に従い、議事日程を決めています。

 与党民主党と、主要な野党である自民党、公明党の国対委員長が合意するということは、この合意通りのシナリオで国会審議が動くことが決まるということです。ですから、メディアも「特例公債法案衆院通過へ」という見出しを出せるのです。

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特例公債法案、衆議院で審議入り


 2012年11月8日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り22日です。昨日11月7日に衆議院の議院運営委員会理事会が開かれ、与野党理事の全会一致により、本日8日に衆議院本会議で予算執行に必要な特例公債法案の趣旨説明が行われることが決定しました。メディアでは、この本会議で趣旨説明が行われることをもって、「特例公債法案の審議入り」としているようです。

 本会議で城島財務相の趣旨説明と、それに対する各党の質疑を終えると、特例公債法案は財務金融委員会に付託され、委員会で審査する準備が整うことになります。

 NHKのこの記事「民主 赤字国債法案9日審議を提案」によれば、民主党は、財務金融委員会の定例日である明日9日金曜日に、法案審査の第一段階である城島財務相による委員会での法案の趣旨説明と、第二段階である趣旨説明に対する質疑をいっぺんに終えることを野党に提案しているようです。

 通常、委員会での趣旨説明とその質疑は、それぞれ一日ずつかけてやるのが慣例なので、この提案を野党が受け入れるとすると、野党はかなり本気で特例公債法案の早期成立に協力するつもりであると言えます。さらに、定例日でない、明後日10日土曜日に委員会を開いて委員会審査の最終段階である採決まで持っていくとしたら、野党の協力姿勢は相当なものです。

 ただ、このNHKの記事は昨日の21時14分投稿で、それ以降に情勢が変わっている可能性があります。ですが、それ以降に書かれたと思われる新聞の朝刊にも、13日火曜日に衆議院通過と書かれています。衆議院通過とは、衆議院の本会議で法案が可決されることです。10日に財務金融委員会を開かないにしても、13日に委員会で採決し、続いて本会議でも採決するところまで持っていくだろうというのが、8日朝時点の大方の見方であると言えるでしょう。

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特例公債法案の趣旨説明


 2012年11月7日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り23日です。与党民主党は明日8日、予算執行に必要な特例公債法案について、衆議院本会議で趣旨説明を行う予定を立てています。一方、自民党などの野党は、特例公債法案の審議前に、野田内閣を追及するための予算委員会を開くことを求めており、与党に協力するかどうか不透明な状況です。

 本会議のスケジュールを決めるのは、各議院の議院運営委員会です。そして、委員会で話し合う題材を決めるのは各委員会の理事会です。ですから、8日の本会議で特例公債法案の趣旨説明を行うためには、議院運営委員会の決定と、その前提となる議院運営委員会理事会の決定が必要です。

 本日7日に議院運営委員会理事会を開くことを民主党の高木議院運営委員会委員長が職権、つまり一人で決定しています。この理事会で野党がどう出るかで、野党が本当に協力する気があるのかどうかがわかります。

 理事会に出席し、「本会議開会の賛否はともかく、議院運営委員会をやるのは賛成するよ」となるのか。あくまでも議院運営委員会をやるのに反対して、委員長に決めさせるか。はたまた、そもそも理事会に出席せず、全面対決するか。

 本会議での趣旨説明がすんなり決まるかどうかで、特例公債法案がスムーズに成立するかどうかわかります。今日の議院運営委員会理事会には注目しています。

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少ない残り時間


 2012年11月6日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り24日です。この24日間で特例公債法案、衆議院の選挙制度改革法案、様々な行政執行上必要な内閣提出法案を衆議院で審議可決し、さらに参議院で審議可決しなければ、いずれも成立しないことになります。

 一応24日残ってはいますが、すべての日に審議をやるわけではありません。日曜日は休みですし、土曜日もよほどのことがない限りやりません。

 では、平日はすべて審議しているかというと、そういうわけでもありません。法案審議の中心である委員会には、通常、定例日というものがあります。例えば、特例公債法案を審査する衆議院の財務金融委員会では火曜日、水曜日、金曜日が定例日となっています。すべての定例日に委員会を開けたとしても、週3しかありません。

 さらに、憲法63条後段は、国会から大臣に審議の出席を求めたときは出席しなければならないとしています。そのため、所管大臣の欠席を野党が容認しなければ、委員会は開かれないことになります。

 財務金融委員会において、定例日である本日11月6日でなく、明日7日に城島財務相の所信表明に対する質疑を行うのは、城島さんがG20出席のためスペインに行っていて、国会に出席できないためと思われます。 今国会で法案審議にかけられる時間は、見かけの日程よりもかなり少ないです。与野党の対応が少しずれるだけで、何も決まらなくなる可能性があります。

憲法第63条
 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

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