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予算案の審査過程と財政演説の位置づけ


■補正予算案は2月7日に実質審議入り

 2013年1月31日現在。「補正予算案に関する財政演説」の位置づけを、本会議での議案の趣旨説明と同じようなもであると考えてみたのですが、どうも自信がありません。財政演説と予算案が委員会に付託されることは関係がないかもしれません。

 というのも、1月30日付の日経朝刊は、2月5〜6日に財政演説に対する代表質問を終え、2月7日に衆議院予算委員会で補正予算案が実質審議入りするスケジュールを出しています。「実質審議入り」とは、委員会で議案の趣旨説明が終わり、趣旨説明に対する質疑に入ることを指します。

■予算案の審査過程

 ただし、予算案の審査の過程は法案とは少し違います。以下に予算案審査の流れを書きます。浅野一郎・河野久『新・国会事典 第2版』(有斐閣)を参考にしました。

  1. 財務大臣の趣旨説明、財務副大臣、内閣府副大臣の補足説明
  2. 基本的質疑(全閣僚出席)
  3. 質疑(財務大臣と要求大臣)
  4. 公聴会
  5. 分科会
  6. 締めくくり質疑(全閣僚出席)
  7. 採決

 少し補足します。「要求大臣」というのは、質問者が答弁を要求する大臣のことです。例えば、厚生労働省の予算について質問したい場合は、厚生労働大臣の出席を求めることになります。また、4の公聴会と5の分科会は3と平行して行われます。

 予算案の場合、2の基本的質疑に入ることで「実質審議入り」します。つまり、2月7日時点で衆議院予算委員会で補正予算案の基本的質疑が行われる予定だと日経はみているわけです。

■趣旨説明はいつか?

 予算案の審査過程を考えると、少なくとも2月7日以前には予算委員会で趣旨説明を終えていなければなりません。しかし、原則として趣旨説明はどんなに短いものでも委員会の日程を一日分消費します。例外は、与野党があらかじめ賛成で合意している場合くらいです。

 もし、財政演説が本会議での趣旨説明と同じ位置づけのものだとすると、2月6日まで代表質問をやっていたら委員会で趣旨説明する時間がないように思えます。だから、財政演説と委員会審査に関係がないのではないかと思ったのです。

 とはいえ、参議院の本会議は午前中から開かれます。2月6日の午後までに代表質問を終わらせて、夕方から衆議院予算委員会で趣旨説明と補足説明をすれば、2月7日に間に合います。

■衆議院のサイトで答え合わせ

 考えていてもわかりません。冒頭にも書いた通り、本日補正予算案が国会に提出されるので、しばらくしたら衆議院のサイトに補正予算案に関する情報が載ります。そこには、議案が委員会に付託された日付も出ているので、それによって財政演説の位置づけがわかります。

 すなわち、財政演説の日付より前だったら、財政演説は本会議での趣旨説明とは違うということで、財政演説の日付以降だったら、財政演説は本会議での趣旨説明と同等のものであるということです。

*2月2日追記**平成24年度補正予算案の付託は1月31日でした。財政演説と付託に関連はないようです。詳しくは「補正予算案の提出から実質審議入りまで」を参照してください。


補正予算案に関する財政演説とは?


■来年度予算案閣議決定

 2013年1月30日現在。昨日29日に定例閣議(毎週火曜)が行われ、平成25年度予算案が閣議決定されました。あとは国会に提出するだけです。

 しかし、すぐに来年度予算案を審議することはできません。今日から28日に行われた安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が行われていますし、来週は平成24年度補正予算案の審議があります。

■補正予算案に関する財政演説

 今朝の日経朝刊によると、補正予算案は明日31日に国会に提出され、2月4日には財務大臣による補正予算案に関する財政演説が行われるとのことです。この、「補正予算案に関する財政演説」とは何なのでしょうか。

 法案審議の際、委員会の審議に先立って本会議で法案の趣旨説明をするよう、議院運営委員会が要求することがあります。このとき、本会議での趣旨説明と質疑が終わらなければ、委員会で法案を審議する前提となる「付託」は行われません。つまり、法案審議が始まらないということです。

 おそらく、日経が書いている補正予算案に関する財政演説は、法案でいう本会議での趣旨説明に近い位置づけのものだと考えられます。

*2月2日追記**平成24年度補正予算案の付託は1月31日でした。財政演説と付託に関連はないようです。詳しくは「補正予算案の提出から実質審議入りまで」を参照してください。


どうして、「来年度予算成立は5月」なのか〜予算編成のスケジュールから考える


 2013年1月9日現在。一昨日、1月7日に各省庁の補正予算に対する要望が締め切られました。同時に、自民党の政務調査会部会も仕事始めとなり、緊急経済対策に向けての話し合いも始まりました。「1月11日に自民党が緊急経済対策を策定する」という報道からすると、1月11日に総務会で決定するスケジュールだと思われます。

 さて、安倍政権発足前後から、「2013年度予算成立は5月の連休明けになる」との報道がされていました。今まで、どのような根拠で政治家や新聞記者がこのような見通しを出せるのかいまいちわからなかったのですが、予算審議や予算編成について調べるうちに、だんだんその根拠がわかってきました。

■予算編成のスケジュール

 予算編成はどのように行われているでしょうか。ポイントとなる月は、8月と12月、そして1月です。

■8月末:各省庁の概算要求

 8月末を目処に、各省庁が財務省に来年度予算を要求します。これを概算要求と呼びます。

■9月〜12月:予算査定

 9月から、予算編成を担当する財務省主計局の主計官(各省庁課長級)や主査(各省庁課長補佐級)が中心となり、各省庁の課長や課長補佐から説明を受けながら予算査定を行っていきます。

■12月下旬:政府案閣議決定

 12月下旬には、来年度予算の財務省原案が発表されます。それをもとに、政府は来年度予算案を閣議決定します。閣議決定するということは、予算案を国会に提出する準備が整うということです。ちなみに、平成24年度予算案は、2011年12月24日に閣議決定されています。

■1月下旬:政府案を衆議院に提出

 1月下旬、通常国会の召集日には政府案を衆議院に提出します。実質的な審議は、首相の施政方針演説や、財務大臣、外務大臣の演説とそれに対する質疑が終わったあと、召集から1週間程度たってから始まります。ただし、補正予算の審議を行う場合は、補正予算の成立を待ってから来年度予算の審議が始まるので、さらに1週間程度あとになります。

■予算成立5月説の根拠

 以上が予算編成のスケジュールです。今年の場合は、11月中旬に衆議院が解散されてから予算編成が事実上止まったかたちになっています。

 単純に考えると、解散から新政権発足までの1ヶ月がそっくり後ろに押し出されることになります。つまり、例年なら1月下旬に予算案が国会に提出されるところ、1ヶ月のびて2月下旬になり、そこから国会審議に2ヶ月かかって、5月の連休明けに成立というスケジュールになるわけです。

 安倍政権発足前後から報道されていた「来年度予算案5月成立」という説には、このような根拠があると思われます。


予算審議にかかる時間


2013年1月3日現在。今月下旬にも日本国憲法下の183回目の国会である常会、いわゆる通常国会が召集される見込みです。通常国会最大のテーマは、予算審議です。

■予算成立は5月?

今年は、総選挙や政権交代によって予算編成が難航していることもあり、平成25年度予算の成立は5月ごろになるとも言われています。3月中に予算を成立させ、4月から執行することが原則なので、もし5月に成立したとすると稀に見る遅さです。

■昨年の予算審議時間

いったい、予算審議にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。昨年、2012年は2ヶ月かかっています国会会議録検索システムを使って昨年の通常国会である、第180回国会の予算委員会の開会日をみたり、予算案の採決が行われた本会議の会議録をみたりして算出しました。

平成24年度予算案は、1月24日(火)に内閣から衆議院に送付され、1月30日(月)に衆参の予算委員会で、審議の前提となる趣旨説明が行われています。

そして、2月9日(木)の衆議院予算委員会で審議が始まりました。趣旨説明から2週間ほど時間があいているのは、平成23年度補正予算の審議を衆参で2月1日(水)から2月8日(水)までの間に6回行っていたからです(衆議院3回、参議院3回)。

衆議院では2月9日(木)から3月8日(木)までに19回予算委員会を開き、3月8日(木)に委員会で可決したのち同日中に本会議でも可決、参議院に予算案を送付しています。本会議での予算委員長の報告によれば、衆議院予算委員会では、政府に対する質疑時間だけでも89時間を費やしたそうです。

参議院では、3月12日(月)から4月5日(木)までに15回予算委員会を開き、4月5日(木)に委員会で否決したのち同日中に本会議でも否決、衆議院に予算案を返付しています。本会議での予算委員長の報告によれば、参議院の予算委員会では100時間近く審議したそうです。

4月5日(木)に予算案が参議院で否決されたことにより、衆参は同日中に両院協議会を開き協議します。協議は物別れに終わり、憲法60条2項(*)により衆議院の議決が国会の議決になりました。つまり、平成24年度予算案が成立したということです。

■今年の見通し

ここまでみた通り、平成24年度予算成立には、2月9日(木)から4月5日(木)までのおよそ2ヶ月間の日数と、34回の衆参予算委員会開会が必要でした。

では、今年の予算審議はどうなるでしょう。

昨年と同じだけの時間をかけるとすると、2ヶ月かかることになります。3月までに処理するには、1月中に予算審議を始めないといけません。

ただ、これは不可能です。なぜなら、冒頭に書いた通り、年末に総選挙と政権交代があった影響で予算編成作業が遅れていて、1月中に平成25年度予算案を国会に提出することが極めて難しいからです。

平成25年度予算成立が5月になるというシナリオで考えると、25年度予算案の審議入りは3月上旬がタイムリミットです。とすると、25年度予算案は2月中に編成作業が完了しなければなりません。

■補正予算もある

さらに、予算案が4月までに成立しない場合、成立するまでの間は暫定予算が組まれます。この暫定予算は政府の裁量が少ないため、安倍内閣が掲げる経済再生を達成するには心もとない内容になってしまいます。

この状況を打破するため、安倍内閣は、10兆円規模の経済対策を盛り込んだ平成24年度補正予算案を編成しています。この補正予算案もできていないのです。

平成24年度補正予算案の編成が終わり、補正予算案の審議、成立が終わってやっと25年度予算案の審議ができることになります。かなりハードなスケジュールです。

このスケジュールをどう乗り切るのか。予算審議だけでなく、予算編成作業の進捗も注目です。

 

*日本国憲法60条2項

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。


予算委員会とは


 2012年11月12日現在。臨時国会(会期末11月30日)は残り18日です。本日12日は衆議院で予算委員会が開かれる予定です。予算委員会は広く国内外の課題を議論することができるので、野田首相と野党議員の活発なやりとりが期待されます。

 そもそも、国会の委員会はそれぞれ話し合えることが決まっていて、その委員会の所管と関係ない課題を扱うことはできません。農林水産委員会で警察官の定員について話したりはできないのです。

 では、予算委員会はなぜ色々な課題を扱えるのでしょうか。それは、この世にある課題を解決しようとするとき、予算措置が必要ないものはないからです。課題について検討するだけでも、人員を割き、資料収集や報告書作成、有識者の話を聞く場合は有識者への報酬などにお金が必要です。課題を解決するだけでなく、解決策を考えるだけでもお金がいるのです。

 予算案を作成するのは政府で、国会ではありません。ですから、政府が見逃している課題があったら、国会としてはそれを指摘し、政府に対策を立てさせる必要があります。そのための場が予算委員会なのです。したがって、扱える話題を制限しては役割を果たせない恐れがあります。

 そういうわけで、予算委員会ではどんな話題でも持ち出せることになっています。

Posted from するぷろ for iPhone.