休憩動議や中間報告で野党の攻撃を無効化する:もっと楽しく政治の話をするための国会のルール6


 ここまで野党の抵抗方法についての説明が続きました。与党だって負けてはいません。野党がどんなに抵抗しても、与党が会期内に成立させると決めた法案はありとあらゆる手をつかって審議を進めます。ここでは、2013年に成立した特定秘密保護法案と、2017年に成立した組織的犯罪処罰法改正案の審議を例に、与党がどのように野党の攻撃をさばいているかをみていきましょう。

記名投票要求による採決の引き延ばしに休憩動議で対抗

 2013年12月4日、午後1時22分から開かれた参議院本会議には、12件の案件が上程されていました。この時点で、第185回臨時国会の会期末は12月6日となっており、国会審議はまさに大詰めを迎えています。

 この国会で与野党が対決していた重要法案のひとつである特定秘密保護法案は、すでに衆議院を通過し参議院の審議に入っていました。与党は4日の午後に採決の前提となる地方公聴会をさいたま市で開くことを狙っていましたが、本会議開会中に公聴会を行うことはできません。野党は普段は記名投票を求めないような全会一致になる案件にも記名投票要求を出して、採決を長引かせることで本会議が終わる時間を遅くしようとしていました。

 本会議が長引いて地方公聴会が開けないことを恐れた与党は一計を案じました。一括として議題となった最初の3件の記名投票採決が終わり、次に議題となった案件の審議をした委員長の報告をさえぎり、動議が出されます。本会議を休憩する動議です。ただちに動議は取り上げられ起立採決で可決し、午後1時41分、本会議は休憩しました。このまま残りの案件の採決を続けるのではなく、いったん休止することで確実に地方公聴会を実施できるようにしたのです。

 ちなみに、休憩した本会議は午後9時11分に再開します。再開後の本会議は残りの7件の採決が終わった10時18分にいったん延会し、2時間後の5日0時11分から残りの2件の採決を行う本会議が開かれました。予定されていた12案件がすべて採決されたあと、野党提出の議院運営委員長(与党議員)解任決議案と与党提出の内閣委員長、経済産業委員長(いずれも野党議員)の解任決議案が次々に動議により議題とされ、採決されます。

 採決の結果は、議運委員長のものは否決、内閣、経産委員長のものは可決です。ここまでで午前2時39分、いったん休憩します。午前3時16分に再開した本会議で、解任された内閣、経産委員長の後任を選ぶ選挙が行われ、与党議員が後任の委員長に選出されました。こうして徹夜となった本会議は、午前3時54分に休憩しました。

 この国会は特定秘密保護法案で与野党がバチバチにやりあっていたためか、12月6日〜7日にかけても、深夜まで本会議、さらに延会して午前0時から本会議開始という流れになりました。6日が会期末なのに7日も審議できているのは、6日に12月8日までの会期延長を議決したためです。これも特定秘密保護法案を確実に成立させるための策でした。結局、特定秘密保護法案は12月6日の参議院本会議で可決し、成立しました。

休憩、散会、延会

 ここで本会議の休憩、散会、延会の違いをおさえておきましょう。

 すべての議事日程が終了したとき、本会議は散会します。散会したときは、その日のうちに再び本会議を開くことはできません。

 議事が終わる前に会議を休止するのが休憩です。ですが、あらかじめ決められた議事日程が終了していても、新たな案件が緊急上程されることが見込まれるときは休憩します。なぜなら、休憩ではなく散会してしまうと本会議を開くのが翌日以降になってしまうからです。

 そして、議事の途中で会議を終了するのが延会です。ここまで見てきた特定秘密保護法案をめぐる攻防のように、議事の途中で午前0時になる場合も0時になる前に延会します。延会した場合、次の本会議では、終わっていない案件をそのまま審議することができます。

 おそらく、休憩のまま日付が変わってしまうと自動的に散会になり、新たに議事日程を組み直すための議院運営委員会を開くなど調整が必要なのでしょう。また、定例日外に本会議を開く場合の野党との調整も大変なはずです。散会になることを避けて、翌日の本会議でただちに続きの審議をしたいときに、延会という手段を講じるのだと思います。

委員会審議を打ち切る「中間報告」

 2017年6月14日、第193会国会の対決法案である、織的犯罪処罰法改正案は5月23日に衆議院を通過し、参議院に舞台を移して法務委員会で審議中でした。

 参議院では5月29日に本会議趣旨説明を終え、法務委員会に付託、翌30日に委員会で趣旨説明と質疑に入り実質審議入りしました。与野党でどういう駆け引きがあったのかはわかりませんが、法案の趣旨説明と質疑が同日中に行われている時点で、だいぶヤバそうな雰囲気がただよっています。

 その後、6月1日、8日、13日と質疑を行っていますが、13日の委員会で野党議員の質疑の途中で法務大臣の問責決議案が提出され、委員会は休憩となりました。休憩後、法務委員会が開かれることのないまま迎えた14日の参議院本会議で、組織的犯罪処罰法改正案の中間報告を求める動議が突如提出されます。

 中間報告とは、委員会の審議が終わる前に本会議で法案の審議経過を報告させることです。中間報告を受けたあとは、本会議の議決で委員会での審議に期限をつけたり、委員会から法案をとりあげて本会議で審議を継続したりできます。本会議で審議を継続するということは、採決もできるということです。中間報告を求める動議と、本会議で審議することを求める動議のセットで、本会議で質疑、討論、採決をすることができます。

 中間報告からの本会議採決は、強行採決のなかでもかなりハードなものです。そもそも委員会で採決がないという「採決なしの強行採決」であり、究極の強行採決といえるでしょう。

 ちなみに、中間報告を求める動議が議題になった直後に議院運営委員長解任決議案が提出され、解任決議案の採決が終わった段階で午後9時42分延会しました。5時間後の6月15日午前2時31分から本会議が始まり、中間報告を求める動議が可決、組織的犯罪処罰法改正案の中間報告、同法案を本会議で審議する動議の可決まで行って午前4時33分休憩します。1時間後の5時41分再開し、法務大臣や外務大臣に対する質疑、討論、採決が行われ、午前7時46分に組織的犯罪処罰法改正案は可決し本会議が休憩しました。この15日は休憩後に本会議の再開はありませんでした。ものすごい徹夜国会です。

 紹介した事例のように、会期末に与野党で本気で戦うと審議が深夜に及ぶどころか徹夜になることもあります。国会議員の仕事も体力が必要なのです。


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