議事整理権について


■議事整理権

 議事整理権という言葉があります。議事整理権とは、会議の議長が議事進行を左右できる権利です。具体的には、会議を開くこと、休憩すること、そして、発言を許すか許さないかなどを決定することができます。

 国会の場合は、本会議では議長が、委員会では委員長が議事整理権を持っています。しかし、いつも議長や委員長が単独で議事整理権を行使しているわけではありません。本会議では議院運営委員会が、委員会では理事会がそれぞれ協議して決めています。

 そして、普通は議院運営委員会や理事会で協議したとおりに会議が進むため、議長や委員長の議事整理権はあまり目立ちません。むしろ、目立たないということは、完全に協議通りに、つまり事前の台本通りに会議が進行しているということであり、議事整理権が適切に行使されていることを示していると言えます。

■議事整理権行使の例

 その普段は目立たない議事整理権が、その言葉とともに出てきた例を見つけました。先日、2013年4月23日の議院運営委員会の会議録が、衆議院のサイトで公開されました。この日の議院運営委員会では、衆議院小選挙区の区割り法案を採決する本会議の運営などについて協議しています。会議録から引用します。

○佐田委員長 次に、本日の議事日程第五について発言を求められておりますので、順次これを許します。

 議事日程第五が区割り法案についてです。委員長に指名された、みんなの党、日本共産党、生活の党の議員が、区割り法案の強行採決に抗議する意見を次々に表明します。この順番と、発言者については理事会で申し出があり、決定されたものだと思われます。

 予定された発言が終わり、委員長が発言の終了を宣言しようとした時です。

○佐田委員長 これにて発言は終了……(渡辺(周)委員「委員長、発言を」と呼ぶ)整理権はこちらにありますので。(渡辺(周)委員「委員長、発言を」と呼ぶ)理事会でそのような申し出はありませんでしたので。
 これにて発言は終了いたしました。(渡辺(周)委員「委員長、そこを、発言を」と呼ぶ)

 これはどういうことでしょうか。どうも、理事会で発言を申し出なかった民主党の渡辺周議員が発言を求めたところ、委員長は議事整理権を行使し、発言を許さなかった、ということのようです。民主党は、この日の本会議に出席するか欠席するか最後まで迷いに迷ったようです。この議院運営委員会に党としてどのように対応するかも決めかねていたので、こういうイレギュラーなことになったのかもしれませんね。ちなみに、会議録中の「呼ぶ」という言葉は、「声をだす」程度の意味です。会議録では、正式な発言以外で言ったことを「呼ぶ」というように書いているようです。

 この会議録から、委員会の議事進行は理事会で事前に決めていること、そして、委員長が許さなければ、委員会で発言することができないことがハッキリとわかります。

 この前の、厚生労働委員会が中断した件もそうですが、変わったことが起こると国会審議を成り立たせている仕組みが見えてきて面白いです。


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