月別アーカイブ: 2013年7月

与党で135議席の意味するものとは?

■自公で「ねじれ」解消

 2013年7月23日現在。7月21日に第23回参議院議員選挙の投票が行われました。政権与党である、自民党・公明党は今回の選挙で改選議席の121議席のうち、76議席を獲得しました(自民65議席、公明11議席)。

 これで与党は非改選議席と合わせ135議席(/242議席)と、参議院の過半数を占めます。衆議院で与党が多数でありながら、参議院では野党が多数となる「ねじれ」国会は解消されました。

■135議席の意味

 与党の135議席はどのような意味をもつでしょうか。参議院の過半数であることはもちろんですが、国会運営で重要なポイントがもう一つあります。それは「安定多数」とされる129議席を超えているということです。

 「安定多数」とは、法案審議の中心となる常任委員会の、すべての委員長を与党会派から選出し、かつ、すべての委員会で委員長を含めた与党議員が半数を占めることができる議席数のことです。この状態であれば、参議院の運営を与党が自由にできます。

 例えば、先月までやっていた通常国会で、与党は「0増5減」の区割り法案の審議開始に大変苦労しました。これは、国会運営を左右する議院運営員会で与党が過半数に満たなかったためです。そのため、強行採決すらできずに、野党に翻弄され続けました。

 今回の選挙の結果、議院運営委員会も委員長を含めて与党が過半数となる見込みです。今まで以上に、法案審議は与党の思い通りに進むことになります。

■野党の対抗手段

 とは言え、野党に抵抗の術がないわけではありません。いくら与党が過半数であるといっても、委員会運営は与野党理事の全会一致が原則です。野党としっかりと話しあわなければ、原則どおりの国会運営はできないのです。

 もし、与党が自分勝手な国会運営をしたら、審議拒否などの議事妨害で対抗することになるでしょう。これは、審議時間を引き伸ばし、法案を審議未了で廃案に追い込んでいくという昔ながらの手法です。参議院の多数をもって政府・与党案を否決するという確実さはありませんが、まだまだ有効な手段です。

 ポストねじれ国会の政治で、与党がどのように国会運営をし、野党がどのような国会戦略を立てるのか。これから楽しみです。

人の味

■孟夏の太陽

 お世話になっている方のお宅に遊びに行った時、本を紹介してもらいました。宮城谷昌光『孟夏の太陽』です。

 この本は5編の短編で構成されています。すべての話で、春秋時代の晋の有力者である趙氏の当主が主人公になっています。

 これがなかなか面白く、一気に読んでしまいました。趙氏は晋の大臣の家系なので、主人公がみんな政治家だということもあるのかもしれません。もちろん、「議会」などない時代なので、議事手続きがどうというような話はないのですが、威圧したりされたり、とにかく尽くしたり、ひたすら耐えたりと、人と人との関係描かれているところにグッときました。

■味

 ちょっと前に和辻哲郎『孔子』を呼んだ時や、中島敦『弟子』『李陵』を呼んだ時にも感じたのですが、中国を題材にしたお話には独特の味わいがあります。

 どういう味がするかというと、なんでしょうか、お肉を使った料理とお酒の味です。中華料理という感じではないですね。どちらかというと、お肉はケバブのような感じです。お酒の方は、紹興酒かもしれません。

 近代から現代の日本政治だともうちょっと違う味がするんですよね。なんというか、先ほど説明したものより、もっと水分があるような感じがします。ただ、不思議と味の傾向は似ています。

 それにしても、なんの味でしょうか。政治は人と人との関係ですから、もしかしたら、人の味かもしれません。

第183回国会で学んだこと

■第183回国会を追ってみて 

 2013年の通常国会である、第183回国会が6月26日に閉会しました。このブログを始めてから初めての通常国会だったので、以前よりも国会の動きを追うことができたのではないかと思います。

 通常国会最大のテーマは、なんといっても予算審議です。予算審議の流れを追いながら、学んだことがいくつかありました。

■学んだこと

 本を読んでいた時は、参考人質疑は予算審議のひとつのステージで、参考人質疑だけをしている日があると思っていました。

 実際は、予算審議の参考人質疑は、質疑のなかで行われているもので、独立したものではありませんでした。ですから、参考人質疑を予算審議の独立したステージとして考えるのは適当ではなかったのです。予算審議の進捗状況を示した記事で、参考人質疑のところだけ実績が0日になっていたのはそのためです。やってしまいました。

 予算審議の集中審議と一般的質疑は、同じ日に行われることがあるということも発見でした。

 例えば最初の2時間は首相が出席する集中審議をやり、その後首相が退席して一般的質疑になる、という場合があります。ですから、予算審議のステージ別の進捗状況を示すのに、一般的質疑や集中審議の行われた「日数」で数えることはできないのです。それぞれの審議時間で考えるほかありません。とはいえ、予算委員会が開かれた日数自体は、予算審議の総時間数を考える目安にはなります。

 

「内閣総務官室」の文書から考えたこと

■「内閣総務官室」の文書

 2013年6月25日の参議院予算委員会の会議録では、予算委員長だけでなく各会派の議員からも政府の欠席を批判する発言がありました。なかでも、小野次郎議員の発言は面白いです。

 冒頭、政府側の国会との窓口であります内閣総務官室から日付も作成者の署名もない文書が、今朝、国会に届きました。読み上げます。
 六月二十四日付け、国務大臣等の出席御要求について。閣僚などの国会への出席の取扱いについては、国会運営に関する事柄であることから、政府としては、従来から、与野党で協議し合意されたところに従って対応しているところです。今般の御要求に係る件については、与野党の協議で合意されたものでなく、さらに、参院議長に対する不信任決議案も提出され、その処理もなされていない状況にあることから、政府は出席しないことといたします。
(第183回国会 予算委員会 第20号 平成二十五年六月二十五日(火曜日))

 この「内閣総務官室」の文書によれば、政府は「与野党合意」で出席要求されたものを正式な出席要求と考えているようです。だから、今回の野党単独の出席要求に応じる必要はないということになるのです。

■与党と内閣

 確かに、この予算委員会は与野党合意のうえでの開催ではなく、委員長の職権によって開催されたものです。正常な国会は与野党合意の上で議事運営が行われることが原則なので、「内閣総務官室」の文書には一理あります。

 しかし、それを認めてしまうと、与党が反対したら大臣の出席を要求することができなくなってしまいます。これでは、国会による行政の監視が十分にできません。

 もちろん、内閣が与党の意向を無視して出席することは可能でしょう。ですが、日本の仕組みでは、内閣は与党の支持なしには存在できません。与党は内閣の生殺与奪の権利を持っているのです。

 ここに、与党内の少数勢力からなる内閣があったとしましょう。その内閣が与党の反対をおして国会に出席した時、与党による倒閣運動が激化するのは必至です。

 これは、内閣が自由意志で国会に出席する形式であるから問題になるのです。憲法の要請として出席する義務があることがはっきりすれば、与党からとやかくいわれる筋合いはないことになります。

 無用な混乱をうまないためにも、どういうときに大臣の出席義務が発生するのかハッキリさせる必要があると思います。

憲法63条はいつ効力を発揮するのか

■さっぱりわからない

 いまだに、6月24日、25日の参議院予算委員会に与党だけでなく安倍首相をはじめとする大臣も欠席した件について考えています。この件、さっぱりわからないです。

 何かヒントはないかと、公開された6月24日,25日の予算委員会の会議録を読んでみると、参考になる部分がいくつかありました。

■大臣の出席要求の手続きと国会法71条

 まずは、24日の会議録です。24日は参議院予算委員長である石井一議員の発言だけで会議が終わっています。その発言のなかに、以下のような部分がありました。

 委員長といたしましては、質疑者が質疑できる環境を整える必要があると考え、去る二十一日金曜日、安倍内閣総理大臣に対し、通常、事務局を通じて口頭で求めている国務大臣の出席要求を、私から文書で求めております。
(第183回国会 予算委員会 第19号 平成二十五年六月二十四日(月曜日))

 「事務局を通じて口頭で求めている」ということは、大臣の出席要求書みたいな文書があるわけではなさそうです。石井委員長が”わざわざ”といったニュアンスで、「私から文書で求めております。」と言っていることから、そう考えて間違いなさそうです。

 しかし、普段は口頭で求めている、そして今回ですら参議院予算委員長名で出席要求をしているわけですが、「議長」は一体どこで出てくるのでしょうか。

 国会法71条は委員会の大臣出席要求についてこう言っています。

第71条 委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。

 このように「議長を経由して」とあるわけですが、口頭で出席を求めたり、予算委員長名で文書で出席を求める場合、どこでどう「議長を経由して」いるのかどうかよくわかりません。

 国会法71条は、大臣の国会出席義務を定めたとされている憲法63条を実現するための条項だと思われます。国会法71条の要件を満たさなければ、憲法63条もまた効力を発揮しないのではないでしょうか。つまり、大臣の出席義務はないことになります。

■もし、今まで「議長を経由して」いなかったら

 これは今回に限りません、石井委員長の発言に「通常、事務局を通じて口頭で求めている国務大臣の出席要求」とあるからには、普段から口頭で大臣の出席を求めていたわけです。事務局の求めのなかに「議長を経由して」いる部分がない場合、今までの参議院の委員会はすべて大臣に憲法上の出席義務がなかったことになります。

 そうなると、昨年話題になった参議院の決算委員会に民主党政権の大臣が欠席した件も、憲法違反の疑いはなくなります。

 まぁ、考えているだけではわかりませんね。このあたりを解説した資料を、地道に探すしかなさそうです。