「3分の遅刻で5時間ストップ」という国会しぐさの理由


■決めようとする人と、決めさせない人

国会というところは、全員が同じ目標を持って集まっているのですが、目的がそれぞれ違います。

目的の違いは大きく2つです。それは、決めることと、決めさせないことです。

与党議員は、さっさと物事を決めて政策を実現させようとします。逆に、野党議員は与党議員に決めさせないように抵抗します。

■野党議員は与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事

先月の衆議院予算委員会で、桜田大臣が3分遅刻して野党の反発で5時間審議が止まったという場面がありました。普通の会社などで考えれば、会議で3分間遅刻したので5時間会議を中断したら「何やってるんだ」「仕事しろ」ということになるでしょう。実は、そうなるのは同じように仕事を遂行しようとする人しかいないという前提があるときだけです。映画や小説でも、同じ会社で働く人同士が気に入らない提案を潰すために「3分の遅刻で5時間中断」と同じようなことをする場面がでてくることがあります。国会もまったく同じです。

国会が会社と大きく違うのは、オフィシャルに多数派の行動を邪魔する存在がいることです。野党議員は、与党議員の思い通りに決めさせないことが仕事なのです。決めさせないという観点から言えば、大臣の3分の遅刻で5時間審議をストップさせるのは当然の権利です。権利というか、むしろ義務であるかもしれません。「大臣が3分遅刻されたので審議を急いで進めましょう」と毎回野党議員が言ってしまったら、野党の仕事は成り立たない場面もあるのです。

このような理屈で、3分の遅刻で5時間審議がストップするような「国会しぐさ」が生まれるのだと思います。

同じ理屈で、与党の強行採決も義務になる場面はあります。与野党どちらの行動にも、たいてい大義があります。どちらを良しとするかは、各々が自分の状況に応じて決めればよいです。


【2019通常国会】参議院の予算審議、中央公聴会の日程まで決まる


■参議院の予算審議開始

2019年3月5日現在。2019年度予算案の参議院での審議が昨日4日から開始しています。本日は2日目の基本的質疑でした。基本的質疑とは、予算審議の最初に行われる、総理大臣とすべての大臣が出席する審議です。通常の予算審議である一般質疑では、財務大臣と答弁を要求された大臣だけが予算委員会に出席するのですが、基本的質疑では答弁を要求されていない大臣も全員出席する慣例になっています。ですので、基本的質疑は特別な意味があります。

参議院の予算審議の日程は、12日に採決の前提である中央公聴会を実施するところまで与野党合意しています。衆議院では、中央公聴会が実施されたあと、3日で採決されました。参議院でもそうなるとすると、15日に採決となります。そうなると、参議院での採決までの予算委員会実施回数が10回となるので、衆議院の7割くらいの審議時間になってしまうので、もうちょっとやるのではないでしょうか。そうでないと、超与党ペースで審議が進んだことになります。

2017年の予算審議で、参議院で中央公聴会を実施したあと予算委員会で質疑を8日行って自然成立ギリギリで採決した例があるため、12日に中央公聴会を実施することで、すぐ採決するとは言えません。

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【2019通常国会】予算審議第四週終了


■2019年度予算案の審議は参議院へ

2019年3月3日現在。2019年度予算案は衆議院を通過し、明日4日から参議院予算委員会で基本的質疑が行われる予定です。いまのところ、5日の基本的質疑まで与野党合意しているようです。

2月は予算案の年度内成立を確実にするために、すべての平日で予算委員会が開かれました。参議院では、そこまでしなくても大丈夫です。衆議院と同じく15回の予算委員会で採決できるとした場合、すべての平日で審議できれば3月18日に予算案は参議院で可決・成立します。年度末まで2週間弱の余裕があります。

しかし、実際は与野党の駆け引きや閣僚のスケジュールの都合、年度内に成立させないといけない日切れ法案の審議などで予算委員会を開かない平日があると思います。

とはいえ、自然成立する前には参議院で予算案を採決するはずです。なぜなら、予算案が参議院の議決をまたずに自然成立してしまっては、参議院の存在価値が低くなってしまうからです。ですから、参議院の予算審議は、最大限引っ張っても3月29日には終わると思います。

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図解 自然成立の30日の数え方


■2019年度予算案衆議院通過

2019年3月2日現在。2019年度予算案は、本日午前0時40分頃に衆議院本会議で採決され可決しました。これで、憲法の規定により3月31日までに参議院で2019年度予算案を採決できなくても、衆議院での議決の通り予算案が可決成立することが確定しました。

自然成立の根拠となる条文は、以下のようになっています。

第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 ○2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

『日本国憲法』

30日の数え方ですが、添付した3月のカレンダーの画像に記載した「自然成立進行度」を見ていただければ、30日のカウント方法がわかります。予算案は衆議院で可決されたその日のうちに参議院に送付されますので、衆議院で予算案が可決された日に自然成立進行度は1加算され1/30になります。自然成立進行度は1日経過するごとに1ずつ加算されます。自然成立進行度が30/30になった時点で自然成立の要件が満たされ、2019年度予算案が自然成立することになります。

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【2019通常国会】2月28日採決?


■与党、再び2月28日採決を提案

2019年2月27日現在。衆議院の2019年度予算案の審議は、分科会に入りました。昨日26日には採決の前提となる中央公聴会を済ませており、予算案は採決の日を待つばかりとなっています。

昨日あたりから、与党が先週断念したと思われていた明日28日の予算案の採決を再び提案していると報道されています。28日採決だと2月8日の2019年度予算案の実質審議入から14回の予算委員会で採決となり、総理大臣の予算委員会の出席を基本的質疑・締めくくり質疑・集中審議に限定するようになった2000年以降で最速1位タイ記録になります。その他の最速記録は2000年(小渕内閣)と2014年(安倍内閣)です。

昨年の予算審議では、厚生労働省の提出した労働関係のデータに不備があった問題で野党が反発していたところ、ほぼ確実に27日衆議院で採決される観測であったものを二階幹事長が主導して28日に採決を延期するという場面がありました。

今年はどうなるのでしょうか。

ちなみに、最速1位タイである2014年度予算の審議を行った衆議院予算委員会の委員長は二階さんでした。

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【2019通常国会】予算審議第三週終了


■2月中の予算審議予定が出揃う

2019年2月24日現在。現在までの報道によると、今月は4日以降のすべての平日で予算審議が行われることになるようです。25日は集中審議、26日は中央公聴会、27日は分科会、そして28日にまた集中審議となっています。

■採決の引き延ばしのための不信任決議案だが、安易には出せない

あとは、3月1日に予算案の採決が行われるかどうかが焦点になります。3月1日の予算案の衆議院通過を防ぐために、審議を強制的に中断することができる不信任案・解任決議案を立て続けに提出するのではないかという見方もあります。提出する可能性があるものとしては、厚生労働大臣の不信任決議案、予算委員長の解任決議案、内閣不信任決議案などが考えられます。

ただ、不信任決議案や解任決議案は無制限に出せるわけではありません。対象となる相手に対して、ひとつの国会の会期で一度しか出すことができません。例えば、3月1日に根本厚生労働大臣の不信任案を提出して否決された場合、根本大臣が6月26日の今国会の会期末までに交代しなかったら、今国会では二度と根本大臣の不信任決議案を提出することはできないのです。

ですから、野党が根本大臣の不信任決議案の提出を3月1日付近にぶつけてきた場合は、それなりの覚悟をもって不信任決議案を提出したということになります。不信任決議案を連発して3月4日以降に予算案の衆議院通過を遅らせたとしても、3月31日までに参議院で予算案の採決が済めば予算案は年内に成立します。そうなった場合、不信任決議案の提出は完全に無駄になります。

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【2019通常国会】与党、2019年度予算案の2月内衆議院通過を断念


■桜田五輪担当相の遅刻により、予算審議一時中断

2019年2月21日現在。時事通信などによると、与党が2019年度予算案の2月中の衆議院通過を断念したとの報道が出ています。

報道によると、経緯はこうです。本日の衆議院予算委員会で、桜田五輪担当大臣が予定の時間から3分間遅刻しました。この遅刻に野党が反発し、退席したため予算審議が一時中断しました。この中断により、本日予定された質疑の一部を別日に行うことになったうえ、2月28日に集中審議を新たに行うことになったことで、2月中の予算案の採決が難しくなったとのことです。

■これでバランスがとれた?

ここまでの対応を野党がした理由のひとつとして、立憲民主党の逢坂政調会長は「民主党政権時代に衆議院本会議で1分遅刻した大臣がいたため、その日の参議院の委員会審議が流れたことがあった」ということを述べていました。国会が大臣の出席を要求するということは、それほど厳しいものであるというだそうです。だからこそ、菅官房長官も陳謝し、予算審議の日程でも譲歩したわけです。

ただ、いままで審議拒否もなく連日予算審議が続いており、予算審議は完全与党ペースだったことは否めないため、野党としてはどこかで強硬姿勢を示さないと支持者に示しがつかないという部分はあったと思います。また、与党としても28日に採決するということを事前に示して野党の反発を受けたりしていたのは、最終的には「1日譲歩して3月1日衆議院通過になりました。譲歩したけど年度内成立は確実です」という形にして与野党の貸し借りのバランスが取るためではなかったのかと思います。今回の遅刻騒動は格好の素材であったのかもしれません。

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日本人は変化を好まない?


■「日本人は変化を好まない」は本当か

「ほぼ自民党の独裁政治で日本はこれまできている。日本人はあまり変化を好まない。」という趣旨の文章をSNSで見かけました。論理としては正しそうですが、事実に反しているので納得できません。

日本人が変化を好まないというのは本当でしょうか。変化を好まないのならば、なぜ2009年の自民公明連立政権から民主党政権への政権交代は起きたのでしょうか。なぜ、その16年前の1993年の非自民非共産8党派連立政権が誕生したのでしょうか。そして、なぜ2012年に民主党政権から自民公明連立政権に政権交代したのでしょうか。平成の日本政治をみても、日本人が変化を欲して実現した事例が3つはあります。少なくとも平成の日本政治において、日本人が変化を好まないと言い切るのは難しいです。

そして、31年の平成の歴史で自民党が野党だった時期が5年はあるので、自民党の独裁政治が続いているわけではありません。「少しの期間野党だったからなんだ。『ほぼ』自民党の独裁政治だと言っている。現にいま安倍政権が6年以上続いている」という意見はあるかもしれません。しかし、それならば「どうなったら『ほぼ自民党の独裁政治』ではなくなるのか」がわかりません。今度政権交代したとして、それは日本人が変化を選んだ新しい局面なのか、それとも自民党の独裁政治のお休み期間なのかどうやって判断するのでしょうか。日本人は、永久に自民党の独裁政治におびえながら生きていくとでもいうのでしょうか。

もしかしたら、こう言いたかったのかもしれません。「2012年の民主党政権崩壊以来、日本人は変化を好まない。それ以降は安倍政権が続いている」それなら意味は通じますし、事実です。その主張をするときは、当然「民主党政権の崩壊によって、日本人はどうして変化を好まなくなったか」を説明する必要があります。その説明は聞いてみたいです。


【2019通常国会】予算審議第二週終了


■与野党、中央公聴会2月26日開催で合意

2019年2月18日現在。時事通信によると、与野党は衆議院の2019年度予算審議について、2月26日に採決の前提となる中央公聴会を開くことで合意したそうです。

予算審議が最速記録タイであった2014年は、2月25日に中央公聴会が開かれたあと、3日後の28日に予算案が採決されています。今回も2月26日に中央公聴会が開かれたあと、3日後の3月1日に予算案が採決されるとすると、参議院での予算審議が3月末までに終わらなくても憲法の規定により年度内に自然成立することができます。

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【2019通常国会】 2月26日に中央公聴会提案の意味


■与党、2月26日に中央公聴会開催を提案
2019年2月16日現在。2019年度予算審議について、与党が今月26日に衆議院予算委員会で、予算案採決の前提となる中央公聴会を開くことを野党に提案したとの報道が出ています。

予算委員会で必ずこなすイベントは、基本的質疑、一般質疑、集中審議、地方公聴会、中央公聴会、分科会、締めくくり質疑の7つです。中央公聴会が終わると、残りは分科会と締めくくり質疑のみになります。

分科会には2日、締めくくり質疑に1日必要なため、26日に中央公聴会開催となると、27日28日で分科会、3月1日に締めくくり質疑と採決となり、2019年度予算案が3月末に自然成立するための衆議院通過の期限である3月2日までになんとか間に合う計算になります。

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