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参議院で予算委員会開会要求でる


2019年11月24日現在。

11月22日に、参議院で立憲民主党などの野党が予算委員会開会要求を出しました。この開会要求は参議院規則の定める「委員の三分の一以上」を満たしているので、予算委員長は予算委員会を開かなければなりません。

ただ、この規則は予算委員会の開会しか保証していないので、野党が求める総理大臣出席の集中審議が行われるかどうかは不明です。委員会の議題は与野党の全会一致で決めるのが原則なので、与党の意向を無視して議題を決めることはできないでしょう。与党がこのままではまずいと思ったら、集中審議が行われるかもしれませんが、果たしてどうなるでしょうか。

野党は「今年の通常国会では、予算委員会の開会要求が出たのにも関わらず与党は予算委員会を開かなかった」と主張していますが、6月26日に参議院予算委員会が開かれています。

ただ、それは野党が求めていた集中審議ではありませんでした。それはいいのですが、会期末に必ず実施する後始末的な会議だったのはよくないでしょう。事実上予算委員会の開会要求は無視されたと言わざるをえません。

与党が今度はどう対応するのか注目です。


もっと楽しく政治の話をするための国会のルール


政治につきまとう厄介なイメージ

 初めて顔を合わせた人と話すとき、あなたはどのような話題を選びますか?

 その日の天気、どこからきたか、自分の仕事について話すことが多いはずです。とくに気をつかわなくても会話がすすむからです。

 もし、相手が政治的な話をしてきたら、あなたはどう思うでしょう。さっき例に挙げた話をするときと違い、少し身構えるかもしれません。あなたは会話中、言葉を選んだり、相手の発言にどう反応するか考えたりするのではないでしょうか。

 政治系の会合の懇親会でもないかぎり、いきなり政治の話をすることはないはずです。ただ、私はそのような場に参加したこともありますが、それでも政治について話すときは探り探りになります。

 なぜ、気軽に政治の話ができないような気がするのでしょうか。

 それは、「政治」には、何か厄介なイメージがつきまとうからです。

 多くの人にとって政治の話は、初対面の人との会話で出してはいけない話題のひとつです。とくに、沖縄の在日米軍基地の是非とか、憲法改正、愛国心、夫婦別姓の是非とか、何らかの政策に関する話を、あなたは避けようとするはずです。

 これらの政策には、「それぞれの立場によって、正しいと確信する答えが異なる」という共通点があります。そして、すべての人が100パーセント納得する政策は、おそらくありません。

 これが、「政治」に厄介なイメージがつきまとう最大の理由です。

 どの政策も誰かにとってマイナスになる可能性があります。これについて議論しようとすると、自分の立場をかけた戦いになってしまうかもしれません。万が一、激しい言い争いにでもなってしまったら、お互いに無傷ではいられません。

 これが、私たちに「ふだんは政治の話はしないほうがいい」と思わせている最大の理由なのです。

 では、どのような場でも、楽しく、安心して政治の話をすることは不可能なのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。ただし、ひとつだけ条件があります。

 それは、

 「政治のルールを把握すること」

 です。

 スポーツ観戦をしたあと、友人と感想を話すとき、ルールを無視して自分が応援しているチームが勝ったと言い合うでしょうか。そんなことをしていたら喧嘩になります。たいてい、ルールに照らし合わせてどのチームが勝ったかはお互い了解していて、その上でプレー内容がどうだったかについて話すはずです。

 このチームは勝ったけどプレー内容が気に入らないとか、負けたけどもいい試合を作ってくれたとか、あくまでルールに則った会話をするでしょう。これに対して、SNSなどで見る政治の話の中には、ルールをまったく無視して、自分が支持する政党が勝ったと言い張る、または、嫌いな政党がルール違反をしたと批判するものもあるように思います。

 これは、野球でたとえると「ホームランを打ったからといって、バッターやランナーがアウトになる心配をせずにホームベースに戻るのはおかしい」と文句を言うことと同じではないでしょうか。

国会のルールを知るメリット

 では、知っておくべき政治のルールとはなんでしょうか。政治にはいろいろな面があるため、見るべきところは数多くありますが、私は国会のルールを知ることをおすすめします。

 なぜ国会のルールなのかというと、ふだんニュースなどで目にする政治は国会に関するものが多いからです。「予算委員会」「審議拒否」「強行採決」「内閣不信任決議案」、どれも政治に興味がある方ならよく目にするフレーズではないでしょうか。これらはすべて国会に関する言葉です。

 国会は「言論の府」とも呼ばれる、話し合うための機関です。国会のルールというのは、話し合いをまともに成立させるために必要なルールでもあります。これが平気で無視されるようになるのは、とても危険な事態に陥ることを意味します。

 新しい政策は、かならず国会の審議を通じて実現します。話し合いの形式すら守られなくなると、多数派はどんな政策も好き放題できてしまうことになります。

 国会は政策実現の最後の関門です。どんな政策を支持しているにせよ、国会を無視することはできません。福祉政策、外交政策、安全保障政策、財政政策、どの政策を重視していようと、すべて最後は国会に行き着きます。国会は政治の中心であるといっても過言ではありません。

イメージと違う国会

 と、ここまで説明したのは、実は立て前です。実際に国会で起こっていることは、いま書いたことからイメージできるものと、ちょっと違います。

 政策は、アイデアがうまれてから実行されるまでの間に、何度か変質します。例えば、役所が発案した政策は、国会に提出する前の与党の審査で変質し、さらに国会の審議で変質して法律として成立する場合があります。役所が当初のアイデアどおりに政策を遂行できるかどうかは、与党の審査や国会の審議で、どれだけその内容が変質するかにかかっています。なぜなら、役所は成立した法律どおりに仕事をしなければならないからです。発案当初は完璧な政策だったとしても、成立した法律が役所にとってイマイチなものであったら、役所はイマイチな法律どおりに政策を遂行しなければならないのです。

 そこで、政策を発案者にとって完璧な原案どおりに実行するために「国会対策」が必要になります。国会の審議が思いどおりになるようにコントロールすることを、国会対策と呼びます。与党は国会対策により、政策の変質を最小限にして法案を成立させるのです。

 2020年1月現在の日本で政権与党となっている自民党と公明党は、役所が政府を通じて国会に提出する法案を、提出前に審査しています。これを「事前審査制」と呼びます。この仕組みでは、原則として与党が同意しないかぎり、政府が国会に法案を提出することはできません。つまり、政府提出法案を成立させるという点で、政府と与党の目的は一致しています。国会で、政府と与党が法案の成否をかけて質疑の応酬をすることはまずありません。

 野党にも国会対策はあります。野党の国会対策は、野党のポリシーに反する法案の成立を阻止することが主な目的です。しかし、野党は与党にくらべて議席が少なく、採決すれば法案は必ず成立します。そのため、野党は法案を採決させないことで、その成立を阻止しようとします。法案の審議入りの時期を遅らせたり、審議拒否などにより審議を引き延ばしたりするのは、採決を回避するためです。つまり、野党にとっての最善の状態は、法案審議をさせないことなのです。野党が反対している法案の審議に応じているというのは、与党に追い込まれている状態です。

 ここで、不思議な現象が起きます。与党は政府との間で話がついていて、国会の審議で法案の中身について議論する必要がなくなり、野党は法案審議に応じないことを最優先に考えていて、法案の中身について議論することが二の次になります。与党も野党も国会で法案の中身について議論するモチベーションがないのです。そもそも現在の国会審議の慣習上、法案審議で国会議員同士が議論の応酬をする機会は、ほとんどありません。議員同士で法案の中身について話さないということは、いわゆる「政策論争」が行われないということです。

 「政策論争が行われない」という国会の現状は、あなたが学校で習ったときにイメージしたものと少し違うはずです。国会審議に関するこの前提を頭にいれずに、政策の内容と与野党の国会対応をごちゃまぜにして議論すると、与党支持者からは野党の行動が不合理に見え、野党支持者からは与党の行動が強引に見えます。そのため、会話が平行線をたどり交わらない可能性が高くなってしまいます。

 ですから、政治の話をするときに、現在の国会審議のルールを把握しておいたほうがいいと思うのです。

 この連載では、いままでブログに書いた内容をまとめて、国会の審議がどのようなルールで行われているかを説明します。そして、実際のエピソードをもとに、国会のルールがどのように攻撃や防御に使われていったかも詳しく解説しようと思います。ひととおり読めば、国会関係の政治ニュースの意味をより理解できるようになるでしょう。

 個々の政策の是非には踏み込まず、その政策を可能にする議案が国会で可決される可能性がどの程度かを話し合うことができれば、友人とスポーツや映画の感想を話すように、楽しく気軽に政治の話をできるはずです。


予算委員会の集中審議が求められる理由


■仮想通貨のような「集中審議」

2019年11月17日現在。

日本の政治の話題は、桜を見る会関連の話と大学入学共通テストの話で賑わっています。今回も、野党の要求は「予算委員会の集中審議の開催」です。

予算委員会の集中審議は、何か問題か起こるたびに野党が要求したり、逆に与党が野党に提案したりと、交渉の材料に使われています。集中審議は、国会内の与野党交渉で使われる仮想通貨みたいなものかもしれません。

■集中審議の価値

なぜ集中審議に価値があるのでしょうか。

集中審議は予算委員会で行われる会議のひとつです。特定のテーマを定めて、テーマに該当する大臣と総理大臣が出席して与野党の質問に答えます。テーマの範囲ならばなんでも総理大臣に質問できるというのがいいところです。うまく質問すれば総理大臣の口から今後の政策を左右する言葉を引き出して、政府の行動に影響を与えることができるからです。余計な影響を受けたくないので、官僚が必死になって質問する議員に質問内容を取材して大臣が答える内容を徹夜で考えたりするわけです。

また、予算委員会の集中審議はテレビ中継もされるので、議員の活動実績として目立ちます。一定以上の議席を持つ党の党首が総理大臣と討論する党首討論と違い、予算委員会に所属していれば、党首でなくても総理大臣に直接質問できるところもよいです。

そして、党首討論とは違い、集中審議での総理大臣とのやりとりは「質疑」です。質疑なので、総理大臣は質問に答えることはできますが、反論するために質問されてないことについて持論を述べることは、よくないとされています。つまり、総理大臣を一方的に質問攻めにできます。

これらのいいところがあるので、何かというと予算委員会の集中審議が求められるのです。


野党、久々の勝利


■英語民間試験導入延期へ

2019年11月4日現在。

先週11月1日に萩生田文部科学大臣が、2020年度の大学入学共通テストで予定されていた英語の民間試験の導入を見送る発表をしました。

英語民間試験の導入は、懸念の声もあり、今国会(200回国会(臨時会))では、野党から「大学入学共通テストで民間試験を使わない」と大学入試センター法に明記する法律改正案が提出されていました。

■文科相の進退問題との声も

英語民間試験導入の問題については、テレビ番組でこの件について萩生田文科相が出したコメントが「教育格差を容認するもの」として批判されていることと合わせて問題が大きくなりました。野党から大臣の進退問題という声も出てきたからです。

10月25日に菅原経済産業大臣が辞任したのに続いて、10月31日にも河合法務大臣が辞任していたため、10月31日から国会審議は止まっていました。31日に野党は審議復帰の条件として英語民間試験導入の延期や予算委員会の集中審議(総理大臣が出席するテレビ中継ありの審議)の実施を求めていました。

この時点で首相官邸が取れる選択肢は論理的に4つありました。

英語民間試験導入問題の解決策

1は野党の要求に何も答えていないので、無理そうです。4は譲歩しすぎで、政府与党にうまみがないです。そして、2をするほど首相官邸が英語民間試験導入に思い入れがないので、3の文科相は辞任せず、英語民間試験を延期することにしたのだと思います。11月2日付け読売朝刊によれば、首相官邸は英語民間試験導入に関する問題を「事実上放置してきた」とあり、興味がないから文科省にまかせてきたとの見方があるようです。

■国会を止めれば政策を変えられるという実例

結局、この問題は民間試験導入延期と、11月6日と8日に衆議院と参議院で予算委員会の集中審議が行われることで与野党が合意し、国会は正常化に向かっています。

大臣が公職選挙法違反の疑いで2人連続で辞任していることと、文科相の失言により政策変更が実現しました。野党は大臣の失言を批判して国会を止めることで、政策変更を迫れるということです。

こうなると、失言を追及して国会審議を止めるのは、野党にとって最善の行動ということになりそうです。いいか悪いかは別として、そういうルールになっているということです。