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与党の想定通りなら、審議拒否で安保関連法案の成立阻止は不可能

■平和安全特別委員会は大盛り上がり

 2015年5月30日現在。昨年の集団的自衛権の行使を可能とした閣議決定を受けて作成された安全保障に関する法案を審議する、「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」の審議はかなり盛り上がっているようです。

 野次る首相や、むしろ首相以外の閣僚に答弁を求める野党など、例によらない面白い内容になっています。

■審議拒否で野党が狙うのは審議時間の減少

 そんななか、昨日29日は委員会に席を持つ全野党(民主・維新・共産)の審議拒否により、その日の委員会の審議は続行不能となり、散会しました。

 今日において、国会審議の充実度合いは審議時間の多寡ではかられます。たとえば、法案の採決を拒む野党に対し、与党は「XX時間審議したので、十分審議したと言える。ここまで審議しても野党が採決を拒むのなら、強行採決もやむを得ない。」と、与党単独で採決することがあります。

 審議時間は、法案を与党多数で成立させるための「ポイント」のようなものです。

 ある会派が審議拒否をして、その日の委員会の審議が行われなかった場合、審議時間という「ポイント」は貯まりませんので、法案の採決=可決は遠のきます。しかも、法案は衆議院と参議院、両院で可決しなければ成立しないので、片方の院で時間がかかった場合、もう片方の院でもかかった時間の7割程度の時間がかかります。

■会期が大事、ただし延長はできる

 さらに、国会には会期というものがあります。会期中に、両院で可決しないと法案は成立しません。平和安全特別委員会にかけられた法案が成立するには、一会期中に衆議院と参議院で審議し、両院で法案を可決させる必要があります。

 つまり、審議拒否をすればするほど、野党は与党に法案成立を断念させることができます。

 ただ、会期は審議時間が足りない場合、延長することができます。

■通常国会は一回しか延長できない

 現在開会されている第189回国会は憲法により一年に一回開くことを義務付けられている通常国会です。通常国会の会期は150日で、一回まで延長が可能です。

 ですから、今国会で平和安全特別委員会にかけられている法案を成立させるならば、この一回の会期延長の幅をいかに定めるかが重要になってきます。

 もし、延長した日程に法案審議がおさまらなければ、法案は成立しません。よくて継続審査(審議)で、悪いと廃案です。

 とにかく法案成立を阻止する野党としては以下のような国会戦略が考えられます。

 延長幅を小幅に設定させ、延長国会で世論を巻き込んで捨て身の議事妨害を繰り広げ、時間切れで法案不成立に持ち込むのです。

 まともに採決したら、どう考えても与党が勝つのだから、野党がその意を通すには、このようなまともでない手を使わないわけにはいきません。

■直近の通常国会では79日間の延長が行われた

 ちなみに、2015年5月15日 の日本経済新聞朝刊によると、通常国会の過去最大の延長幅は第96回国会(1981〜1982年)の94日間だそうです。最近では、第180回国会の79日間の延長があったそうです。

 第180回国会は2012年ですので、民主党政権・野田内閣のときですね。消費税増税を含む、税と社会保障の一体改革関連法案の成立のため、80日近い延長をしました。

■与党の想定通りなら、審議拒否で法案成立阻止は不可能

 平和安全特別委員会にかけられている法案は、消費税増税と違って、成立したことにより即国民生活に影響を与えるようなものではありません。ですが、与党は社会保障の維持と同じくらいの重要度があるものだと考えているようです。

 そのため、与党に「民主党だって消費税増税のために80日ほど延長したじゃないか!」と言われた場合、80日程度の延長幅を不当な要求とすることは難しいと思います。

 しかも、現在与党が想定している延長幅は2015年6月25日から同年8月上旬までであり、2012年6月22日から同年9月8日まで延長した第180回国会とくらべて、おとなしい延長幅と言えます。

 野党が審議拒否によって法案成立を断念させるのは、非常に厳しいと言えます。

■審議拒否以外にも野党の存在感を示す方法がある

 とはいえ、円満な採決を演出するために与党と取引して審議と採決に応じることで、自分たちとその支持者が許容できる内容に法案を修正させるという選択肢も野党にはあります。

 ですから、野党は抜け駆けして与党と交渉する野党勢力が現れないよう十分注意する必要があります。

 そして与党は、野党の切り崩しに全力をあげる必要があるでしょう。