参議院の首相の問責決議案、その価値


 2012年8月29日現在、参議院本会議で首相に対する問責決議案が可決されました。こうなったら、いっそのこと臨時国会でも問責の効果があると言い張ってもらって、参議院の首相の問責決議案の効果に関する既成事実を積み重ねることで、実際のところ参院の問責決議にどの程度の価値があるのかはっきりさせてもらいたいところではあります。

 例えば、参議院で問責決議案が出されたことにより、首相が衆議院を解散するのはアリなのでしょうか。

 もし、政府・与党以外の野党が、参議院ですべての議案に審議拒否する、または反対した場合、衆議院の優越がある首相の指名と予算案以外の全て法律が成立しないことになります。また、今日の国家財政を考えたとき、赤字国債を発行しないわけにはいかないので、特例公債法案が成立しない場合は行政の活動に著しく影響を与えかねません。

 この状況を◯◯的に問題がある、といくら言ったところで、意味はありません。問責決議なんか出さなくても、参議院で与党が過半数を持たない時点でこの結果は見えています。単に否決すればいいのです。そして何より、この問題を調整する方法が憲法に書かれていないのだからしようがないのです。

 参議院の首相の問責決議案について考えてきて、最終的にぶち当たるのがこの問題です。すなわち、参議院で首相の問責決議案が可決されるということは、ほとんどの可能性において、参議院で政府・与党が過半数を得ていないということであり、参議院における法案の成否は、問責決議案の可否に限らず、野党に握られているということです。

 こう考えてみると、首相の問責決議案などと言うのは、飾りにすぎないのです。あってもなくてもどうでもいい、箔付けのようなものではないでしょうか。なぜなら、すでに述べた通り、審議拒否や法案の否決といったパワーの有無は、問責決議案の可否に左右されないからです。

 では、何のために箔を付けるのでしょうか。審議拒否にです。あるいは、問責決議案は野党を糾合する錦の御旗にするのでしょう。「参議院として問責決議を可決したのに審議拒否しないのは、議院の一体性を損なう行為であり、参議院の地位を低下させる」という理屈でもって、審議拒否を渋る野党を説得することができるからです。

 この状況を打開するには、参議院で法案が否決されてもなお、法案を成立させる力が必要となります。その力とは、衆議院で三分の二以上の議席でもって再議決することです(憲法59条2項)。

 現状の衆議院の構成で三分の二以上の賛成を得られない場合、この力を得る方法のひとつして、衆議院の解散総選挙が挙げられます。選挙を行なって、与党で三分の二以上の議席を勝ち取れば、参議院が何をしようが無駄です。これは、憲法に明文で保証されています。◯◯的に問題がある、といくら言ったところで、憲法に書かれているのだからしょうがないのです。もっと言えば、この再議決の規定こそが、参議院で政府・与党が過半数を得ていないケースにおける、憲法が用意した衆参対立の調整手段なのかもしれません。

 参議院の首相の問責決議案可決による、首相の衆議院解散はアリです。これを拡大すると、参議院で法案を否決されて解散した、小泉元首相の郵政解散も当然アリになります。

 とは言え、解散が首相の専権事項ならば、どのタイミングで解散しようがしまいが首相の自由であるはずなので、こんなことを考えなくてもオールオーケー。すべてアリということになります。


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