娑婆と学生気分


毎日暑いです。この時期になると、つい読んでしまう本があります。前の大戦の本です。今は友人に薦められた阿川弘之『暗い波濤』を読んでいます。 大学から海軍に入った海軍予備学生たちを中心にした話で、昨日上巻を読み終えました。

この本に限らず、従軍体験を書いたものによく出る言葉があります。それは「娑婆」という言葉です。何か失敗をすると、「娑婆っ気が残っている」「娑婆にいると思うな」などと先輩や教官に言われ、殴られるパターンが多いように思います。

いろいろな本を読みながら、この「娑婆」という言葉の使われ方にひっかかかるものがありました。よく似た使われ方をする言葉を知っている気がするのです。それは「学生気分」という言葉です。

大抵、「学生気分」という言葉はいい意味では使われません。「学生気分が残っている」からミスをする、とか。もう「社会人」なのだから「学生だと思うな」、とか。

軍隊のよくわからない風習に従わない人や、単に慣れていないのでミスをした人が、「娑婆っ気が残っている、けしからん」とボコボコに殴られている場面を見るたびに、「理不尽だな」「こんな生活はまっぴらだな」と思っていました。

しかし、「学生気分」という言葉が「娑婆」と同じような文脈で語られているところをみると、あの理不尽さは組織に入ると必ずセットでついてくるものなのかもしれず、本当は理不尽ではないのかもしれません。特に、戦場では兵器も扱いますし、自分や仲間が死ぬ可能性があって、常に緊張感が必要なのでしょう。

現代日本の仕事にその緊張感が必要な職種がどれだけあるのかが、ちょっと気になります。

Posted from するぷろ for iPhone.


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