衆議院の優越があっても参議院は強い


■衆議院の優越とは

国会は衆議院と参議院の二院があり、原則として両院で可決したもののみが効力を持ちます。しかし、憲法で定めるところにより、内閣総理大臣の決定と国のお金の使いみちを決める予算の成立、外国と交わした条約の批准、参議院に否決された法案の再議決については衆議院の議決が優先されます。これを衆議院の優越といいます。

■それでも参議院は弱くない理由

では、参議院は衆議院に比べて弱いのかというと、そうではありません。衆議院による法案の再議決は、法案を参議院が否決するか参議院で60日以内に議決しなかった場合のみ、衆議院で出席する議員の三分の二以上の多数で可決することで成立になります。このハードルは結構厳しいです。

参議院で法案が否決される事態になる場合は、参議院で法案に反対する勢力が多数になっているということです。したがって、法案審議のコントロールも法案に反対する勢力が握っていることになります。そのため、法案審議がスムーズに進むことはないでしょう。仮に衆議院で三分の二以上の議員が法案に賛成していたとしても、参議院で否決しない限りは衆議院で再議決することはできません。この場合、参議院側が憲法が定める60日になる限界まで審議を引き延ばすのは合理的な行動になります。参議院で速やかに否決したら、衆議院で速やかに再議決されてしまうからです。

■再議決には日程的な限界がある

60日というのは、なかなかインパクトがある日数です。通常国会の会期が150日で、最初の60日は予算審議に費やされます。通常国会で法案審議ができるのは90日あまりです。委員会の審議1回で8時間として、衆議院で40時間審議したら5回分委員会を開くことになります。定例日(週2〜3回)がある委員会の場合、委員会を5回開くのに審議入りから20日ほどかかります。法案が40時間の審議で衆議院を通過した場合、参議院で審議できるようになるのは国会の召集から数えて最短でも80日かかることになり、残りは70日です。これで、参議院で60日粘られてしまうと残り10日となります。1法案でこれなので、多数の法案を成立させるのはかなり難しいです。1委員会で1法案成立させるのが限界になってしまいます。

このように、衆議院の優越には限界があります。ですから、参議院は、衆議院の優越があっても第二院として強い力を持っています。だからこそ、与党は所属する参議院議員をうまく統制する必要がありますし、参議院議員選挙も重要なのです。


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