大臣の出席義務と議員の不逮捕特権


■審議と大臣

日本国憲法第63条
内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

 国会は話し合って物事を決める場所です。話し合いに必要なものは、話し合う人です。ひとりでは話し合いになりません。

 また、ある議題について話し合っているときは、その議題に詳しい人、その議題を提案した人から話しを聞く必要がでてきます。冒頭の憲法の条文は、主な議題の提案者である大臣から、国会が話しを聞くための権利を保障しています。

 この国会の権利は強力で、大臣の出席義務のために、日本の大臣はおちおち海外視察もできないといわれています。大臣が出席しなければ法案審議が進まないため、ただでさえ少ない審議時間を海外視察で減らすわけにいかないのです。

■審議と議員

 同じように、審議に必要な国会議員が何があっても国会に出席できるようにした条項が憲法にあります。

日本国憲法第50条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

 いわゆる、国会議員の不逮捕特権として知られているものです。不逮捕特権は、よく「政府の政策に批判的な議員を警察に逮捕させることがないように設けたものだ」と説明されています。

 それもそうなのですが、もうひとつ国会を成り立たせるための理由があります。逮捕されそうな議員が、審議中の法案の起草にかかわっていて、その議員に話しを聞かなければ審議がどうにもこうにも進まない、ということが起こったとします。そういうときは、この条項によって、少なくともその法案の審議の間は、逮捕されそうな議員を国会に出席させることができます。

■どちらも審議を確保するための決まり

 60条も50条も国会審議をしっかりと行うための決まりです。「話し合い」を成り立たせるには、いろいろな工夫が必要なのですね。


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