月別アーカイブ: 2018年11月

「審議拒否」や「強行採決」を中立的にみる


りんごが木から落ちるのをみて「けしからん」という人はいません。物には引力があり、りんごの引力と地球の引力が互いに引っ張り合ってりんごが地面にぶつかるという現実があるからです。

野党が「審議拒否」をするのをみて、あるいは与党が「強行採決」するのをみて「けしからん」という人がいます。私は、これも「りんごが木から落ちる」のと同じものだと思います。

野党は政府・与党の政策をスムーズに実行させたくないという目的があり、与党は政府の政策をスムーズに実行させるという目的があります。それぞれの目的を達成するために合理的に考えて採用する手段のひとつが「審議拒否」であり「強行採決」なのです。そういう現実があります。

ですから、「審議拒否」や「強行採決」それ自体に善悪はありません。評価するならば、手段が目的を達成するために役に立ったかで評価するべきだと思います。

ただ、政治の場合、扱われているのが政策であり、人それぞれの立場によって評価が異なるものなので、客観的にみるのは難しいのも事実です。支持していない法案の審議拒否をしていれば「よくやった」と思い、支持している法案が強行採決されたら「当然だ」と思うのが人情です。


与党、法務委員長解任決議案否決後、連日審議の構え


昨日11月16日の衆議院法務委員会は、法務委員長の解任決議案が提出されたため、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の審議に入れませんでした。

このため与党は、法務委員長の解任決議案を20日火曜日の衆議院本会議で否決したうえ、連日法務委員会を開いて審議を進める構えであるという報道が出ています。

「連日審議は大袈裟だな」と、一瞬思ったのですが、来週は23日金曜日が祝日です。20日から法務委員会を開会できるとしても3日しか審議できません。

来週火、水、木と連日審議して審議時間を積まないと、11月中に参議院で審議を開始できない情勢ということです。

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法務委員長解任決議案で入管難民法案の実質審議入りが阻止される


本日11月16日、衆議院法務委員会で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の提案理由説明と質疑が行われる予定でしたが、審議に至りませんでした。

立憲民主党が法務委員長の解任決議案を提出したため、法務委員会の審議が続行不可能になり、入管難民法案の実質審議入り前に法務委員会が散開しました。

本日の法務委員会は、14日の続きとなる裁判官らの給与法改正案の審議から始まりました。野党側の質疑ののち討論に入り、採決され賛成多数で可決すべきものと決しました。

衆議院インターネット審議中継の動画によると、給与法改正案の採決のあと、法務委員長が一般質疑に入ろうとしたところで、「そこまで!」「合意してない!」という声が入り、ざわついた感じになります。どうも、与野党が法務委員会の議事進行で合意していたのは給与法改正案の採決までで、それ以降については調整がついていなかったようです。

それでも、自民党と日本維新の会の質疑を終え、12時30分ごろ休憩に入りました。

与野党の調整が難航したためか、再開したのは4時間後の16時39分。法務委員長が冒頭で「立憲民主党、国民民主党、無所属の会、日本共産党の委員が出席していないため、理事に出席を要請させる」と宣言し、速記を止めます。ここからが長く、20分以上待ちます。その間、委員長も法務大臣も席を外さずひたすら待ちます。

そして20分ほど待ったところで、速記を再開した委員長が「自分に対する解任決議案が提出された。今日は散会する」と宣言し、16日の法務委員会は散開しました。

今日の場合、午後の審議に立憲民主党などが委員会に出席しなくても、与党と一部の野党で審議を強行することは不可能ではありませんでした。

しかし、立憲民主党が委員長の解任決議案を出したため、状況は一変します。

委員長が解任決議案を出された場合、その委員会の審議は解任決議案の採決がされるまで行うことができないからです。そして、解任決議案の採決は本会議で行います。次の衆議院本会議の定例日は11月20日火曜日になりますので、普段のように13時に開会となると、11月20日の夕方ごろにならないと法務委員会は開けないことになります。

入管難民法案の今国会での成立はさらに厳しくなりました。


「理事懇談会」と「職権で決めた」とは


本日11月15日の衆議院法務委員会理事懇談会で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案について、明日16日に提案理由説明をし、質疑に入ることを法務委員長の職権で決めたとの報道が出ています。例えば、以下の時事通信の記事です。

衆院法務委員会は15日の理事懇談会で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案について、16日に提案理由説明と与党側の質疑を行い、実質審議入りすることを葉梨康弘委員長(自民)の職権で決めた。立憲民主党の辻元清美国対委員長は、自民党の森山裕国対委員長に電話で抗議した。

『入管法案、16日審議入り=衆院法務委、職権で決定:時事ドットコム』

これで、明日の法務委員会が何らかの事情により開かれないということがない限り、入管難民法案が実質審議入りすることになります。ぎりぎりで、与党が当初に予定していたと見られるスケジュールに追いついてきました。

この報道に出てきた言葉として、「理事懇談会」と「職権」というものがあります。

まず「理事懇談会」とは何でしょうか。

委員会の理事会とは、委員長と委員の中から選ばれた理事が委員会の会議の運営について決めるところです。決める項目としては、扱う議案、質疑する順番、質疑する人、質疑の持ち時間などです。

理事会は、委員会が始まる直前に開かれることが多いのですが、どの議案を扱うかや質疑する人などは委員会の準備のため前もって決めておく必要があります。そこで行われるのが理事懇談会です。

今回の場合、この理事懇談会で16日の法務委員会の運営について話し合われました。理事懇談会で、与党が16日に入管難民法案の提案理由説明聴取と質疑に入ることを野党に提案し、野党がこれを拒否して折り合わず、委員長が職権で16日の法務委員会で入管難民法案の提案理由説明聴取と質疑を行うことを決めたということになります。

この「職権で決めた」というのはどういう意味でしょうか。

委員会の運営は与野党が合意して行うことが原則となっているため、「職権で決めた」というと野党の合意なく委員会の運営が決められたということになります。あえて言えば、「強行開会」です。立憲民主党の辻元国対委員長が自民党の森山国対委員長に抗議しているのはそのためです。

ちなみに、委員会の運営を決めるのは国会法や議院規則上は委員長の権限であるため、委員長が独断で決めることに問題はありません。文字通り委員長の「職権」で決められることなのです。


入管難民法案の16日実質審議入りの目は残った


11月14日に開かれた衆議院法務委員会で、裁判官らの給与法改正案の趣旨説明と与党側の質疑が行われました。16日に野党側の質疑が行われ、採決される見通しです。

これで、16日に外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の趣旨説明に入れる可能性が出てきました。16日に「実質審議入り」と言われる質疑に入れるかどうかがひとつの見所です。


入管難民法案、衆議院で審議入りも来週衆議院通過に黄色信号


本日11月13日に衆議院本会議で衆議院本会議で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の趣旨説明と質疑が行われました。これで、入管難民法案が法務委員会に付託されます。

一方、22:00現在の衆議院インターネット審議中継を見る限り、本日開かれた法務委員会では、山下法務大臣の所信に対する質疑のみが行われた模様です。どうもお昼で休憩に入り、その後再開には至らなかったようです。何かもめているのかもしれません。11月10日の読売朝刊で与野党で合意済みとされていた、裁判官らの給与法改正案の提案理由説明は行われなかったようです。

時事通信によると、本日の法務委員会の理事会で、与党は14日に給与法改正案の質疑を行い、16日には給与法改正案の採決と、入管難民法案の提案理由説明と質疑を行うことを提案しているそうです。この提案で、与党は当初予定していた給与法改正案の14日採決と入管難民法案の提案理由説明を諦めています。

ただ、法案の提案理由説明をした日は質疑をしないで委員会を散会するのが慣例なので、給与法改正案と入管難民法案の2つの法案で慣例から外れた提案理由説明と同日に質疑ができるのか不明です。

14日の入管難民法案の提案理由説明ができなくなったことで、16日に入管難民法案の実質審議入りと、来週の衆議院通過に黄色信号が出てきたと言えます。


明日入管法案本会議趣旨説明


明日11月13日に衆議院本会議で外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の趣旨説明と質疑が行われます。

この趣旨説明と質疑が行われると、入管法案は法務委員会に付託され、法務委員会で審議入りする準備が整います。

衆議院インターネット審議中継によると、13日の9:00から法務委員会が、14:00から本会議がセットされています。

14:00から始まる趣旨説明が終わったあとで、法務委員会を再開し、裁判官らの給与法改正案の提案理由説明を終えることができれば、与党の想定通りのスケジュールになります。

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なぜ入管法案の審議入りを議院運営委員会理事会が決めるか


11月9日の衆議院議院運営委員会理事会で13日に外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案が本会議で審議入りすることが決定しました。

理事会とは、委員会の運営を話し合う会議です。委員会でいつ何をどの順番で審議するのか、誰がどの順番で何分質問するのかなどを決めます。

入管法案を審議する委員会は法務委員会ですが、まだ法務委員会の出番ではありません。入管法案を法務委員会で審議するためには法案を委員会に「付託」することが必要ですが、付託の条件が本会議で法案の趣旨説明と質疑をすることになっているため、まだ法務委員会で審議できないのです。

衆議院議院運営委員会は衆議院本会議の議題を決定することが主な仕事です。たとえば、入管法案のように本会議で趣旨説明することが求めらている法案について、いつ趣旨説明を行うかを決定します。

つまり、議院運営委員会はいつ法案を所管する委員会に付託するかを決定できるということでもあります。


なぜ臨時国会の会期末まで1ヶ月弱あるのに入管法案の日程が「綱渡り」なのか


入管難民法改正案について、与党の想定する審議日数が3〜4日で、衆議院の審議入りが13日なのに、どうして衆議院通過が22日になってしまうかについて解説してきました。

参議院もほぼ同じ法案審議のプロセスと慣習になっているので、衆議院と同じ考え方が使えます。

3〜4日の審議の前に本会議趣旨説明と提案理由説明で1日使い、週に2〜3日しか審議ができないと考えると、22日に衆議院通過するとして、参議院での本会議趣旨説明と質疑は最短で翌週の26日月曜日になります。

参議院法務委員会での実質審議入りは26日週のどこかになり、そこでやっと審議日数が1日にカウントされます。

2日目以降の審議は12月3日週に行われることになり、3〜4日の審議となると最短で12月7日金曜日に成立となります。翌週の12月10日月曜日は今国会の会期末ですので、余裕が1日しかありません。ですから、「綱渡り」なのです。

与党は当初11月8日に衆議院で審議入りを野党に提案していたのですが、入管法案の内容に懸念を示す野党に配慮して11月13日に先送りしました。この13日に変えるという譲歩は、それなりにインパクトがあるものだったのです。

13日審議入りは昨日9日に衆議院議院運営委員会理事会で決まりましたが、16日の実質審議入りで野党との調整がつかない場合は、法案成立のための会期延長は不可避です。


なぜ13日審議入りで3日の審議を想定で22日衆院通過になるのか?③


最後に、なぜ与党の想定で入管難民法改正案が法務委員会で16日に質疑に入って22日衆議院通過になるかです。

定例日が週に2日として、審議に3日かかるとすると、16日で1日目、19日の週に2日目と3日目となり、19日週の最後の営業日である22日木曜日に本会議で採決し衆議院通過となるというシナリオになります。

審議に4日かけて審議する場合は、与党が交渉して、野党の主張する形式の審議を取り入れるかわりに19日週に3回審議するという感じになるのでしょう。

このように、法案審議のプロセスといくつかの慣習を勘案すると、13日に衆議院で審議入り、16日に実質審議入り、3〜4日審議して22日に衆議院通過というスケジュールになるわけです。

なぜ13日審議入りで3日の審議を想定で22日衆院通過になるのか? ①
なぜ13日審議入りで3日の審議を想定で22日衆院通過になるのか? ②
なぜ13日審議入りで3日の審議を想定で22日衆院通過になるのか? ③

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