月別アーカイブ: 2014年4月

集団的自衛権を逆算する


集団的自衛権について、政府が考えているゴールから逆算して、必要なプロセスを洗い出してみます。

ゴール:集団的自衛権を行使するために必要な法案の成立

15.法案の成立
14.法案の審議
13.法案の付託
(特別委員会の設置?)
12.法案の提出
11.法案の閣議決定
10.内閣法制局審査
9.自民党総務会決議
8.自民党政調会決議
7.担当省庁の原案作成
6.集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を閣議決定
4.自民党総務会決議
3.自民党政調会決議
2.自民党政調会、安全保障法制整備推進本部合同審査
1.安保法制懇報告書提出

集団的自衛権を行使する環境が整うまでに、これだけのステップが必要になります。2014年4月4日現在、ステップ1以前の段階です。

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憲法解釈変更の閣議決定までの自民党内の意思決定過程


只、閣議決定案件ということになりますと、79条機関と政調会との合同で審査をいたしまして、その後、政審、総務会と通常の手続きを踏んでまいりますので、私は可及的速やかにということを希望しております。

『高市早苗政調会長記者会見 | 政務調査会長記者会見 | 記者会見 | 自民党の活動 | 自由民主党』

 冒頭は、自民党の高市政調会長の記者会見からの引用です。引用中の「79条機関」は、集団的自衛権について意見を集約するために設置された自民党の『安全保障法制整備推進本部』のことです。

 高市政調会長によれば、集団的自衛権の行使を容認するよう憲法解釈を変更する閣議決定をするまでに、以下のような手続きが必要になります。

  1. 安全保障法制整備推進本部と政務調査会の合同審査
  2. 政務調査会審議会で議決
  3. 総務会で議決

今年中に集団的自衛権に決着をつけたいなら、臨時国会は早めに召集すること


 2014年4月2日現在。集団的自衛権の行使容認に向けた報告書を作成している安保法制懇が、報告書の提出時期を4月から5月にずらすという記事が時事通信から出ています。

 記事のなかに、報告書が出てから憲法解釈変更までの流れが書いてありました。

政府は提言が出されれば、内閣法制局の意見も踏まえ、与党との調整に入り、憲法解釈の変更について閣議決定を目指す。

『時事ドットコム:安保法制懇、5月に報告書=与党配慮で先送り-集団自衛権』

  1. 安保法制懇の報告書提出
  2. 政府と与党で調整
  3. 憲法解釈変更を閣議決定
  4. 安全保障基本法や関連法案の与党内審査
  5. 安全保障基本法や関連法案の閣議決定
  6. 安全保障基本法や関連法案の国会提出
  7. 安全保障基本法や関連法案の成立

 以上のような流れで、集団的自衛権の行使に向けた環境作りがされていくと思われます。もし、今年中に環境を整えたいのなら、秋の臨時国会を早めに召集しないといけません。召集が遅れると会期が短くなり、どうしても強行採決になってしまうからです。


悪い政策を良い手続きで実現するほうがまし


 政治の評価には、良い政策と悪い政策というような「政策」を軸にしたものがあります。「自分にとって良い政策を訴えているから、この政党を支持しよう」とか、「悪い政策を訴えているあの政党は支持しないぞ」というようなものです。

 しかし、評価の軸は政策だけではありません。良い手続きと悪い手続きという「手続き」を軸にしたものもあります。良い手続きというのは、政策決定過程に疑問の余地がないものです。

 すべての可能性をあげると以下のようになります。

  1. 良い政策を良い手続きで実現する
  2. 悪い政策を良い手続きで実現する
  3. 良い政策を悪い手続きで実現する
  4. 悪い政策を悪い手続きで実現する

 2と3だったら、2のほうがましです。議会の多数派が変われば、自分にとって良い政策が実現される可能性があるからです。3や4は、自分が支持している勢力が議会の多数派である(3)ときはいいですが、そうでない(4)ときは怖すぎます。何がどう決まるかわからないからです。

 そんなことはみんなわかっているので、与党はどんな形であろうと手続に則っているようにみせます。そして野党は、与党がどう頑張っても手続きに傷があるようにしむけるのです。