月別アーカイブ: 2013年9月

臨時国会召集要求と野党の見せ場


■野党5党、臨時国会召集要求書を提出

 2013年9月26日現在。昨日、民主・みんな・共産・生活・社民の野党5党が共同で臨時国会召集要求書を参議院議長に提出しました。

 この要求は憲法53条に基づくものです。今回は、冒頭に挙げた野党5党(92名)で4分の1以上を達成できる参議院から要求するということになります。

第五十三条
 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

■召集要求の目的

 今回の召集要求の趣旨は、10月15日に予定されている臨時国会召集の前倒しを要求するというものです。ただ、憲法53条の文面からすると、召集要求で実現できるのは内閣に国会召集を決定させられることだけのようです。この条項を使って内閣に臨時国会召集の前倒しを強制できるほどの力があるかどうかはよくわかりません。

■国会が開かれなければ、野党に見せ場はない

 しかし、野党として何かしなくてはならないことも事実です。政府の役職に就ける与党と異なり、野党というのは国会が開会しなければ単に国会議員という身分があるだけの人たちになってしまいます。

 維新の会は「(閣僚の外交日程を消化させまいとする)嫌がらせにはくみしない」として、この召集要求から距離をおいていますが、それは少し厳しい見方です。国会が開かれないことには、国会が存在感を示すのは難しいですからね。

 臨時国会召集に向けて、徐々に盛り上がってきた感じがします。とても楽しみです。


国会運営の効率化に必要な視点


■国会運営改革について

 2013年9月8日の日経新聞朝刊に与党の国会運営改革案についての記事が掲載されていました。

 具体的な内容は以下の5つです。

  • 予算委員会の審議日程をあらかじめ設定
  • 首相、閣僚の国会答弁の負担軽減
  • 国会同意人事の対象削減
  • 首相の所信表明、施政方針演説の衆参一本化
  • 党首討論の開催頻度を増やす
  • 委員長手当の見直し(減額)

■審議時間はコストか?

 最初の4つは、政府にとっての重荷になっている国会審議というコストの削減を目的としたものと言えます。審議をコストとして捉え、それを削減して国会運営を効率化するための改革ということでしょうか。審議というコストをかけることこそが大事だと考えている人は、なかなか賛成しづらいでしょうね。

 とはいえ、ただただ審議時間、というより法案の提出から採決までの時間をかければいいというものではありません。野党が本会議での法案の趣旨説明を求めて、委員会付託を遅らせる「吊るし」によって、なかなか実質審議入りさせないことで採決までの時間を引き延ばしているケースを目にすることがあります。こういうのは、実質的な審議がされないまま、ただ時間をかけるだけでなんの意味もありません。

 例えば、今年の通常国会の選挙制度改革法案は、参議院での委員会付託を延ばしに延ばした挙句、参議院での審議はほとんどと言っていいほど行われずに、衆議院で再可決されました。参議院に法案を送付する意味があったのでしょうか。

 そういう無駄を省いて審議時間をしっかり確保するという目的もあるならば、国会運営改革に賛成です。単に審議時間を短くする、大臣の答弁の回数を減らすだけでは意味がありません。現状でも短いことがあるからです。

■効率化には目的が必要

 そもそも効率化という言葉は、その時その時によって意味が変わってしまう言葉だと思います。時代によって効率化する範囲や、効率化が許される深さが異なるのではないでしょうか。環境保護に対する意識があまりない時代や地域なら、環境対策にかけるコストを切り捨てるのが利益追求の面から効率的であるようにです。

 単に効率化するというのではなく、「こういう目的のために、こういう効率化をする」ということをハッキリさせる必要があります。そうしなければ、効率化の方法についてうまく話しあうことができませんし、効率化を実施した後の検証も難しくなります。

 効率化はいいことです。ただし、それは目的達成に必要なコストを減らすからいいことなのです。

■実質的な審議の確保を目的にするべき

 国会は、それぞれの意見の代表者が出てきて、討論した後に多数決で決める点に意義があります。討論することが、国会の目的のひとつなのです。

 討論、つまり実質的な審議が行われないのならば、国会議員はいらないかもしれません。議員のみなさんには、国会運営改革を話しあう際に、「実質的な審議を確保する」という視点を常に持っていてほしいですね。


民主党が総合調査会を設置


■民主党の新しい機関:総合調査会

 2013年9月4日、民主党は「総合調査会」という新しい機関を設置しました。総合調査会は、憲法や外交、行財政改革などの重要課題について、民主党がどのような政策を打ち出していくのか検討する機関になる予定です。

■民主党の政策決定機関

 民主党の党規によると、現在、民主党の政策は「次の内閣」という機関で最終的に決定されます。総合調査会は「次の内閣」の下に置かれることになります。

 「次の内閣」の下には、もう一つ政策を立案する機関があります。「政策調査会」です。政策調査会長は「次の内閣」で「次の官房長官」になり、政策調査会の各部門の座長が、それぞれ「次の大臣」になります。

■総合調査会の意義

 総合調査会は政策調査会の上位にくる機関ではないようです。関係する役割分担をしっかりしないと、政策調査会と総合調査会で言っていることが違うということになってしまいます。そうなると、党論の統一という役割は担えなくなります。

 ただ、民主党は政権担当時に「交渉する相手が誰かわからない」と言われていました。総合調査会ができるとことで、「憲法ならこの相手」というように交渉相手が可視化したのはとてもいいことだと思います。


安倍内閣の与党コントロール


■自民党の党内手続きが省略されている

 2013年8月30日の日経新聞朝刊に『自民、政策決定に「異変」』という見出しで、自民党の意思決定の手続きが省略されていることを大きく報じました。

 例えば、社会保証制度プログラム法案の骨子を、政務調査会決定と総務会決定を省略し閣議決定しています。また、税制改正のプロセスである、政務調査会部会による省庁や業界に対するヒアリング→部会要求のまとめ→自民党税制調査会決定の流れのうち、ヒアリングと決定要求を省略しています。さらには、やはり政調部会で行う来年度予算の概算要求の取りまとめも、短期間のうちに終了しています。

 日経は、これらの状況から考えて、政府が党を強く指導している、いわゆる「政」高「党」低の状況が続いているとみているようです。

■党の方が強くなりやすい

 議院内閣制においては、政府と与党は一心同体です。政府と与党、どちらを欠いてもおかしなことになります。与党は、政府がなければ行政に関与できず、政府は、与党がなければ国会審議を進めることができないからです。

 ここで重要なのは、行政の行動に法律の裏付けが必要な関係上、国会に直接関与できる党のほうが圧倒的に強いということです。また、与党に所属している議員が一丸となって政府を支持するからこそ、政府=内閣は国会の信認を保てるのであって、与党議員の多くが内閣の動きに反対した場合、内閣の命運は簡単に尽きてしまいます。

 つまり、政府と党の関係は、「党」高「政」低になりやすいといえます。

■党をコントロールするにはどうすればよいか

 政府、というよりも首相が強いリーダーシップをもって政治をおこなうためにはどうすればいいでしょうか。自民党の場合は、党三役、つまり、幹事長、総務会長、政調会長を内閣に協力させることが第一歩です。

 現状をみてみると、幹事長こそ総裁選で対立候補だった石破茂さんが務めていますが、総務会長も野田聖子さんと政務調査会長の高市早苗さんは首相にとても近いといわれています。この事実は、総務会長と政調会長が党内手続きの要となる機関、総務会と政務調査会を司っているため、非常に重要です。政府が実現したい政策は、党内機関の了承という形で党の決定にしなければ、基本的にはできないからです。

 与党のコントロールは、首相が思い通りの政策を実行するうえで非常に重要です。日経の記事を見る限り、安倍内閣は自民党のコントロールに成功しているようです。