月別アーカイブ: 2013年8月

上程と緊急上程


■上程とは

 上程とは、議案を会議にかけることです。国会で上程という場合、法案や決議案などが本会議で議題となることを指します。例えば、「xxxx法案上程阻止」というスローガンがデモで見られたりしますが、これは反対するxxxx法案が本会議にかけさせないようにしようということです。

 現在(2013年8月現在)のように、国会が衆参両院で与党が過半数の議席を保有している場合は、本会議にかけられた議題は数から言って必ず成立するため、「上程阻止」して法案を葬ろうということになるわけですね。

■緊急上程とは

 竹中治堅監修『議会用語事典』(学陽書房)によると、「委員会審査を終えた議案は、翌日以降で直近の定例日の本会議の日程とされる例である。」とされています。例えば、衆議院の場合、本会議の定例日は火曜日、水曜日、金曜日です。金曜日に委員会審査を終えた議案は、翌週の火曜日の本会議で議題になります。

 では、委員会で採決された当日に本会議で採決したいときはどうすればいいのでしょうか。本会議で、議事日程に追加する議決を行えば、委員会採決当日の本会議上程が可能になります。これを「緊急上程」というわけです。

 この「緊急上程」という言葉、会議録などで頻繁に使われるわりに解説されているところはあまりみかけません。ずっと調べていたところ、国会図書館の議会官庁資料室においてあった『議会用語事典』で初めて見出しになっていることを発見し、感動しました。


憲法違反かどうかわからない・大臣出席と憲法違反3(終)


■結論:憲法違反になるかどうかよくわからない

 いろいろ調べられるだけ調べてみましたが、参議院予算委員会に安倍内閣の大臣が出席しなかったことが憲法違反になるかどうかはよくわかりません。

 国会法に定められている手続を省略している可能性があるので、憲法63条にある大臣の国会出席義務が発生していないと言えそうです。

第63条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

 しかし、先例によれば手続の省略は常態化しているため、成規の手続をとっていないことによって大臣の出席義務を無効にすることができるのかどうか、よくわかりません。

 仮に、「成規の手続をとらないのが慣例になっているから、大臣の出席義務はあった」という立場にたてば、安倍内閣の対応は憲法違反です。それに対抗する主張が、「内閣総務官室の文書」です。(「」付きなのは、本当に内閣総務官室の文書なのかわからないからです。なにしろ、作成者の署名も日付も入っていなかったそうですから。)

 閣僚などの国会への出席の取扱いについては、国会運営に関する事柄であることから、政府としては、従来から、与野党で協議し合意されたところに従って対応しているところです。今般の御要求に係る件については、与野党の協議で合意されたものでなく、さらに、参院議長に対する不信任決議案も提出され、その処理もなされていない状況にあることから、政府は出席しないことといたします。
(第183回国会 予算委員会 第20号 平成二十五年六月二十五日(火曜日))

 この文書が言わんとしているのは、大臣の出席要求は与野党合意のものに対して応じるのが慣例になっているので、与党不在のまま行われた出席要求に応じる必要はないというものです。

 大臣の出席要求に関する慣例が認められるなら、「内閣総務官室」が提示した慣例も認められてもよいということになってしまいます。

 また、不信任案を提出された議長、つまり「事故ある議長」を「経由」することができるのかどうかよくわかりません。副議長や、議長代理を「経由」することができるかもわかりません。

 まだまだ、わからないことが多いので、調べがいがあります。


参議院の先例からわかること・大臣出席と憲法違反2


2013年9月9日追記:「議長を経由して」の解釈についてTwitterで教えていただいたので、記事に追加しました。

■通常国会会期末の参議院予算委員会の大臣出席要求は成規の手続でない可能性が高い

 参議院の先例によれば、昭和31年3月9日以降、参議院で委員会が議長を経由して大臣の出席要求をしたことはないという事実がわかります。

 先の通常国会では、石井予算委員長が文書で大臣の出席要求を求めたそうですが、それが成規の手続によるものかはわかりません。先例によるならば、わざわざ議長を経由していない可能性があります。

 また、先例では、成規の手続で議長を経由する前に委員会で大臣の出席要求を議決しています。先の参議院予算委員会では、大臣欠席前の最後の予算委員会だった5月15日から、実際に欠席が起こった6月24日までに大臣の出席要求は議決されていません。成規の手続に委員会の出席要求決議が必要だとすると、今回の安倍内閣に対する大臣の出席要求は、成規の手続となる要件を満たさないことになります。

■「議長を経由して」は本当に「経由」するだけ

 ところで、「議長を経由して」という言葉が何度も出ていますが、これもいまいち意味がわかりませんでした。ただ、たまたま読んでいた本にヒントになりそうなことが書いてありました。以下がその本です。

 谷福丸元衆議院事務総長の言葉に次のようなものがありました。引用中の「あれ」とか「それ」は細川元首相の証人喚問に関するものです。

ところが、あれは議長の決裁じゃないんだよね、議長を経由して送ればいいことになっている。
(赤坂幸一・中澤俊輔・牧原出編著『議会政治と55年体制 ―衆議院事務総長の回想【谷福丸オーラルヒストリー】』(信山社)P.284)

それで、それは委員長がちゃんと召喚状を議長に提出してくるわけ。あれは、法規上は議長が判断することにはなっていないんだよ。議長を経由して送ることになっているんだ。経由するだけなんだ。
(前掲書 P.298)

 この言葉から考えられることは、「議長を経由して」というものは、議長が判断するものではない、ということです。委員会から上がってきたものを議長が承認することで効力が発生するわけではないということです。

 ただし、谷前衆議院事務総長は衆議院の立場で話しているため、微妙に手続の異なる参議院でそのまま適用できるかどうかはわかりません。

■「議長を経由して」について(2013年9月9日追記)

 Twitterで、@KoichiAkasaka先生から「議長を経由して」の解釈について教えていただきました。ご指摘によれば、「議長を経由して」とは、大臣出席を要求する文書や、証人喚問の召喚状などを外部に出す際に、議院の代表である議長の手を経る必要があるということだそうです。とてもスッキリとして、納得がいく解釈です。

 議院と他の機関という視点でみることができなかったので、1人では絶対に辿りつけなかった解釈だと思います。@KoichiAkasaka先生、ありがとうございました。


大臣に対する出席要求の先例<参議院>・大臣出席と憲法違反1


■参議院委員会先例録によると

 先の通常国会で問題になり、参議院で安倍首相に対する問責決議が可決される原因にもなった、参議院予算委員会の出席要求を安倍内閣が拒否した件について調べています。

 先日、国会図書館に行き、議会官庁資料室で『参議院委員会先例録 平成10年版』を閲覧しました。委員会先例録の第七章に大臣の出席要求に関する記述がありました。

第七章 国務大臣及び政府委員等

二四八 国務大臣及び政府委員の出席要求は、委員長から直接これを行うのを例とする

国務大臣及び政府委員の出席要求は、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とするが、成規の手続により、議長を経由してこれを行った次のような例もある。

第十回国会電気通信委員会(昭和二十六年五月三十一日)において、電話設備負担臨時措置法案の審査に当たり、大蔵大臣池田勇人君の出席を求めることを議決し、議長を経由して文書をもって出席要求を行った。
その他同例がある。
(『参議院委員会先例録 平成10年版』 P.223)

 また、関連資料として『参議院委員会先例諸表 平成22年版』の表二十に「議長を経由した国務大臣等出席要求一覧表」があります。

 同表によれば、昭和31年(1956年)3月9日までに、成規の手続により議長を経由して国務大臣の出席要求を行った例は22例ありました。それ以降はなかったようです。表には出席要求に大臣が応じたかどうかまで書かれていました。必ずしもすべての要求に応じているわけではないようです。

 委員会先例録にある「成規」の意味がわからなかったので、調べてみます。成規とは「成文になった規則」のことだそうです。今回引用した箇所の「成規の手続」とは国会法71条のことを指すと思われます。

第七十一条  委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。

 つまり、「成規の手続を省略して」というのは、「国会法71条の手続きを省略して」という意味になります。