2018」カテゴリーアーカイブ

事前審査制とは


■国会で実質的な審議が行われない理由

国会の法案審議について、与党は速やかに可決されることを優先し、野党は可決を少しでも遅らせることを優先するため、「法案についての実質的な審議がされていない」という批判があります。実質的な審議がされない原因のひとつとして、自民党の事前審査制があると言われています。

■事前審査制とは

事前審査制とは、文字通り法案を事前に審査する制度です。何の前かというと、法案を国会に提出する前です。

自民党では政務調査会の各部会で、それぞれ担当する省庁の作成した法案を審査しています。自民党の議員は、法案が国会に提出する前に法案の内容について議論しているのです。

自民党のルールでは、法案は部会、政務調査会審議会を通過したあと総務会にかけられます。総務会で法案が了承されると、自民党所属議員にその法案を賛成させる党議拘束がかけられます。党議拘束に反した自民党議員は処分の対象になります。

自民党が政府与党になっている場合は、総務会で了承した法案以外のみを閣議決定するルールになっています。閣議決定は国会に法案を提出るための条件であるため、自民党に良しとされない法案は、国会に提出されることはありません。国会に提出されない法案が成立することは絶対にないため、各省庁にとって、自民党の事前審査はかなり重要なものになります。

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厚生労働部会は、なぜ厚生労働省に影響を与えられるのか


■「妊婦加算」凍結で動いた小泉厚生労働部会長

12月14日の読売朝刊に、妊婦が医療機関を受診した際に負担する「妊婦加算」について、厚生労働省が運用を凍結する方針を固めた、という記事が出ていました。この「妊婦加算」のニュースに関しては、自民党の小泉厚生労働部会長の名前がよく出ていました。実際、小泉構成労働部会長と厚労省幹部の協議のなかで、妊婦加算の凍結を確認したと報じられています。なぜ自民党の厚生労働部会長は厚労省の政策に影響を与えることができるのでしょうか。

■法案を国会提出前に審査する自民党政務調査会

厚生労働部会は自民党の政務調査会の一部門です。自民党内の組織なので、法律に裏付けのある組織ではありません。しかし、政府に与える影響は小さくないです。なぜなら、政務調査会の各部会の役割は、政府が国会に提出する予定の法案を事前に審査することだからです。各省庁が出した法案が部会でダメ出しをされて審査が進まないと、自民党政権のルールでは、その法案が閣議決定されて国会に提出することはできなくなってしまいます。このルールを事前審査制と言います。

■厚生労働部会は、厚労省の法案の運命を左右する

法案の事前審査制により、厚生労働部会は、厚労省の提出する法案の生殺与奪を握っています。厚生労働部会の意見を厚労省が無視できないのは、そういう事情があるためです。


野党共闘は、選挙協力のみでは不十分


■反対の仕方も足並みが揃わない野党。政権運営は大丈夫?

今週閉会した臨時国会の終盤では、野党第一党立憲民主党と第二党国民民主党の足並みの乱れが見られました。

政府与党に反対するというだけのことなのに足並みが揃わないということは、反自公で選挙協力して政権交代を果たしたとしても、政権運営の方針で調整がつかずに混乱するであろうことは目に見えてます。

■野党共闘が成功しても、政府与党を支持する有権者が過半数になるとは限らない

これは、反自公で選挙を戦った政党の支持者にとって不幸なことです。自分が支持した政党の意見が、連立政権内の政治力学により通らないということになるからです。また、混乱してるために結局現状維持となり、何も変わらない可能性もあります。そうすると、真に政府与党を支持してるのは有権者の数十パーセントという状態になります。

「いまの与党に投票している有権者が過半数でないようだから、野党共闘で選挙を乗り切ろう」といって選挙に勝利したとしても、樹立した政権の政策に賛成する有権者が今よりも減る可能性だってあるのです。

■選挙協力だけでなく、政策決定のルール化を!

とはいえ、与党自民党にしてもすべての議員が同じ考えではありません。しかし、自民党は党内で政策を議論し、決定するルールがあるので、ある程度統制された行動を国会でとれています。

この自民党による政府法案の事前審査制は、国会審議の形骸化をまねいているという批判がある反面、多様な意見を持つ議員を与党としてまとめあげているという効果があります。

ですから、野党共闘もただの選挙協力ですまさず、政権交代後の政策(法案)決定のルールまで策定しなければならないと思います。そうしなければ、野党共闘は選挙で負けすぎないようにしようという現状維持の試みになるでしょう。

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国会の総理依存


■総理の外遊にあわせたスケジュールだった?

一昨日12月10日に閉会した臨時国会では、終盤に外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の参議院での採決をめぐって徹夜国会になりました。

終盤国会の混乱の原因になった入管難民法改正案については、「総理大臣の外遊日程に合わせたため、与党の国会運営が強引になった」という批判があります。

一瞬なるほどと思うような意見です。しかし、この意見には「総理大臣がいなければ国会審議がまわらない」という、国会の総理依存とも言うべき前提があります。

■国会は政府の下請け機関ではない

国会は国会として独立して存在しており、政府の下請け機関ではありません。国会が要請した時に総理大臣が国会に出席する義務があるのは当然ですが、総理大臣がいなければ法案審議が進まないと言うのは本末転倒です。

総理大臣がいようがいまいが、国会は自身の役割を果たすことができるはずです。

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質疑を省略して採決の大義名分とは


■質疑を省略して採決

2018年12月5日に、水道事業の経営安定化に向け、民間の参入を促す水道法の改正案が衆議院厚生労働委員会で可決されました。水道法改正案は5日の午前中に参議院本会議で可決し、衆議院に送付されただちに厚生労働委員会に付託され、法案の趣旨説明と質疑を省略して討論採決を行いました。

「質疑を省略して採決」と聞くと、与党の横暴もここまできたか、という感じを受けるかもしれませんが、水道法改正案についての質疑を衆議院で全くやっていないわけではありません。実は、前の国会でやっているのです。

■継続審査になった法案なので省略した?

水道法改正案は今年の通常国会で衆議院本会議において可決され、参議院で継続審査になったものです。今国会で参議院先議で衆議院に送付されたのはそのためです。

与党の言い分は、「前の国会で質疑を行っていて、参議院で法案の内容に変更が加わったわけでもないので、質疑を省略してもいいのではないか」ということでしょう。

ここで不思議なことがあります。水道法改正案は、前の国会で衆議院で可決済みなのに、どうしてまた衆議院で採決しなければならないのでしょうか。法案成立の条件は「衆議院と参議院の両方で可決すること」ではないのでしょうか。

■会期不継続の原則のため、会期をまたがったらもう一度採決をやり直す必要がある

なぜ、衆議院で一度可決したものをもう一度可決しなければならないかというと、会期不継続の原則により、前の国会の議決はなかったことになるためです。

新しい国会が始まると、前の国会の議決がなかったことになり、かつ、法案の成立には衆参両院での可決が必要になるので、今国会で水道法改正案を成立させるためには衆議院でもう一度採決する必要があるのです。

会期不継続原則について、詳しくは廃案と継続審議の違い(決定版)に書いてあります。


野党同士の貸し借り


■立憲民主党の配慮

12月4日の日経新聞朝刊に面白い記事がありました。

外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の参議院の審議について、「立憲民主党が国民民主党の出した対案に配慮して審議拒否や委員長の解任決議案の提出といった日程闘争を行っていない」というものです。

■国民民主党の配慮

ただ、配慮しているのは立民ら国民に対してだけでなく、国民から立民に対する配慮もありました。国民が参議院に提出した対案は、入管難民法改正案の衆議院通過前にすでに策定されていたのですが、強硬姿勢を見せる立民に配慮して衆議院では対案を提出しなかったのです。国民も立民らと強調して審議拒否をしました。

与党と野党の間で衆議院の借りを参議院で返すということがあるとは聞いていましたが、野党の間でも衆議院と参議院で貸し借りを精算するような動きがあるのですね。とてもおもしろいです。

しかし、この立憲民主党と国民民主党の強調路線も、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の対応をめぐる与党との攻防で崩壊しました。


入管難民法案、徹夜国会で可決成立


■徹夜国会

本日12月8日未明、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案が参議院本会議で可決し成立しました。報道によると、午前4時過ぎに成立したのだとか。徹夜国会です。

■次々出される解任決議案、問責決議案

前日7日の参議院本会議から与野党の攻防は始まっていました。

前日に出された法務委員長の解任決議案が12時前に否決された後、14時ごろに野党から山下法務大臣に対する問責決議案が提出されました。19時半から法務大臣の問責決議案の審議が始まり、審議中の20時30分ごろに安倍総理大臣の問責決議案も提出されました。

入管難民法案を所管する大臣である法務大臣と内閣の長である総理大臣に問責決議案が出されている場合は、問責決議案の決着をつけてから審議をする慣例になっています。このため、法務委員会は入管難民法案の採決を前にして予定した委員会の開催ができない事態になりました。

法務大臣問責決議案は21時前に否決され、本会議は2度目の休憩に入りました。再開は22時10分。総理大臣問責決議案の審議が行われ、23時30分ごろ否決されました。

■日付変更前に1分だけ開かれた衆議院本会議

ここで、面白いことがおきました。日付が変わる直前の23時57分、衆議院本会議が開かれ、翌8日の1時から本会議を開くことを議長が宣言し、1分で本会議を終えました。内閣不信任決議案が提出された場合に、速やかに否決して参議院での審議を継続するための措置と思われます。

■国民民主党の反対討論で明確になった、野党の足並みの乱れ

日付が変わってやっと開かれた参議院法務委員会で入管難民法案は可決すべきものと決しました。採決に先立つ討論では、反対討論に立った国民民主党の議員が、委員会室に集まった委員でない議員の態度に苦言を呈しました。「反対討論をさせてほしい。あなたたちのやっていることは、解任決議案の趣旨説明の時間を15分程度に区切る要求を出した与党と変わらない。言論封殺につながるのではないか」といった趣旨の発言でした。野党の足並みに乱れがあることが明らかになった格好です。

野党の足並みの乱れは他にもありました。報道によると、国民民主党は内閣不信任決議案を提出して抵抗するつもりだったようです。

内閣不信任決議案の提出は51人の衆議院議員が必要ですが、国民民主党の衆議院議員は37人しかいないため、立憲民主党に協力を求めました。時事通信によると、立憲民主党は「事前の根回しがない」などとして協力を拒否しました。

内閣不信任決議案といえば、通常国会では立憲民主党の枝野代表が内閣不信任決議案の提案理由について3時間弱の演説を行い、演説が本になって話題になりました。「魂の大演説」をやるには準備が必要なようです。

■18時間に及ぶ攻防、決着

そして、8日1時20分から参議院本会議が開会し、14本の法案の採決が行われたあと、ついに入管難民法案の採決が行われ、可決されたのです。午前4時頃のことでした。

NHKによると、7日の参議院本会議から入管難民法案成立まで18時間かかったということです。

与党議員も野党議員も、お疲れさまですという感じです。


参議院の法務委員長解任決議案が提出される


■与党が採決を提案、野党は委員長解任決議案で対応

本日12月6日夕方、野党は参議院法務委員会の委員長解任決議案を提出しました。これにより、参議院で審議中の外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の採決は見送られました。

本日の法務委員会は午前中から開会しています。報道によると、昼の理事会で与党から野党に午後に採決する提案が出されましたが、折り合いがつかず結論を持ち越して午後の安倍総理が出席する質疑を行いました。総理出席の質疑が終わったあと、再度開かれた理事会で与党が改めて6日中の採決を提案したところ、野党が法務委員長の解任決議案を出した、という流れのようです。

法務委員長解任決議案が提出されたことにより、解任決議案が参議院本会議で採決されるまで法務委員会の審議を再開することはできません。そのため、与党は6日の入管難民法案採決を見送ったのです。

■7日の法務委員会は委員長の職権で決まる

少し気になったのは、明日の法務委員会の開催が委員長の職権で決まっていることです。解任決議案が提出される前に決めたのか、提出された後に決めたのかどちらなのでしょうか。解任決議案が提出された後に決めた場合は、解任決議案が提出された状態で審議を進めることはできないが、委員長としての権能はあるので委員会の運営を決定できるということになるのでしょう。

ちなみに、明日の参議院法務委員会は10:10から開催の予定になっています。参議院本会議はその10分前の10:00開会です。このスケジュールのとおりにはいかないでしょうが、本会議で速やかに解任決議案を否決して、午前中に法務委員会を開いて入管難民法案を採決するという与党の気持ちが伝わってきます。

午前中に法務委員会で採決したら、午後に再度本会議を再開して、入管難民法案を緊急上程し、採決しようと考えているのだと思います。このタイミングで法務大臣の問責決議案が提出されると、多少採決を遅らせることができます。


入管難民法改正案、明日12月6日に参議院法務委員会で採決か


■6日の法務委員会開催は、総理出席で与野党合意

本日12月5日、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の参議院での審議について、明日6日に安倍総理が法務委員会に出席して質疑を行うことで与野党が合意しました。これで、6日の審議まで与野党合意で行われることになります。

明日の法務委員会の理事懇談会で採決の提案がされ、野党が反対し折り合いがつかず、委員会での審議中に質疑終局の動議が出されて採決に向かう流れになるのでしょうか。採決の提案をそもそもしない可能性もあります。

■野党はカードをいつ切るか

野党も審議を遅延するカードを3つは持っています。法務委員長解任決議案、法務大臣問責決議案、そして内閣不信任決議案です。これらのカードを明日や明後日のどのタイミングで切るかが注目です。

野党は明日の衆議院本会議で採決される見込みの水道法改正案にも反対しているので、明日内閣不信任決議案を出すのでしょうか。内閣不信任決議案は、衆議院と参議院の審議を両方止めることができます。ただ、明日内閣不信任決議案を出してしまうと、明日の衆議院本会議で即採決されてしまうので、明後日に行われそうな入管難民法改正案の参議院本会議での採決を遅らせることには使えなくなってしまいます。


入管難民法案の採決に関する提案は5日か


■12月7日に成立を目指すのなら、12月6日に法務委員会で採決が第一候補

本日12月4日、参議院法務委員会で、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の質疑の続きが行われました。明日5日も、法務委員会の定例日ではありませんが、入管難民法改正案について参考人質疑を行うことで与野党が合意しています。

本日の報道を見る限り、与党から野党に対して、入管難民法改正案を採決する日程の提示はなかったようです。報道によると、与党は入管難民法改正案について今週7日の成立を目指しているとのことです。7日の参議院本会議に間に合わせるには、法務委員会の定例日に合わせるならば6日に採決するしかないので、明日法務委員会の理事懇談会などで与党から野党に採決の提案をすると思います。

ちょうど安倍総理が外遊を終え帰国しているので、総理が法務委員会に出席するなどあれば採決の合意が取れそうですが、どうなるのでしょうか。